徹底解析! 重箱の隅  その1

 異星人に襲われるクレアド星。腰を落ち着けるまもなく強制退去・避難させられる移住民たち。彼らの前途になにが待ち受けるのか?----新聞的な見出しで言えば、こんなところだろう。
 しかし、この部分から、すでに脚本的な矛盾は噴出してしまっているのである。
 今回のWEB版公開に伴い、「お題」方式によるナンバリングを廃止し、放送回単位区分(具体的には、放送回解説による区切り)でのページ分けとする。
 
 ○ 地球軍の兵力が、少なすぎる。
 まず、第1話の襲撃シーンを見なおしてみよう。確かに、星を攻め落とそうというのだから、敵方がかなりの兵力で向かってくるのは、当然の帰結である。ところが、終ってみれば、地球軍の、屈辱的なまでの敗北と言う、最悪の結末になってしまっている。
 その原因は何か?簡単である。戦力比が、大きすぎたからである。では、その差が大きくなるような配置にしたのは誰か?はっきりいって、軍の上層部である。
 軍は、「2年ほど前」(5話のベルウィック星司令・ベロア氏談)に、期限付きで、ククトニアンから通告を受けていたにもかかわらず、無視した。さらに、敵は襲ってこないと高をくくっていた。そして、もうひとつ、忘れてはならない事実がある。それは、クレアドを手中に収めたときのことである。このとき、ククト軍はまともな抵抗をしていない。もっと正確に言えば、軍はその場にいなかった可能性すらあるのである。これが12年程前の話。このときの進駐が余りにスムースにいった、というイメージがあったのだとすれば、軍が必要最小限の部隊しか配属していなかったとしても、説明がつく。
 しかし敵襲は行われ、あっという間にクレアドは敵の手に落ちた。そればかりか、母星となっていたベルウィックまで戦場としてしまうのである。
 敗北自体が悪いのではない。準備できていなさ過ぎなのがいけないのである。結局、タウトでの戦闘でも、ローデンはじめ、有能な人材を失う結果になってしまう。地球軍の攻め方に疑問を抱かずにはいられない。

 ○ 結局、ステーションまでたどり着けたのは何人?
 実際、何人脱出できたか、という部分を決定づける材料には乏しい。そもそも、クレアド星にいた、シャトルの総数もわからない状態である。そこで、まず、脱出人員とジェイナスへの乗船人員を等しいと仮定して、話を進めていく。
 乗船人員を確定できる唯一の手がかりは、なんと「棺の数」なのである。つまり、第二話終了間近の、宇宙葬のシーンがそれである。棺の数は、200~300程度と推定されるが、軍艦にそれだけの棺がのっかっているというのも至って変な話である。用意がよすぎるのではないだろうか?
 まぁ準備周到な船だったとして、その乗船人員数は「正しい」と仮定すると、いろいろと不都合も生じてくるのである。まず、子供たちは、初対面当時、5~6ブロックに分かれている(マキ+シャロン(シャロンの好き嫌いを既に知っている事から。ただしジェイナス船内で何度か食事を重ねているとすれば、この前提も崩れる)、フレッド+ロディ+ペンチ、スコット+クレア、ケンツ、ルチーナ+マルロ)。ということは、最大、数機のシャトルで脱出できたことになる。少なくとも、2機はいるはずである(ロディの乗っていたシャトルを含む)。
 では、機数を決定づける何か情報はないだろうか?そこで一つあげられるのが、第2話でのジェイナス内の食堂のシーンである。ここにいて、女子職員に促されて乗船名簿に記入していたのが、先着していた4名(マルロ+ルチーナ、マキ、シャロン)。彼らと同時期にケンツも着いていたとして、1機。ロディたちで2機目。遅れて入ってきたスコットたちで3機目、という推理である。ただ、スコットたちは、ロディと同じシャトルでやってきている可能性も否定できないため(初回に誰彼なしに出してしまうのは得策ではないとの考え)、ストーリーから推察できるシャトル数は2乃至3機という事になる。
 では、そのシャトルの定員はどのくらいなのだろう?どう考えても、10人とかというレベルではないはずである。50人?少なすぎる。150人くらいだろうか?第一話でシャトル船内が書かれていたが、ここでもよくはわからない。くどいようだが、脱出人員と乗船人員が等しいとすると、一機あたりの乗船可能数は150人、何とかジェイナスに乗り込めたのは、クレアド星の民間人2200人(データ出展:クレアド星司令より)のうち、300~450人(到達率:14~20%)という数値がほぼ正解ではないだろうか?
 と、ここまでは、ストーリー上から挙げられる状況証拠による推論。実は、精査の結果、ステーションにたどり着けた人数の裏づけが取れてしまったのである。第一話で、司令が副官に、民間人のシャトルへの搭乗状況の説明を求めたときに、彼は、「1103現在、86%収容を完了しております」と言っている。この時点では、民間人にも多数の死傷者が出ているのは明らかであり、シャトルがかなりやられている事などを勘案して、『まだクレアド星に残っている人たちは14%いる』という風に解釈したほうがよさそうである。
 そして、シーンは、格納庫に残っているフレッドの元へと急ぐロディが映る。その背景に基地を飛び立つシャトルが映る。これで、ロディたちが乗ったシャトル以外に基地を脱出できたシャトルが少なくとも一機存在する事が明らかになった。かくして、機数も、なんとトータルの人員もすべてつじつまが合うことが、ここまで徹底的に調べた結果、明らかになるのである。

