徹底解析! 重箱の隅  その3


 第10話でうまく、コンセンサスの取れたクルーたち。しかし、そのわずか数話後にまたしても亀裂が生じてしまう。そして、そのさなか、まさにクルーたちの犠牲になって、ケイトが宇宙の藻屑と消えてしまうのである。
 そこまでにいたる、ストーリーの中で、かなりの疑問点が噴出した。そこで、ここでは、集中的にこの部分を解説/解明していきたいと思う。

 ・ おい、いつ、ジェイナスは反転したんだぁ?(11)
 非常に単純な、それでいておかしな現象が、この11話と12話には多い。後で、鉄骨の話しも出てくるが、実は、それよりも始末が悪いのが、この疑問点である。
 4話で、確か、ジェイナスは第2ステーションに頭から突っ込んだはずである。もう少し正確に言うと、係留ドックに突っ込んでしまったのである。鉄道でたとえるなら、行き止まりの終端駅に、片側にしか運転台のない電車が入ってきたようなものである。
 当然、もしそんな事にでもなれば、電車はバックでしか運転が出来ない。もちろん、両端に運転台があるので、行き止まりの駅に進入したとしても又前進して駅から出発できるのである。ところが、ジェイナスは、電車ではない。軍艦である。当たり前だが左右対称でもなければ、ブリッジが2個あった(メインブリッジ)と言った話しも聞いていない。
 であるにもかかわらず、ジェイナスは、又「前進」していけるような状況になっているのである。ターンテーブルがあったとか言うのなら話しは別だが、もと入った場所に、180度向きを変えて鎮座しているのだから、おかしいと思われても仕方ない。
 今回の疑問点は、物理的に妙だと思われた点だが、この、11話からケイトが亡くなる16話まで、物理的におかしな点がやたら目立つのである。

 ・ 11話時点でなかった鉄骨が12話で生えている(11/12)
 念のため、当該放送回をジックリ見直してみた。11話で、脱出に成功した面々がジェイナスブリッジに到着した時点では、確かに、ブリッジから見えるはずの、2本の鉄骨は見えなかった。実際、もしあれば、その時に気づきそうなものである。
 結論としては、「12話でバイファムの登場を、させるために無理やり作った」状況と言うことが出来るわけで、まったくお粗末極まりない。

 ・ パイロットが決まった背景が全くわからない(12〜)
 正直言って、12話は、無駄な時間稼ぎの回である。鉄骨がなければ、そしてサブコンピュータをケイトが切り離していなければ本当にすんなり出発できたところである。
 それはともかく、またしても疑問点が浮かび上がってしまった。実は、このストーリーの根幹をなすといってもいいくらいの重要項目が浮かび上がったのである。
 そう、「どうしてロディはバイファムに、バーツはネオファムに騎乗することを選んだのか?」ということである。
 12話の中で、鉄骨を除去する手段を考えていた時、ロディが「そうだ、バイファムだ」と口走るシーンがあるのだが、だからといって、ロディがバイファムに乗ることになる前提とするには少し弱い。結局当該シーンの結末は、ロディがバイファムに乗り、マキが宇宙服でロディをサポートする形で、鉄骨の除去は完了した。
 まぁ、主役なのだから、そして、番組タイトルにもなっているのだから、12話になるまで、当該機体が出てこないというのもおかしな話なので、そろそろの場面と考えることは間違いない。しかし、13話では、結局誰が決めたわけでもないのに、ロディとバーツはそれぞれの機体に向かって乗り込み、戦闘している。そしてそれ以後、26話で、ロディとバーツがコンビを組んでトゥランファムに乗り込んだ以外は二人が騎乗するのは同じ機体なのだ。
 これについても、二人の話し合いとかがあればよかったのだが、何の前触れもなしに決まっているところがいただけない。特に、機動兵器の扱いになれていると思われる(4話でああ迄使いこなせるんじゃ、ねぇ)バーツに、性能的に上のバイファムが与えられていてもおかしくないと思うのだが、いかがなものだろうか?

