第20回 「閉架」は正しい判断か?
原爆に遭遇し、その中で必死に生きようとしたまんが「はだしのゲン」は、コミック界の中でも反戦を扱った作品として、つとに有名である。当方をはじめ、作品に触れた人は少なくないと思われる。
とは言うものの、当方は、この作品については、「ただの反戦/ドキュメンタリーまんが」とは読んだ当時から受け取っていなかった。なにしろ、登場人物たちのメッセージ性がきつすぎると思っていたからである。
作品の中で触れられていた天皇制に対する批判であるとか、残虐行為を日本軍が行ったとか、まったく受け入れられなかったのを記憶している。むしろ、こういうことを本当に日本人/原爆に遭遇した人たちが思っていたのか、とさえ思ったくらいである。
そういった、いわば一部反日的な内容を内包しているにもかかわらず、この作品は、他の作家が触れなかったこともあって唯一といっても過言ではないテーマを扱った漫画として、未だに読み継がれている。
この作品を「遺物」扱いにし、簡単に読ませないようにした、ということで、今、松江市の教育委員会の対応に注目が集まっている。→当該ニュース記事はこちら(いずれリンク切れになりますのであしからず)
実はこの対応、当方は「賛成」である。
なぜか?ニュース記事の中にもあるように、「平和教育として非常に重要な教材。教員の指導で読んだり授業で使うのは問題ないが、過激なシーンを判断の付かない小中学生が自由に持ち出して見るのは不適切と判断した」(副教育長氏の発言/記事より抜粋)という点である。特にこの部分・・・過激なシーンを判断の付かない小中学生が自由に持ち出して見るのは不適切・・・という判断は実に正しい。
そう思える根拠は、この作品に疑問を持っておられるcoffee氏のブログに詳細が記載されている。→作者の反日性もあぶりだしている秀逸な記載です。こちら 実は、最も読んでいただきたいのは当該記事のコメント欄であり、ここには作品擁護派/主張に賛成派が結構入り乱れてます。この場外バトルだけでも一見の価値あり。
作品に赤っぽいところや、作者自身が抱いている日本嫌い/天皇嫌いを反映させてしまっているところは、はっきり言って「授業で使ったりするのは問題ない」とはとてもいえないわけなのだが、事実は事実として、うまく使うことにまで反対を述べようとは思わない。
また、「表現の自由がーー」といきまく人権団体が沸いてくると思われるのだが、教育委員会の下した結論・・・閉架は、作品の否定ではなく、「R指定」的なものであり、むしろそういう表現があることで見せられないとしただけなので、その反論も当たらない。
絵のタッチが、一種おどろおどろしい劇画スタイルということでもあり、今の子供たちがいかにまんがに対して抵抗がないとは言ってもこの絵を見て拒否反応を起こすことも考えられる。名作との呼び声が高い反面、作者のイデオロギーがここまで噴出してしまっている作品に対するこの措置は、戦後世代にとってもまともに対峙することをやりにくくしていることにようやく一部の人たちが気付き始めた証拠である。
一部の内容の信憑性も含めて、「問題あり」と判断した教育委員会。まともに仕事できる人たちがもっと増えればいいのに、と思わずにはいられない。
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