徹底解析! 重箱の隅  その4

 ケイトが亡くなり、クルーたちだけで航行を続けるジェイナス号。だが、彼らの行く手に様々な障害が立ちふさがる。そして、彼らの通り過ぎた後には敵の機動兵器の残骸と、新たなる矛盾点が転がっているのである。
 と言うわけで、16話以後の新たな疑問点についていろいろと述べていこうと思う。

 ・ なぜあった?幼児用の防寒服(18)
 18話で、ペンチに、食事当番の手伝いを承った、マルロとルチーナ。嬉々として手伝いをはじめる彼らが向かったのが、ジェイナスの中の巨大な冷凍庫。食材が全てここに冷凍保管されていたのだった。ここに、なんと、二人は防寒服に手袋と言う、完全防備で作業をはじめるのである。
 もうここまで書くとお分かりだろう。もともと、ジェイナスは客船でもなんでもない。軍艦(外宇宙練習艦と言うのが正式名称)である。つまり、大人しか乗り込まないはずである。それなのに、どうして、子供用の、それも4歳程度が着られるほど小さい防寒服が存在していたのか?全く理解できない。
 もともと搭載しているはずがないので、作ったとしか考えられない。では、誰が作ったのか?おそらく裁縫などに長けている女性陣が大人用のを原材料にして作ったのだろうが、「作る」と言う事は需要、すなわち、マルロたちも冷凍庫に入らなくてはならない状況が出てくると見越しての行動と言う事になる。こんな事を思うだけでもすごいが、マルロたちに冷凍庫のような危険な場所に向かわせることを前提に、年かさの者たちは行動していた事になる。
 いずれにしても、幼児用防寒服は、もともと必要のないジェイナスには本来搭載していないはずの備品である。あった(作った)事は、凄すぎる事である。

 ・ 文明の利器を使わなかった、クレア(19)
 4歳のマルロとルチーナの世話係りと化しているクレア。ところがこの回は、ブリッジで、異変が起こる。敵側が「奇襲」−−ジェイナスと距離をとって、出方を見る−−に出たのだった。かくして、イラチのスコットは、この術中にはまってしまい、チビたちの面倒を見ていたクレアにまでつらく当たってしまう。
 精神的に参っていたクレアは、スコットの何気ない言葉にまで鋭く反応してしまう。そして、おねしょをしたマルロのパジャマを自らの手で洗い始めるのである。
 ここで注意したいのは、どうして、クレアはマルロのパジャマを手洗いしていたのか?という点である。パジャマを早く着せたいと思うのなら、全自動+乾燥機の方が圧倒的に早いはずである。敢えて手洗いしていた理由を探すなら、・パジャマの素材 ・洗濯機の故障 などが思い浮かぶが、これだけの大所帯、洗濯機が壊れていれば大事になっていたはずである。又、子供用のパジャマが手洗いしなくてはいけないような素材と言うのも無理がある。
 もし、手洗いしていなければ、ルチーナが、マルロの体調の異変に気付いて知らせに来たときに邪険に扱う事もなく、すぐに対応できたはずである。また、それ程慌ててパジャマは洗わなくてもよかったのではないか、と言う疑惑も浮かび上がってくる。後半で、マルロが熱が収まり、ベッドから起き出したときに、パジャマを着ていたのだ。つまり、おねしょしたのとは別にもう1枚パジャマがあったのがはっきりしているのだ(洗濯している間、マルロを裸にしておくはずがない)。
 いずれにしても、手洗いするほどの緊急性もなく、又その方が乾燥までの時間にかかる事を考えると、クレアほどの聡明な女性でも舞い上がってしまったと言うのだろうか?
 