 しかし、ここでも矛盾に突き当たる。最低300人いるはずの脱出民のうち、子供はわずか10名(ロディの乗っていたシャトルに、仮にスコットとクレアが乗っていたとしてもそのシャトルには5名しか乗っていない)。これも異常である。核家族化が進んでいたり、すべての家族構成員が20歳以上という家族もないわけではないが、9家族にしか、子供が存在していないのは、はっきり言っておかしい。
 もうひとつ、第1話で、センター職員から召集がかかったとき、子供たちは10数名いたはずである。ほぼ同時に基地に到着していれば、同じシャトルに乗り合わせているはずである(4話で、元軍人と言っていた老人が、ジェイナスに乗り込めている事から、タイミング的にはそれほどずれていないと思われる。ロディが見たシャトルに乗り込めている可能性大)。
 それに年齢層が偏りすぎている。不思議なことに、15歳以上がいないのだ。昔の日本じゃあるまいし、それ以上は大人扱いされていたとも思えない。
 余談でもあり、後で分かる話なのだが、あれだけ、クレアドでの大戦闘があり、犠牲者も少なからずでているにも関わらず、なんと、9家族がすべて無事だった、というのも驚愕に値する。この部分については、終盤、本当に忘れた頃に救出劇があり、どうしてそんなことになったのか、についてもこのコーナーで解明していきたい。

 ○ あまりに過剰な装備のジェイナス号
 これについては、別ファイル「銀河漂流 バイファムの謎」(未完/web公開せず)に一部列記していたので、それを利用すると同時に、ほかにもいろいろ出てきたので、それも含めて入れておく。
 ・200から300近い棺(2話)
 ・輸送用トラック  ・ジープ(ククト星で使用)※1
 ・それらを動かす為の燃料(かなりの量)
 ・RV用の燃料/弾薬など(地球軍とコンタクトがとれるまでの期間)
 ・約3~6ヶ月分の食料
 ・ケンツが言っていた以上のRV(9機以上)
 ・幼児用の、冷凍庫で着る防寒具(18話)
 ・40個近いVRCや偵察用ロケット(32話)

 宇宙での航行が本来の任務であるジェイナス号。このジェイナスに、ククト星本体で活躍の場を与えられた、※1のような装備が、なぜ、元からあったのか、大疑問である。さらに言うなら、乗員数を遥かに上回る棺の存在も、おかしいの一言に尽きる。
 もちろん、もっとあげればきりがないので、ここらあたりでやめるが、よくよく観察してみると、かように穴だらけなのである。

 ○ 単純だけど見逃せない「人数」の差異
 またしても、「放送回」見直しで見つかったねたである。
 前話で、中尉は、艦内にいる人々に向かって、こう宣言している。
 『報告致します。本艦は、正常に、ベルウィック星へ向かうべく、航行中であります。本艦は、過大なる損害を受けましたが、現在、応急修理中であります。又、今回の戦闘で、多数でた、尊い犠牲者に対し、深く哀悼の意を表するものであります。尚、本艦の乗員総数は32名、うち、未成年者10名...。以上であります。』
 ということは、である。軍属の10名足らずを除くと、なんと、大人たちの乗員数は、12名、多くても15名程度しかいないはずである。ところが中尉の求めに従って食堂に参集した、一般人の数は、明らかに20人以上いる計算である。
 もう、どうしようもない脚本ミスなのだが、すいすいと見つかってしまうあたり、まだまだである。

