File15 2003年夏の自由研究6連発

<文責:女王様1号>

青鉛筆

この夏は、上野を中心に1号の興味を呼ぶ展覧会が目白押しでした。
そこで、自主的自由研究として(笑)行ってきた6つの展覧会をごく簡単にご紹介します。

黄色鉛筆

江戸大博覧会

~モノづくり日本~

場所 : 国立科学博物館

期間 : 2003年6月24日(火)~8月31日(日)

 からくり人形の実演が見れる!というところに惹かれて行ってきました。
 この日の出し物(日によって異なる)は、人形劇団「ひとみ座」による「綾渡り人形」のデモンストレーション。 まず手始めに茶運び人形(多分古いものではなく再現品)を動かしたり、文字書き人形(人形の手に筆を持たせ、人間が台の下に入って人形の手に連動している棒を動かして文字を書く)の実演をしてから、いよいよ真打ち登場となった。
綾渡人形  綾渡り人形というのは、右写真のようにうんてい状のものを人形が足でぶら下がったり手で(実際には手とは別についている針金で)ぶら下がったりしながら渡っていくというもの。 茶運び人形のようにゼンマイを巻いたら後は全自動というわけではなく、人形遣いがうんていの奥から糸で操るのだ。人間と人形が一体にならなければ?上手くいかない、難度の高い見せ物らしい。
 右写真は、断続的に撮った3枚の写真をGIFアニメにしたもので、実際にはこんなにスピーディーに飛び移るわけではない。 1回飛び移るためには、糸を引いたり離したりして、ブランコの要領でかなり人形を揺らさなければならないので。しかもうまく行かずに落下したりするし。

 この実演が行われているホールの大画面では、他のからくり人形を動かしたビデオも流れている。1番動きが凝っているのが弓曳童子という人形。4本の矢を1本1本つがえてひくのだ。 元・弓道部員の1号は思わず「おお!」と思ってしまったが、説明によると仕組みとしては割と単純らしい。茶運び人形&飛び蛙の根付けというものもあって、ゼンマイを巻くと指先サイズの蛙は小さく跳ねるし、茶運び人形はスーッと走る(茶碗は装飾的についているだけ)。 これを見た人々は口々に「チョロQだ!」と叫んでいた。江戸時代にチョロQのルーツがあったとは…。

 この展覧会は「大博覧会」の名のとおり、からくり人形以外にも江戸時代の科学・技術・産業・学問などにまつわるあれこれを集めていて、なかなか面白かった。 エレキテル(そもそもは健康増進器具だったらしい。低周波治療器みたいなもの???)とか木製の人体骨格模型とか骨盤や胎児(人形)を取り出せるお産人形とか。 和算の問題は4問中1番簡単な1問目しか解けませんでした(爆)。
 そんな展示内容なので普通の展覧会のように絵はがきなどは売られていなくて、グッズは主に書籍関係や古地図。からくり人形は、「学研 大人の科学シリーズ(下記リンク参照)」から出ている組み立てタイプが5,900円。 本格的なヤツが39万9,000円。そして「○代目名人~」のような人が作成した芸術品レベルのものがなんと210万円。一体誰が買うのだ。 (^^;
 ちなみに、学研さんもどうせ再現するのならこんなブキミな人形ではなく、サンリオやディズニーとタイアップして「茶運びキティちゃん」「茶運びミッキー」などを作る方が売れると思うのだがいかが?(それでも誰も買わないか?)

関連リンク
学研 大人の科学シリーズ 大江戸からくり人形

緑鉛筆

トルコ三大文明展 場所 : 東京都美術館

期間 : 2003年8月2日(土)~9月28日(日)

 「日本におけるトルコ年」イベントの一環として、トプカプ宮殿の秘宝であるエメラルド入り短剣が日本初上陸!
 かつてトルコに行ったときに見たこの短剣と再会すべく上野へ。夏休みのお子様たちで大混雑かと思ったが、そこまでは混んでいなかった。やはりまだトルコはマニアックか?

 展示は時代順の構成になっていて、まず1階はヒッタイト帝国。ヒッタイトといえば鉄器、鉄器といえばヒッタイト、という連想しか働かないくらいだが、鉄器は全然出品されていなかった(多分)。 まあ確かに、赤サビた塊を展示されても「むーん…」なわけだが(後日NHKの番組を見て知ったが、そもそも鉄製品はほとんど出土していないらしい)。でも、動物をかたどった素朴な容器などがかわいかった。
 続いて2階はビザンツ帝国。こちらのメインはモザイク画やコイン類など。このエリアの展示は、国家として存続した期間が長い割には質・量共にイマイチ弱かった。 壁の装飾として、見覚えのあるアヤソフィア内部のモザイク画の写真が使われていたが、さすがに本物を壁から引っぺがして持ってくるわけにもいかんし(笑)。 マジメな理由としては、キリスト教系の文物は(多少は出品されていたが)オスマントルコに征服されたときにかなり失われてしまった、ということがあるかも。 トプカプの宝剣

