銀河漂流 バイファム 概論 名ゼリフ/名言集
「ザクとは違うのだよ、ザクとは」「逃げちゃだめだ…」「見ろ!人がごみのようだ」「お前はもう死んでいる」・・・。名作といわれるあまたのアニメーションには、必ずと言っていいほど、名言・名台詞が存在する。アニメの世界を飛び出し、流行語になるものも出てくるなど、影響力のあるせりふすらあるほどである。
さて、当時の「アニメ大賞」的な賞を取ったこの作品。音楽的なセンスもさることながら脚本/演出にかなり注力していた。当方がこのアニメーションを解析しようと思ったのは、あるいは、そういう「光る一手」をどれほど見つけられるか、という部分も大きい。そこで、今まで登場人物が放ってきた、名ゼリフやこの作品ならでは、といえる名言集を集めてみた。
これはすごい!子供たちの名言集
・ひろい
ご存知、13話ではじめて宇宙空間に飛び出したときのロディの嘆息。実は描写にも力が入っていて、操縦桿を握る手がわなわなと震えているのだ。このストーリー中、屈指の脚色であり、他のアニメーションでも、この演出を抜ける作品はおいそれとは出てこないであろう。
・でっけー!
これも13話。敵機が近づくのに射撃を踏ん切れないシャロンを援護するべく、ファイターで出撃するマキ。しかし、その目前には、巨大な敵機!これを認めたときのマキの怒鳴りである。
・さむそう
これまた13話。ラストシーン近くでの発声である。破壊され、漂うだけの敵母船がジェイナスの前を通過する。それを見ながらマキがつぶやく。この回、ある意味マキが影の主役だといってしまってもいいくらいである。
・借りは…返すぜ
これも13話。腕一本もぎ取られたバーツが敵機相手に狙いを定めながら言う一言。かっこいいし、14歳レベルの少年のセリフとは思えない。一歩間違えば死んでいただけに、ネ。
・やつはやっぱり俺たちのリーダーだよ
20話。すべてが収まり、ねぎらいの言葉をロディとバーツにかけるスコット。彼の献身的な「艦長」という職に対する敬意も含まれたひとことといえる。
・バカヤロー!戻ってこーい!
いわずと知れた、最終話の、ケンツの怒鳴りである。ジミーが最後にクルーたちに残したメッセージに真っ先に反応したケンツ。ククトニアンの船を、無駄と知りつつ追いかけるケンツ。顔中涙まみれである。散々悪態をついた後、この怒鳴り。シャロンにしがみつくおまけまであった。
・はやいっ!
31話では、それほど対峙していなかった対ミューラァ戦。32話では、ミューラァの鬼気迫る攻撃が本領を発揮した。打倒・バイファムに燃えるミューラァの騎乗ぶりに反応したロディのせりふである。
・運だけだったな…
9話で、大苦戦の末、敵機を撃退したロディとバーツ。しかし、バーツはあわやという場面まで追い詰められていた。シミュレーターでエキスパートになったつもりで臨んだ実戦の結末。命拾いしたバーツが吐いた一言だ。
・運、かぁ...いや、そんなもんじゃない
同じ運でも、こうも使い方が違うのか、と思える場面である。32話、再会の直前にカチュアの「運がよかったのよ」に呼応したロディの独白。死線を目の当たりにしたロディのつぶやきだけに説得力がありすぎるくらいあるひとことだ。
・デモさ、俺たち軍人じゃないぜ
29話。目指すククト星が目の前にありながら、地球軍からの撤収命令。緊急会議の席上、シャロンが全体をまとめる、名言を吐いた。軍人でない以上、軍の命令に反しても問題ない。まさに、「大人」の決断である。
・目的地は…。地球だ!
12話。向かうべきところをクルー全員と再確認するスコット。アップまで入っての発言となった。最も、この数話後、目的地は、はるかかなたのククト星に変わってしまうことになるのだが。
・そんなもので、自分をごまかしているだけです
15話。ロディとケイトの絡みのシーン。ここのロディの台詞は全部名言、もしくはそれに類する輝きを持っている。何しろ大人のケイトに意見している。酒に逃げているケイトに150Km/h級のストレートで言い切ってしまうロディ。すごくシビアな物言いだ。
・一人だけで重荷を背負い込むことはないんだ
カチュアのことだけで悩んでいたとロディは思っていたようである。その程度のことで彼女が酒におぼれると思っていたのか・・・。ケイトともみあいながらの台詞なのだが、こんなことを中3レベルの子供が発言できるとはすごすぎる。
・これは誰の責任でもない、全部この戦争が悪いんだ
17話での一言。すべてを戦争のせいにすれば事足りる…。そう考えたわけではないだろうが、これも中3程度の少年が、仮に彼が本物の少年兵であったとしてもこんなことを言い放てるかどうか…。ケイトの死がカチュアに責任がないという裏づけとするにはやや論理が飛躍過ぎているのだが・・・。
・あばよ、ボギー!