 ○ どいつもこいつも目は節穴
 目指すベルウィック星に到着した彼ら。中継ステーションへの連絡を試みるのだが、いきなりの救難信号。偵察用無人ロケットまで飛び出しての確認と相成った。
 しかし、ステーションが肉眼で目視できる距離になっても、誰一人、ステーションの外観的異変に気がついて、口にするものはいなかったのである。これほどまでにコテンパンに破壊されている事が、内部へ潜入した、偵察ロケットの映像を見ないとわからないとは、どう考えてもおかしい。
 もし、仮に稼働しているとするなら、それなりの経済活動なり索敵行為なりが行われているはずである。それすらも感じ取れる状況になかった事は、肉眼レベルの目視でもわかったはずである。
 まぁ、ようやく「行程72時間」をすごしてきた安堵から、そう行った些細な事には目を向けなかったと言うのなら、それも理解しよう。しかし、誰かの口から、「壊れてる」くらいあってもよさそうなものだが…。

 ○ クレークの失策① なぜ、アゾレック基地だったのか?
 偵察に向かった軍人たちも消息をたち、いよいよ、民間人だけになってしまった、13人。結果、クレークは地上に降りる事を決意するのだが、向かった先は、ベルウィックの司令本部がある、ジワイメルゥではなく、首都・ザンビアに近い、アゾレック基地だったのである。
 それでは、なぜ、彼が一存で、アゾレック基地を選択したのか?考えられるいくつかの理由を列記してみる。
 ①首都に近いので、状況のわかる人たちが残っているかもしれない
 ②アゾレックには、気心の知れた軍人が配属されていた
 ③自分たちの研究所のもよりの基地だった

 理由はあげては見たものの、彼から、どうしてアゾレックだったのか、と言う決定的な「ご託宣」がない以上、これらは推測の域を出ない。
 では、ストーリーの経過で、なにかわかる情報はないものか?そこで、該当回を最初から見なおしてみた。一番最初に、「アゾレック」の言葉を発しているのは、なんと、ケイトだったのである。それも、どう言う事をいったのかというと、「アゾレック基地に行けば、パパやママに会える」と、断定的な口調で語っているのである。
 いったい、彼女がどれほどの情報を持っていたと言うのだろうか?小さい子供たちを納得させるには充分過ぎる情報だが、振りかえって、すぐに嘘とわかるような気休めをいって、どうなるのだろう?
 いすれにせよ、クレークにも、ケイトにも、「ベルウィックに到着するならアゾレック基地」という固定観念が頭の中にあったとしか考えられない結論である。しかし、以後の事後処理に失敗した結果、クレークは命を落とす事になるのである。

