今年は残暑が厳しいな、と思っていたらいつのまにか日が暮れるのは早くなり、 「読書の秋」がやってきました。というわけで、秋にお薦めの本をご紹介します。 |
■ 『風の王国』 五木寛之著(新潮社) |
たくさん有名な作品をお書きになっている五木寛之さんですが、実は私、この1冊しか 読んだことがありません。で、なぜこの本を知ったのかというと、今を去ること?年前、 高校の実力テストの問題に取り上げられていたからです。 テスト問題だけに、載せられている文章はほんの少し。でも、テストそっちのけで、
と強く感じてしまったのでした。 ちょうど「週刊新潮」への連載が終わり、単行本化される前だったらしく、 テスト後に本屋で探しても見つからなかったため「読みたい」気持はつのるばかり。 ようやく見つけた時は本屋さんで大声をあげてしまいそうになりました(^^; ちなみに 見つけたのはテストから3ヶ月後くらいでした…。 【ほんのさわり】 主人公 速見卓 は若いときにネパールやエジプト、ヨーロッパなど放浪。 日本に帰国してからは、プロのトラベル・ライターとして雑誌社の仕事を手伝っている。 無鉄砲で、車が好きで、冒険心ではちきれそうな二十代を経て今は、<歩くこと> に惹きつけられている。速見卓のルーツ探しがメインテーマですが、それ以外にも登場人物それぞれが魅力的。 現代を舞台にしながらも「流浪の民」が登場する、どこか幻想的な雰囲気の本です。
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■ 『それでも明日は来る』 三浦綾子著(新潮文庫) |
つい先日、著者の訃報に接しました。この本を読んだ時に、確かに余命はあまり長くない だろうと思いつつも、信仰と夫を支えに生きていく姿が目に浮かびました。静かな強さ、 というものが底辺にずっと流れています 実はこの著者の本もこれ一冊しか読んでいません。紹介していいのだろうか?と思いつつ。 この本は小説ではなく、十数年にわたる随筆を集めたもの。著者の闘病生活だけではなく、 周囲の人々が生きる様が多く取りあげられています。この本のタイトルの4文字「それでも」 の意味するところはかなり重いのです。 本との出会いというのは不思議なもので、あまりなじみのない作者の本はめったに買わないのに、 表紙の絵にひかれて何気なく購入。当時少しへこんでいた心に、しんしんと響く本でした。 そして、表紙絵を描かれたのは、私の好きな画家 東山魁夷氏であることに気づいたのはずっと後 のことでした(ひかれるのは当たり前ですね) この本は決して「暗い」「読みにくい」ということはありません。薄いし、エッセイの一つ一つ が短いのも読みやすい。少し心が疲れた時のために、手元に置いておきたい本なのです。 そして、筆者をはじめ登場人物のユーモアもなかなか。私はよくものを「しまい忘れ」る 癖があるのですが、同じ癖をもつ筆者が探しものをしているところに、夫の三浦光世氏が かける言葉は、
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