銀河漂流 バイファム概論  事 象 考 察

 第10回  軍人VS子供たちの能力−−戦闘編

 いまだに考察をやめることができていない筆者。それだけこのアニメーションは、いろいろと問題点もあり、また、考えさせられる作品でもあるということである。
 今回は、やむなくジェイナスのクルーとなり、戦闘をしなくてはならなくなった彼らの「戦闘能力」について考えてみようというものである。

 さて、当初のジェイナスには、とうぜん軍属要員−−一言で言えば「兵隊さん」−−が各部署に配置され、ベルウィック方面から何とか脱出できた民間人300名余りを「護送」すると言う目的が最重要項目であった。ではどのくらいの軍人が当初乗り込んでいた(乗り込む予定)のだろうか?
 これはあくまで当方の「推定」による計算なのだが、戦闘要員は50名程度、艦の運行要員30名、後方支援(医務/その他雑用)に20名は必要だったと思われる。総計約100名。艦長や航海士など3名は乗り込む前に死亡し、「食堂で乗船名簿を作成していた」女性士官2名(2)、3話で大量に出撃している事等から考えれば、この数字、それほど「多めに見積もった数字」でないことがわかる。ちなみに、死亡してしまった艦長のせりふとして、「総員21名しか集まらん始末です」と自嘲気味に第2ステーション指令に報告していて、それを聞いた指令も驚きを隠していなかった。当然少なすぎることに対する驚きなのだが、そのあと、護衛目的などで大量に補充されていることは間違いない。
 3話でのジェイナス対異星人の戦いでは、敵母船も加わり、「生存確率0.29パーセント」という、まさに危急存亡のシーンになってしまっている。つまり、この時点で、異星人側はジェイナスを落とす気満々だったと考えられる。しかし、中尉が敵艦に「特攻」とも言える体当たり攻撃をした事で、以後の宇宙戦は大規模な戦いになっていない。だから「わずか13人/戦闘可能者9名(ケイト死後は8名)」でも何とかククト星までたどり着いたともいえる。

 実は、敵側が「ジェイナスの戦力に合わせたような」戦いぶりになっていることは常々疑問でもあった。どこかで30話程度の大軍が押し寄せていたら確実にジェイナスは撃沈されている。30話は、ククト星上空で交戦しながら、本体は大気圏突入という、敵に優位な状況下であった。敵機数が多かったのだから、出撃せず、大気圏突入を最優先するという選択もあったはずである。しかし、ケンツの無茶もあってジェイナスと分かれることになったわけだが、事ほど左様に、「うまい具合にやり過ごしている」感は否めない。
 という訳で、彼らの「戦績」を一応書いていくことにする。

