徹底解析! 重箱の隅 その5
物語は、総集編が終り、いよいよ、タウト星に向かい、ククト星に強行着陸、大活躍を遂げる事になって行く。もちろん、感動のボルテージも上がっていくのだが、やはり脚本的に無理なところや、常識的に考えておかしな点が山のように出てきた。
と言うわけで、早速解析に移りたい。
・ジミーの耳は特殊なのか?(26)
・ククト語の翻訳ができるのはなぜか?(19/26)
・エクストラ力線の気まぐれ度合い(26/27/28)
・ジェダのしゃべりがきになるなぁ…(28〜)
・リベラリストはいつから、反撃の機会を狙っていたのか?(28)
・絶対おかしい!!ククトニアン軍人は、兵器マニアか?(28)
・暴動で制圧されるくらいの兵力しか持っていなかったのか?(28)
・ミューラァはどうしてタウト星にいたのか?(29)
・入浴シーンあれこれ(9/21/30)
今回は、どちらかというと、脚本的に熟考すると「変だな」という点が多く見受けられた。
・ジミーの耳は特殊なのか?
この回は、トゥランファム初出撃と言う、エポックな放送回でもあるのだが、タウト星を目前にした、クルーたちの活発な動きも見出せる放送回でもある。
さて、問題のシーンは、クルーたちが、監視物体を追撃しようとしたときに起こった。RV3機で攻撃に向かったクルーたちであったが、別の方角からも監視物体が近づいてきてしまうのである。この引き金になったのが、例の遺跡が出す、「エクストラ力線」だったのである。
ところが、この力線の波長をなんとジミーは、一種の音波として感じられていたのである。「この音…」と、当の本人も言っている。しかし、ほかのクルーには、力線が強くなっている事はインジケーター上ではわかっても、音として聞いたものは誰一人いない。
では、このときの状況をすこし解析してみよう。宇宙空間に出ていたのは、ロディ、バーツ、ケンツ/マキ。ちなみに、この場面、作画ミスが判明している(トゥランファムの機体数字に記載ミス)。砲座にはシャロンとジミー。残りはブリッジにいた。
いっぽう、この力線を一種の音波と考えたときに、余程の低周波、高周波でない限り可聴できる筈であり(ラジオなどの高周波は無理な事はわかっている)、逆を言うと、このエクストラ力線は、可聴域の周波数と言う事も言える。
しかし、ここで問題なのは、ジミーだけが聞こえていると言う点である。同じ条件のシャロンも聞いているはずだし、また、空気の存在している艦内の方が、音の伝播はいいはずである。ところが、艦内の誰からも「音として聞いた」と言うものは出てこなかった。
これらの事から、ジミーの耳は、みんなが聞こえない不可聴域の周波数の音波も聞き取れると言う事が証明されるのである。ガーディアンとして立派に責務を果たした遺跡。だが、冷静に考えると、27話では全くその効力がなかった。気まぐれな効果に振りまわされたクルーたちの苦悩は計り知れない。
・ククト語の翻訳ができるのはなぜか?
実は、19話で、問題にしなければならないねただったのだが、カチュア絡みということで、ここでの採用となった。
19話で、待機作戦を取った敵にじれたロディたちは、出撃を決意する。その戦域に向かう途上で、ロディは、敵の交信を傍受する。それを録音、ブリッジで解析が行われた。結果、例の遺跡を捜していることが知られるところとなったのである(この時点では、あと一つあったはず、などと抽象的ないいまわしに終始していたため、誰もよくわからないまま、終ってしまっていた)。
そして今回。残りのクルーの両親がいると言うタウト星が目前に迫り、すでに育ての両親を失っているカチュアにとって、なにが目的なのかを見失う結果になった。そして、別の部屋で、ククト語を習得しようと試みるのである。
さて、ここからが本題である。まず、ある言語を別の言語に翻訳すると言う作業は、実は莫大な前段階の準備が必要である。今、我々は何の気なしに英和/和英辞典を使っているが、これこそ、先人たちの残した偉業以外のなにものでもない。辞書を作るという作業は、和和辞典と言うべき、広辞苑にしても、その編纂には莫大な時間がかかるのである。
翻って、この状況での翻訳について考えてみよう。まず、翻訳できると言う事は、その元になる言語に対する知識が必要である。知識とは、それが友好的であっても険悪なムードの元であっても、収集できていれば問題ない。ところがこの大前提が覆るのである。
情報を取るタイミングが存在しないのだ。つまり、地球人は、ククト語を実は翻訳できないのだ。
詳しく書いていこう。地球人や軍が、ククトニアンと接触をはじめて持ったのは、12年前のクレアド星襲撃の時である。この時は、当然のことながら敵と認識していたククトニアンを殲滅するような動きに軍がなっていたのは間違いなく、であるがゆえに言語情報などは全く手に入らなかったはずである。
