「人生を変える80対20の法則」/リチャード・コッチ/98年、TBSブリタニカ

 結果の80%は、原因の20%から生まれる。従って、常に重要な箇所は20%に過ぎず、それを見極めて集中的に投入することが幸福をもたらす。私はやるべきことを見極めた上でそれを徹底的にやるべきだ、と常に思っていたし、実践してきたつもりだ。高校時代には英語しか勉強しなかったし、大学時代にまともに受けた授業はすべて1人の教授によるものだった。そういった考え方を理論的に説明し、より実用的なノウハウに仕立てたのが本書であり、深い感動と共感を禁じ得ない。80%=20%、カオス理論との関係、シンプル・イズ・ビューティフル、価値あるものは自己実現によってしか生まれない、村理論、世の専門化という普遍的法則、『考える知性』より『感じる知性』のほうが重要、健康を決定的に左右するのは毎日必ず顔を合わせる人々……。次々と述べられる真理は、人生に迷う若き社会人にとって、役立つこと間違いなしである。(98/9)

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「80:20の法則とは、投入、原因、努力のわずかな部分が、産出、結果、報酬の大きな部分をもたらすという法則である。たとえば、あなたが成し遂げる仕事の80%は、費やした時間の20%から生まれる。つまり、費やした時間の80%は、わずか20%の成果しか生まない。これは、一般の通念に反する。投入と産出、原因と結果、努力と報酬の間には、どうにもできない不均衡があり、その不均衡の割合はおおよそ80対20なのである。投入の20%が産出の80%、原因の20%が結果の80%、努力の20%が報酬の80%をもたらす。」

「犯罪の80%を20%の犯罪者が占めている。交通事故の80%を20%のドライバーが占め、離婚件数の80%を20%の人たちが占め(この人たちが結婚と離婚を繰返しているため、離婚率が実体以上に高くなっている)、教育上の資格の80%を20%の人たちが占めている。」

「パレートは19世紀のイギリスにおける所得と資産の分布を調査した。そして、所得と資産が一部の人たちに集中していることを発見した。これ自体は、驚くほどのことではない。パレートはそれに加えて、2つの奇妙な事実に気がついたのだ。1つは、人口に占める比率と、所得・資産に占める比率との間に、一貫して数理的な関係があるという事実である。わずか20%の人たちに資産総額の80%が集中していた場合、机上の計算では、10%の人たちに資産総額の65%が集中し、5%の人たちに資産総額の50%が集中していることになり、調べてみると、実際にそうなっていた。大事なのは、そのパーセンテージではなく、富の分布の不均衡に法則があったということである。」

「IBMは1963年に、コンピューターを使う時間の約80%が、全機能の約20%に集中していることに気がついた。そこでただちに、頻繁に使われる20%の機能が、ユーザーにとって使いやすくなるようにオペレーティング・システムを書換えた。このため、日頃盛んに使うアプリケーションでは、IBMのコンピューターの性能がもっとも高くなり、もっとも高速になった。」

「80対20の法則は、カオス理論が発見した『フィードバック・ループ』とも一致しているし、それによって説明できる。フィードバック・ループとは、最初はごく小さな動きだったものが、次第にその影響力を増していき、最後には予想もできなかった結果をもたらすが、あとで振返ってみれば、なぜそうなったのかを説明できるというものだ。たとえば、マイクはなぜキーンという音を出すのか。『マイクが大きな騒音をとらえると、増幅されてスピーカーから出てくる音を再びマイクがとらえて、だんだん大きくなる音のループが際限なく繰返される』からだ(ジェイムズ・グリック『カオス』)。このフィードバック・ループがなければ、現象の自然な分布は50対50になるはずであり、一定頻度の投入は、それに見合う結果をもたらすはずだ。実際にそうならないのは、正と負のフィードバック・ループがあるからだ。」

「正のフィードバック・ループは多くの分野でみることができる。たとえば、金持ちのところにますますお金が集っていくのは、彼にすぐれた能力があるというだけでなく、富が富を生んでいくからだ。池で飼う金魚にも、同じ現象がみられる。ほぼ同じ大きさの金魚を池に放しても、時間の経過とともに、最初はわずかの体格差がどんどんと広がっていく。泳ぐ力と口の大きさにほんのわずかでも差があれば、少しでもたくさんエサを取れる金魚の身体が大きくなり、それにつれて一段と泳ぐ力がつき、口が大きくなり、ますますたくさんのエサをとれるようになり、その金魚の身体はますます大きくなっていく。」