 そして2階の途中からと3階が真打ち・オスマン帝国の展示。黄金にさまざまな宝石を散りばめた水差しやターバン飾りや筆箱を前に、それまでお子様の付き添いで退屈そうだったおばちゃんたちの目がキラ~ンと輝きだしたよ(笑)。
 例の宝剣は、まさに大トリという感じで3階のラストのあたり、特製ガラスケースの中に鎮座していた。トプカプ宮殿では一方向からしか見れなかったのだが、このケースだと四方から眺め回すことができる。 束の部分&先端についている巨大エメラルドもスゴイが、鞘の部分に緻密なエナメル七宝で果物籠が描かれているなんてことは全然記憶になかった。 (^^; 束の先端の蓋を開けると時計がついてるというのも、今回初めて知ったことである(蓋は閉じた状態で展示されているが、開けた状態の写真を見ることができる)。
 他にも、おそらく実用品ではない巨大かつ超豪華な剣や銃、中国の陶磁器にトルコ風の蓋や足を後から取り付けた不思議テイストの花瓶など、面白い展示品があった。

 ところでトプカプの宝剣が作られた理由というのは、イランの王様にプレゼントするためだったらしい(が、相手が暗殺されたので渡されることなく現在に至る)。 しかも、豪華な贈り物をしてご機嫌を取るのかと思ったらその真逆で、「ウチはこれだけの財力がある国なんだから逆らわない方が身のためだよ~」と暗黙のうちに脅しをかける一種の外交戦術だったとか。 これだけのものを与えても、「戦争するよりは安上がり」なのだそうな。
 オスマントルコというと非常に好戦的なイメージがあったりするが、そういうコスト意識もちゃんと持っている人々だったのだなーとちょっと認識を改めました。 まあ、そうじゃなきゃ広大な帝国などとても維持できないってことか。当サイトは小帝国だけど勉強になりました(???)。

関連リンク
NHKプロモーションのページ

赤鉛筆

アレクサンドロス大王と東西文明の交流展 場所 : 東京国立博物館

期間 : 2003年8月5日(火)~10月5日(日)

 開催前、三十三間堂から運搬してきた風神像(国宝)の左腕が脱落、急遽展示中止というトラブルがあった同展。 展示のボードとかに大慌てでシール貼って直した痕でもないかと探してみたが、まるで最初からそんな展示予定などなかったかのように(笑)、風神像のことはどこにも触れられていなかった。 HPや会場入口に「保存上の都合で出品中止」と書かれているだけ。保存上の都合って。そりゃ「運んでる途中で腕が外れちゃいました。てへ f(^^」とは書けないだろうけどさ。 アレクサンドロス大王像

 さて内容はというと、タイトルに「アレクサンドロス大王と」と銘打っている割にはアレクサンドロス大王色(?)は濃くない。像が何点か出品されているだけ。 右写真はその中でも1番若々しく美青年風のもの(鼻が欠けているが)。彼の生涯などについては、NHKの関連番組を見る方がはるかによく理解できる。
 他には同時代の作品として、ギリシャ神話の神々の彫刻など。でもギリシャ彫刻はどれもこれも似たり寄ったりで、人間味が薄くて(そりゃカミサマっすから (^^;)1号的にはイマイチ。
 むしろ今回のポイントは「アレクサンドロス大王の東征によっていかにギリシャ文明がアジア世界に影響を与えたか」という部分らしく、展示の後半はギリシャ神話の神々が中央アジアや日本に取り入れられていく様子を像や絵で具体的に例証することに重点が置かれていた。 ヘラクレス→執金剛神、ヘルメス→風神らしい(そのために三十三間堂の風神像が必要だったのね)。

 1号が見に行った日は台風の真っ只中だったが、それにしても空いていたのにはそれだけの理由があるような。なんというか、わざわざ国博使っている割には盛り上がりどころに欠ける展示であった。 この広々とした会場を「トルコ三大文明展」とチェンジ希望。

関連リンク
NHKプロモーションのページ

EVENT箱のページ

黄色鉛筆

月光浴・20年の旅

~石川 賢治 月光写真展~

場所 : 大丸ミュージアム・東京

期間 : 2003年7月31日(木)~8月12日(火)

 1990年に写真集「月光浴」を出してから20年、ということで、ハワイ・屋久島・中国・アフリカなどでこれまで撮影された作品+京都で撮影された新作の展示。
 展示を見る前に大丸内の喫茶店にお茶しに入ったら、店内に200円割引券が置いてあったのでその辺も要チェック。また、この展示のチケットを買ったら次回展示の割引券が付いてきた。 「岬と波」

