日本酒について

 

日本酒には色々な種類があり、それが消費者にとってはイマイチわかりにくい、という話をよく耳にします。
これらの違いは製法の違いから来るものなんですが、まずは基本的な製法をお話しましょう。

日本酒の原料は基本的には精米された米と水です。
米は洗米し、水を吸わせて、その後で蒸します。
蒸した米の一部は3日ほどかけて麹菌というカビの一種を繁殖させた「米麹」となり、
残りはそのまま仕込みに使います。

日本酒では本番の仕込みの前に、小さいタンクに水、蒸米、米麹、乳酸、酵母菌を入れて
そこで酵母菌の増殖を行います。これを酒母とかもと(酉に元と書きます)と言います。
大体10日〜2週間で酒母が完成します。

次に、完成した酒母を大きな仕込タンクに移し、そこへ水、蒸米、米麹を加える本番の仕込みに入りますが、
これは3回に分けて行われます。いわゆる三段仕込みというヤツです。
ここで加える水、蒸米、米麹の量は、順を追って倍、倍に増えていきます。

仕込が終ったもろみは、20日〜30日くらいかけて発酵させます。
この間、毎日サンプルを取って比重、アルコール度、酸度などを測り、発酵の状態を調べて温度調整を行います。

発酵が終了したら、もろみを搾り、酒と酒かすに分けます。
基本的なところはこれでおしまい。

こうして出来た酒は、「純米酒」で「生酒」で「原酒」となります。
これは非常に美味いモノなんですが、品質が不安定で日持ちしません。
そこで日持ちさせる為にろ過、加熱殺菌を行います。
さらに、出来上がったばかりの新酒はまだ味が荒削りですので、しばらく寝かせて熟成させます。
熟成が済んだ原酒を再びろ過し、加水してアルコール度を15〜16%に調整し、
これを加熱したまま瓶詰したものが一般に出回っている「純米酒」になります。

では本醸造ってのは何なんでしょうか?
ぶっちゃけて言うと、上記の純米酒にアルコールを添加したものです。
ただし、いくつかの条件があります。
まず、アルコールの添加量ですが、原料となる白米(精米された米)1トンに対して、100%換算のアルコールで
120リットルまでしか添加することができません。
ちなみにアルコールを添加するタイミングというのも定められており、発酵が終って、
もろみを搾って酒と酒かすとに分ける前に添加します。
搾ったあとの酒にはアルコールを添加してはならないのです。
さらに、米の精白度にも制限があり、精米歩合70%以下であること、と定められています。
わかり易く言うと、玄米が100キロあって、それを精米機にかけたとします。
米が磨かれてヌカが溜まります。ヌカが30キロ溜まったら白米は70キロですね、この状態が精米歩合70%です。
これ以上に良く米を磨きなさい、という事です。
あと、「純米酒」を名乗る場合でも、精米歩合は70%以下でなくてはいけなかったのですが、最近この条件が撤廃されました。

さて、ここで添加されるアルコール(醸造用アルコール)とは如何なるモノなのでしょう?
ぶっちゃけて言うと、梅酒などを造る時に使うホワイトリカーです。甲類焼酎です。
詳しく言うとサトウキビの絞り汁から砂糖を取った後に残る廃糖蜜と呼ばれるモノをアルコール発酵させ、
それを蒸留した粗留アルコールを輸入し、更に連続式蒸留器という機械でほとんど100%にまで純度を高めた
ピュアなアルコールなのです。
最近では、米を原料にしたアルコール(いわば米焼酎)を使用して、「米だけの酒」と称して売られている
アルコール添加された酒もあります。
ウソではありませんが、純米酒と混同しやすいという点で私は欺瞞だと思います。

では、なぜアルコールをわざわざ添加するのでしょうか?理由は3つあります。
ひとつは酒を水増しして利益を稼ぐ為。
もうひとつは、近年の傾向としてライト化する消費者の嗜好に合わせる為。
濃厚な味よりも軽くてスッキリした味が好まれているから、という事ですね。
アルコールを加え、更にその分の水も加えれば相対的に米のエキス分が薄くなり、味が軽くスッキリするという訳です。
また、アルコールを添加することで、もろみの中のアルコールに溶けやすい香気成分をより多く抽出できる、
という事も言われています。
最後は、アルコール濃度を高める事で原酒の保存性を良くすると言う事。
乳酸菌の一種に火落ち菌と呼ばれるモノがあり、こいつらはアルコール濃度18%くらいでも死にません。
これが貯蔵中の原酒の中に混入してると致命的なダメージを酒に与えます。
それでも、アルコール濃度が高い程おとなしくなりますので、火落ち菌対策として…というのが言い分です。
しかし、この3番目の理由にはあまり説得力がありません。
なぜなら、昔ならいざ知らず、現代においては、よほどずさんな管理でもしない限り、酒が火落ちしてダメになる、
なんて事は滅多にありませんので…
実は文献によると、江戸時代には既に、発酵末期のもろみに焼酎を添加すると火落ちが少なくなるという事が
経験的に知られており、「柱焼酎」という技法として伝えられているそうです。
これを取り上げて、「アルコール添加は日本酒の伝統技法だ!」とのたまう御仁もおられる様ですが…
世界を見てみれば、アルコールを添加したビールなんて聞いた事ありませんし、ワインだってブランデーを添加すれば
それは「ポートワイン」「シェリー」などという別種の酒になるのです。
日本酒はあくまで、原料を発酵させるだけの「醸造酒」です、別行程で造られた「蒸留酒」を添加したモノとそうでないモノが
同列に扱われ、あまつさえ、アルコールを大量に添加したモノが「普通酒」として標準的な地位を占めている現状は、
主客転倒じゃねーか、と言わざるを得ません。

さて、話がすっかり横道にそれてしまいました。
特別純米酒、特別本醸造酒というのがあります。
これはそれぞれの基準をもう少し厳しくしたもので、「精米歩合60%以下で香味の優れたもの」という事になっています。
後半の味に関する基準はメーカー次第です。そのメーカーのプライドと良心が問われるクラスです。
実質的に純米吟醸酒、吟醸酒とあまり変わらない条件ですね。これらも精米歩合60%以下という制限があります。
「吟醸」と付く場合は、通常のものよりも低温で長期間かけて発酵させ、吟醸香と呼ばれる独特の香りがある事が望まれます。
さて、この上に来るのが日本酒の最高ランク、「純米大吟醸」「大吟醸」です。
条件は更に厳しくなり、精米歩合50%以下とされています。
現実的には、50%ギリギリで「大」を付けるメーカーはあまり見ません。やはり「大」を付けるとなると精米歩合は45〜35%
くらいになりますね。この辺もメーカーのプライドと良心が見え隠れするところです。

そして、上記の制限を受けない、アルコールを大量に添加したモノがいわゆる「普通酒」です。
そのままでは味のバランスが悪いので糖類、酸味料、アミノ酸などを添加して味を調えますが、これは不味いモノです。
それを嫌って、代わりに蒸米をお湯と糖化酵素で甘くしたものや、最初に述べた「酒母」をアルコール添加と同時に加える、
いわゆる「四段仕込み」にしたモノはなんぼかマシですけど。

さてと、今回はこれくらいにしておきますかね。
テキストだけの退屈なページになってしまいましたが、最後まで読んでくださったアナタ、お疲れ様でした&ありがとうございました。

 

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