◎◎◎ 女のアクシデント!切腹体験記 ◎◎◎

by えっちゃん(2001年9月寄稿)
メールマガジン、ピーターパンニュースのVOL.5〜7に掲載され好評を博した作品です。

既婚の女性なら(最近はシングルマザーなんていうのも流行っているが) ほとんどの人が、体験するであろう「妊娠」「出産」「育児」・・・ それらを一つ一つ経験しながら、女は「強い女」に変身していくようである。
しかし、少子化が騒がれる昨今、周囲では子供をつくらず夫婦2人きりで共働きしながら、 悠々自適な生活を楽しむ夫婦も増えてもいる。

結婚6年目にして子供のいない我夫婦も、周囲のほとんどの人から 「あんたたちも子供作んないのね」 と無言の烙印を捺されているように勝手に感じたものである。
が、しかし水面下では私たち夫婦は、病院でいくつかの検査をしてみたり、 体質改善ということで漢方を処方してもらったりとちょっとした努力をしてみたりしながら、 まだ見ぬ我が子の名前まで考えたりして待ち望んでいた。

最近になって「あんまり気にしないほうがいいかも?」なんて (ただ、単に面倒くさくなっただけ) 勝手に根拠もない理由をつけ何も考えずに過ごしていたらなんと 「できた!」のである。

しかし、それもぬか喜び、今回残念なことに「子宮外妊娠」 ということで手術することになった訳なのだが、 今回手術をしたことにより「できやすい女」に大変身!

この訳は、この後詳しく説明するとして、女性だったらちょっと位は耳にするであろう女性特有のよく聞く 「アクシデント」を今回私の体験から詳しくお伝えしようと思う。 興味のある方は読んでみて!
以外と知っているようで知らないことあるかもよ!


毎月お決まりのようにやってくる月経。
人にもよるだろうが、生理痛とか言ってひどい腹痛や、 吐き気などで中には寝込むなんていう人もいるようだが、 鈍感な私はそんな経験をしたことが一度もない。
まっ、ある症状といえば「イライラする」「訳もなく機嫌が悪くなる」 といったことくらいで、「面倒くさいよな」 と言いながら何日目だろうが元気にプールに入っているくらいだったから、 元々子宮の痛みに鈍感だったのである。

それが今回はちがった。
ちょうど、1週間遅れでやってきた月経?出血とともに、 おなかの中がキューっと痛くなり、 誰かにお腹の中を雑巾しぼりでもされているように痛むのである。

もともと、生理痛もなく子宮の痛みに鈍感な私は、その痛みがどこの痛みか判らず、 おなかの痛みにはとりあえず「正露丸!」 と思ってそれを飲んでじっと静かに休んでみた。

その日は1時間ほどで痛みが治まり「よかった、よかった」とまた普段どおり元気に動き回っていた。
しかし、日に日に痛みの頻度は増し、出血の量も多くなっていた。
その出血、よくみると赤くなくて「ドス黒い」のである。
さすがの私も「こりゃ大変だ!」と思ってかかりつけの産婦人科に行ってみた。

そしてそこでの尿検査により妊娠が発覚!待望の妊娠ということで 「やったー」と喜んでいると、先生が真剣な顔つきになり、 「でもね、切迫流産ってやつですよ。絶対安静だからね」 と言われその日は飲み薬を処方してもらって帰宅した。

驚くあまりに先生に「切迫流産」について詳しく聞けず、自宅にあった本 「家庭の医学」で調べてみた。

出血が伴う腹痛があるのは危険である。

そのくらいしか書いてなかったので良く判らなかったが、 あまりよくないと言うことみたいだ。
私のおなかの痛みは子宮が収縮することからくる痛みだったらしい。

それから1週間、薬の量を増やしても出血は一向に止まらず、 増える一方であったが大した痛みもなく本人はいたって元気であった。
しかし、少し心配になって予定より早めに病院を訪れてみると、 「これだけ長く出血が止まらないのなら入院しないと駄目ですね。 ここで、入院しないと後で後悔することになりますよ」 と受付で看護婦さんに説得されそのまま急遽入院ということになった。

病室に案内され用意されていた寝巻きに着替えるとすぐに点滴が始まった。
この点滴、子宮の収縮を抑える薬が入っているとのこと。 「今まで飲んでいた薬の点滴版ですよ」 と説明を受け1日中ほとんど刺しっぱなし状態で過ごした。

その日のノルマがやっと終わったところで、 シャワーでも浴びようと準備をしていると、看護婦さんがやってきて 「絶対安静なんだからシャワーも駄目です」とお怒りのひとこと! 仕方なく、あきらめておとなしく寝た。

そうこうしながら、毎日様々な検査があり血液検査、尿検査、 超音波による内診で様子を診ていた。
中でも週数が浅い私にとってかなり重要な手がかりをつかめるという「尿検査」 により、妊娠を続行するホルモンの量を調べていったところ、 出血がひどくなってきたこの2日間で一気にその数値が下がっているという。
「残念ながら流産ですね」と先生からお話しがあり、 すぐに掻爬(そうは)の処置をすることになった。
その処置は、とても簡単で処置室という小さな部屋で行われた。

