金持ち父さん 貧乏父さん」/ロバート・キヨサキ、シャロン・レクター/2000年11月、筑摩書房

 社会人を経験して中間管理職になりつつある時に読むと実感がある本。とてもタイムリーでためになった。特に、金持ち父さんの言葉として語られている残酷な人生。「夢の実現に向かって努力することもなく恐怖におびえながら一生を送る、それこそ残酷なことだ」「給料の額によって決められた人生なんて、本当の人生じゃない。仕事につけば安定した人生が送れるなどと考えるのは、自分自身をだましているのも同然だ」。その通りだと思った。
 「従業員は首にならない程度に一生懸命働き、経営者は従業員が辞めない程度に給料を与える」ということを会社勤めをしていて実感する。私は、決して手に入らないニンジンを追い掛ける馬のような人生だけは歩まないようにしたいと本書を読んで誓った。ラットレーサーから抜け出し、早期にファストトラッカーにならねばならない。
 そのためにも、ファイナンシャル・インテリジェンス、ファイナンシャル・リテラシー、ファイナンシャルIQといったものを意識して毎日を送らねばならないし、「自分自身に正直になり、人と違ったことをするのをためらわない」ことが重要だ。「現実にはほとんどの場合、頭がいい人よりも『度胸のある』人のほうが成功への道を先へ進んでいく」のだから。(2003年2月)

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 どちらの父も教育と学習の持つ力に大きな敬意を払っていたが、学習すべき対象となると意見が大きく違っていた。一方の父は私に、学校で一生懸命勉強し、いい大学を卒業していい仕事につき、できるだけ多くのおカネを稼ぐために働くようにと言った。この父は私が弁護士や会計士などの専門的な職業につくか、MBAをとるために大学院に進むことを臨んでいた。もう一方の父は金持ちになるために学ぶ、つまり、お金がどのように動くかを理解し、お金のために働くのではなくお金を自分のために働かせるにはどうしたらよいかを学ぶことを奨励した。「私はお金のために働いているわけじゃない!」この父はよくこう言っていた。「お金が私のために働いているのだ!」9歳のとき、私はお金に関しては金持ち父さんの言うことを聞こうと心に決めた。

 「…人間には2種類ある。1つは人生につつきまわされても、ただそのままにしておく人たち。もう1つは、怒ってつつきかえす人だ。でも多くの人は、つつき返すときに相手を間違える。上司や仕事そのもの、あるいはだんなさんや奥さんに向かってつつき返すんだ。みんな人生が自分をつついているとは知らないからなんだな」

 「そうだとも!まず政府が取り分をとるんだ」
 「どういうふうにして?」
 「税金だよ。お金を稼ぐとかならず税金をとられる。お金を使ったときにも税金だ。お金を貯めても税金。死んでも税金だ」
 「なぜみんな政府にそんなことをさせておくんですか?」
「お金をたくさん持っている人間はそうはしない」金持ち父さんはにやりとして言った。「おとなしく税金を払っているのは中流以下の人だ。たしかに私の方がきみのお父さんより稼いでいるけれど、きみのお父さんのほうが税金をたくさん払っているんだよ」

「…たいていの人は恐怖や欲望といった感情がいったいどこへ自分を連れて行こうとしているのかほとんど考えもせずに、ただ感情に突き動かされるまま高い給料、昇給、安定した仕事を求めて一生を過ごす。それは、鼻先にニンジンをぶらさげられた馬が、どこへ行くのか知りもせずに、重たい荷物を引いて走り続けるのと変わりがない。馬をあやつる人間は、馬を自分の望む方向に行かせることができるかも知れないが、馬自身は決して手に入らないニンジンを追いかけ続けるだけだ。明日になってもまた新しいニンジンを目の前にぶらさげられるだけなんだ」

 「夢の実現に向かって努力することもなく恐怖におびえながら一生を送る、それこそ残酷なことだ。お金があればモノを買うことができてしあわせになれるだろうと思いながらお金のために働き続ける、これも残酷なことだ。月末に請求書の支払いができるかどうか心配で真夜中に飛び起きるなんてのは最悪だ。給料の額によって決められた人生なんて、本当の人生じゃない。仕事につけば安定した人生が送れるなどと考えるのは、自分自身をだましているのも同然だ。本当に残酷なのはいま言ったような生き方だ。できることならきみたちにはそんな罠にはまってほしくない。」

 「会計学」が世界で最も退屈な科目だと思っている人は多いだろう。おまけにわかりにくさも天下一品だ。だが、金持ちになりたいと思ったら、長い目で見てこれほど役に立つ学問はない。