 ○ へぇ、バーツって、ディルファム操縦出来るんだ→考察に詳細あり
 さて、4話で、最後の合流者として描かれている、バーツの登場のシーンは、派手そのものである。彼はなんと、片足を損傷したディルファムに乗り、しかも敵をやっつけ、ご丁寧に足を完全に折って転倒し、コックピットから出てくる。実は、ここは大きな見落としの部分である。「どうして、彼が乗っているのか?」
 6話で、彼は、あのディルファムに乗り込んだ経緯をこのようにはなしている。
 『最初は車の敵をとるつもりで・・・』。しかし、闇雲に乗り込んで、操縦できるような機械ではないことは容易に察しが付く。構造や操作手順を知らないと、一歩前に進む事すらおぼつかない。事実、5話でシミュレータを使った模擬訓練が行われるのであるが、ここで、全く触った事のないスコットやマキはプレスタートすらおぼつかない状態であった。と言う事は、バーツには、この機械に関する動かし方をすでに知っていたのか?
 まして、戦闘経験のない(はずの)、14歳の少年が、「敵をとる」などという、大胆な行動にでるものだろうか?もちろん、自分の命を最優先に考えてのことだと思うのだが、戦闘兵器に乗り込むという事は、即、死と隣り合わせなのである。逃げるのならまだしも、戦っている。確かにバーツはもともと好戦的なのだが、自分のやっている事が無茶である事にも気付いていない。まさに暴走族上がりの少年らしい。
 更に深読みしよう。「そのディルファムにもともと乗っていたパイロットはどこへいった?」彼、バーツが乗り込めるような状態に、そして、彼でも動かせるような状態でもともとのパイロットが、席を外すわけがない。もちろん、コックピット自体が損傷していないことから、パイロットもバーツが乗り込むときには、怪我をしていたにしても生きていた、と推察される。というわけで、いったい、バーツが乗り込むとき、パイロットはどこで何をしていたのかが大切な問題になる。一方、バーツのような素人でも戦えるのだから、そのパイロットが、片足を損傷したからといって、ディルファムを放棄するとも考えられない。
 では、バーツはどうやって、「このディルファムを手に入れたか?」これもやっぱり謎である。ちなみに彼は、ヘルメットをしていた。ということは、パイロットは、ヘルメットを取った状態で外にでて、不測の事態に遭遇し、コックピットに戻れなかったと思われる。やや乱暴だが、その不測の事態の中に、「バーツが強奪した」というシナリオも考えられるのである。
 普通に見れば少年が機動兵器を駆って登場するシーン。かっこいいし、意外性もあるが、よくよく考えると変なところだらけである。実は、この疑問には、後に作られる「銀河漂流 バイファム13」というオリジナルアニメーションである程度の回答を与える事にはなったが、その回答部分は新たな疑問を生んでしまっている。結局、旧作史上、最大の「サプライズ部分」と言えよう。

 ○ 実はヘルメットをしているのは・・・
 機動兵器に搭乗している姿を目撃されているクルーや登場人物は数限りない。まず、第一話で、「お手並み拝見といくか、蹴散らしてやるっ!」と大口をたたいた兵士は、スコープつきのヘルメットを装着していた(ご丁寧にシートベルトもしていたがこれが基本なのは言うまでもない)。次に、2話で、宇宙空間に出ようとしている兵士も、照準の位置がずれていることを報告する際、ヘルメットを装着していた。ところが、3話で特攻をした中尉はヘルメットをしていない。そして4話。バーツは、メットを脱いで、折れた歯を口から吹き飛ばしている。9話で初騎乗をするバーツ/ロディが、自機に騎乗する際、ヘルメットをかぶっていないのは周知の事実である。
 では、このヘルメットに何か効力があったのだろうか?当初、地上戦専用かと思われたが、2話で宇宙戦でも使われているのを見るとそうでもないらしい。かといって、中尉のように、なしでも出撃には差し支えなさそうなのだ。
 で、考えたのが、「目を書き入れたくない登場人物にメットをかぶせる」という、製作サイドの気まぐれではないか、と思うのだ。なんとなれば、1/2話とも、でているのは端役。つまり生き死になどどうでもいい登場人物なのだ。ところが、3話の中尉は、たとえ死ぬことがわかっていても、感情の起伏を語るにはどうしても目の力が必要になってくる。バーツは、どの道メットをとるのだから、あってもなくても、とは思うが、いきなり何の防具もなしでの登場は、具合が悪いと思ったのだろう。基本的にクルーたちはよほどのことがない限りメットはしておらず(重力があり、外にでることも想定して宇宙服を着込んで乗り込んだ29話など、特殊事例もある。この際にもメットそのものはしていない/また、トゥランファム騎乗時にはしてたりしてなかったりと描写はばらばらである)、本当に建築現場の防具感覚でしかない可能性すらある。

 ○ 意外?!バーツは知っているぞ!→考察に詳細あり
 第5話は、まったりとした時間が流れていた。しばらく緊張感はほとんどなく、まるで、戦時下にあるのか、どうかすらわからない状況だった。しかし、まだ結団して間なしのクルーたちを慌てさせるのに十分な出来事が起こった。
 ケンツの暴走である。バーツが乗っていた片足だけのディルファムを動かそうとして、バランスを崩して転倒してしまったのだ。みんなが寄って来る。だがクルーの中で、機敏に、そして的確に動いていたのはバーツただ一人であった。しかもである。彼は、誰一人知る由もない、コックピットとのホットライン(非常用電話)の位置を、一発で見つけているのである。
 そしてケンツは助け出され、ひとまず納まった。しかし、ここでケンツがこともあろうにスコットにけんかを吹っかける。そのさなか、バーツはロディに身長を聞く。164という回答をもらったバーツは、こういった。
  『合格だ。俺だって、本格的に訓練を受けたわけではないけど、模擬コックピットを使って訓練しよう。ここならあるはずだ』
 そして、トレーニングルームは見つかり、年長者がこぞって疑似コックピットを使って練習することになる。だが、ここでのバーツもすごい。彼は、一番乗りしていたスコットに、プレスタートの仕方などをレクチャーしているのである。それも、何の教科書も見ずに!!

