「編集者からの手紙」/山中登志子/2002年1月、現代人文社

 8年間の「金曜日」編集者生活で記した手紙を集め、解説したものである。著者は「買ってはいけない」を企画した同誌のエースだけに、同誌が週刊誌というよりミニコミ誌に近い(良くも悪くも)ことが良く分かる一冊となっている。著者と契約書を交わさず出版したために金銭で揉めた「買ってはいけない」の一件はそれを象徴している。
 「第2弾『買ってはいけない』は、わたしの『わがまま本』と言われるなかでつくっています。『ひとりでもつくってやる!』と思っています」京大理学博士の荻野氏に対して出した手紙のなかで、著者はこう書き記しているが、それが195万部という大ヒット。それは「誰もこんなミリオンセラーになると思っていなかったと思います」と企画した著者自身が述べていることからも分かるように、ミリオンセラーを狙うつもりがそもそもなかったという訳だ。一体、何のために本を出すのか、と思ってしまう。その思考の延長線上の結果として第2弾が出ることもなく、読者のニーズ、社会のニーズに応えられなかった。ジャーナリズムという点で重大な機械損失である。
 ニーズがあることがこれほど明らかな形となって現れたにもかかわらず、また広告で成り立つ他の雑誌には絶対にできない企画であるにもかかわらず、昔と変わらないどころか連載も隔週に減らしてしまうところが、いかにもミニコミっぽい。普通の雑誌なら、ニーズのある企画に経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を集中するのが常道である。
 本書で最も目を引いたのは、97年の天皇に関する記事の不掲載をめぐる展開を記した部分だ。天皇制反対で有名な本多勝一氏が社長当時、「侮辱もあってはいけない」「面倒になることを避けたい」などと不掲載を決めたというのは全く面白い。石原慎太郎など敵対視する者に対しては「人間以下」「クズ同然」などと散々、侮辱としかとれない言葉を吐く割に、天皇は聖域だという訳である。むしろ積極的にやるべき雑誌なのに、これには少しガッカリである。
 なお、本書の数ある手紙のなかでは、「『保守的』なお考えをお持ちの両親へ」と題して両親に宛てて送った手紙が一番面白かった。(2002.1)

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 1月にみなさんの連名の要望書が届き、拝見し、わたしはたいへんびっくりしました。正直言ってショックでした。‥‥今回の「週刊文春」の記事掲載のときに、船瀬さんから著者の人権、奴隷以下という話が出てきて、ますますわたしは混乱しています。‥‥このブックレットも、誰もこんなミリオンセラーになると思っていなかったと思います。

 自戒も込めてですが、これから日本も契約社会になっていくと思われます。それはとても大事なことです。この手紙はそのときの思いです。その後、前後しましたが出版契約書をつくりました。印税率も当初と変わっていません。何かが大きく動くとき、あるいはとっさのときにいろんなことが見えてきます。

 1994年、ピューリッツア賞を受賞した南アフリカの報道写真家ケビン・カーターが撮影した「ハゲタカと少女」の写真をめぐっての座談会です。そのとき、はじめて長倉さんにお会いしました。「なぜ、少女を助けなかったのか」で議論を呼んだ写真ですが、ジャーナリズムを考える上でとても大きな問題提起です。のちにケビン・カーターは自殺しました。参考http://homepage.tinet.ie/~manics/MSPedia/Carter.htm
長倉洋海ホームページhttp://www.h-nagakura.net/

 広河隆一ホームページ http://www.hiropress.net/

 第2弾「買ってはいけない」は、わたしの「わがまま本」と言われるなかでつくっています。「ひとりでもつくってやる!」と思っています。そう思えば気楽なものです。

 イラストの件とは、左に日の丸を持った昭和天皇、右にヒトラー。太刀持ちに従えて天皇が五輪マークの上に土俵入りしているカットで、<オリンピックの『お言葉』で先祖還りを世界に宣する元首アキヒト『ファシズムは繰り返す』>のことばが入っていました。このイラストが不掲載になりました。‥‥<11月14日号掲載の「長野五輪は誰のため」C「天皇行事」のオリンピック 象徴天皇は国家元首≠ゥ?(著者・天野恵一さん)が書かれた文章中に載せる予定だったイラスト(貝原浩さん)がボツになりました。>‥‥結局、東京オリンピックの写真に差し替えて、掲載しました。描き直しも依頼していません。ボツになった理由を本多さんから以下のように言われました。1.今の天皇は平和主義者と右翼は言っていてあまり重きを置いていないが、前天皇については右翼も重きを置いている。2.天皇にもプライバシーがある。それを侵害してはいけない。今回はそのケースではないが、侮辱もあってはいけない。今回はその侮辱にあたる。3.今回の企画は、天皇を正面から攻撃したものではない。面倒になることを避けたい。4人の一致した意見とのことです。編集人と発行人の意見に従いましたが、経緯を含めて私なりに異論もあります。‥‥開口一番、本多さんから「変装するなど修羅場でやってきたかが認識不足」と言われました。わたし自身はそうだとしても、「右翼に襲撃されるような仕事を、オマエが自分でやったことがあるのか」は、からだをはって運動をしている天野さんたちや、反天連のメンバーのことを知らずに言った発言なので、これは撤回してほしいなど本多さんともやりあいました。‥‥ふたりからの抗議・要請文の最後には以下のように書かれてあります。<‥‥私たちは今回のボツが『天皇制』タブーの拡大に加担する結果となっていると判断し、イラストをボツにしたことに強く抗議します。そして、問題のイラストと本多社長名で出された文章と、この文章を、まとめて『金曜日』に掲載するよう、要請します。多くの読者に判断してもらいたいからです。‥‥>まったくその通りだと思いましたが、そうはなりませんでした。

 反天皇制運動じゃーなるホームページ http://www02.so-net.ne.jp/hanten/~journal-contents.html

 まず、親の考えている幸せが子どもの幸せだと思われるのはまっぴらごめんです。

 参宮橋アイクリニック五反田ホームページ http://www.asahi-net.or.jp/~jq2k-okym/index.html

http://www.t-yamanaka.com/

t-yamanaka@myad.jp