第22回   アニメーション業界は変われるのか?
 
 20回/21回と、まんがの図書館における「閉架」について述べてきた。
 最終的には「閉架まではやりすぎ」となって、問題の発端になった松江市ではこの措置の撤回が正式に決まった。
 このことは教育委員会の決定なので、たとえ問題のある図書であっても見せるほうが健全な育成に役立つ、という判断をしたのだから尊重したい。

 そして9月になり、のほほんと「八重の桜」を見終わった小生はニュース記事に釘漬けになった。
 宮崎駿が長編アニメーション製作から手を引くということである。
 →既に2chでも話題になっている。http://pirori2ch.com/archives/1773388.htmlなど、まとめサイトでも早速トピックが立ってました。

 NHKの8:45のニュースのトップを飾るとはすごいことなのだが、「今この時期」の発表に恣意的なものを感じずにはいられない。
 なんとなれば、当の本人は「これで最後」的な発言をしていたわりに、映画公開前後にそういった発言がなかったこと、映画祭に出展している作品であるのに突然の発表(6日に記者会見するとかしないとか)、公開中期〜後期での発表だけに、一種のステマの可能性すら否定できない点などが上げられる。とにかく「なぜ今なのか」が分からないのである。
 
 当方、ジブリ作品とは「千と千尋」以来、疎遠になっている(スクリーンの前で対峙した最後の作品がこれ)。しかし、あの作品の無駄に引き伸ばしたところや、最後のあっさりしすぎたエンディングを見るにつけ、「峠は越した」と思って、以後は劣化を認めたくないという理由も影響してみていないのである。『風立ちぬ』でやりたいことは出し尽くした、完全燃焼型の物か、ただの「辞める辞める詐欺」か・・・。

 わたしは、この喪失感が実は日本のアニメーション業界/映画配給業界に与えるインパクトはすさまじいと考えている。何しろ、一つ映画を作れば、そのネームバリューで数百万人は呼べる。過去のアニメーションタイトルを敢えて実写化し、大コケを食らうくらいなら、「監督・宮崎駿」とどこかにクレジットするだけですごい担保になりえる(もうここまで書けば言わずと知れたガッチャ男とか悪魔男とかwwwww)。そういう人がもはや出現しなくなるのである。
 この作品で声優を担当した庵野氏の作品にしたところで、結局は一般大衆向けとは到底言いがたい、「一見さんお断り」的な作風でとどまっており、一説に「跡継ぎに御指名か」という声も聞かれるが彼にその素養はない。むしろスタジオジブリの衰退を早めるだけだと思う。

 後継が育たない中での引退。確実に長編アニメーションは、ロングセラータイトルに依存度を高めるのは必至で、ポスト・宮崎を担える人材は寡聞にして知らない。ビッグネームに頼り続けた日本のアニメーション界は、大きな岐路に立たされている。

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