その次がいつか?探してみたが、その次が存在しないのである。であるにもかかわらず、ジェイナスのコンピュータは、ククト語情報をもっていたのである。これは明らかな論理の飛躍である。
その逆はどうだろうか?これも不確定要素ではあるが、かなり難しいのだ。捕虜同然で連れ去られた、ミューラァの母親にしたところで、ほかに地球人がいなかった、と想定されるのだ。言語は立派な文化であり、わずか一人が形成できるものではない。
唯一の可能性といえば、アメリカが打ち出した、「地球外生物に向けたメッセージ」とされる、例のディスクである。しかし、これにしても、「統一言語」が制定されていない状況での録音だったはず。つまり、これを入手できたとしても、2058年までにできていたと思われる、地球共通語の学習には何ら効力を発揮しない。
・エクストラ力線の気まぐれ度合い
26話で、いよいよタウト星に近づきつつあったクルーたち。しかし、衛星の監視物体との交戦を余儀なくされてしまう。この途上、ジェイナス内部に運び込まれていた、クレアド星の遺跡様のものから、「エクストラ力線」なる電磁波が発生し、戦域にまで到達、出撃してきた敵機動兵器は不調を来たし、監視物体までもが軌道を大きく外れ2つが接触。大爆発を起こしてしまう。
この回のラストで、このエクストラ力線が「ガーディアン」ではないかといっていたロディがバーツにそのことを尋ねられ、「今はそういえる」と自信ありげに返答するシーンがある。音云々はともかく、効果は絶大であったはずである。
ところが、27話では、大量に出撃してきた敵機動兵器はほとんど誤作動や戦意喪失をうかがわせる動きはしていない。もちろん、この間エクストラ力線が発生しているといった報告は一切上げられていない。
では、この気まぐれ度合いをどうかんがえれぱいいのだろうか? そもそも26話では、監視物体がグレード3の空域に入ってきたときからでていると思われるのだが、別の監視物体2個目が接近してきたときにエクストラ力線が強度を増していたのである。これは誰かの指示・命令があって強度が増したと考えるのはいささか論理が飛躍している。ということは、この遺跡様のものが自発的に強度を変え、敵機が爆発によって消滅した際に力線も出なくなっていることからしても、まるで戦況を見ているかのように力線のコントロールを出来ていたと考えなくてはならない。
となると、力線の所在がはっきりした、20話以降で、もっともっと効力を出していないとおかしなことになる。特に大戦力が放出された23話などでも同じである。26話「だけ」で敵をかく乱したということそのものが実に具合が悪いことになるのである。
・ジェダのしゃべりが気になるなぁ…
27話で、独房に閉じ込められた、ロディ。下の方から赤ん坊の泣き声がするので、思わず声をかけてしまう。その声に地球語で反応があった。喜ぶロディ。だが、次の瞬間、その喜びは一転して絶望へと変わってしまうのである。
この時、ロディに話しかけたのが、以後クルーたちと絡みまくる、ジェダである。ジェダは続く28話、29話でも登場している。だが…。
どう見ても、28話のロディとのツゥーショットの場面と、29話のトップ会談でのジェダは、全くの別人のようなしゃべりなのである。この当時、自動翻訳機的な物はなく、ジェダがロディに合わせるような形になっているのは仕方ないとしても、わずか数時間の間に地球語が上達するとも思えない。まぁ、そのことも重要だが、ジェダがどこで地球語を、これほど話すまでに熟達していたのかが、むしろ気になるところである。
ジェダの存在は、39話までないので、この時点でのジェダの急速な言語的成長は、謎のまま放置されてしまう。脚本的と言うよりも、キャストがうまく表現できなかったのが最大の原因だろう。
・リベラリストはいつから、反撃の機会を狙っていたのか?
28話で、ロディと密談していたジェダは、こうロディにもらす。
「自分たちはある行動を起こす。その隙に逃げてください」と。
このある行動とは、まさしく、リベラリストたちの暴動である。ロディがカチュアと、まさかの対面を果たしているそのさなかに火蓋は切って落とされたのである。
しかし、タイミングがいいと言ったら言い過ぎだろうか?確かに準備はしていただろうし、ちょうどうまい具合に地球人捕虜も本国の星に移送された直後。そのときにまさにロディたちが闖入してきたのである。
タウト星の警備体制など、不明な点もあるため、「いつから」という点は論点として弱いのだが、「なぜあの時だったのか」という点は、やや納得いかない。
・絶対おかしい!!ククトニアン軍人は、兵器マニアか?