 まず大切なのは、資産と負債の違いを知り、資産を買わなければならないということだ。金持ちになりたい人が知っておくべきことはこれにつきると言ってもいい。いわば金持ちになるための鉄則だ。

 金持ち父さんが2人の少年にした説明は簡単だった。「資産はきみたちのポケットにお金を入れてくれる。」これほど簡単で役に立つ定義はない。
 資産は私のポケットにお金を入れてくれる
 負債は私のポケットからお金をとっていく
 知らなくてはいけないことは本当にこれだけなのだ。金持ちになりたいなら、ただ「資産を買うこと」に生涯を捧げればいい。中流以下にとどまっていたい人は負債を買えばいい。 
 
 マイクの父親は私たちによく次のように言っていた。「頭のいい人は自分より頭のいい人を雇う」。
 私たちは次第に、金持ち父さんがなぜ「学校は雇い主としてではなく、雇われる側の人間として優秀な人間を育てるための場所だ」と言ったのか、その理由を理解し始めた。

 会社に勤めていて持ち家を持っている人が「働いている」という場合、それは簡単にいうと次の3つのことを意味している。
1.他人のために働く。
  たいていの人は会社に勤めて給料を貰う。こういう人はその会社のオーナーあるいは株主を金持ちにするために働いている。あなたの努力と成功は、結局はオーナーの成功と引退後の生活を助けるだけだ。

2.政府のために働く。
 政府はあなたの給料から分け前を差し引く。だから、給料の全額をあなたは拝むことすらできない。一生懸命に働けば働くほど、税金を多く払わなければならない。たいていの人は年に5ヶ月は政府のため、税金を払うためだけに働いている。

3.銀行のために働く。
 税金を引かれたあとの支出で一番大きいのは、たいていの場合、住宅ローンの返済とクレジットカードの支払いだ。

 一生懸命働くだけではだめだというのは、増えた収入のうちの大部分がいまあげたような仕組みで他人のふところに入ってしまうからだ。一生懸命働いたらその努力した分がそのまま自分や自分の家族の利益になるための方法を学ぶ必要があるのはこのためだ。

 …バックミンスター・フラーという人からの受け売りだ。フラーのことは変人と呼ぶ人もいれば、天才だという人もいる。1961年、フラーはジオデシックドームと名づけた建築物にかんする特許を申請して、建築家たちのあいだに物議をかもしだした。その申請書の中で、彼は富について書いている。…フラーの考えによると、富というのはあと何日間その人が生き残ることができるか、つまり、今日仕事をやめたとして、あとどれくらい生きていけるか、その能力を指す。

 高い教育を受けた私の実の父はいつも、安定した会社でいい仕事を見つけるようにと私に言い聞かせた。父は、会社でこつこつ働き、昇進の階段を一段ずつのぼっていくことがどんなにいいことか話してくれた。雇い主からの給料だけに頼っているのは、ミルクを搾り取られるのをおとなしく待っている雌牛になるようなものだということが父にはわかっていなかった。貧乏父さんのアドバイスを私から聞いた金持ち父さんはにやりとして、「会社そのものを自分で持てばいいのに」とだけ言った。

 人に教えるようになってさらに次のようなことに気付いた。それは、個人の才能の開花を邪魔する最大の要因が、過度の「恐怖心」と「自信のなさ」にあるということだ。答えはわかっているのに行動する勇気がない生徒を見ると、私は悲しくなる。現実にはほとんどの場合、頭がいい人よりも「度胸のある」人のほうが成功への道を先へ進んでいく。

 金持ち父さんはまだ子どもだったマイクと私に、いつも繰り返し「お金は実際には存在しない」と言っていた。…金持ち父さんは「中流以下の人はお金のために働き、金持ちは自分のためにお金を働かせる。お金が実際に存在すると思う気持ちが強ければ強いほど、お金のために一生懸命に働く。お金は実際には存在しないものだとわかれば、速く金持ちになれる」とよく言っていた。「じゃあ、お金ってなに?」…「『これがお金だ』ってみんなが同意した決めたものだ」金持ち父さんの答えはいつもこれだけだった。」

 「ファイナンシャル・インテリジェンス」を形作る4つの主な専門知識をあげておく。
1.会計力…ファイナンシャル・リテラシー(お金にかんする読み書き能力)。数字を読む力。
2.投資力…投資(お金がお金を作り出す科学)を理解し、戦略を立てる力。
3.市場の理解力…需要と供給の関係を理解し、チャンスをつかむ力。
4.法律力…会計や会社にかんする法律、国や自治体の法律に精通していること。合法的にゲームをするのが一番だ。

 お金に関する私の哲学の基本は、資産欄に種をまくことだ。これは、お金を作るための「公式」と言ってもいい。はじめは少ない額で種をまく。何粒かの種は育つが、育たない種もある。 