 ・ 音声だけでなぜ状況が理解できた?(20)
 敵の中継基地攻撃作戦が、クルーたちの半ば独断で決められ、不機嫌になっていたスコットは、それまでの心労がたたって、ついに発熱、倒れてしまう。
 そして、彼は医務室でしばらく安静することになった。その間、カチュアがなんと、スコットの代役を務めたのである。もちろん、カチュアはあんまり乗り気ではない。そして、クルーたちの作戦は遂行され、基地破壊にまでは何とかこぎつける。
 その殊勲のクルーたちを敵機が襲う。だが、戦術なれしていないカチュアの指示は、まさにチンプンカンプン。そのせいもあってか、表に出ていた誰もが舞い上がってしまっていた。ブリッジがパニックに陥っている模様を音声だけで聞くスコット。「それじゃダメだ!」と言い放って、医務室を飛び出す。
 そして数分後、表に出ていたロディたちの元に届いたのは、落ち着き払った、スコットの声。しかも、状況を瞬時に判断、的確な指示を与えている。かくして、一人の犠牲者もなく、作戦は完璧なまでの幕切れを迎えた。
 まぁ、これほど緊迫する戦闘シーンは、今まで一度もなく、なのに、スコットは、それこそ歴戦の大将のように、各部署にピンポイントな指示を与えている。ここまでのことができるのに、それ程時間がかからない、とでも言うのであろうか?
 以後のスコットに信頼感と艦長としての役割を植えつけることにはなったが、正直言って美談にしすぎな部分である。

 ・ 敵のビーム砲の攻撃の意図は?(20/21)
 まず、このビーム砲がどのあたりから打たれているのか、と言うところから特定していきたい。20話では、明らかにビーム砲は破壊対象である中継基地から発せられている。もちろんジェイナスにダメージを与える目的である事にも疑いの余地はない。そのビーム砲が外れるのは、その当時誰も原因を特定できなかったが、例の遺跡から発生する変な磁気波ではないか、と言う事で推測づけられた。
 ところが、21話で発せられているビーム砲は、どこから飛んでくるのか、まったく不明なのである。その理由は、
 @もしタウト星からであれば、26話以降にもビーム砲は撃たれていてしかるべき
 極端に言えば、回想中の24/25話にも動きがあってもおかしくない。
 A地球軍である確率は限りなく0に近い
 友軍であるかもしれない軍艦に、地球軍が攻撃を仕掛けるとは思えない
 Bタウト星までに、20話で壊した中継基地様の物は存在しない
 存在していれば、クルーたちは破壊に向かうはずだし、22話で突然砲撃もなくなっている
 そこで問題になるのが、22話で登場する地球軍の軍隊である。彼らが、どうにかしたので、ジェイナスに向けた砲撃がやんだのでは、と推定した。ところが、彼らも、20話でクルーたちが壊した基地の事しか言っていない。しかも、「俺たち、実戦もまだなのに」というRVパイロットの話から想像するに、彼らは一度も敵に遭遇、もしくは敵機を撃破した事がないと考えられる。
 となると、異星人側が、むやみな発砲を21話の時点まで続けて、以後、一切しなくなったのにも疑問が生じる。また、同じ星域にローデンたちの軍艦もいたのだから、彼らに向けた砲撃があってもしかるべきなのにそれもない。たしかに遺跡をつんでいると言う既成事実は動かしがたいが、21話まであった不規則攻撃が急にやんだのは、やや疑問に感じる。

 ・ ストックルームの存在を誰も知らなかったのか(21)
 ケンツがはじめて見つけた、購買部。彼のおかげで、22話でスコットが使用する事になる軍服などが調達できる事になるのであるが、21話までの期間、つまり、子供たちだけで運行を余儀なくされた13話からの7話の間に、誰も気づかなかったと言うのは無理がありすぎる。
 もっと言えば、艦長でもあるスコットあたりが艦内の様様な機能やユーティリティースペースについて知っておく必要があったわけで、ケンツが見つけたと言う設定もやや説得力にかける。