暴動の余勢をかって、取り調べ室から逃走する事には成功するロディとカチュア。だが、ここは非常に書きたい部分である。
がむしゃらに飛び出した彼らは、まるでカーナビを見ているかのように、まっすぐ自分達の乗ってきた乗り物が保管されている場所に到達してしまう。まず、このことが疑問として浮かび上がる。彼らが、どうして、自分たちの機体が、その場所においていることをしっていたのだろうか?取り調べ室から脱出するとき、と言う考え方もできるが、相手はククトニアン。言葉が通じるはずもない。仮に置いてある場所がわかったとしても、迷子にならずに到達できるものだろうか?そもそも、自分たちの機体が残っている、と言う、楽観的な考え方をしていたと言うことも、妙と言えば妙である。
そして、なにより、このストーリー中、ラレドの残したさまざまな疑惑に次ぐ、大疑惑部分が出てくる。「どうして、ククトニアンたちは、兵器を破壊しなかったのか?」
ロディの乗ってきたバイファムは、ククト正規軍にとっても脅威だったはずである。仮にそう思わなくても、おいておく、それも、元通りに組み立てて、いつでも発進できるようにしておくなど、なぜそこまで、こだわっていたのか、全く理解できない。
それにも増して、実はバイファムには種種雑多なチューブ類が通されているのである。敵機の襲来でまだ完全でない動きをしているときの静止画で見てみると、実に20本近くの色とりどりのチューブが、そこかしこにバイファムに通されている。当初補給を念頭に考えていたが、よくよく考えると補給すべきは燃料だけであり、そこまでチューブ類が必要になるとは思えない(しかも、wikiによると、バイファムなどこのときの地球軍のRVの動力は燃料電池であり、補給はほぼ必要ない)。チューブが、機体の基本性能などの測定のために通されていたもの、という考えがもっともらしいのだが、そもそも、技術力は上だと信じてやまないククトニアンが、地球の兵器の性能を図る必要があったのかは定かではない。
そこでバイファムと小型艇が、あの場所に、すぐにでも出られるように鎮座していた、考えられる仮説をいくつか挙げてみた。
@戦利品にするつもり。だからきれいきれいしていた。
A兵器の基本性能を測る目的で再度組み立て。操縦席の離脱が斬新に映った?
B単なる兵器マニアの仕業。
Cこの戦闘を早く終らせたい、軍内部の反乱分子による脱出計画
Dお咎めなしで無罪放免。だから、乗り物もお返しします、という意思表示
もちろん、どれも決め手にかける部分が多い。戦争中に戦利品扱いすることもありえるし、機体の性能を図る必要性に駆られていたからいろいろ測定用のチューブ(配線)を這わしていたとも考えられる。兵器マニアや軍の反乱分子というのは荒唐無稽かもしれないし、敵視していた敵国人の兵器を無罪放免のごとく無償で返すというのはあまり考えにくい。
いずれにしても、この部分は、かなり興味深い考察がいくつも出来る代わりに、決して考察に対する答えも見つからないとんでもないシーンであるということである。
・暴動で制圧されるくらいの兵力しか持っていなかったのか?
見たところ、28話の暴動では、正規軍は50名あまり、リベラリストはその2倍程度の人数の陣容だったと推察される。この部分、残念ながら全て推察、推定の域を出ない。
しかし、圧倒的に軍本体の方が、兵力、火力的にも勝っていたはずである。まして、リベラリストが持っている兵器といったら、せいぜい手投げ弾程度。負ける要素が見当たらないのである。もちろん、戦況が刻一刻と変わる中で、いずれかの時間帯で、勢力図が変わったから、リベラリスト側の勝利に終ったわけで、それがどこなのかが、わかりにくいところである。
ちなみにジェダたちは、途中で機動兵器を奪っている。この時点がそうだとすると、あまりに手薄な警備体制だった、という結論になる。しかし、その程度の陣容で警備していたのなら、地球人と手を組んで解放活動していたほうが、圧倒的人的比率ですぐさま勝利を収めていたと思うのだが…。
・ミューラァはどうしてタウト星にいたのか?
