徹底解析! 重箱の隅  その2
 ここでは、7話から10話までの疑問点について考えてみる。
 とはいっても、8/9話はほとんど書くべきところはないのだが・・・
  ○第10話に隠された5つの謎
 
 第10話「宇宙(そら)か地か? 基地攻防の大決戦」は、まさに、クルーたちのターニングポイントとして、決して欠くことの出来ない放送回である。一時は各人の思惑から、空中分解を余儀なくされたが、軍が当てに出来ないと知ってからのクルー個人の動きには、全く無駄がなかった。
 しかし、それは、総論での話し。各論になると、いろいろと問題点も出てくる。実は、1話の中に、これほどの問題点を内包していたのはこの10話を除いてほかにはないのである。逆にいうと、それほど内容の詰まった、書かせてしまう部分がいっぱいある事に他ならない。
 それでは、5つあがった、問題点を列記してみようと思う。

 @どうして、バーツは、動議なしで動こうとしたのか?
 Aロディのあの強気は、どこから生まれるのか?
 B無線は切れているはず
 C博士が飛行機で行った距離をトラックで走破しようとしたのか?
 D基地派/第二ステーション派に分かれた人たちの顔ぶれ分析

 それでは、順に解いていこう。
 @どうして、バーツは、動議なしで動こうとしたのか?
 7話以降、重要事項は、最低でも数人が寄り集まって、決定しているように見受けられた。決定事項がなくても、報告など、会合を持つ場は持たれていたはずである。
 ところが、9話で、敵機の襲来を受け、アゾレック基地が安全でなくなったのは、誰の目にも明かであったはずなのに、その日の内には何のアクションもおこさず、翌日になって、バーツの突拍子な行動が生まれている。もちろんコンセンサスが得られていれば、スコットの驚きも、2派に分裂すること自体もおかしな事になる。
 いずれにせよ、10話の引き金になった、バーツの行動は、ほかの年かさのものに、何も打ち明けずにいきなりおこしたもの、ということが出来る。
 では、どうして、「軍を信用しきっていなかったはず」のバーツが宗旨替えをしたのか?推測の域を出ないのだが、前話で、死の恐怖を十分に味わったからではないか、ということなのである。前話でのバーツは、2機に挟み撃ちされ、足を折られて、あわや、というところまで追いつめられた。「運だけだったな」とぽつりと漏らすその表情は死人同然だった。つまり、自分の腕の未熟さを思い知らされたわけである。
 しかし、であればこそ、みんなに意見を募って、「ジワイメルゥに行こう」と力強く説得できたはずである。なのに、彼は、会議を持つどころか、勝手に行動しようとしている。つまり、「仲間意識」が欠落してしまっていた、と考えられるのである。
 だが、バーツは出発間際になって、一番見られてはいけない人物に挙動不審を見咎められてしまう。そう、ケンツだ。実はケンツも、基地の対応のまずさに痺れを切らせていた一人だったのだ。当初は、バーツを引き止める、というより、自分も行くといって聞かなかったのだが、この2人の一騒動が原因で、13人の知るところとなってしまうのである。
 もちろん、バーツが会議を持ちかけなかったおかげで、全員が生き残った、とも考えられるわけで、そういう意味ではいいようにも解釈できる。しかし、会議を持たないで突然行動を起こしたこと自体は疑問が残る。

 Aロディのあの強気は、どこから生まれるのか?
 この回で、一番意気軒昂だったのはロディである。言葉の端々が、かなりきついのである。「この星に残るのはごめんだ」の捨てぜりふは、かなり強烈である。自分の弟に対しても、「自分の思うとおりにしろ」と、これ又突き放したような口調。説得に向かったスコットに対しても、全く取り合わない。逆に言うと、そこまで言い放てるだけの自信があったのか?
 私はあえて、「自信があった」と仮定したい。つまり、もう既に彼は、「軍人はあてに出来ないし、これだけ制空権を敵に握られている以上、自分たちの手で脱出しないといけない」と悟っていた、とするものである。
 では、ロディにここまでの決断をさせた状況は何だったのだろうか?この片鱗は、既に7話で見せている。つまり、軍を最初から信用していない(正確には、あの一件以来信用できなくなった)のである。バーツは、9話/10話あたりで、態度を軍よりに変えてしまったが、ロディは一貫して態度を変更しなかった。
 軍を頼らないとなれば、自分たちだけでやるしかない。だから、脱出しよう、という結論に達するわけだが、このロディの強気には、裏付けるものが何もないのである。ロディには悪いが、強気ではなく、「強がり」に映ってしまうのである。
 なのに、あえて安全策である、軍を頼らなかったのはなぜか?軍に保護を求めれば、確実に、この星から逃れられるはずである。戦闘に巻き込まれる危険性もある、とロディは言っているが、今の状況で、既に巻き込まれている状態だったはずで、その危惧は説得力に欠ける。
 強気に出られる理由は、未だにはっきりしない。