 ついにバーツの正体が明らかになるときがやってきた。というより、収穫のほとんどないと思われた5話は、実は盛りだくさんだったのである。そう!バーツは、知っている、いや、知りすぎているといっても過言ではないだろう。
 だいたいシミュレータが実機と同一設備だったとして、何の教科書も見ずにスコットに教えられているというのは、どう考えても、その道に「精通」しているものにしか不可能なことである。よって彼は、機動兵器を動かす基礎的知識/技術があったとするのが妥当である。
 妙なことかもしれないが、これは事実である。

 ○ クレークの失策② 敵の傍受も顧みず、連絡した責任をどう取る?
 「軍の嘱託で考古学を研究している」と大見得を切って司令に会いたいと言うほどの権力と、行動力の持ち主・クレーク博士の様々な選択にも、変なところが見え隠れする。そこで、人となりをこれまでの放送回から探ってみることにする。
 ・「軍の嘱託の学者の地位ってどんなもの?」
 まず、忘れてならないのは、彼は「軍人」ではないということである。もう少し言えば、限りなく一般人に近いのである。「嘱託」という言葉を辞書で引くと、「正式な雇用や任命によらないで、業務の担当を頼むこと」(広辞林より)とあるように、あくまで軍から遺跡調査のために「頼まれた」だけの人なのである。もちろん、その歴史は少なからぬものがあるのだろう。権威であることも認めよう。しかし、彼が、軍に対してどれだけの知識を持っていたのか、という部分は、わからない。なのに、2話では、「司令に会ってくる」といって、司令部に乗り込み、5話でも、単身、ジワイメルゥ基地を目指している。
 5話の動きはまだ納得できるとして、2話の動きは、ややおかしいのである。何を聞く目的で司令室までやってきたのかであるが、このことについては全く明かされていない。おそらく、戦況や今後の方針、遺跡の処遇などについての議論を持ちたかったと思われる。しかし、おかしな事に、司令部に行き着くまでの道すがら、あまた合っているはずの正規の軍人たちに見とがめられずに済んでいる。ということは、ただ頼まれているだけのはずの彼の「地位」は、下っ端の軍人より、上という結論がでてしまう。事実、司令室前で警備していた兵士は、「お帰りください」と敬語で応対している。
 軍人が搭乗していたときのジェイナス号での扱われ方も、異常と言っていいくらいの待遇である。彼には、砲座ではなく、ブリッジでの監視という、ほかの人たちとは違う部署でのヘルプを命じられる。コンピュータのオペレートなら、ほかに、エキスパートがいたかもしれないのに、である。この、軍からの命令で彼は生き延びることが出来たのだが、「頼まれている」だけなのに、それも、軍の内部的なことではなく、脇筋的なことの研究を頼んでいるだけなのに、この扱われ方の差はいったいなんだろうか?
 これらのことから、導き出される結論は、「遺跡に関する研究をやることそのものが、軍のトップシークレットであり、嘱託といえども、かなりの権限が移譲されている」という説である。これなら、彼が司令に会いに行くという、民間人にあるまじき行為も頷けるし、軍が丁重に彼を扱ったのも頷ける。また、ジワイメルゥ基地の司令よりも位の低いものが、クレークの存在を認識できているのも納得できる。だとしたら、嘱託と言うことにならないようにも思うのだが・・。
 なぜ、わざと、クレークの身分について、長々と述べてきたか?つまり、これだけのことが出来うるはずの人物が、ベルウィック星に着くや、チョンボばかりなのである。
 すでに、アゾレック基地を選択したことに付いては、述べたので、ここでは、まさに最後の「自殺行為の無線交信をした」という点について考えてみる。
 
