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記者クラブ維持費 
以下、岩瀬達哉著「新聞が面白くない理由」より引用
 新聞記者たちは取材の相手先である官公庁などから、年間、どれくらいの接待を受けているのだろうか。その実態をできるかぎり正確に把握するため、私は、中央官庁、都道府県庁、地方議会、経済団体など全国800ヶ所の公的団体(一部、空港ビルなどの民間企業も含む)にアンケート調査を実施することにした。アンケート票には、大きく2つの質問項目を設け、ひとつは、各公的機関の費用負担で『新聞』を接待したケースについて具体的な回答を求めた。そして、もうひとつは、飲み食い以外に『新聞』に対して行っている経済的便宜供与の内容について聞いている。この種のアンケート調査は、恐らく、過去に行われたことはなかったのだろう。

 …その巨額な試算経費は、しかし、それでも各種の便宜供与をできる限り低く見積もってのものである。たとえば、机、椅子といった什器備品類は定価の半額で計算。また、クラブ担当職員の給与なども、実際の給与額が記載されていたケースは別にして、試算する場合、勤続年数とは関係なく、一律、各公的機関の初任給で計算している。つまり、勤続10年の職員であっても1年目の職員給与で計算した。家賃にしても、当該公共機関の周辺オフィスビルの賃料(預託金を含む)だけで試算し、通常、家賃の10%〜15%といわれる水道光熱費や管理費等は含んでいない。こうした試算結果は、什器備品類の総額が3億2556万円。クラブ担当職員の人件費や記者室の賃料、提供を受けている電話やファックスの料金などのトータルが107億5203万円となった。つまり総額110億7760万円ものクラブ運営費が税金等で肩代わりされていたわけである。これを全国紙一社あたりで見ると、約5億3000万円という具体的数字となってあらわれてくる(朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の3社平均額)。

 …かりに、このクラブ運営費を新聞各社が、すべて自前で負担したとしても、これは初年度にかかる経費の試算額でしかない。2年目以降も、膨大な経費負担が待っている。翌年からは、什器備品類の費用や賃料に含まれている預託金こそなくなるが、それでも毎年約53億円近くの維持コストが必要となり、1社あたり3億円近い負担は免れない。しかも、アンケートの回収率が66%なのだから、実際にはこの試算額のほぼ1・5倍近い経費負担を強いられることになる。これらの経費を、新聞は、過去一度として自らの負担とすることはなかった。企業体として、当然の必要経費でありながら、その負担を取材の相手先にまかせてきたわけである。