 ・ 子供たちだけで艦を運営をしている事を知られまいとしたのはなぜか?(22)
 22話で、地球軍の軍艦を見つけて喜ぶクルーたち。だが、その喜びも、ケンツが発した様々な言葉によって打ち消される。ケンツの言い分はこうである。
 『ジェイナスは練習艦とは言え軍艦である。と言う事は、軍の指揮下の元、運行されているのが当然である。ところが、いま、艦を実際に操作しているのは未成年の我々である。しかも、状況を説明できる大人はだれひとり乗り合わせていない。今この局面で子供しか乗っていない事が軍に知れたら、確実に我々は拿捕され、目的であるタウト星にいけなくなる。』
 ここで、彼らが、あまりに気持ち的にはやっている事にお気づきだろうか?つまり、軍に保護を求めると言う考え方を提示したものが誰一人いないのである。正確に言うと、ケンツがこの考え方を提示させることを拒否したのである。いわく、「軍は上層部の命令の下、行動している。我々がタウト星までの護衛を願い出たとしても、その事は聞き入れられるはずがない」と。
 軍規を知っているケンツならではの意見として、我々にも説得力がある一節である。しかし、ここでの問題点は、「軍に正体を知られる危険」より、「タウト星に13人で乗り込む危険」の方が実は重要であることをクルー全員が見落としている点である。曲がりなりにも相手は「星」である。結果的にはうまく行ったわけだが、この時点で、軍の力は不要/自分たちだけでどうにかしようと試みる と決定付けている部分があまりに短絡的過ぎるのである。
 ケンツの言い分を真に受けた、スコットは、艦長に変装してその場をやり過ごそうとする。だが、その目論みはすぐにばれてしまう。結局無駄足だったと言う事になるのだが、もし、彼らが「13」のように、ありのままをローデンに伝えたとしたら、ローデンの返答は、果たして、どうなっていただろうか?

 ・ おい!もらったもん、どうした?(23)
 23話の冒頭。クルーたちは、前話でコンタクトの取れた地球軍とランデブー、ブリッジは正規の軍人が管理していた事もあって、つかの間の休息を楽しんでいた。
 中には仕事をしていたものもいた。次項で述べるロディたちもだが、クレアとカチュアも仕事をしていた。それは、補給物資の仕分け、特に自分たちがほしがっていた下着などの衣料品だった。
 衣料品と言っているように、この中には、下着だけではなく、衣服も含まれていた。「これはペンチにあげましょう」てな事をクレアも口走っている。にもかかわらず、皆さん承知のように、クルー13人は一度も登場当初の服装を変えたことはない。
 実は、彼らは、下着以外は、全く利用しなかった、罰当たりな面々である事が判明するのである。シャロンにいたっては、「イチゴのパンツ」1枚きりでストーリー中ずっと通した、朴念仁である。最も、クレアたち女性陣がほしがったのは、ミシンであり、下着はもともと自作するつもりであった。又、衣服についても要求したわけではなく下着に付いてきたと見るべきだろう。
 だとしても、「地球の皆さんに感謝しなくちゃ」と言っているくらいなら、一度くらい袖を通してくれてもよさそうなものである。全く、わがままなクルーたちである。

 ・ なぜ、タウト星の資料があったのか?入手先は?(23)
 タウト星襲撃に向けた準備をすることになった、ロディ、バーツ、マキ。3人は、ケイトの部屋でその資料を探していた。「見せてもらった事がある」と答えたのはマキ。実は、ケイトは、一部の人間にはタウト星の存在や、その規模などを知らせている事になる。
 この時点で、疑問が出てくる。「その資料はいったいどこから手に入れたのか?」
 まず、タウト星に両親が囚われている、と言う当時の「最新」情報をもたらしたのは、誰あろう、ラレドである(14)。彼は、ジェイナスのクルーたちの看病とは裏腹に、自滅の道を歩んでしまう。おそらくそのときに、ケイトに託したのであろう。
 それにしても準備がよすぎると考えるのはいけないだろうか?彼については、「事象考察」で詳しく述べているのだが、両親がとらわれていることを知るためには、ラレド自身が情報収集する時間が必要になってくる。最も、軍のスパイである、という仮定がもし真実であるとするなら、その時間は短くてすむ。
 この事が仮にクリアになっても、ラレドの持ってきた情報自体に確証がないと言う事も調べずに、ケイトを含むクルーたちは盲信してしまう。実のところ、彼の情報には、信憑性がまるでない、というより、確認のすべがクルーたちにはなかったのだ。
 そして、次の疑問。「いつのタイミングで見せる事になったのか?」。
 「タウト星の資料を見た」と言う人間がいる以上、その資料が存在していたのは間違いない。ところが、ここもストーリーと重ね合わせると、その「見た」と言うアリバイが成立しないのである。
 資料を受け取ったと思われる14話。その後1回分は、ケイトが酒に自分を見失ってしまったため、一番重要なタウト星の話は15話の後半の数分間しかなされていない。ということは、クルー全員が、自分たちの両親がタウト星にいると確信をもてたのは、15話のラスト数分のことなのである。そしてカチュアが出て行く16話。ここは早くから、ケイトの姿はなかった。とすると、本当に、マキたちが資料を見ていられる時間があったのか。もっと言えば、カチュア問題で艦内がゆれている中、ケイトに、資料を見せてと頼むほうもどうかしている。