「カオスの理論では、入力にほんのわずかの違いがあっても、出力に莫大な違いが生じる現象を『初期値に対する鋭敏な依存性』と呼んでいる。…針のある時計が使われ始めたときに、時計の51%が右回りになっていれば、左回りでも一向に不便はなかったとしても、右回りの時計が主流になる。実際、フィレンツェ聖堂の大時計は左回りであり、24の目盛りが刻まれている。その聖堂が建設されたすぐあとに、市当局と時計製造会社が一回り12時間の右回りを標準に定めた。半分以上の時計がそうなっていたからだ。もし、当時の時計の半分以上がフィレンツェ聖堂の時計と同じものであったなら、われわれが今日使っている時計は、針が左回りで、24の目盛りがついていたはずだ。」

「道路の右側を走る車と左側を走る車が50対50、右回りの時計と左回りの時計が50対50という状態が仮にありえたとしても、それは一時的なもので、その均衡は早晩崩れる。そして、ひとたび51対49になると、あとは重力の法則に従うかのように99対1に向って進む。…どんな現象でも、その大半のものは、ごく少数の要因で説明できる。あるいは引き起されるというのが、80対20の法則が教えるところである。結果の80%は、原因の20%から起る。少数が重要で、多数は重要ではない。」(→ロックイン現象)

「結果と産出と報酬は、それを海だそうとした原因と投入と努力のほんの一部から引出されることが多い。従って、原因と結果、投入と産出、努力と報酬の関係は通常、不均衡になる。…たとえば、世界全体のエネルギーの約80%を、世界人口の約15%が消費している。世界中の資産の80%を、世界人口の25%が保有している。」

「わたしは過去の試験問題を調べてみた。すると、問題の少なくとも80%が、その学科に関する20%の知識で十分に答えられることがわかった。従って、知識量がはるかに少ない学生のほうが高得点を取るケースが出てくる。」

「すべての卵を1つの篭に入れてはいけないというのが、従来の投資の鉄則である。それに対し、1つの篭を慎重に選び、その中にすべての卵を入れ、あとは鷹のようにそれを見守るというのが、80対20の投資の鉄則である。」

「あらゆる産業を合わせた利益の80%は、20%の産業が上げている。…ある業界全体の利益の80%は、20%の企業が上げている。…顧客が享受する価値の80%は、企業活動の20%から生まれる。…ある産業が提供しているものの80%は、顧客の利益の20%にしか貢献していない。…ある産業の利益の80%は、顧客の20%から上げている。」

「複雑化のコストがわかると、企業の規模に関する論議は一気に前進する。『スモール・イズ・ビューティフル』なのではない。他の条件がすべて同じだとすれば、『ビック・イズ・ビューティフル』なのである。しかし、そうでなければ、複雑になる分だけ、大きいことには無駄が多くなる。大きいことが『ビューティフル』な場合もある。しかし『シンプル』のほうは、常に『ビューティフル』なのである。」

「単純で標準化されたもののほうが、複雑なものより、はるかに生産性が高く、コスト効率が高い。単純なメッセージほど、人の心をとらえ、深い真実を含んでいる。…製品でも、プロセスでも、市場へのメッセージでも、販売チャンネルでも、設計でも、製造でも、アフターサービスでも、顧客からのフィードバックでも、もっとも単純な20%が何かを、常に考えておく必要がある。」(→コア・コンピタンス経営)

「80対20の法則を思い出せ。80%の収益を占める20%の顧客を絶対に放すな。毎週、日曜日の夜には、その20%に相当する顧客ファイルに目を通し、メモをとり、ご無沙汰している顧客があったら、手紙を書くか、電話をかけろーージンジャー・トランフィオ」

「ほとんどの場合、在庫の80%は販売数量や売上高の20%を占めているに過ぎない。動きが悪い商品の在庫コストは馬鹿にならず、少しくらい売れても儲らない商品も出てくる。」

「期限までにとうてい間に合わないと思えば、80%の成果を上げるために必要な20%は何かを真剣に考える。余分にあるものは、必ず無駄に使われる。時間もそうだ。(マイケル・アール、デイビッド・フィニー『スローン・マネジメント・レビュー』1994年3月22日号)」

「大企業というものは例外なく、報酬を不当に配分しようと組織的な陰謀を企てている。企業規模が大きくなり、複雑になるほどこの陰謀は大がかりになり、また成功する。…多くの社員はコストをはるかに下回る価値しか生み出さない、いわゆる『ぶら下がり』の人たちである。」

「『幸運』とは、よく説明できない成功のことである。幸運の陰にはつねに効率的なメカニズムが働いていて、知らず知らずのうちにものごとがうまく回転していく。その『幸運』を信じることができないと、幸運が幸運を呼ぶ波に乗ることができない。」