静脈麻酔といって数を数えながら少しずつ注入されていき、 いつの間にか寝てしまうという短時間の全身麻酔により処置は15分くらいで終了したらしい (麻酔で、寝てしまったので覚えていない)。

なんでも、この麻酔、「短時間しか効かない」ということで、麻酔が効いたらすぐに 「よーいどん!」で処置するらしく、 先生が私のオマタの前で構えているのには笑えた。

それが終了し自分の病室のベッドに戻ってきてからの麻酔の覚めかけが、 まるで調子に乗ってお酒をたくさん飲んで悪酔いしてしまったような感じで、 めちゃちゃ気持ち悪く酔っ払いおやじのようにげーげー吐きながら徐々にさめていった。

麻酔がさめてから子宮の収縮するような痛みがしばらくあったが1時間もするとそれもおさまり、 その後すぐに、食事も普通に取れる位に回復した。

翌日、退院ということで前日処置したところをもう一度診てもらう検査をした。
いつもだったらすぐ終わる検査がなかなか終わらず、また先生の表情が険しい! 「どうしたんだろう?」と先生の顔を覗き込んでみると、 「はじめから少し疑っていたんだけど・・・子宮外妊娠かもしれない!」 ということでMRIによる検査をした。

すると、予想どおりだった。右側の卵管のところに映っていた。
破裂はしていないが、おなかの中でかなりの出血がみられるということで、 退院延期!一度、引き払った病室に戻され、 「絶対安静」ということで廊下を出歩くことも禁止されてしまった。

元々、貧血であったということもあり、 それを少しでも治療してから手術に望むということで、 毎日「真っ黒な液体の大きい注射」をされ、手術まで2日ほど待たされた。
元気な私はじっとしていることが我慢できず、 病室からそーっと抜け出して廊下を歩いていると、 看護婦さんがあわててやってきて 「破裂したら大変なのよ!そう滅多にないけど死んじゃう人もいるんだから」 と脅かされ、それからは仕方なくあきらめておとなしく手術の日を迎えた。

手術当日の朝は、朝食は抜きで、イチジク浣腸の5倍の大きさはある浣腸をしてもらい、 便をすべて?排出したあとに、下腹を切るので剃毛をし、点滴が始まり、 麻酔の効きが良くなるようにとちょっと痛い筋肉注射をした。 (肩かお尻か選べるがお尻の方が痛くない)

これで、準備OKということで、点滴をカラカラ引きずりながら手術室に向かった。
手術室内はつめたーい雰囲気で、うわさに聞いていた先生の好みの音楽が流れていた。
手術台の上に仰向けになったときは、さすがに緊張した。 まあ、ここまできたら「まな板の上のまぐろ?」 のようにおとなしく切られよう!とあきらめた。

着ている物を脱がされ全裸にされたと思ったら尿管を入れられ(以外と痛くない)、 腕には血圧計を巻かれほぼ準備が終了したと思われたころ先生がやってきた。
看護婦さんの介助により横向きになり、海老のように体を丸めると冷たいもので背中を消毒され、 脊柱麻酔の注射をたぶん腰椎の何番目かに刺され、最初は刺された痛みで硬くなっていたが、 お尻、脚と少しずつ感覚がなくなっていった。

仰向けに戻り体のほとんどにシートをかぶされ「それじゃ、いくよー」 の先生の掛け声とともに手術が始まり、私のお腹が切り開かれて行ったようだった。
この麻酔、胸から下のみで意識はあるので、最初は気持ち悪いと騒いでいたが、 それが落ち着くと以外と冷静にしていられるので、 周りの看護婦さんたちの働きぶりを観察したり、自分の脈拍や、 血圧を確認してみたりとあたりをキョロキョロしていたくらい余裕であった。

そんな元気な私に気づいた先生は「腹黒いから、きれいに洗っとくな」とか、 「もう少しだぞ」なんて話しかけてきたので、私のほうも 「ちゃんと丁寧にきれいに縫って下さいよー」 なんて生意気なことを言ったりと会話しながらだったから1時間半があっという間だった。

輸血はしなかったもののかなり出血はしたのだろう、病室に戻ってから、 少しの間、寝たまま貧血の気持ち悪さを味わった。

事前に先生とお腹の切り方を縦にするか、横にするかを打ち合わせした時に聞いたのだが、 外側(皮膚)は縦横どちらか選べ、中身は、縦に切っていくらしい。
「まさか、腹直筋や、外腹斜筋の一部は切られてしまうのですか?」 と心配だったのでそう質問すると、 「筋肉はちゃんと除けて切っていきますから大丈夫ですよ」と言うので一安心。
そう滅多にビキニを着ることもないし、縦切りの方が突っ張らなくていいかも? と思い、お腹の切り方は縦にした。

