銀河漂流 バイファム 概論
 
  放送回解説 その2  7話〜10話

   第七話   「孤立した14人  異星人飛行物体襲来」

 前回で、悲劇的な輸送機の遭難現場を目の当たりにした3人。ケイトの落ち込み様は並大抵ではないことがジープの助手席からも伺いしれる。
 アゾレックに到着した3人を待っていたのは、あどけない、状況を知らない子供たちである。マルロが、3人しかいないことを早速、175Km/hのストレートでケイトに投げかける。顔色が変わる一同。しかし、ケイトも、その現実にただ泣き崩れるだけである。
 かくして、「女子供」だけになってしまった、彼らであるが、この回あたりから、会議シーンが増えてくる。おそらく、初会合となったと思われるのが、この直後のバーツたちの報告会である。ここで、われわれと登場人物との知識/情報面での温度差が一気に解消する。そして、視聴者であるわれわれには、今度は登場人物の間での葛藤が提示される。司令部からの連絡を第一義に考えるスコット、「自分の命は自分で守るべき」と主張する、ロディ、バーツ。特に、前線の兵士の言葉を聞いているロディたちの考えは、道理である。私が既に提示した疑問点を、ここであの二人は看破できているのである。
 そんな、ややあれた空気を知ってか知らずか、2体の敵機がベルウィック星に降下してくる。まるでこの回だけに特別に仕立てられた、偵察RVである。又、運の悪いことに、迷子になってしまったルチーナがそばにいる!その報を受けたケイトが、又、飛び出したマルロの代わりになったロディが、敵機と対峙する。息詰まるセンサーとの「格闘」を終え、何とか、その場はやり過ごす。

 ラストシーンは、管制室のスコットである。軍からの連絡を待つ彼の姿。いつくるのか、そもそも連絡は本当にあるのか・・。焦燥感に駆られたままで終わる。
 この回、始めて、スコットに「指揮官」という称号が与えられた。無我夢中でその重責をこなそうとするスコット。だが、敵機を前に「どうしてこんな羽目に」と、頭を抱えるシーンも。15歳の指揮官、これからどうする?
  
   第八話  「高ゲタ作戦!?  小さな戦士の出撃だ!」

 アゾレック基地に居候した14人の中にも、慣れと、退屈と、少しばかりの焦燥感が芽生え始める。特に、「さわりたい、乗りたい」盛りのケンツ/フレッドと、自己防衛のためにやむなくやっているロディ/バーツとの間にも、「させろ、出来ない」という葛藤が冒頭で描かれる。
 むくれるケンツとフレッド。だが、フレッドの名案で、本当に「最年少パイロットの誕生だな」が実現してしまうのである。
 一方のロディとバーツは、シミュレータではまさにプロ級の腕前。おそらく、明けても暮れてもシミュレータにかぶりつきだからだろうか?もっとも、倒した機数を競い合っている面があるところからして、真剣に、それこそ自己防衛のために訓練しているとは思えない。半分、時間つぶし、ゲーセンのゲームと対して変わりない感覚で練習していたとも思われる。
 フレッドの、ペダルを持ち上げる、「高ゲタ」作戦は、シャロンにも知られ、胡散臭さを感じ取ったバーツにまで知られてしまう。もっとも、バーツは、ここまで作り上げたこと自体を認め、自らも製作に加わっている。
 初搭乗になるケンツは、まさに敬礼口調でバーツに答える始末。一歩踏み出したところで、ロディにかぎつかれてしまう。順番待ちをしていたフレッドには、無情にも手を引きその場から離れさせられてしまう。
 そしてその夜。昼間に動かせなかった鬱憤をはらせるかのように、フレッドは、ディルファムを動かしていた。そこへ敵船団。舞い上がったフレッドは高ゲタを壊し、アクセルオンのまま暴走を始めてしまう。
 追尾するバーツとロディ。しかし、敵船団に向かって走り続けるフレッド機にどうしても追いつけない。断崖絶壁が目前に迫る手前でロディは捨て身のダイビングキャッチを試みる。
 かくして、全面戦争は避けられ、再び基地には平和が戻った。