「◆均衡の常識を捨てる。20%が80%に等しくなり、80%が20%に等しくなると考える。◆予想外のことを予想する。20%が80%の原因になり、80%が20%の原因になると考える。時間にも、会社にも、市場にも、付合う人にも、取引する相手にも、あらゆるものに貴重な20%があると考える。凡庸な多数の陰に隠れている少数のものに、本当のパワーがあり、価値がある。その20%が何かを常に考えよう。…◆安易な解答、わかりきった現実、頼りになりそうな多数、現在の流れ、通念、常識、……、そういったものをすべて頭から排除する習慣を身につけよう。金属の中で、重いものにろくなものはない。」

「80対20思考は快楽を追及する。人生は楽しむべきものであり、成し遂げることの大半は、興味と楽しさと幸福の希求の副産物であると考える。人生を楽しみたいと思っている人は多いだろうが、幸福につながる簡単なことをやろうとしない人もまた多い。」

「この世に進歩があるか否か。宇宙の歴史、人類の歴史を振返ると、何度か後退を強いられながらも、長い目でみれば進歩してきたのか否か。この問題については、過去3000年もの間、いろいろと論議されてきたが、いまだに結論は出ていない。ヘシオドス(BC700年頃)、プラトン(BC427〜347)、アリストテレス(BC384〜322)、ホラティウス(BC65〜8)、セネカ(BC4頃〜AD65)、アウグスティヌス(354〜430)らはすべて進歩を否定したし、現在生きている哲学者や科学者の中にもそう考えている人は多い。一方、フォントネルやコンドルセなどの17世紀後半から18世紀にかけての啓蒙思想家、ダーウィンやマルクスなどの19世紀の思想家や科学者の大半は、世の中や人間は進歩すると考えた。進歩派のリーダーとも言うべき歴史家のギボン(1737〜94)は、『ローマ帝国衰亡史』の中で…」

「お金とハサミは使いようである。お金の増やし方を知らない人が多いが、80対20の考え方をすると、お金はどんどん貯まるようになる。そして、この世にはお金よりも大切なものがあるとわかってさえいれば、お金はいくらあっても邪魔にならない。」

「自分の幸せを育てていくために、たっぷり時間をとって、じっくり考えようとする人は案外少ない。昇給だとか昇進だとか、幸せに直接は結びつかないものを追求め、さんざん苦労してそれを手に入れた時、とんでもない回り道をしたことに気づく人が多い。幸せはお金では買えないし、お金とはまったく性質が違う。お金は、使わない分は貯金したり投資したりすれば、複利の魔術によって自然に増えていく。しかし幸せの場合、今日使わない幸せが、明日の幸せになるとはかぎらない。」

「プロテスタントの勤労倫理があまりに深く根付いてしまったため、それを捨去るには大変な努力がいる。心理的抵抗を意識的に排除しなくてはいけない。われわれは懸命に働くことに喜びを感じている。喜びを感じていなくても、それがよいことだと思っている。ここに、問題がある。懸命に働くこと、とくに他人のために懸命に働くことは、自分が望んでいるものを手に入れる効率的な方法ではない。…自分が理想とする人物は誰かと考えてみるのがいい。私の場合は、ロナルド・レーガンとウォーレン・バフェットだ。レーガンは大した努力もせずに、B級映画の大根役者から共和党右派の星になり、カリフォルニア州知事になり、そしてアメリカ合衆国の大統領になった。いったい何が、レーガンをそこまで押上げたのか。それは、見栄えのする体躯と顔であり、甘い声と当意即妙のユーモアであり、そして凄腕の選挙参謀の力であり、ディズニーチックな国家観と世界観であった。問題の処理能力はお世辞にも高かったとは言えないし、状況を把握する力は相当怪しいものだったが、アメリカ国民を鼓舞し、共産主義を叩き潰すことにかけては天才的な能力をもっていた。かつて、これほど少ない努力で、これほど多くのことを成し遂げた人物はいない。ウォーレン・バフェットがアメリカ一の大金持になったのは、勤労によってではなく、投資によってである。」