 大きなチャンスは目に見えない。頭を使って感じ取るものだ。
 
 私が現在の学校教育がばかげていると思う理由はここにある。学校では、まちがえるのは悪いことだと教えられ、まちがえると罰を受ける。だが、実際に人間がどのようにして学ぶかを考えてみればわかるが、人間はまちがえることで学ぶ。私たちは転びながら歩くことで学ぶ。

 昔からよくいわれる言葉に「Jobは『JustOver Broke(まさに破産しそう)』の頭文字」というのがある。…マネージメントにかんしてよく言われる言葉の中には、このほかにもひどいものがある。それは「従業員は首にならない程度に一生懸命働き、経営者は従業員が辞めない程度に給料を与える」というものだ。どの会社の給与体系を見ても、この言葉に真実が含まれていることがわかるだろう。

 …金持ち父さんのほうは、自分の経営する会社に労働組合ができないようにつねに目を光らせていた。
 
 専門的な技術の中でもっとも大事なのはセールスとマーケティング、つまり売る能力だ。その基本にあるのは、相手が顧客であれ従業員であれ、上司、配偶者、また子どもであれ、他人と意思を疎通させる能力だ。人生で成功するのに必要不可欠なのは、書く、話す、交渉するといったコミュニケーション能力だといってもいい。私はこの技術を高めるために、講習に出席したり、自習用テープを買ったりして自分の知識と技術を広げる努力をつねに続けている。…たいていの人はセールスとマーケティングの能力を習得するのはむずかしいとおもっている。おおきな理由は拒否されることに対する恐怖だ。コミュニケーションや高尚の仕方がうまくなり、拒否されることに対する恐怖心をコントロールできるようになれば、それだけ人生が楽になる。

 「根拠のない疑いや恐怖が臆病な人間を作る。臆病な人間はひはんをし、しょうりをおさめる人間は分析をする」。金持ち父さんの説明によれば、批判が人の目をみえなくする一方、分析は人の目を開いてくれる。分析をする勝者には、批判ばかりをしている人間に見えないものがみえ、また、ほとんどの人が見逃してしまうチャンスが目にはいる。人が見逃してしまうものを見つけること、これこそがどんなことにおいても成功の秘訣だ。

 チキンリトルは分析をしないで心の扉を閉める。株式投資にさいして「逆指値」というのがどのように働くかが世の中にもっと知れ渡っていれば、損をしないことばかり考えながら投資するのではなく、儲けるために投資する人がもっと多いはずだが、残念ながらこのことはあまり知られていない。

 個人的に私は、ルーズベルト大統領夫人で「世界人権宣言」の着そうに力をつくしたエリノア・ルーズベルトのつぎのようなことばがいちばんようてんをついているように思う。それは、「自分の心に聞いて『正しい』と思うことをやることだ。なぜなら、いずれにせよ非難を受けることになるのだから。たとえ何をしようと、また何をしなくても、文句を言われる」というものだ。

 富を築くのをさまたげるハードルのうち越えるのが最も難しいのは、自分自身に正直になり、人と違ったことをするのをためらわないことだろう。市場でいつも送れてかいはじめ、大損をするのは無知な大衆だ。割りのいい儲け口があったとしても、それが新聞の一面にのるころにはほとんどのばあい、もう遅すぎる。

 短大や大学で開かれている生涯教育のカリキュラムのなかには、ファイナンシャルプランニングや投資についての講座がかならずある。

 私は弁護士や会計士、不動産ブローカー株式ブローカーなどに相当な額を払っている。その理由は、もし彼らが本当のプロならば、彼らに助けてもらえばかならずお金が儲かるはずだからだ。…現代は情報の時代だ。情報には値段がつけられないほどの価値がある。…私は不動産や株のブローカーを雇うときは、まず面接をして、相手が個人的にどれくらい不動産あるいは株をもっていて、税金を何パーセントはらっているかを聞くことにしている。

 金持ち父さんが教えてくれたことで、私がこれまでずっとモットーとしてきたことの1つは、出し惜しみをしないこと、与えることだ。…彼は「十分の1税」という考え方をかたく信じていた。これは「何か欲しいものがあったら、まず与えなければだめだ」という考え方だ。お金が足りなくなると教会や事前事業に寄付をする。それが金持ち父さんのやり方だった。この本で読んだほかのことはみんな忘れたとしても、ぜったいに忘れないでほしいことが1つある。それは、何かが足りないとか何かが必要だと感じたときには、まず、それを人に与えることだ。そうすればあとになって、2倍にも3倍にもなって返ってくる。このことはお金、ほほえみ、愛情、友情などいろいろなことにあてはまる。