 4話  敵機1機(ディルファム操縦のバーツ)
 13人のクルーの中での最初の機動兵器の戦果。
 9話  敵機1機(ディルファム操縦のロディ)
 ロディの初戦果は、実は急造の機動兵器部隊に恐れをなした敵機の動揺に乗じた一撃。但し半壊程度だった。
 10話 敵母船1隻(ジープ搭載のミサイル/ロディ・スコット)
 「目の色の変わった」スコットの怒りの一撃が母船をも倒した。事実上「クルー全体」でやっつけたのと同意義だ。
 13話 敵機2機(マキ/シャロン合同で1機+ロディ/バーツで1機)
 宇宙戦初戦果は「でっけー!」の怒鳴り一発、マキのパペット全弾発射とシャロンのビーム砲の一撃。
 パーツはネオファムの左腕を飛ばされながらも「借りは返すぜ」とかっこいいセリフをはいてしっかりお返し。
 16話 敵機3機撃破も、ケイト搭乗のパペット撃墜
 1機はケイトのパペットによる後方への全弾発射。残る2機は、ジェイナス砲座が始末している(誰が打ったかはわからない)。
 実はロディはここに至るまで単独では一機もやっつけていないのである。
 17話 敵機3機(撃破順にロディ/パペットのカチュア/バーツ
 ロディは、実はかなりの死闘を繰り広げた。肉弾戦にまで発展しており、見直すと「そこまでやっていたのか」という印象。
 戦闘のさなか「現状に関する意見」を述べるロディはやや飛躍しているかも・・・。
 19話 敵機1機(バーツ)
 ご存知、「待ち伏せ作戦」を取った敵に対するクルーのアプローチはやぶへびではあったものの、バーツがロディの窮地を救う一撃を放っている。
 20話 敵中継基地1個 敵機1機(画面上はロディ)
 中継基地は、ケンツのニュートロンバズーカで仕留められてはいるものの、その後の両名の操機ぶりはあまりほめられたものではない。プログラム優先にしていることもややマイナスか。いずれにせよ、スコットが復帰してなかったらと思うと冷や汗物の一戦だ。
 23話 敵機1機(砲座のケンツ)+機動兵器で3機(ロディ2 +バーツ1)
 安閑に暮らせていたクルーたちだったが、敵の大型艦の襲来を受ける。新型敵機の前に苦戦する地球軍の助太刀に出た2名。あっという間の3機撃破にローデンも目を丸くする。
 26話 敵機3機(ロディ/バーツ/トゥランファムのマキ・ケンツ組各1
 監視物体のひとつからだけの出撃/しかも3機・・・まあ敵陣営がエクストラ力戦による戦力消失という敵失あればこその戦果とも言えるが、この効果が27/28話で発揮されていないことを誰も論じていないんですが・・・
 27話 敵機5機(バーツ2機/砲塔2機/マキのパペット1機)
 タウト星の外ではこんな感じで結構やっつけている。もちろん、この5機がまともに戦闘できていたのは画面上からも明らかで、エクストラ力線の効果は皆無であったことは間違いない。ちなみにロディの腕一本はカウントしない。
 28話 敵機1機(ロディ1機)
 タウト内部の、反政府勢力の暴動の余勢をかって、自身の乗り物に戻って早速、ロディは守備隊の1機をやっつけている。しかし、17話であわやのところまでロディを追い詰めた機体の登場で緊迫。そこはジェダたち騎乗の機動兵器が退治。
 30話 開始直後砲座のジミーが一機/最大加速時にエンジンの噴射で1機<これは厳密には戦果とは言いにくい>
     大気圏突入直前の戦闘でカチュア/ケンツ、パペットのマキ各1機。ロディも一機撃破

 気をもませてくれましたが、何とか皆さん大気圏突入を完遂。ちなみに、ドッキングカーゴに張り付いた1機もあるが、これも副次的な戦果といえるため、記述するだけにとどめる。

 ククト星到着までの戦果はここまでとなった。
 では31話以降も進める。
 31話 ロディが雑魚2匹撃破・・・電光石火です。
 ミューラァと機動兵器上で初対峙する場面。2対1でミューラァ機が危機一髪になるものの、隙を見逃さず逃走する。この敗退が、ミューラァに、バイファム憎しを印象付けたのは間違いない。
 32話 トゥランファムでフローティングタンク/バイファムが1機/トゥランファムを道連れに1機撃破
 今までの戦闘の中で、2機が2機とも、絶体絶命のピンチに見舞われているのはこの回がはじめてである。事実、ロディは、「逃げ回るのがやっとだった」と述懐している。トゥランファムにしてみても本当に撃沈されていてもおかしくなかった場面があった。
 33話 ネオファムでフローティングタンクと1機/バイファムで1機
 それまでで見つかっても不思議のなかったジェイナスが、突然敵に発見されてしまうことになる。雑魚相手のことゆえ、あっという間の粉砕劇なのだが、実際にはロディに危機的状況が訪れていた。ここはそんなに戦闘結果もたいしたことはない。
 34話 必殺!ロディ1機で試作機+4機を撃破。
 バーツとマキがよろしくやっているさなかの敵襲。変にコンピュータが進化したせいで「コンバット不可能」なんていわれて逃げ惑う2人を尻目にロディは獅子奮迅/一騎当千の活躍ぶり。実はこの4機乗る新鋭機はあまり活躍できていない。
 35話 シャロンのバズーカによる1機+フローティングタンク2機(ロディ)+ロディ3機
 この回、珍しくバーツはいいとこなし。というよりも、ケンツ援護に回ったものの、フローティングタンク+2機で戦力比から苦戦を強いられたりした部分が大きい。それにしてもこの回、よくよく見ると変な描写もかなりある。もう書きませんけど(急峻ながけを下るトラック)
 36話 ロディ1機/バーツとケンツ・カチュアの2機で1機
 橋のシーンで突然の急襲。まあ、ここは今までのいろいろなシーンの中で一番「都合よく」流れたシーンといってもいいだろう。とはいえ、「うまくいかないわけがない」ところがさすがはアニメーションといった面持ちだ。
 37話 駐機中の機動兵器4機+輸送機1機+稼動機動兵器2機+フローティングタンク1機+ミューラァ随伴の応援1機
 以上、すべてロディの戦果である。奇襲だけに待機中の機動兵器を撃破出来たのは大きかった。しかも、捕虜を護衛したトゥランファムは守備隊の車両を撃破(2台)したのみ。おそらく、撃破数で言うなら1話ではここまで最多であるはずである(7機)
 38話 ミューラァ随伴の2機を岩場で(ロディ)/収容所でバーツ/マキ・カチュア1機ずつ
     ケンツのバズーカが1機+流れ弾(落下させてしまったバズーカの弾丸)で、ミューラァの副官乗車の車両
 ククトニアンの捕虜による戦果は含めなかった(機動兵器による1機+子供たちの放ったバズーカによる1機)。マキ・カチュアコンビでの騎乗は今回が初めてであり、戦果があっただけでもよしとせねばならないところだ。
 39話 実はロディの1機だけ。
 本当に後半だけに戦闘シーンがあっただけ。しかも自機+4機で必勝体制を整えたはずのミューラァがよもや友軍に邪魔をされ最後はリベラリストたちに引導を渡される最悪の結果。クルーの戦果はといえばわずかに1機なのは間違いない。
 40話 なんとスコットがリベラリストの砲台車で1機/バーツ1機/マキたち年少組がバズーカで1機
      ロディが戦線に加わり、フローティングタンク2機を先発組と撃破。残数3のため残り2機は誰の戦果か不明。

