第32回  総選挙雑感 その2:1+1=0
 
 11月14日の党首討論で突如飛び出した、「11月16日解散/12月16日選挙」の決定。大慌てしたのは、与党・野党ばかりではない。
 「第三極」などともてはやされ、キャスティングボートを握るか、といわれていた新規政党の面々である。
 橋下・大阪市長の率いる「日本維新の会」に、追いつけとばかりに石原・元東京都知事が代表の「太陽の党」が発足。即座に太陽は「立ち上がれ日本」を吸収し、一体化したのもつかの間、橋下氏の熱烈ラブコールを受ける形で両者は手を結び、「太陽の党」は結成1週間も持たずに消えてしまうという珍事を巻き起こした。

 石原氏の国政進出は、私個人の意見としては、日本が変わる潮目になるのではないか、とすごく期待していた。領土問題に関心が深く、憲法改正にも前向き。脱原発は時機尚早だとしていたし、歴史認識もはっきりされている。日本人の(ための)政党ではなかったこの3年間を過ごさざるを得なかったわれわれにしてみれば「救世主現る」と映って当然であり、期待の度合いも急激に高まるものである。
 ところが、ほぼ政策の異なる「日本維新の会」への合流を決めてしまう。これには、少々がっかりであると同時に、その前に合流に同意していた減税日本を袖にするという不義理もやってしまっている。挙句に「党名が悪い」と減税側に痛烈な一撃。あのひとことで、「あ、この人もどこかの党とおんなじで勝ちたいばかりに目がくらんでいるんだな」と見えてしまった。

 橋下氏側サイドにしたところで、平沼氏を名指しで「真性保守の方はお断り」的な発言をしてしまっており、本当に一枚岩で会派合流がなされたとは到底考えられない。これでは選挙互助会だった民主党となんら変わらない状態ではないか、と考える。実際、砂上の楼閣よろしく民主党からは離党者が続出。「負けると分かっている党から立候補したくない」心理を分かりやすく体現している。
 そして、民主党よりこの「維新」の始末の悪いところは、『日本の政治にまったく携わっていない』0年生議員ばかりだということである。野党であった民主党は、曲がりなりにも閣僚経験者や当選回数の多い方も含めて、議員として活動してこられた方が多く、基本的なことは出来る人が大半である。しかし、『小沢ガールズ』に代表される、頭数だけの議員の多くは、ようやく政治が分かり始めた段階であって、仕事が出来るレベルには達していない。ましてや新規政党が日本の政治を牛耳ろうとするなど、思い上がるのもいい加減にしろ、と思わざるを得ない。

 石原氏の読み違えたところは、「橋下は俺がてなづけられる」と見誤っているところにある。自身は代表にしてもらって、うれしいだろうが、他方一歩退いた感のある橋下氏にしてみれば、代表代行に座ることで立候補もしない「表に出ない」戦略を使い、石原氏を「操り人形」のようにあごで使えるのだから、これほど痛快なことはない。不本意な結果に終わっても「代表」に責任を負わせればいい・・・。あ、まんまとわなにはめられたかもしれませんな、石原氏。
 そんな実績ゼロで、方向性の定まっていない急ごしらえの政党であっても、支持してくれる層がいるというのが恐ろしい。たださえ3年間を無為に過ごさざるを得なかったにもかかわらず、またしても「政治家あっても政治進まず」を体験したいのか・・・。
 
 いい加減、「政治」をする党・団体を選ぶべきだと思うのだが、どうして日本人は「変わりたがる」のだろうか・・・。


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