手術後せっかくだからとお願いして、手術で採ったブツを見せてもらった。
ピンポン球くらいに育った塊?2つと、破裂し破けていた卵管、 まるで焼肉屋でよく見るホルモン焼きの一部のようだった。

子宮外妊娠した場合その卵管はとってしまった方がいいという。 なぜなら、再発の可能性が大きいらしい。「2つあるんだから1つくらいなくても大丈夫でしょう」 ってことで、とってもらった。

お腹を開いたついでに、 反対側の卵管も診てもらったら卵管がトグロのように巻きついていて癒着し機能していなかったらしい。
そこも、卵子のとおりが良くなるように処置してもらった。
これが、結構大変だったらしく、先生結構汗だくで頑張ってくれた。

そういえば、この先生以前「医者は頭じゃなく、体力だ!」と言っていた。
昔、「極真空手」と「ボクシング」をやっていたというからかなりタフらしい。

また、その卵管の処置、かなり器用じゃないとできない処置らしく、 (不器用な先生だとそれを発見してもそのまま閉じてしまうこともあるらしいと後で看護婦さんに聞いた) 看護婦さんたちが感心しながら観察していた。
そのおかげで、「できやすい女」に変身したという訳である。
それが、本当かどうかは退院後試すとして・・・。

手術後「麻酔が切れるとすごく痛い思いをするんだろうな!」と覚悟していたが、 麻酔が切れる前に痛み止めの座薬をしてくれたりと、 最近は患者にあまり痛みを感じさせないような医療体制をとっているのか、 おかげで切った痛みはほとんど感じなかった。

とはいえ、お腹を切った直後は4日ほど寝たきりで、動くとしても恐る恐る寝返りをうつくらいで、 ガスがでるまでは点滴がご飯がわり。
少々の痛みを我慢してちょくちょく寝返りをうっていると腸が動き出して2日後、 やっとおならが出た。
それからの食事は重湯から始まり全粥まですすむと、ようやく普通の食事が摂れるようになった。 口から食べものを取り入れられるようになると、全身にちょっぴり力が湧いてきた。

手術後4日目にして、尿の管も取れ、自分でトイレに行けるようになり、少しずつ歩けるようになった。
術後1週間して抜糸をしてもらった。 ガーゼを取って抜糸まえの傷口を恐る恐る見てみるとホチキスの芯がずらーっとハードルのように並んでいたので、 「糸と針で縫ったのではないんですね」と聞くと「最近は医療用のホチキスで止めるんですよ」 と教えてくれた。
糸と針で縫っていた頃は、「まつり縫い?」のような跡がついていたと思うが、 これでとめるその跡と言うと「切った線のみ」できれいに治るらしい。
抜糸後、傷口をよく見てみると、きれいにくっついているので「すごい!」と感心してしまった。

それからは、シャワーを浴びたり、歩いたりかなり普通に過ごせた。 退屈で仕方がないので部屋での読書に飽きると、院内探検をしてみたりした。

ここの病院、きれいに建て直したばかりで産婦人科の病室は個室のみ、和室、 洋室、特別室(広いお部屋)がある。空いていれば、好みのお部屋を選べるそうである。
室内には、ユニットバス、BSテレビデオ、有線放送あり、電話もついていた。 まるで、どこかのビジネスホテルに来たような感じだった。

ついでに、分娩室も見学させてもらった。
ピンクのシートでゆったり大きめの作りの分娩台が真中にあり、 リラックスできるようにとアロマオイルが焚かれ、リフロロジーとか言う呼吸法で、 オルゴールの音楽に合わせた深呼吸をしながら出産をするらしい。
昔は、ラマーズ法といってどっちかと言うと息むお産が多かったらしいが最近はそうではないらしい。

この病院、立会い出産もおすすめしていると言うことなので、 出産時には是非ご主人とご一緒に!とすすめられた。

産後のケアもばっちりで、お風呂の入れ方の練習、 乳腺が詰まらないようにとアロマオイルによるおっぱいマッサージや、母乳の与え方、 粉ミルクの各メーカーからやってくる栄養士さんによるミルクの作り方や栄養についての説明があったり、 (これお土産つきなのでとても人気がある)至れり尽せりでこれなら産後も安心と思った。
一番びっくりしたのが食事、病院の食事とは思えないほど、毎食豪華な品揃えだった。
これなら、産後のお疲れママには、良い静養になること間違い無しだと思った。
たまに、病室、分娩室、新生児室を見学しに来る熱心な方もいたくらいだから、 最近の妊婦の皆さん産む場所については慎重に選んでいるのだなと思った。

女として生まれたからには、恋愛して、結婚して、子供を産む。 それが、女性のフルコースだとすると、 それを完走している人はどこか自信にみちてどっしりしているようで・・・ 私も、早いとこそのフルコースを完走するための次なるステップを踏みたいわ!と思った入院期間だった。

ほんと、女は色々あるのよね。だから、これらは知っておいて損はないことだと思いますよ。
お役に立てたらうれしいです。

おしまい
イラスト by よっちゃん

製作・著作 よっちゃん