 ・ ケイトは、今まで、どんな研究をしてきたのか?
 第1話の中で、主役になっていく子供たちよりも前に登場した、クレーク博士と彼の助手であるケイト女史。彼らは、新しい植民星として確保した、クレアド星にあった、人口建造物的遺跡の調査を任されていたのである。
 彼らがどこまで研究を進めていたのか、実は、全然分かっていなかった。否、それ以上に、考古学者であったはずのクレークがどうして、この研究に携わらなくてはならなかったのか、という基本的な部分すらわかっていないのである。我々視聴者に提示されているのは、第1話時点で、クレアドには同じ遺跡が5個存在することぐらいである。
 そして戦闘が始まってしまう。クレークは遺跡を自分の研究所があるベルウィックに持っていく事を提案する。そして、ジェイナスに積み込み、第2ステーションまでは何とか運ぶ事が出来た。
 しかし、ここで博士の不慮の死(5)。捜索に向かうが(6)、空しく終る。そして、子供たちの面倒をケイトが見なくてはならなくなってしまったのである。
 ところが、ここで、ケイトの今までの軌跡が図らずも明らかにされてしまうのである。場所は8話。ロディがレーダーサイトのケイトに食事を持ってくるシーン。ケイトは、ロディに、遺跡の事を尋ねる。しかし、『わたしたちの分析では、正体がつかめないの』と、今までの研究自体が全く進んでいない事を暴露してしまう。
 11話で、ケイトは、たまたま遺跡を収納したカーゴに居合わせた、カチュアに写真を見せる。そのとき、カチュアの表情が変わっていく。「以前に見たようだ」というカチュアにケイトの方が色めき立つ。そして12話で、ケイトは、カチュアの母親のものだと言う、カバンの中から偶然遺跡の写真を見つけてしまう。そこには、設置間もない遺跡の周りに植物が生えている様子が映っていた。ここで、初めて、ケイトはクレークが残してくれた資料に目を通すのである。

 さて、かなり前振りが長くなってしまったが、ケイトの研究の軌跡を追ったのには訳がある。「12話で登場した資料は、クレークが消息を絶つ5話以前に作られているものである」と言う事実、「ケイトは、資料の存在を知っていながら、12話になるまで資料に目を通していない」と言う事である。
 確かに、クレークが死んで(行方不明)、ケイトの立場は、彼の助手ではない事くらいは分かっているつもりである。しかし、それでもケイトは遺跡の研究を止めたわけではなかった。事実8話では、記録用ディスクに遺跡の事を吹き込んでいた。であるのならば、師匠でもあり、先達でもあるクレークの資料は、なにをさておいても見るべきである。彼の遺志を継いで研究を続行するのならなおさらである。
 しかし、ケイトは、12話で、まるで初めてのものを見るように、クレークの作った資料を見ている。そして、そこにはなんと、遺跡の及ぼす植物再生機能がすでに論じられていたのである。資料はクレークが作ったものに間違いない(少なくともケイトではない)し、5話以前に作られていた資料であるのなら、ケイトが、ジェイナスに乗り込む前あたりでこの存在を知っていたのかもしれない。もちろん、遺品を整理していて見つけたと言う事も考えられる。少なくとも、ジェイナスを降りる時点で、資料は、クレークの元にあったはずである。すなわち、@もしクレークが資料を持ち出していたとしても、アゾレック基地の遺品整理の段階で発見できているAもしジェイナス内に残っているのならケイトが自室の物品搬入等の際に整理できている のだ。事実、12話で、ケイトは探すことなく、一発でクレークの資料を探し当てている。内容は知らなかったとしても、存在自体は知っていた事になる。
 では、なぜ中身を知らなかったのだろうか?見るチャンスはいくらでもあったはずなのに、である。考えられるのは、ケイト自身が、自分のやり方で研究を進めてきたからではないか、とする意見である。クレークにくっついていた数話ははっきりいって、研究もなにもあったものではなかった。だから、クレークが消息を絶った5・6・7話あたりは、なにも手につかないのはよくわかる。それが急に8話で研究を再開するのである。しかし、それは、自分で「なにもわからない」と口走り、自分より知識のない、年端もいかない子供たちに情報を求める、いってみれば、釈迦力な研究の手法である。しかし、そう考えると、突然、クレークの資料を見たくなった触媒になった、カチュアの持っていた写真の功績は、ケイトにとって余りある褒美だったに違いない。
 しかし、8話のせりふは問題である。「わたしたち・・・」。ケイトがこの資料の内容を知らなかったということは、こんな重大な発見をクレークは独り占めしていたと言うのか?ケイトに知られたくなかった、別の秘密でもあったのだろうか…。
 これ以上深く突き進むと、ケイトたちのやっていた事自体の根幹にかかわりそうなので、ここら辺りでやめにする。唯一わかったこと、それは「本当に博士とその助手という信頼関係が構築されていたかどうか」不明な点である。

