士官への道


ブート・キャンプが下士官候補生の養成を兼ねた新兵訓練の場であるのに対して、士官候補生には
小隊指揮官過程(Platoon Leader Course)、そして海軍士官学校(Naval Academy)がある。
いずれもブート・キャンプよりはるかに厳しいプログラムである。
 
OCCは一般大卒者ないし海兵下士官に、PLCは一杯大学在学者に対する教育訓練で、
期間は共に10週間である。OCCないしPLCとブーツ・キャンプは、いずれも肉体的鍛練を行うが、
前者二つがリーダーシップを重視する点で異なる。
 
OCCの目的は、士官候補生にストレスを与えて、どのように反応するかを評価し、
選別することにある。ストレスにうまく対処し、リーダーシップ、知性、強固な人格、耐久力、
自発性、共同作業能力を示した者が少尉任官の資格を得る。
ブート・キャンプでは多い時は約四分の一が落第するが、OCCでは毎年40〜60%が落第する。
それらに加えて、海軍士官学校の卒業生の約6分の1(約170人)が海兵隊に入ることが出来る。
こうして毎年約1800人の新しい海兵士官の大半は一般大卒者で占められるのである。
 
士官候補過程(OCC)でのストレスの一つは、時間のやりくりである。候補生は、
達成すべき一連の課題を与えられ、それを推考する時間が決定的に不足する状況に置かれる。
このような状況下で、候補生は何が重要で何が重要でないか、
完全性を目指しながらもどこで妥協しなければならないかを決断せざるを得ない。
第二のストレスは、過酷な肉体訓練である。これは、ブート・キャンプ以上の厳しいものである。
戦闘におけるスタミナと忍耐力の育成である。さらに戦闘状況のシュミレーションによって、
精神的・肉体的にギリギリのストレスが与えられる。リーダーシップ訓練の基本は、
リーダー自身が手本を示すリーダーシップ(leadership by personal example)である。
ブート・キャンプを越える体験を持たなければ、リーダーとフォロアーの間の
強い連帯は生まれないし、真のリーダーシップは発揮できない。
 
OCCとPLCで選抜された者は、基本術科学校(TBS=The basic School)
でさらに23週間に渡りリーダーシップの実践的側面を、
すなわち戦術とコンバット・リーダーシップのスキルの訓練を行う。
作戦命令の受け方、部下に対する命令の仕方、戦術上のさまざまな問題への対処の仕方などである。
そして以下のような職務を経験させる。中隊、小隊、分隊、射撃チームの指揮と
小銃手と重火器射手
(機関銃、分隊支援兵器、対戦車ランチャー、グレネードランチャーなど)の役割などである。
このようなプロセスから、士官候補生に各職務のもつ問題点や潜在能力についての
洞察を体得させる。
 
士官は同時に紳士としての社会的礼儀をわきまえていることを要求される。
TBSでは、そのために、年間9回の中隊会食と9回のレセプションを主催している。
 
TBSの卒業生は、全員さらに専門別に1週間から16ヶ月の教育を受ける。
各士官は、基本的には5つの任務のいずれかにつく。学生、海兵隊の教官、学術部隊の指揮官、
主要海兵隊部隊ないし他軍種部隊の参謀、特別任務(船隊勤務、海軍武官、新兵募集)である。
典型的なキャリア・パターンは、少尉任官後の5−6年は、軍の初級専門学校を終了し、
一連の職務(例えば艦隊付海兵隊ないし本部勤務)を経験する。成績がよければ、
通常任務につき、中尉に昇進する。さらなる専門訓練を終了して、大尉として中隊を指揮する。
10〜12年経つと有望な士官は少佐昇進し、少佐になると大隊ないし航空隊の上級士官になる。
海兵隊の規模からして、階級が上がるごとに空席は少なく、競争は厳しくなる。
 
OCC卒業者は全員一時的職務につき、通常4年間勤務する。
海兵隊を職業としたければ、通常勤務に応募しなければならない。
それ以外は、海兵隊に在籍することは許されない。
職業軍人としての野心を持つ者には、ラインとスタッフの2方向がある。
大尉になって大隊を指揮したい者は、一年間の水陸両用学校に行かなければならない。
連帯の参謀を希望する者は、指揮・参謀課程(Command and Staff College)に行かなければならない。
さらに、中佐、大佐から将官への重要なステップは、
海軍戦争学校(Naval War College)に行くことである。
 
中尉ないし大尉で二度昇進を見送られた者は、海兵隊を去らなければならない。
そして体力を規定範囲内に保たなければならず、
毎年のフィットネス・テストと身体検査に合格していなければならない。
離婚は昇進の機会を傷つけるし、飲酒運転は決定的に軍人としての将来を傷つける。
 
これ以外にも、例外的に優れた尉官や佐官のために、
他軍種の専門学校や大学、他国の軍事専門学校や大学、そして民間の大学や大学院など、
豊富な教育機会が準備されている。このように海兵隊では、海兵隊士官に多様な職務を経験させる。
したがって、彼らは、他の軍種の同等職位に比べてより多くの能力と責任を持たされる。
 

malu
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