「『噂の真相』トップ屋家業」/西岡研介/2001年10月、講談社
大震災、少年A、そして神戸空港問題で不偏不党の新聞の立場に疑問を持ち、噂真で権力スキャンダルを手掛け、そして週刊文春へ御栄転。著者は、まさに事件を呼ぶ男だ。最近の噂真は、かなり興味を持って読んでいたが、そのなかでも検察の則定スキャンダル、森の買春スキャンダルなど、まさに取材の中心にいた記者の後日談で、参考になる。高水準なネタ元のネットワークをいかに確保・維持できるかが記者にとって重要なのだということが良くわかる。その一方で、ネタ元(情報源)を可能な限り明らかにしているあたりが、ジャーナリスト精神に則っていてさすがだと思うし、取材力についての相当な自信が感じられる。
本書では、噂真という雑誌についても、かなりディスクローズされている。確かに良いことだけが書かれているが、右翼襲撃に遭ったことに象徴されるように、聖域に切り込む雑誌であり、闘う雑誌であることは間違いない。権力のスキャンダルを売物にする方針も、明確で潔い。何事も中途半端になっている「金曜日」も少しは参考にすべきである。(2002年1月)
---
そして、私にとってもこの受賞はひときわうれしいものだったのだ。というのも、同業他社からことあるごとに賛辞を贈られる則定スキャンダルは、則定の愛人だったA子さんの協力がなければ、闇に葬られていただろうし、そのA子さんが告白先として『噂の真相』という雑誌を選んだのも、この雑誌がマスコミの『聖域』といわれてきた検察批判を十数年にわたって続けてきた賜物だったのだ。つまり則定スキャンダルはあくまで「A子さんの協力を得た『噂真』のスクープ」で、私は単にA子さんにインタビューし、原稿を執筆したに過ぎなかった。則定スキャンダル以降、ことあるごとにこんな思いに苛まれてきた私にとって、森の買春検挙歴報道が、同業他社の編集者らに評価されたのは、とてもうれしかった。なぜならこのネタはまさに、「私がつかんだ、私のスクープ」だったからだ。