 ・ ものしりスコット(12)
 この回、本当に疑問点が多い!実は、このネタも、改めて放送回寸評を読み返して、思い出したものである。
 事の発端は、「航路設定」をペンチとクレアがやり始めようとするところである。ここでいきなりスコットが口を出すのである。「もう少し上のほうに…」とか言っていたと思う。ここでペンチは素人らしい質問。「あら、地球に行くのなら座標は地球でいいんじゃないかしら」。そして、スコットは、薀蓄をすらすらと述べ始めるのである。
 この時期の教育体系そのものが不確定的であるとはいっても、宇宙工学という学問が、15歳(現在で言うところの高校生)レベルまで降りてきているとは考えにくい。そうなると、彼は独学で、こういう学問を修めた、少なくとも知っていたことになる。
 では、その知識は、ベルウィック脱出の時に本当にあったものなのか?彼が超ド級のインテリと言うわけでもなく(インテリっぽいところは見え隠れするが)、まして宇宙に旅に出るとか、軍を志願していたとか言うバックボーンがあるのなら、これだけの知識があっても、不思議はない。だが、宇宙(そら)に出たいとか、そういう発言は一度もなされていない。普通に考えれば、まだ時期的にも尚早だし、不必要なものまで学習するとは思えない。そうなると、「宇宙工学を学んだのは、ベルウィック脱出後」と言う見方が優勢である。
 ところが、これまた、勉強する時間がそれほどないのである。大体、勉強するからには、目的が必要である。その目的とは、「宇宙船を動かす」ためである。しかし、そういう事態に陥ったのは、10話で、アゾレックが全滅してしまったためである。それまで、軍を頼りにしていた彼らにとって、自分たちの手で宇宙船を動かそうなんて、及びもしなかったはずである。つまり、学習と言うアクションは起こしていないはずである。
 10話が勉強のはじめるきっかけだったとしたとしても、まだ疑問は残る。そんな短期間の詰め込みで得た知識が、立て板に水のごとく、すらすらと述べられるものだろうか?それも具体的な数値まで入れて…。もちろん、ここでスコットが裏打ちできないとストーリーが前に進まず、グダグダになってしまう。苦肉の策だったにしては、もう少し書きようもあっただろうに・・・

 ・ サブコンピュータの存在に誰も気づいていない(12)
 このことは、すごく「ヤバイ」ことなのである。つまり、ジェイナスは、どこまで行っても、軍艦なのである。それを子供たちだけで動かそうと考えること自体がヤバイのである。あまつさえ、コンピュータ世代であるはずの彼らが、それぬきで全てが成り立つように考えてしまったことは、脚本ミスだと言っても間違いない。
 ケイトもケイトである。当時のことを振り返ると、「チェックのとき切り離していた」と白状していたが、なぜすぐにつなげようとしなかったのか?まして、子供たちの悲鳴に際して、一緒に混乱しているなど、どう考えてもおかしい。
 誰も状況を把握できなかった、今となっては笑い話だが、もうちょっとしっかりしてくれよ、と言いたくなる。