 ・ なぜ?!クルーのほうが上のプログラミング能力?!(23)
 この疑問の、素になったフレーズがある。23話ではスタート当時、ブリッジは正規の軍人が管理・運営していた。クルーたちにはつかの間の休息が与えられたのである。ところが、ここで敵襲、ブリッジは再びクルーたちの手にゆだねられる事になった、まさにそのときのフレーズである。発したのはシャロン。
 「あれ?7光秒もずれてるぜ。誰だ、こんなプログラミングしたの・・」
 それでは、話をぐんと元に戻そう。23話当時には2059年になっている。今から約50年後の未来である。このころになると、初等教育でコンピュータが幅を利かせていても何ら疑問点はない。すでに携帯ゲーム端末などで慣れ親しんでいることもあり、むしろ触っていない子供を捜すのが難しいだろう。次にシャロンの年齢。「11になったばっかし」(2)といっていることから、なんとあの器量で中学校には行けないのである。
 と言う事は、彼女がコンピュータに明るいかどうかは別にして、「さわっている」期間はそれ程多くないと言う事は間違いないだろう。ただ、推測の域を出ないが、それほど勉強が好きとは言いがたい言動が多い事も記しておく必要があるだろう。
 対して、正規の軍人は、いろいろな意味でプロフェッショナルである事はいまさら言うまでもない。まして、ジェイナスは、「旧式」(ボロブネとまで言った人も)の練習艦。扱うのであればむしろ新鋭艦よりは楽で、俄仕込みのクルーたちより結果が出る事も当然のはずであった。
 ところが、クルーが席を離していた、わずか1話分で、航路設定の不具合が、よりによってシャロンに発見されると言う体たらくを露呈したのである。百戦錬磨であるはずの正規の軍人たちが犯したこの失態。解析の余地があるであろう。
 プロをしのぐ能力を持っているクルーたち。よく考えると「?」でもある。これについては、事象考察で、よりにもよってシャロンに馬鹿にされた軍人たちをフォローする試みを行っている。

 ・ 23話のエンディングには、どういう意味があるのだろう?(23)
 いつもは、スコットの航海日誌で〆るエンディング。だが23話だけは違っていた。ローデンたちが苦戦をする中、軌道変更プログラムを動かしたジェイナスは、彼らからどんどん離れていく。そして、ロディのナレーションへと続いていくのである。
 しかもこのときの背景が変なのである。クルー全員がうすぼんやりとしたなかで、普段着やドレス姿などで現れては消えていくのである。13人が顔をのぞかせたエンディングは、12話以来。このときはクルーの紹介という部分を含んでいたので、納得のいくところだが、この回はあまりにイメージ映像すぎるのである。

 そこで、仮説を2つ用意した。
 @半年終了時のひとつの区切り
 A半年打ち切り時の最後の顔見世

 @は、1年を念頭に製作されたと考えたときに、23話目はまさに半分の折り返し地点。だから、折り返しにふさわしい終了の仕方と言うものを考えたのではないか、と言う説。Aは、この回で仮に打ち切りになっても、たとえば、ロディのナレーションをそれに添うような形で、取りかえればいいのである。
 それにしても、この回の終わり方だけは、特別とも言える〆方をしているのは間違いない。

 この結論を導き出しているのは、当方が、再放送で1話から連続して、中断もなく完全に収録したものを解析した結果であり、すべての放送が一連で行われていることを「念頭」において書いたものである。ところが、一部の放送局では実際に半年打ち切りが行われており、継続していた局でも枠移動が行われていたことをつい最近知った(金曜19時→土曜夕方5時)。つまり、この半年の区切りに当たるこのエンディングはやはり意味があったのである。また、枠移動も、実際には低視聴率によるものといわれており、よく46話、完走できたものだといまさらながらに思う。