 B無線は切れているはず
 ジワイメルゥ基地からの最後通牒をもらったスコットは、この緊急事態を、バーツたちに報せるべく、無線のマイクを取る。しかし、「電源を切っている」とスコットがつぶやいたように、応答がないままとなってしまった。
 しかし、同じ頃、基地に向かった一行がどのあたりにいたのか、という点は重要になる。つまり、ケイトがジワイメルゥに連絡していた頃と、ぴったり一致するようであれば、電源が入っていない=連絡が付かない ということにはならないからである。
 それでは、そのあたりをいろいろな条件から仮定しつつ、特定していきたい。バーツがアゾレックを出発しようとしている時刻を9時(朝食が終わって、出かけようとしたと仮定)、2派に分かれたり、シミュレートしたりする時間を1時間として、バーツがアゾレックをでた時間を10時と仮定する。その後、スコットはロディを説得するが、これはむなしく終わってしまう。この間約30分とする。ぶつぶつ言いながら管制室に戻るスコット。そこでジワイメルゥからの連絡をもらうわけだ。どんなに多く見積もっても、バーツたちが基地を出発してから1時間後に連絡を取ろうとしたと思われる。
 さて、当のバーツたちは、前線基地の廃墟の前でジワイメルゥへの連絡を取っている。問題はここが何時(基地をでてから何時間後)かと言うことである。まず、前線基地がどの程度、アゾレック基地から離れていたのか、という仮定である。ケイトの、「敵はもう、こんなところまで」を額面通り受け止めると、アゾレックからは100kmと離れていないと考えられる。悪路走行を考えると、ここまで到達するのに2時間程度かかっていると見るのが妥当だろう。
 というわけで、ここに1時間のタイムラグが生じる。つまり、スコットは11時に、ケイトは12時頃に連絡を取ったことになる。とすれば、「無線が切れていた」のは別におかしいことでもないように思われる。又、スコットの方が時間的に早いと言うことも、交信の状況などからも明らかである。この疑問については、解決できたことになる。

 C博士が飛行機で行った距離をトラックで走破しようとしたのか?
 「この目で確かめに行って来る」といって、バーツはジワイメルゥ基地を目指そうとした。しかし、よく考えてもらいたい。ジワイメルゥ基地からアゾレックに戻る途中で襲撃を受けた博士を乗せた飛行機が墜落した場所(バルチカン)は、「砂漠越えで、かなりの距離」(ケイトの発言)で実際、ジープで野宿を含め片道足かけ2日かかっている。
 バルチカンがジワイメルゥとアゾレックのちょうど中間に位置するとして、後1、2日は必要になってくる。なのにバーツは、基地組に出発の際、「飲み水と食いモンがあればいい」と、日帰り的な手荷物を要求している。ということは、ジワイメルゥは、そんなに近いのか?ということになってしまう。最も、バーツにしても、いったんジワイメルゥにいって、状況を確認してから、ステーション組を説得に回ると言う算段があったものと推察される。
 もっと始末が悪いのは、博士が飛行機でジワイメルゥに乗り込んでいることだ。距離が遠く、緊急を要すると判断したから、博士は飛行機でジワイメルゥに向かったのである。近い距離なら、飛行機を使う意味もない。実際、ジワイメルゥからアゾレックへ向かった部隊も輸送トラックではなく、輸送機で赴こうとした事からも、かなりの距離はなれている事がわかる。と考えると、バーツたち、基地に向かおうとした人々は、いったい、どのくらいの距離を走破しようとしたのだろうか?
 実際には、100Km位で済んだ訳だが、もし順当に事が運んでいたら・・・。

 D基地派/第二ステーション派に分かれた人たちの顔ぶれ分析
 これは、やや興味深いデータである。
  基地派・・バーツ/ケンツ/マキ/クレア/ケイト/ペンチ
  ステーション派・・ロディ/フレッド/カチュア/ジミー/マルロ・ルチーナ/シャロン
 ちなみに、この顔ぶれが構成された背景も少し述べておく必要があるだろう。マルロとルチーナは、年かさのものがケンケンガクガクやっているさなかに、蝶を追いかけ、くたびれてへたりこんだところが、ステーション組だったのだ。シャロンは、「この暑いのに、砂埃をかぶりたくないだけ」という、訳の分からない理由で基地組に合流しなかった。こう考えると、第2ステーション側で自発的に決めたのは、この3人をのぞく4人という事が出来る。しかし、ジミーはどうだろうか?カチュアとセットで考えられることもあり、本人が実はどうであったのかはわからずじまいである。
 この中で、キーパーソンは、「フレッド」と考えられる。なぜか?彼は、ペンチのそばにいてあげることを選ばず、自分の意志で、ステーション側を選んだのである。あまりにシビアに考え過ぎなのかもしれないが、この場面で、好き者同士が別れ別れになる状況を誰が予想し得ようか?他人との愛情より、兄弟愛を選んだフレッド。それほどの「究極の選択」だったともいえる。
 実は、後一人、いるのである。そう、スコットである。もし、彼がこの選択をしていたとしたら・・・。私はズバリ、「基地派」にいっていたと思う。慎重派の彼も、軍に頼った方が得策と考えていたと思われる。又、クレアが基地派なのも重要であろう。

 以上、5点について、解析を行ってみた。経過はどうあれ、クルーの団結力がいっそう増したこの回。書かせてしまう内容ではあったが、大きな不整合点も見当たらず、むしろよく描かれているといえる。