 リベラリスト側は2機しか護衛についておらず、よって、画面上2機とも消滅している(うち一機は政府軍機動兵器を撃破している)。
結構登場機数と撃破機数の整合性が取れている回が多いのだが、この回は残念ながら1機は不明のままである。
 41話 戦闘はあったが、戦果等まったく不明
 ミューラァが強奪したトラックを追うように、出撃したのは、マキ・バーツのトゥランファムに、なんと、フレッド騎乗のバイファムの2機。実戦経験がまったくない彼が戦場に出てきて、足手まといになっている。撃退は出来たが、誰がやっつけたのかは不明のままだ。
 42話 機動兵器2機はクルーたちが、1機はクレアのバズーカ
 実際、基地を急襲した地球軍のほうが損失は大きく、また、ここでも、5機到着した増援部隊のうち3機の撃破しか認められていない。画面上での計算が合わなくなってくるのは後半になるにしたがって多くなっているのが伺える。
 43話 待機中の8機を壊滅(していると推察)/ロディが1機/バーツ+ロディが別に1機ずつ/退却時にも1機
 まさに電撃作戦。もっとも、戦況が混乱しているため、これ以上の戦果がある可能性は十分ある。特に駐機中の8機に先制を食らわせたトゥランファムの動静がまったく語られていない。いずれにせよこのストーリー中最大撃破数を更新したのは間違いない。
 44話 1次攻撃隊は5機出撃/ロディの2機は確認。2次攻撃隊はミューラァ機+4機/1機のみトゥランファムが撃破
 ミューラァとのつばぜり合いを行った、見所たっぷりの回。雑魚相手ではクルーたちのほうが断然上。とはいえ、「誰が」という部分ではかなりあいまいな描かれ方になっている。なお、リベラリスト機も1機撃破している。
 45話 ロディ1機+バーツの1機
 これが実質最後の戦いになったわけだが、ここでなんと政府軍は20機もの大編隊を出している。今までの出し惜しみはなんだったのか・・・もう少しやっつけているかと思ったが、ようようここまでしか確認できなかった。

 クルーたちの全戦績を、つぶさに見てきたわけだが、特筆すべき回はやはり30話と45話ということになるだろう。戦力比がこの2回だけは、突出している点である。しかも、45話の場合、一連の行動と伺えるものであり、44話でどうしてそれくらいの戦力が出せなかったのか、理解に苦しむのである。五月雨式に5機ずつしか出せなかった(44)わけで、温存していたとするには説得力もない。いずれにせよ、ククト政府軍の攻め方のまずさは十分にうかがえる状況になっていることは間違いない。

 戦果だけをクローズアップすると、実に多くの機動兵器がクルーたちによって消滅させられていることがわかる。あえて総数は記載しないが、プロではなく、まして少年少女にやられる「正規軍」たち。ただ経験をつめばこれだけのことがなせるようになるのか、非常に疑問である。