 ・ 無駄な相手への送信をやった意図は?(13)
 敵機にはじめて遭遇したジェイナス。ケイトは、何を思ったのか、「こちらに交戦する意思のないことを伝える」と見栄を張って、マイクを握る。
 しかし、「これって、本当にあのクレーク博士の助手なの?」と疑いたくなる事象である。
 @相手に地球語が理解できるのか?
 このころになると、地球統一の言語が出来ていても不思議ではない。その意味では、いろいろな人種が乗り合わせているジェイナスの中でコンセンサスがとれているのはまったく問題ない。
 しかし、相手は異星人である。文化も言語もまったく通じない、と考えるのが妥当ではなかろうか?それなのに、地球語で発信している。
 A本当に相手に伝わっていたのか
 ぶっちゃけた話し、このことがもっとも大きい。相手の傍受周波数もわからないのに、送信して、どうなるのだろう?どういう周波数で送ったのかも問題だ。
 B自分たちのおかれた環境がわかっていない
 仮にそれら二つの事がクリアできたとしよう。でも、君たちの乗っているのは、旅客船でも、貨物船でも、漁船でもない。立派な「軍艦」なのだ。その言葉を鵜呑みに出来るだろうか?それに運の悪いことに、ロディたちが外に出てしまっている。「ブラフ」と思うのが筋ではなかろうか?
 どっちにしても、何でこんなことを思ったのか。確かに戦わずに行ければそれに越したことはないが、敵が相手をやすやす通すわけがない。相手が仮に非戦闘員であってもそれを確認するすべがない以上戦闘状態になるのは仕方ないところである。
 いずれは戦う羽目になる13人。早い時期に戦闘に慣れたと考えるべきだろう。
 
 ・ ラレドは、どうやって、地球型小型艇に乗り込んだのか?(14)
 救難信号を受け取ったジェイナスでは、その信号を発している小型艇の乗員の回収に全力を尽くしていた。しかし、実は、彼はククトニアンだったのである。
 さぁ、そこで問題になるのが、ククトニアンの彼・ラレドが、いつ、どこで、この小型艇に乗り込んだのか、と言う事である。
 手始めに、なぜ、彼が乗っていたのが、地球型の小型艇であることがわかったのか、と言うと、16話で、カチュアがジェイナスを降りてしまうときに使ったのが同型の小型艇であった事である。さらに付け加えるなら、小型艇が発した救難信号をジェイナスが救難信号と認識できたことによる。宇宙的に救難信号の周波数が統一されているとは思えないし、そもそも当時、交戦相手はどこの星かも分からない状態だった。
 となると、ここで、妙な点に気付く。当時、ジェイナスは、ベルウィック星を脱出し、地球に向かっていたはずである。ところが、ラレドは、ジェイナスとは別の方向から、やってきているのである。ベルウィック方面軍は、先の戦いで壊滅的な打撃をこうむっていたはずで、タイミング的に考えてもラレドが、それほど長時間宇宙空間を漂っていたとは考えにくい。
 もうひとつの疑問は、「ククトニアンの彼が、どうして地球型の小型艇に乗り込めたのか?」という、重大な点である。まず、彼はククトニアンである。しかも、彼は軍人でもない。ということは、ククト星やその近辺に地球の軍隊が侵攻したという既成事実でもあれば、彼が小型艇を奪ってでもククト星から脱出し、地球に使者として向かおうとしたという、ジェダの言い分も納得できる(40)。ところが、ククト星で大戦闘になったのはこれからずっと後のことである。つまり、ククト星近辺にはこの当時地球軍はいなかったのである。
 こうなってくると矛盾が矛盾を呼んでくるのである。どんな仮定をしても、どこかで覆されてしまうのである。ラレドは、どうしても、地球型小型艇に乗れないのだ。彼は軍人でもないし、小型艇に乗っていたときも軍服ではなかった。だから、戦闘に巻き込まれて挙句に乗ったと言う仮定も崩れる。地球に向かう途中で追手のククト正規軍に追われていたのだから、地球軍とコンタクトが取れた帰り、と言う説も説得力がない。
 とにかく、ラレドの乗ってきた小型艇には、情報がまったくといっていいほどないのである。「バーツ登場の謎」に続く、このストーリー史上の謎の部分として扱えそうである。