 満月の光で撮影する月光写真のことは聞いたこともあるし本屋で写真集を見かけたこともあるが、実際に見たのは今回が初めて。
 どれもみな予想以上に明るく、青々しくて美しい! 満月がまるで太陽のように輝いて写っているのにビックリ。長時間露光だけでこんな風に撮れるものなのか、何か現像方法にヒミツがあるのかはよくわからなかったが…。 いや、もしかしたら撮影方法の説明も書いてあったかもしれないけれど、会場の照明が落としてあるので、ものすごく近寄らないと字が読めなかったのだ (^^;。
 海中写真が並んでいるところでは波の音、植物の写真が並んでいるところでは虫の声のBGMが流れていて、デパート付属の美術館ながら会場に神秘的なムードを醸し出すことに成功していた。 (グッズとしてそのBGMのCDも販売されていた。)

 グッズ売場は月光浴関連商品よりも、なぜかあまり関係ない「癒し系グッズ」の方が多かった。アロマオイルとか万華鏡とか。 いきなり写真集を買う気にはなれなかったので、絵はがきでも…と思ったが、8枚セット1,100円というボリボリ価格のものしかなかったので購入せず。

関連リンク
石川 賢治 公式ページ

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ヴィクトリアン・ヌード

~19世紀英国のモラルと芸術~

場所 : 東京藝術大学 大学美術館

期間 : 2003年5月24日(土)~8月31日(日)

 この美術展にココロを惹かれたきっかけはもちろんヌード! …じゃなくて、元・シャーロック・ホームズ研究家として(ウソ)、ヴィクトリア朝時代(1837~1901年)というのはイギリス経済が飛躍的に発展した一方で、社会道徳面では非常にキビシく抑圧的な時代だったという予備知識があったからなのだった。 「プシュケの水浴」

 なので、初期に発表された絵は神話や伝説の1シーンを題材にすることでヌードを描くことが許されているというものがほとんど。ヴィーナスとかプシュケ(右写真)とかアンドロメダとか。 それでも、例えば囚われの身のレディ(裸体)を騎士が救い出そうとしているという絵で、レディが騎士の方に視線を向けていると「誘惑している、不道徳だ」と非難ごうごうで顔の向きを描き直したりしなければならなかったらしい。
 もっとも、画家の習作や趣味のための絵には、モーホー系やロリコン系の作品もあった。こういうものには時代を超えた普遍性があるね(爆)。 「不思議の国のアリス」で有名なルイス・キャロルが撮影・着色した少女ヌード写真はメルヘンチックだけど、現代だったらお縄になるのでは。必ず両親の許可を得た上での撮影で、少女がいやがるようであれば即座に中止したそうだけど。
 そういった時期を経て、「良識的な」人々からのバッシングにも負けず、神話に関係ないごくフツーのヌードや、ヌードを描く女性画家がイギリス社会に認められていく過程がなんとなく伝わってきます。

 芸大美術館には今回初めて行ったのだが、さすが芸大だけあって?建物がモダン。でも1階でチケットを購入し、地下2階に降りて前半を鑑賞し、地上3階に上がって後半を見なければならないというわかりにくい構成になっていた。
 さらに、閉館時間になったらトイレの中に客が残っていないかなどまったく確かめず速攻で施錠開始。階段から玄関ホールに続く扉もさっさと締めて、閉館時間3分後にはホールでスタッフミーティングを始めようとしていた。 おかげで1号は大雨の中、裏口から出されそうになった。傘は玄関ホールにあるっちゅーのに (-_-#。いくら大学付属の美術館でももうちょっと客を大事にせんかい!

赤鉛筆

恐い、怖い、こわい

~KOWAI! The Many Aspects of Fear~

場所 : ブリヂストン美術館

期間 : 2003年6月17日(火)~9月28日(日)

「硫酸魔」  特定の作家や時代ではなく、さまざまな「こわさ」という観点から作品をチョイスしたというのが面白そうだったので行ってみました。 といっても特別展ではなく「コーナー展示」という扱いで、常設展と一緒に3室ほどのこじんまりとした展示。

 1室ごとに「死と悪魔」「奇怪なもの」「人間の中の恐ろしさ、不安」という構成に分かれている。展示されている絵は小品が多く、エッチングやリトグラフがメイン。
 ピカソのミノタウロスをモチーフにしているシリーズが何点もあり、面白かった。恐いというよりユーモラスなミノタウロスもいたし。
 ジョルジュ・ルオーの「骸骨」という絵は、どう見ても骸骨が踊っているので可笑しくてしょうがなかった。やはり骸骨なら何でも恐いというものでもない。
 右写真はポスターに使われていたウジェーヌ・グラッセの 「硫酸魔」という絵。

 今回の展覧会は、発想は面白かったのだが、もともとブリヂストン美術館が所蔵している絵に限られていたのが残念でした。この方向性で、あちこちの美術館から絵を集められれば企画した学芸員さんの面目躍如だったのに。 (以前、海の日制定記念として安田火災<現・損保ジャパン>東郷青児美術館が洋の東西・時代を問わず海の絵ばかりを集めた展覧会がとても良かったので。)
 絵はがきが1枚50円と格安だったのはGood。あと、ここに挙げた6つの展覧会の中で最も人がいなかったのもGood(笑)。

青鉛筆

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