   第九話  「雷鳴の中の敵襲  僕たちだけで戦うんだ!」

 アゾレック基地を仮の住まいとしていた、14人に、明らかに焦りの色が出始めていた。それでも、ロディ/バーツは、シミュレータ上はかなりのエキスパートになっていた。とはいうものの、ロディは、「あれから1週間だな」と漏らしている。一週間で、ここまでできるものかね?
 司令室でも同じ様な会話。その声に押されるように、スコットは、ジワイメルゥ基地への連絡を強行する。もっとも、彼とて、いきなり連絡したわけではない。バーツが一応止めているが、「何かあればボクが責任をとる」という一語でやってしまったのである。
 もちろん、応答はない。と、そこへ敵機がやってくる。司令室に集合する13人。そう。一人足りない。「トラブルメーカー」の本領を発揮したケンツは、あろう事か、基地周辺を探索する敵RVを愛用のバズーカで倒そうとしていた。
 もちろんはずれてしまい、あげく敵機に追いかけられる始末。ケンツ救出に、まずロディとバーツが、続いて、年かさのもの全員が武器を取って応戦した。敵機がきりきり舞いしている間に、初実戦となる、ロディ/バーツの出撃が行われる。
 ここで、ロディは出撃に手間取ってしまう。先発したバーツも、2機相手で、苦戦する。肉弾戦に持ち込むも、足を損傷、身動きもままならない状態。危機一髪の時にようやくロディが駆けつける。しかし、ロディとて、動く敵と対峙するのは全くの始めて。訳が分からないままに2機の敵機に挟まれてしまう。マニュアルにあった対処法もわからないままに無我夢中に2機に発砲するロディ。
 しかし、機転の効く子供たちは、なんと、急造のRV部隊を登場させてしまうのである。実は、この時以来、本当に、RVに乗らなかったのは、シャロンただ一人なのだが、マキ、フレッドという、3機のRVの出撃は、敵の動揺を誘った。形勢が一気に逆転、ロディは、見事一機をしとめる。
 雨の上がった基地。確かにチームワークで乗り切ったとはいえ、シミュレータのプロを自認していた二人の落胆ぶりは並大抵のものではなかった。死の恐怖に打ちひしがれているとも受け取れる表情である。そこへ事の発端の人物の一言−−とどめを刺せたのに何で逃がしたんだよ−−は、明らかに、明日は我が身に降りかかるやもしれない状況であり、まして、数時間前にそんな状況下にあった二人にとって、神経を逆なでする言葉だったに違いない。おそらく、最初で最後の、ロディのにらみ顔である。
 ラストは、シャロンのおとぼけと、スコット/ケイトの会話で締めとなる。基地にもとどまることが難しくなった、彼らの選択は?チャンネルそのまま、次回を待て!!

   第十話   「宇宙(そら)か地か!!  基地攻防の大決戦」

 敵の船団が頻繁に通るようになった、ベルウィック星。制空権は、完全に敵のものになってしまっていた。その姿におびえる、レーダーサイトのケイト。「軍の力が必要」と結論づける。
 一方、大きな動きが子供たちの間で起こった。「ジワイメルゥへ直接状況を聞きに行く」と言い出した、バーツ/ケンツ派に対して、「この星自体が危険だ」というロディ派が出現、見事に二つに分裂してしまったのである。
 派閥の構成人員を明示しておく。
 基地派・・・・・・・・バーツ/ケンツ/マキ/クレア/ペンチ/ケイト
 ベルウィック脱出派・・ロディ/フレッド/カチュア/ジミー/マルロ・ルチーナ/シャロン
 中立派・・・・・・・・スコット
 結局、この場は、最年長者でもある、ケイトの意見がもっともらしく採用された。「軍なしでは何もできない」と結論づけるケイトに、ロディは、「地上に残るのはごめんだ」の捨てぜりふを残す。実際問題、ここでどうして、ロディがこれほどまでに強硬な態度をとったのか、よくわからない。
 バーツの運転でジワイメルゥに向かった一行を寂しげに見送るスコット。空けていたレーダーサイトにあわてて駆け戻る。だが、そこでは、大規模な敵襲が展開されていた。もはや、地球軍が劣勢を強いられているのは、火を見るより明らかだった。そこへ、ついに、待望のジワイメルゥからの連絡が入る。しかし、それは・・・。
 「総攻撃」「壊滅状態」「独自の判断で脱出せよ」・・・。まさに、ジワイメルゥ基地、断末魔の叫びである。基地に向かったバーツたちに連絡を入れようとするスコット。だが、相手が無線を切っていることに気付き、愕然とする。
 そのころ、バーツたちもジワイメルゥの異変に気付いていた。ケイトの呼びかけに弱々しく返事する軍人たち。もはや、軍の力が皆無になってしまったことに愕然とする6人。そこへ敵機。あたふたと逃げ回るバーツたちであったが、埒があかないと判断したバーツは、自らおとりとなる決意をする。
 バーツたち、基地組の無事を祈りつつスコットとロディはジープを駆って、後を追った。まさにそのころ、バーツの真骨頂ともいえる、敵機との激しいチェイスが展開されていた。だが、明らかに敵機側に有利に事は運んだ。とうとうバーツはトラックを放棄、敵の閃光一発で粉々になってしまう。
 これを見たスコットの感情は一気に頂点に達した。「見てるがいい」と敵機撃墜に燃えていた。そして見事、打ち落とすことに成功する。
 敵機をしとめた彼らを待っていたのは、トラックとともに一命を落としたと思われる面々との再会である。もちろん、遅れてバーツも登場する。再会のシーンは、結構いい演出になっている。
 その夜の、アゾレックの食堂でラストシーンを迎えるが、ここでのスコットの表情がかなり印象的である。(蛇足:「わかってる」「わかった」等、同等のせりふが10回使われた。以後、このアニメの定番せりふとなっていく)