 ・ ラレドは脱出の際、いつ銃を手にしたのか?(14)
 ラレドがらみで疑問が噴出すると、どれもがかなりの難題になってしまっているのである。
 ジェイナスに向けて無人偵察機が接近、迎撃に向かっていたロディは、廊下に点々と血の痕を認める。当時、怪我をしているのは、救出され、深手を負っているはずのラレドしかいない。声をかけたロディに、ラレドは銃を突きつけ、脅したのである。
 それでは、当該シーンを見返してみよう。
 アラートサインが鳴り響く船内、慌ててブリッジに駆け寄るクルー一同。当時全員は食堂に鎮座していた。一方、ペンチは、ラレドに傷つけられ、食堂にはいなかった。そして、ケイトといっしょにブリッジに走りこんでくる。
 この間、約5分。その間にロディたちは砲座に向かっていた。ということは、ケイトが病室を離れてから数分後にラレドは病室を脱出、そのとき痛む体を押して服まで着替え、どこからともなく銃を手に入れ、動かない体を引きずるように脱出を企てたのだった。
 その銃だが、短銃であり、ククト製か地球製のものか、判断はつかなかった。しかし、彼が、深手を負った状態で、銃を探すことなど不可能である。ということは、自分が着ていた衣服に隠し持っていたとでも言うのだろうか?!
 もしそうなら、すべて説明がつく。銃を探す時間自体が不要となり、ロディたちに先んじることができるからである。しかし、ここで壁に突き当たる。手術なり手当てをする時点で、ラレドの服は一度脱がされているはずで、銃のような固い物体に気付かないほうがどうかしている。
 ここでまたしても無限ループに入ってしまうのである。彼が銃を探す時間は皆無に等しく、もともと病室に銃のような物騒なものは置いているはずがない。服に仕込んであったとしても脱がされた時に発見されていないほうがおかしい。でも、彼は銃を持っている…。
 「ケイトが渡した」説は余りに説得力がなさ過ぎる。というわけで、謎だらけのラレド氏に、またしても、勲章のように謎がひとつ加わったことになる。


 ・ テープの公開を拒んだのはどうしてか(15)
 ケイトは、前話で、ラレドがしゃべった、遺言となってしまった記録を繰り返し聞いては、思案に暮れていた。彼女は、ラレドが言い残した言葉を、公表していいものかどうか、思い悩んでいたのである。
 わたしは、しかし、この事に注目した。では、本当に、それはケイトが思い悩むほどの内容だったのか?そこで、まずわたしはラレドが一方的にしゃべった、内容のテープを聞き取ってみた。
 @
 これが我々の母星 ククト星です。しかし、人口の増加などにより、我々の周辺の惑星に移住計画を進めてきました。あなた方がクレアド星と呼ぶ星もそのひとつです。はじめに科学者たちが移住実験プロジェクトに取り組みました。だが、そこへ突然地球人が入りこんできたのです。
 調査していたのは軍人ではありません。科学者とその協力者たちです。だが、地球の軍隊は武力でそこを踏みにじったのです。(不明)
 しかし、我々ククトニアンの中にも平和を願うグループがあります。この忌まわしい戦闘を一刻も早く止めさせるよう、あなたからも地球の指導者に呼びかけてほしいのです。
 ここで、ケイトは、こんなことを聞かされても・・・と、頭を抱えるのである。
 そして、クレアが、もっとも、クルーたちを混乱に陥れた内容を偶然耳にしてしまうのである。
 A
 それから、カチュアという娘ですが、彼女は間違いなくククトニアンです。
 (ケイト:まさか…!!あのこの両親はれっきとした地球人です)
 だとしたら、地球人に育てられたのでしょう。彼女はククトニアンに間違いありません。(ケイト:カチュアが…)
 証拠がほしいなら、多くの点があります。(以下略)