「価値ある仕事をしている人は、仕事を楽しんでいるに決っている。何事にせよ、価値あるものは、自己実現によってしか生まれないからだ。」

「成し遂げる仕事の80%、味わう幸福の80%は、使える時間の20%が与えてくれることが多い。」

「『幸福の島』と『達成の島』の分析を行うと、自分は何がいちばん得意なのか、自分にとって何をやるのがいちばんいいのかがわかる。」

「活動の80%は結果の20%しか生み出さないので、そうした活動はやめるのがいちばんいい。」

「時間の使い方を考える際には、次の2点を自問自答してほしい。◆それは常識から外れているか。◆時間の効用が何倍にも高まるか。」

「お金が増えるほど、増える1ドルあたりの価値が低くなっていくことを想像してほしい。経済用語で言う『貨幣の限界効用の逓減』というやつだ。生活水準が上がり、その水準に慣れてしまえば、とくに幸せは感じなくなる。その生活水準を維持するのに大変な費用がかかり、その費用を賄うために、いやな仕事をたくさんやらなければならない場合は、幸せどころではなくなる。」

「◆これまで、多くの人から拍手喝采を浴びたものは何か。自分がかちえた称賛の80%につながった仕事や遊びの20%とは何か。それからどれだけ深い満足を味わったか。◆過去を振返って、自分にいちばん合った仕事の形態は何だったか。呼吸がぴったり合ったパートナーは誰だったか。自分をいちばんよく理解してくれたお客さんは誰だったか。…大した努力もせずに、驚くほどうまくいったことはなかったか、思い出してみよう。…◆これができたら最高にうれしいと思うことは何か。自分には簡単にできるが、他人には簡単にできないことは何か。競争相手が100人いるとしたら、そのうち80人が費やす時間の20%で、自分にはどれだけのことができるか。どうすれば自分は上位20人の中に入れるか。」

「偉い先生方は、難しいことに挑戦しろと言う。しかし、昔の人たちが我慢して苦い肝油を飲まなければならなかったのは、カプセルが発明されていなかったからにすぎない。」

「まず、大切だと思う人の名前を20人書出し、重要度の順位をつけてみる。ここで『重要な関係』というのは、自分の人生を大きく左右する関係、自分が何者であるか、何者になれるかを考える際に、大きな助けになる関係を言う。…次に、持ち点を100点とし、重要度に応じて、点数を割振ってみよう。たとえば、1位の人が2位以下の19人をすべて合わせたのとまったく重要度が同じだとすれば、1位の人に50点をつける。…だいたい次のようなパターンになるはずだ。上位4人(20%)に得点が集中する(たぶん80点前後が集中する)。…次に、1人ひとりについて、いっしょにどれだけの時間を過しているか考えてみる。…『関係の価値』の80%を占める少数の大切な人と過す時間が、全体の時間の80%にとうてい及ばないことがわかるに違いない。」

「人類学者によれば、確立しうる良好で重要な人間関係には限りがある。どんな社会でも、子供の頃の親友は2人、大人になってからの親友も2人、心から信頼できる医者の数も2人というのが共通したパターンのようだ。だいたい、好きな人が2人できると、あとの人のことはどうでもよくなる。…自分にとってほんとうに大切な人の数というのは、国(地域)や文化にかかわらず、驚くほど似通っている。この観察から生まれてきたのが『村理論』である。アフリカのある村では、数百メートル以内の人間関係はすべて、短期間のうちに形成される場合がほとんどだ。これは地球全体、人類全体について言えることではないだろうか。人間は誰しも頭の中に村を持っていて、定員がいっぱいになると、それ以上村人を増やさないーーこれが村理論である。子供の頃からあまりに多くの経験をし、たくさんの人と関係を結びすぎると、関係を深めていくキャパシティを子供のときに使いきってしまう、と人類学者は指摘する。」

「強い絆で結ばれる条件は5つある。気が合うこと、尊敬し合っていること、経験を共有していること、ギブ・アンド・テイクの関係にあること、信頼できることーーの5つである。」

「『将校には4つのタイプがある。第一に、怠惰で無能なタイプ。これは、放っておいても害にならない。…第2に、勤勉で有能なタイプ。このタイプは、どんなに細かいことでもきちんと分析する優秀な参謀になる。第3に、勤勉で無能なタイプ。このタイプがいちばん始末に負えないので、即座に除隊を命じなければならない。第4に、有能で怠惰なタイプ。このタイプを最高の位につけるのがいい。』ーーフォン・マンシュタイン将軍『ドイツ将校団について』」

「人気と報酬にも同じことが言える。小説のタイトルの20%以下で、小説全体の販売部数の80%以上を占めている。CDでも、コンサートでも、映画でも、ビジネス書でも、話は同じだ。俳優やTVタレントやスポーツ選手でもそうだ。ゴルフの賞金の80%を、20%のゴルファーたかっさらっていく。競馬の賞金の80%が、20%の馬主、調教師の懐に入る。」

