銀河漂流 バイファム概論  事 象 考 察

 第6回   ククト星のレーダー精度を考えてみる

 新規でWEB対応にしようと思っていろいろ見直しや補筆を行っているわけだが、次から次にどうしても書かねばならない事象が出てきてしまう。
 今回は、やはり謎と考えている、「ククト星のレーダー」の性能である。

 まず、このことを述べるきっかけとなったのは、31話〜34話までの間の出来事である。もっと言えば、30話の後半の、大気圏突入時にまでさかのぼる。交戦に時間を取られ個別に大気圏突入をしなくてはならなくなったロディとケンツ/カチュア。彼らと2機のRVは1個のドッキングカーゴに乗り合わせ、大気圏突入を無事に終える。
 ところがここからが疑惑箇所の始まりである。31話前半では、このドッキングカーゴがいち早く敵偵察部隊に発見され、空きになっていたとはいえ砲撃されているのである。タイミングとしては、着地してから数時間後とみるのが正しく、また、なにが載っていたのかわからないが、侵入してきた敵地球艦の機体の一部が落下したから調べに行って来い的な感じにも受け取れる。しかし、このことで、われわれは「ジェイナスも見つかってしまっている」と感じずにはいられない。なんとなれば、所詮ドッキングカーゴは機体の一部であり、ジェイナスはカーゴの数千〜数万倍の体積を持っているからである。カーゴが見つけられてジェイナスを見失うはずがない・・・。一部の深読みしてしまうファンの中には、ジェイナスクルー全員拿捕か?!と考えていたものもいたに違いない。しかし、32話/33話では、拿捕どころか戦闘をしたと言う痕跡もまったくない状態でジェイナスクルーはロディたちと再会するのである。
 それではこの部分のおかしなところを探ってみよう。
 @カーゴを見つけたのは着地から数時間後。しかしジェイナスに関してはその大きさに反比例して数日を経てようやく発見。それも人海戦術的に偶然見つけたに等しい。
 A着地場所は確かに違う。カーゴはレーダーに発見されやすい障害物の少ない砂浜に、ジェイナス本体は山岳地帯に不時着。しかし、不時着する直前に位置を確定させられていても不思議はない。
 Bジェイナス側に準備できている期間が長すぎる。なぜ見つからずに広範囲にわたってエクストラ力線を仕込んだ物体をばら撒けるのか?

 まず、そもそも先に大気圏突入を図っているのはジェイナスである。このとき、ジェイナスの周りにはあまたのククト軍がいた。彼らから、ジェイナスがブラックアウト(大気圏突入)したという報告が地上部隊にあってしかるべきである。またそれを受けた地上部隊も、中空域でジェイナスがどのあたりを航行しているかくらいは読めていて当然である。一方ジェイナスはといえば、ほとんど減速するすべがないまま大気圏突入を終えているはずである。つまり、かなりの衝撃−−地震が起こった程度の大地の揺れ−−を与えているであろうことは想像に難くない。そう。たとえレーダーがうまく機能しなかったとしても、他の物理現象はククト星側でキャッチできていないとおかしいのである。
 にもかかわらず、ジェイナスは最後の最後まで見つからずに済んでいたわけである。その理由として挙げられるのが、エクストラ力線を仕込んだカムフラージュ作戦である。当該シーンを見直してみる。一個にまんまとはまったミューラァは悔しさ紛れにVRCを破壊する。そして、その情報はすぐさまジェイナス側にも伝えられた。状況のよくわからないロディに対してバーツとスコットがカムフラージュの内容を説明する。その際、コンソール上に表示されている座標はなんと20個以上。「また一個減ってやがる」「ジェイナスに着実に近づきつつあるということさ」の言質から考えられることは、かなりの数の準備が可能だったこと、そして何より、「遺跡を探している」という断定的な情報の存在である。
 果たしてクルーたちは、異星人が自分たちの持っている遺跡を探していることをどうやって知ったというのだろうか?ロディ・スコット・バーツの3者会談がそうだとするなら、バーツとスコットはどうしてこのことを知りえたというのだろうか?この部分は全くと言っていいほどわれわれ視聴者には説明されていない。そのおかげでさまざまな「?」が噴出するのである。
 @はじめは一個・・・・
 ククト軍の脅威と化した遺跡。そしてジェイナス内部に鎮座している遺跡はククト星に入ってもその威力を見せ付けていた。しかし、バラマキをしようと思い立つまでは1個。そう!たった一個だったのだ!
 A誰が「ばら撒き作戦」を思いついたのか?
 誰からもご託宣が得られていないこの話題。仕方ないので、こう仮定した。持ち出すべき荷物やデータをピックアップしているときに、偶然19話で飛び込んできた異星人の交信記録が出てきた。そして、ローデンがいみじくも言った「ガーディアン」という言葉と「後ひとつあったはず」に触発されたものと考えられる。もちろん、誰の発案か、は知るすべもない。
 B着地後すぐに準備したわけがない!
 大気圏突入という一大事を終えたジェイナス。誰しもが「次の一手」を考えようとしたときに、このカムフラージュに目を向けていたのが何人いたか?少なくとも着地してすぐにこの作戦に入ろうとは思っていなかったはずで、事実、32話の終盤でもまだばら撒きは続いていた(おかげでバイファムはとどめをさされずにすんだ)。もしミューラァがバイファム掃討に血道をあげず、遺跡をまじめに探していたとしたら、本当にどういう結末になっていたかはわからない。

 このように、カムフラージュ作戦が遂行できたから見つからなかったというよりは、突入時に見つけられていたはずなのにそれができなかったというほうがしっくりくる。そしてそのことはずばり、ククト軍の管制システム/レーダーに何らかの不具合が生じていたことの証でもある。