 そして、問題が大きくなってから、ケイトはテープの公開を決意する。だが、その内容は、@、Aにもない、我々視聴者にとっても初耳の事ばかりだったのである。

 B
 わたしは、ククトニアンのラレドと言うものです。まず、あの、青い髪の少女の事ですが…(カチュアの事ですか?)
 彼女は間違いなくわがククトニアンです。カチュア…。わたしの推測ですが、彼女の母も移住実験プロジェクトチームの一員だったのでしょう。地球の軍隊によって、ククトニアンの移住実験プロジェクトプランは破壊され、全滅してしまいました。おそらく、その後にやってきた地球人の心有る人に拾われ、地球人として育てられたのでしょう。
 我々は、地球人のベルウィック星移住は黙認しました。しかし、地球人はクレアドにまで手を伸ばしてきたのです。この事件まで、我々ククトニアンは争いを避け、何とか地球人とも話し合っていこうとする考え方でした。しかし、地球の軍隊の不意打ち攻撃から、我々の考え方も変わり始めました。力による侵略には力で戦うほかはない…。ククトニアンの、戦いを主張する勢力が強くなっていきました。
 (その結果、地球とあなたがたの星は交戦状態になったわけですね)
 残念ながら…。しかし、わたしをも含めて、平和を願う勢力も決してないわけではありません。(わが地球でも同じ事ですわ)
 わかります。戦争は結局、我々にとっても、地球の人々にとっても不幸以外にもたらすものはありません。あなたがた地球の人々に、ククトニアンにも平和を望むものがいる事を伝えていただきたい。そして、この不幸な戦争を一刻も早く止めるように…。
 平和こそ、生き残ったもの、又、この船の子供たちのためでもあるのです。
 (よくわかりましたわ)
 それともうひとつ重大な事があります。実はベルウィック星など、植民星から地球へ向かったほとんどの船が、ククトニアンの軍隊によって、囚われています。
 (なんですって!!)
 一応全員無事ではあるのですが、悪魔の星と呼ばれている、ククトの衛星タウトに収容されております。(タウト星...)
 そうです。何とか助けてあげたいのですが...。

 まず、ケイトが思い悩んでいた部分は、この戦争の引き金を引いたのは、異星人側ではなく、地球側であったと言う事である。しかし、この事をこの時点で悩む必要があるのだろうか?確かにこの事自体は衝撃的なことである。しかし、かりにこのことを発表したところで、いまの子供たちにとってはどちらでもいいことである。
 次にカチュアの出生についても、彼女に直接話しかけるなど、「大人の責任」で何とか過ごせる話しである。ところが、ケイトは何のアクションも起こさず、酒におぼれ、結局、話しの大きさに飲まれてしまったのである。
 しかし、なぜ、すぐにテープを公表しなかったのか、は重大な点である。もしわたしがケイトの立場なら、重要案件だけ(両親がタウト星に囚われている事)を公表するか、もしくは全文を聞いてもらって、みんなに判断をゆだねるかのどちらかにすると思うのである。カチュアの件も、まず本人に話して聞かせてから、行動を起こすのが、最良の方法だったと思う。
 いずれにしても、ケイトが、この事を完全に信じ切り、問題の大きさに自分を見失ってしまった事が、以後の人間関係をギクシャクさせ、挙句自分の命を縮める事になってしまうのである。