33話。ジェイナスから離れて自分たちで何でもしなくてはならなくなったクルーたち。その旅立ちのときであり別れのときである。バーツが放った台詞は、ややカッコ付けでもあったが十分感謝の気持ちも入っていた一言となった。
・地球か・・・
5話で地球への帰還がほぼ確定的となったと知らされた直後のバーツの一言。戦火に巻き込まれはしたが地球に帰られる。とりあえず何とかなったと言う嘆息にも聞こえる。
・見捨てる気か?基地にはまだ仲間もいるんだぜ
6話ではじめて語られた「仲間」の文字。バーツが偵察隊と交わした会話は正直軍の対応のクールさを際立たせるものになっただけだった。悔し涙にくれるバーツの直後の「バッキャロー」にすべてが言い尽くされている。
・いられないわ、ここにはやはり・・・。
16話。ククトニアン=敵と思い込んでしまったカチュアの出した結論は下船であった。しかし、どう考えても彼女が艦の中で敵であると認識されていたことは一度だってない。この結論はどうして導き出されたのか?解析が必要である。
・あなただって、半分は地球人の血が流れているんだ...
41話。機動兵器を離れて生身の人間同士の戦いとなったロディとミューラァ。まさに動かしようのないトラウマを攻めるロディ。しかし、正直言って、この場面では、半分理解に苦しむところでもある。
セリフだけじゃない!名場面も結構ある。
セリフとしてはさしたる評価部分はないが、描画や演出に恐ろしく手をかけた部分が多く見られるのもこの作品の特徴である。
・31話
ミューラァ隊との戦闘を終え、野営のシーン。ロディが後ろ手に付いた地面を這う毒虫。刺されてしまうロディ。直後に虫を払うが、毒のせいか、腕がしびれ始める。それをカチュアが懸命に吸い出す。ロディはその姿をただ呆然と見守るだけ。
あらかた終わり、荒い呼吸でロディの胸元に倒れこむカチュア。そのときの「目元のアップ」!!
吸い込まれるように見つめるロディ。ふと我に返るものの、傷口を見つめて、カチュアの後姿を追うロディ。屈指の演出力が遺憾なく発揮されている。
・33話
ジェイナスの元を離れ、ククトでのあてどもない旅に出立する13人。早朝にジェイナスの元を離れるクルーたち。それぞれがジェイナスでの思い出を手繰るかのように思い思いの場所を思い浮かべる。そして、「皆さんの、無事ご帰還を祈っています」というボギーの挨拶に「ありがとう、ボギー」で答えるクルーたち。そして、人気のなくなった、荒れたブリッジが映し出される。寂寥感みなぎる表情を浮かべながら、バーツがしめのせりふを述べる。BGM効果もあって感動のラストシーンでもある。
・38話
ここはラストシーン。たどたどしいながら、地球語で暇を言うククトニアンの子供たち。しかも、一時は敵と認識していた子供たちからプレゼントまでもらい、乗り込んだ輸送機を追いかけるケンツ。それを追うクルーたち。実はこの最後のシーン(手を振り、輸送機を見送る場面)そのままが、最終回のスポンサークレジット後につかわれているのである(もちろん静止画/いわゆるセル画として一枚ものになっているもの)。うまいこと使ってくれたものである。
・45話
敵の砲撃がやまないリベラリストの艦内。めいめいのベッドルームに退避していたクルーたちだったが、ひときわ大きい揺れが、一番上に陣取っていたルチーナを襲い、さっきまで開いてもらっていた誕生会のプレゼントのひとつを落としてしまう。それは、ジミーのくれたギャンザーのしっぽ。幸運のお守りという言葉を信じ、まだゆれるのをいとわず、マルロの制止も振り切って、ベッドの階段を下りてしっぽを握り締めるルチーナ。4歳の少女にこういう演技をさせてしまう危機的状況なのだが、まさにその祈りが通じる結果となった。
・46話(最終回)
全編名場面なのだが、すでに放送回解説にて詳細が述べられているので、ここでは、シーンのみを表現する。
○去り行くククトニアンの船に、叫ぶケンツ/追うクルーたち
○紙飛行機に包まれながら、視界から去っていくククトニアンの船
脇役たちも語っている!
・生存確率 0.29%…
艦を一時的に任されていたクレーク。30分後にはみんないなくなるというスコットの嘆きにシミュレートした結果を見て驚愕の面持ちで語った一言。この微妙な数値が現実感を持たせている。
・ロディ…あなたは素敵よ・・・
死に際して、意識も混乱していたのだろう。また最後に子供に諭されていたということが鮮明に残っていたからだろう。ロディを名指しで語った、ケイトの最後の一言。もう少しきれいな死に方もあってよかったと思うが・・・。
・ふっ、愚かな、今に後悔するさ
隊をはずされたミューラァ。彼の面前で新指揮官の訓示。それに毒づくミューラァ。受け流しきり返す新隊長。その言葉にやや自信ありげに語ったミューラァの独り言。結果的にククト軍は誰もロディ騎乗のバイファムをやっつけられていないわけでして・・・。
・着る物にはこまっとるだろう。
22話。子供たちに占拠されていたジェイナスに乗り込んだローデンが、クルーとして活躍する彼らを少しばかりは認め、乳飲み子同然のマルロ・ルチーナに掛けた一言。とはいえ最終的に軍は彼らを裏切ることになる。
・あのパイロットが子供?まさか…
39話。バイファムを仕留めそこない、捕虜となったミューラァの目の前に、バイファムから降りるロディの姿。それを認めたときの驚愕を持ってみるミューラァの目のアップ。兵士ではないこと/子供というところに驚きの念を隠しきれない表情が印象的だ。
・俺はククトニアンだ。誇りを持ったククトニアンの軍人だ。
41話。ミューラァが、カチュアを守ろうとしたロディに殴りかかろうとしたが、結局それをあきらめ、ハーフということを否定するかのように放ったひとこと。今ククトニアンとして生きている自分を全否定されたロディに対する、決意にも受け取れる。