Subject: 機密文書
Date: Sun, 07 Mar 1999 05:47:08 +0900
From: donquixote@mth.biglobe.ne.jp
Reply-To: s92518mw@sfc.keio.ac.jp
Organization: devil
To: (友人アドレス)
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丹羽:人事部次長(多分)。出版局より異動してきた。
森:法務室次長(多分)。司法記者出身。
守屋:西部編集部長。
丹羽「君のやったことは、十分に懲戒免職にしてもおかしくないんだよ。会社の弁護士とも相談したんだが、そのように言っている。去年、高額納税者番付を発表(シバリ)前に週刊誌の記者に渡した国税庁クラブ詰めの記者も、同じように我々が依願退社を勧めたら、責任を感じて『私が悪かった』と認め、すなおに辞表を書いたんだ。あの事件は十分、懲戒免職に相当するものだった。君のホームページ問題だって同じくらい重い。取材源の秘匿は、日経が一番厳格に考えているんだ。君も辞表を書くべきだ」
私「そんな、追いつめるような強引なやり方はフェアではない。記者クラブによる情報の独占はもっと批判されるべき問題であって、懲戒免職だと脅して辞表を書かせるなんて、一方的な押しつけだ。全くおかしい」
丹羽「君のように、5年ぐらいで辞めるかもしれないと言っている奴を、雇用しておく訳にはいかないんだよ。うちは基本的に中途をやらず、新卒採用で育てていくのが経営方針なんだから」
私「キャリアプランの立て方は労働者の自由であって、そんなことを言われる筋合は全くない。労組のアンケートでも終身雇用を望んでいる若手の割合は半分程度まで下がっている。時代遅れもいいところだ」
丹羽「君は社内規定を読んだことがあるのか?」
私「社内規定には、経営方針・編集方針に反してはならない、といった曖昧なことしか書いていない。何が経営方針であって、何が編集方針なのかをはっきりして貰わないと困る」
丹羽「おまえは何でもすぐマニュアル化しろと言う。そんなもんじゃないんだよ」
私「マニュアルじゃない。これは法律であって権利の問題だ。このままでは、記者の権利が何もないのと同じだ。反対意見を言う記者は何でも当てはめられる恐れがある。どうしてセクハラ規定ができたのか考えてみて欲しい」
丹羽「記者クラブ問題にしても、会社はまだ、はっきりとした答えを出していないんだ。再販制度は堅持するのが会社の明確な方針だ。もし反対などしたら、関東地区で読売の販売店で配って貰えなくなる。そうしたら日経はおしまいなんだから、従わざるを得ないだろう」
私「それじゃあ、記者は何も意見を言えなくなってしまう」
丹羽「おまえ、誰から給料貰っていると思っているんだ!当り前だろう。経営方針とか編集方針に従うのが社員の務めだ」
私「だから、その現状の規定に反したのは認める。社長宛の上申書にもその点は認めて反省していると書く。相応の処分も受ける。でも、外部からも批判が多い問題について、現場の記者の意見を完全に統制するのはやりすぎだ。表現の自由を守るべき新聞社として健全じゃない。今後、改めるべきだ」
丹羽「そんなことは全く必要ない。嫌な奴は辞めればいい」
丹羽「そもそも取材源の秘匿なんて、取材の鉄則だ。そんなものは社内規定でもなんでもない」
私「日本の新聞は取材源を全く明らかにしないために、読者が情報の価値判断をできないという批判がある。何でも隠せばいいというのは、経営の一方的な論理だ。欧米のジャーナリズムでは可能な限り取材源を明らかにするのが常識だ」
守屋「ふざけるな!」(注:大声。論理破綻すると、すぐに大声を張上げるのがこの会社の管理職の特徴)
私「記者の価値観は多様化している。読者や報道される側の立場も考えるべきだ。確かに取材先のことを一部載せていたことは認めるし、その点では行過ぎを反省すべきだが、取材源を秘匿しなかったら大迷惑をかけてしまうような重大な事実は書いていないし、インサイダー情報にあたるようなことも載せていない」
丹羽「君は小さい時からエリートできて、日経にも上位で入社して、将来を嘱望されてきたわけだろう。挫折を知らなかったんじゃないのか?それなのにこんなことになってしまって…」
私「私は昔から全然、エリートでもないし、むしろ外れ者だ。同期のなかでも内定は遅いほうだったはずだ」
丹羽「まあ、俺は面接のことまでは知らないが」
森「それじゃあ君は、辞表は書かないつもりなのか」
私「書く理由がない。経営方針に反した点は認めるし、相応の処分は受けるが、それが即辞表だとは思っていない」
森「じゃあ君は残って、会社側が悪いということを立証したいのか」
私「そんなことは言っていない。こちらが100%悪いなんてことは有り得ないし、懲戒免職にあたるようなことをしたとは思わない。もしそんなに重大ならば、どうして97年の春に私が同じことをしていたのを知っていながら、始末書さえ書かせなかったのか。落差がありすぎる」
森「そんなに不満があって、規定に反したことを認めてまで、まだ日経新聞に雇用して貰いたいというのか」
私「雇用者と被雇用者は対等の関係だ。そんな卑屈になるつもりはない。いつ辞めるのかは私が決めることであって、強要されるのはおかしい」
森「もう一度聞くが、2者択一になったらどうするんだ。懲戒免職と依願退職の」
私「だから、そんなことは今すぐに答えられる訳がないでしょう」
丹羽「依願退職のほうが、後々のことを考えるといいぞ。国税庁詰の記者だってそうしたんだ。それが最後の日経の心遣いだ。まだ若いんだから、今後、出版社なんかに再就職するにしても、自己都合退職にしておけば、こちらは理由を尋ねられても答えない。退職金だって出る。みんな日経にいて良かった、と思って欲しいからそう勧めているんだ」
私「詳しいことは知らないので、いろいろ知人に相談してみるが、自分から辞める気はない」
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上申書と顛末書を書いたり添削する時間を含めて、こんなやりとりの繰返しが12時間。解放されたのは深夜2時半でした。飯を食う時間もなし。どう見ても脅しであり、退職の強要ですね。いずれ、公開するつもりです。