 まず、彼は、無線封鎖しているジワイメルゥ側の態度に業を煮やし、自分一人で確認しに行っている。この行動も早計だった。まずジワイメルゥ基地の司令とさしで会話できるくらいの身分の持ち主なら、14人全員を基地に連れていった方が手っ取り早かったはずである。どうして、このことに気付かなかったのか?「受け入れは拒否された」と無線でケイトに連絡を入れていたが、もし子供たちをつれていっていたら、こういう結果になっていたか、はなはだ疑問である。彼は、道中の危険を想定してのことだったようだが、動くのが危険なら、とどまるのも危険である。まして、非戦闘員の子供たちを残したというのはあまりにむごすぎる。
 ここまでも納得できない部分だが、やっぱり、きになるのは、ケイトとクレークの交信である。まず、クレークは、今がどういう状況下を把握しないままに無線を使っている。彼が無線を使いたいと言っても、本来、その場にいる軍人が止めなくてはいけないはずである。今無線を使えば、索敵中の敵に自分の位置を知られることぐらい、軍人であればわかりそうなものである。
 しかし、彼らは、クレークの無謀を許してしまった。理由はただ一つ。無線の使用に関して、「いいから。私が責任を持つ」みたいな事を言ったとしか考えられない。ではそれがどうして許されるのか?その裏打ちが、先程述べた「クレークの地位」という欄である(それにしても長いネタフリだった...)。
 もし、誰か生存者がいたとしたら、確実にそのものは軍法会議にかけられるだろう。しかし、事態は取り返しのつかない結末を迎えてしまっている。結果は、無惨に終わってしまったが、それもこれも、すべて、クレークが原因であり、要因になっている事柄ばかりなのである。

 ○ 杓子定規な軍人たち
 まだ、ベルウィック星に軍隊がいた頃。クルーたちは、存在自体を感じながらも、何の手も打たない地球軍にそれほどの信頼感をもっていなかったと思われる。ここでは、6話の戦闘兵器に乗っていた、パイロットの兵士の受け答えを中心に、いろいろと探っていきたい。
 あわやのところで、ロディを救ったそのパイロットだが、バーツと対話をしていくうちに真の目的がみえてくる。彼らは、輸送機の安否を気遣い、乗組員の生死の確認にきただけであった。保護を求めるバーツにも、「命令がなければ動けない」の一点張り。「そのうち連絡が行く」と気休めまで言ってしまう。その後、大規模な敵襲を受け「独自の判断で脱出せよ」という、ダイイングメッセージを残して軍人は壊滅していくことになる。
 この場での軍人たちの役割は、言葉通りでよかったのか?ちょっと頭を巡らせると、おかしなところがあるのに気付く。まず、民間人の保護を任されていた(=博士と一緒に輸送機に乗っていた)のは、後方支援の部隊ではなかったのだろうか?ただでさえ手薄になっている部隊の中の、精鋭を選りすぐって、博士に同行させるというのは無理がある。まして有事の時に戦力になる人員はおいておきたいはずである。だから後方支援、という結論になる。一方、バーツと話をしたのは、「精鋭」の部類の人々である。ということは、横の連絡がないのは当然である。(ジワイメルゥ司令がヘッドではあるが、彼から、各部隊へ、連絡がいっていたとは考えにくい。知らない部隊、知る必要のない部隊があっても不思議ではない)しかしながら、バーツたちを見ても、一応に驚く素振りを見せていない。驚かなかったのは、彼らがいることを知っていたからに他ならない。
 となると、「命令がないから動けない」という言葉は、額面通りには受け取れない。お役所的でいやだが、「おれたちの役割ではない」と言っているのと同じなのではなかろうか?民間人がいることを知っていても、司令部に問い合わせることもなく、まして、素知らぬ顔。軍人とはいえ、これではあまりに対応がクールすぎる。
 非常時、非戦闘員がこれほど困っていても、軍は頼りない・・。そういえば、某国も終戦前後、こんな状況だったときくが・・・。


 まず、序盤の疑問点について、様々な考察と疑問点のあぶり出しを行ってみた。特に、「バイファム 三大不可思議」の一つに数えられそうな、バーツの登場シーンは、何度書いても書き足りないと言う事はない。とはいうものの、「知りすぎている」登場人物の存在もやはり奇異に映るところである。
 これで終るのなら、苦労はしない。まだまだ噴出する、様々な疑問点にメスを入れていきたい。