「専門化はこの世の深遠な法則、普遍的な法則の1つである。生命自体がそうして進化してきた。」

「まずは興味をもっている分野、楽しいと思う分野を選ぶべきだ。情熱を傾けられない分野では、第一人者になれる見込みはない。これは、それほど難しいことではない。誰だって夢中になれることが、1つくらいはあるはずだ。それがないとしたら、生きているという実感はないはずだ。そして今日では、趣味でも遊びでも、仕事にできないものはほとんどない。」

「好きなことを仕事にできるかどうかのカギを握っているのは知識だ。その分野については、ほかの誰よりも豊富な知識がなければならない。その知識が十分にあれば、あとは、どうやってそれを売込むか、どうやって市場をつくるか、どうやって顧客を確保するかという問題になる。普通の人よりも少しは知っているという程度ではダメだ。少なくとも限られた分野では、誰よりも知識を持っていなくてはいけない。その分野については自分がいちばんよく知っていると確信できるまで、勉強を怠ってはいけない。自分がいちばんよく知っていると自信をもてるようになったあとでも、好奇心を失わず、新しいことを貪欲に吸収して、リードを広げていかなければならない。誰にも負けない知識を蓄えるまで、あまい夢をみてはいけない。」

「あなたの知識にお金を払ってもいいと思っている人たちが市場である。あなたの仕事をもっとも高く評価してくれる人が、核になる顧客である。市場という競技場に出掛ける前に、自分の知識をどうやって売るかを考えなければいけない。…他人に雇われるにせよ、他人を雇うにせよ、零細企業を経営するにせよ、大企業を経営するにせよ、成功のカギを握っているのは、核となる顧客である。」

「ポイントは、できる限り、よその会社を利用することだ。会社組織をできる限り簡素化し、競争相手より何倍も優れている分野に特化する。」

「『すべて持てる者は、与えられていよいよ豊かならん。されど持たざる者は、持てる者をも取られるべし。』ーーマタイ伝、第25章」

「一般に、株式市場の平均PERが17倍を超えたら、危険信号が点ったと考えていい。このときに多額の投資をしてはいけない。PERが12倍以下なら『買い』信号であり、10倍以下なら迷わず『買い』である。新聞の株式欄をみれば、市場の平均PERが毎日掲載されている。」

「幸福に直結する時間を増やし、それ以外の時間を減らす。もっと幸福になる一番の近道は、不幸な状態をなくすことだ。それは、それほど難しいことではない。」

「幸せになるには、『考える知性』よりも『感じる知性』のほうがはるかに重要だ。にもかかわらず、われわれの社会は『感じる知性』の育成に重きを置いていない。ゴールマンは『EQー心の知能指数』の中でこう書いている。『IQが高いからといって富や名声や幸せを得られる保証はないのに、学校も社会も学力ばかりに注目して、人生を左右するもう一方の大切な資質、すなわちEQには目を向けない。』」

「心理学者によれば、幸福感というものはすべて、自分に対する評価と関係しているという。幸福になるには、自信が欠かせない。」

「オハイオ州立大学の心理学者ジョン・カシオッポはこう述べている。『健康を決定的に左右するのは、生活におけるもっとも重要な関係、毎日必ず顔を合わせる人々である。そして、その関係が重要であればあるほど、健康を左右する力も大きくなる。』」

「誰にだって、避けたい場所があるはずだ。それをいますぐ書出し、どうすればそれを避けられるか、その方法をいますぐ書出してみよう。」

「私が実践している7つの習慣は、次のとおりである。@運動をする。A頭の体操をする。Bこころを刺激する。C他人に親切にする。D友人と楽しいひとときを過す。E自分をもてなす。F自分を祝福する。」

「幸福な一日を送るのに欠かせないのが、運動である。汗を流したあとは、いつも気持ちがいい(汗を流している最中は、そうでもないが)。身体を動かすとエンドルフィンが出るからではないだろうか。このホルモンには抗鬱作用があり、気分をよくする麻薬に似た効果がある。よって、毎日運動する習慣をもつことが大事だ。」

「幸福な人生への近道が7つある。@支配力を最大化する。A達成可能な目標を立てる。Bものごとを柔軟に考える。Cすばらしいパートナーをみつける。D幸せに暮している友人をもつ。E仕事上の強い味方を持つ。F理想とするライフスタイルを目指す。」

「第一の近道は、自分の人生に対する支配力を最大化することだ。自分の思い通りにできないことがたくさんあると、不満がたまるし、将来が不安になる。私は、どんなに遠回りになっても、知らない道より、よく知っている道を選んで運転している。…官僚的な組織で働いていると無力感を覚えるのは、自分の意志で何も決められないからだ。仕事の時間や日程を自分で決められる自営業者やフリーランサーのほうが、会社や上司の言うがままに働いている人より幸せなのである。」