リベラリストの手に落ちたタウト星。画面で見ている限り、わずか数時間で片がついている。しかし、ここで妙な人物に出くわす。
そう、ミューラァである。ずばりいって、彼は、ここにいる必要のない人物なのである。回が進むにつれ、彼の任務と言うものは分かっていくのであるが、まず根本的なところから攻めていこう。
彼の任務、つまり所属は、「第三ククト星師団第二特務別働隊」(34)となっている。ここで言う特務とは、「遺跡を発見し、殲滅もしくは持ち帰る事」である。地球軍の軍艦がそれを積み込み、タウト星に近づいていた事がミューラァの耳に入った、だからタウト星に向かった、と言うのならつじつまは合う。
しかし、もしこの当時、その職務に就いていたとしたら、真っ先にジェイナスを襲うはずである。確かに、途中で、ジェイナスを見ているそぶりも見せているので、任務を遂行しようとした動きがないわけではない。であるにもかかわらず、ミューラァは行動を起こさず、それどころか、ククト星に逃げ帰っている。と言う事は、この時点で、ミューラァが、特務を帯びていたとは考えにくいのである。
ではタウト星の守備隊の中の一兵員だったのか?これも違うと思わざるを得ない。その最大の理由は、「出撃しなかった」ことにある。あれほどの腕前を持っているミューラァが出撃していなかった。これはとりもなおさず、タウト星の指揮下に入っていなかった事を意味する。
特務隊の隊長でもない、タウト星の守備要員でもない。だとしたら、ミューラァの役割は、いったい、何だったのだろうか?
もっともらしい理由を考えるなら、「リベラリストの監視役」か、それに準ずる役割を担っていたのではないか、と思うのである。本国からつれてこられた、リベラリストたち。軍を転覆しようとする彼らの動向は軍にとっても脅威である。だから、「エリート」と言われたミューラァに、白羽の矢が立ったのだろう。ククト星に帰還しようとする際に、ジェダとロディの無線を傍受しているシーンもあることなどから、リベラリストの動きを追う様にククトに戻ったのも、そういう任務を帯びていたと考えるとすんなり受け入れられる。
その後の配属換えで、遺跡の確保を命じられた。だから、「第二」特務隊なのだろう。これであれば、全ての事が一応つじつまが合う。
それにしても、よく生き延びていたものである。あれほどの爆発がありながら、傷一つ負っていない。彼が、暴動の期間中、どこにいたのか、も不明である。
・入浴シーンあれこれ
30話は正直言って、大気圏突入という、ジェイナス一世一代の大仕事が待っていた。しかしその途上、そこそこ仲のよかった兄弟に亀裂が走る。ここを兄は、風呂という場所で融和ムードにもって行こうとした。結果的にはこのシーン自体が家族のぬくもりを想起させてしまい、フレッドの更なる思いを吐露させてしまっている。
というくらいのいいシーンなのだが、彼らは実は「湯船に浸かっている」ということにお気づきだろうか?日本人特有ともいえる、「バスタブに浸かる」スタイルの入浴シーンが他にあるなら、この時代にこういうスタイルが全世界的に受け入れられていると見てもいい。というわけで入浴シーンを引っ張り出してみた。
その結果は意外な事実で彩られることになる。まず9話。もちろんまだベルウィック星時代の話である。食糧倉庫からまんまとソーセージ1本をせしめたケンツが、シャワー音に気づき、不用意に扉を開けてしまう。そこにはシャロンがいたのである。あわてて逃げ出すケンツ。そして21話。RVの整備をし終えたロディ/バーツ/ケンツの3人。シャワーで済ませた2人だったが、なぜかケンツのみ後出しで入ろうとする。「尻尾でも生えているか」というバーツの冗談を真に受けたシャロンとペンチが、風呂場を覗いてしまう。バスタブにどっぷりはまり、ブラシでごしごし洗っているケンツが描かれている。
そう!みたり、みられたりしているのが、「両巨頭」すなわちケンツとシャロンなのである。ただ、入浴シーンが描かれている5人とも、欧米スタイルと考えられる。バスタブに隠れるようにして洗っているケンツも、ユニットバス式で洗っているのだとするとやはり和式と考えるのは少しおかしい。
そして30話である。ロディ・フレッド兄弟は、風呂場のシーンですでに湯船にどっぷり浸かっているところからスタートしている。しかもその中で洗ったりとかはしていない。つまり、日本式というわけである。日本人からみれば、この二人の会話や背景となっている入浴シーンは違和感無く受け入れられるのだが、こと地球人全体にこの生活習慣が根付いていたとは考えにくい。これ以降、入浴シーンは無くなり、水浴びなどをしているところが出てくるくらいで、彼らがリラックスして入浴できていたかどうかは定かではない。