 

 ・ なぜ、バーツは出撃できなかったのか?
 16話で、カチュアを連れ戻そうとした陣容は、バイファムのロディと、パペットのケイトと言う、実に貧弱な部隊であった。本来であれば、バーツやマキあたりも出撃できるはずで、より多くの部隊で迎撃するべきであった。
 では、その部分を解明してみよう。カチュアを追っていたロディとケイトは追いつき、彼女を確保した。しかし、すでに敵戦闘艦は間近に迫っており、ロディとケイトだけではあまりに手におえなかった。その上、機動兵器が3機出撃してくる。この時点で、ジェイナス側は、援護体制は取ったものの、迎撃体制は取らなかった。バーツも砲座に向かってしまい、ロディとケイトたちの不利な状況はいっそう増幅した。
 しかし、バーツにもともとジェイナスに残るよう言ったのは誰あろう、ロディである。又、「外に出ようか」という提案に「援護で頼む」と言ったのはスコットである。かくして、ロディとケイトはまさしく絶体絶命の危機に直面するのである。
 確かに、軌道修正と言う、一大イベントを間近に控えていた事も影響したが、なぜ、ロディとケイトだけで連れ戻そうとしたのか?又敵機が近くに来ている事をジェイナスは理解していなかったのか?非常に疑問である。また、最も重要なのは、敵機の存在が3機と多かったにもかかわらず、バーツに外に出るように指示しなかったことである。
 もし、バーツが出撃していれば、敵機を発見した時点でも、充分に間に合ったはずで、精度の悪い艦砲射撃に機動兵器のパイロットをまわす事はまさしく、ケイトに引導を渡す結果になってしまったのである。

 ・ ケイトは、本当は死なずにすんだのではないか?
 ケイトが死に至る16話までを見るときに、「これがターニングポイントだな」と思われる部分がいろいろある。
  ・ラレドとの会話
   彼女は、この時点で「知りすぎた」のである。
  ・会話を公表すべきか悩み、苦しむ
   公開したほうがすっきりするはずだった。むしろ、さっきも書いたが、当たり障りのない、それでいて、重要な案件だけ、公開すべきだった。
  ・事が大きくなってから公表
   これがもし、大人同士だったら、「どうしてそんなこと、黙ってたんだ」と言うことになり兼ねない。タイミング的にも最悪。
  ・先頭を切ってカチュアを連れ戻そうとする
   「大人の責任」と見栄を切るケイト。だったら、「大人の責任」で、もっと早くに情報公開すべきでしょう。パペットでの出撃も命取り。
  ・ロディを気遣って、戦場に逆戻り
   これが、彼女の決定的な「致命傷」になった。自分の貧弱な装備を考えるなら、2機を相手にしていても、安全度の高いロディの生存確率ははるかに高い。もう少し言えば、バーツを戦場に送り出せなかった、全員の責任でもある。

 こうやって書いてみると、「やっぱり、ケイトは死ぬべくして死んだ」と言いきれるのだ。特に、テープ公表が、もう少し早ければ、軌道修正も少し早く行われただろうしカチュアがあれほど傷つくような結果にはならなかっただろう。とすればカチュアが飛び出すこともなく、万事うまく行っていたはずである。少なくとも、死期はすこし遅らせることが出来たであろう。
 ラレドという死神に見入られたとしか言いようのない、ケイトの死。やはり、死ぬべくして、死んだ、まるで、自分の師匠の死に様に似ているのは、偶然の一致なのだろうか?

 と言うわけで、ケイトの死までを追ってみた。ここの部分、非常に物理的、化学的ミスが目立ってしまっている(と言うより、都合よく書いてしまったら、矛盾だらけになってしまった)。とはいえ、すんなりうけいれられるというのもすごい話である。