馬耳双龍 その1

 

 「つくる会」の教科書問題に端を発した韓国・中国の日本批判は小泉総理大臣の靖国神社参拝でピークに達している。

 まず始めに「つくる会」の教科書問題について記してみる。

 そもそも問題の教科書がはたして韓国・中国が言うような戦争を美化しているのだろうか。

現在の日本の教科書は先の大戦前の国定教科書による洗脳教育を反省し、民間の手で作成された教科書を採用する様になっている。

 「つくる会」の教科書採用を批判し始めた頃、多くの点を訂正するよう要求をしてきたが、日本側が訂正させたのはその一部分にすぎなかった。これは「事実かどうか分かっていない事柄、若しくは論争中の事柄」は教科書に載せるべきではないと言う姿勢を貫いただけに過ぎない。

 これまでも韓国・中国は日本の歴史教科書の内容に批判をしてきたが、はたして彼らの教科書はどのようになっているのか。

 中国の教科書の内容については資料が無いので良く分からない。韓国の歴史教科書は国定教科書であり「愛国心」を高揚させるような内容なのだ。そして問題なのは「反日」を煽り、また自国が犯した罪の記載は皆無なのだ。要するに韓国は日本が廃止した「洗脳教育」で「反日教育」をやっているのだ。

 さすがに韓国国内でもこの国定教科書廃止の流れに向かっているようだが。

 

 次に靖国神社参拝問題について。

 小泉総理は国の為に闘って亡くなった人々に感謝と哀悼の意を込めて参拝された。この事についていろんな人から多角的に批評されているが、一部に情報が混乱して感情的になっている人々も存在している。

 中国・韓国側が一番に問題にしているのは靖国神社がA級戦犯を合祀していると言う事にある。日本の最高指導者が靖国を参拝すると言う事は日本が戦争犯罪者を奉る、戦争犯罪者を崇め奉る行為になるというのがその批難の争点なのだ。

 そもそも戦犯ってなんだろう。戦争を利用して犯罪を犯した者を戦犯と呼ぶのではないか。戦争を起こした張本人が戦犯ならルーズベルト大統領も戦犯のはずだが実際はそうなってはいない。「勝てば官軍」という訳だ。

 日本の司法では刑を執行され、終了した時点でその受刑者は犯罪者ではなくなる。罪を償ったのだからその人にはもう罪が無いので犯罪者ではなくなるのだ。東条以下A級戦犯とされた者も死刑という方法で罪を償ったのだから、もう犯罪者ではない。後にA級戦犯の遺族にも慰霊金が支払われた事でもそれがわかる。

 別の面から見て見ると、靖国には日本兵として戦争に参加した韓国人、台湾人も奉られている。この事について韓国側の一部から分祀しろという意見がでているが、当時は彼らもまた日本人だったという事を考えれば感情的になって分祀要求を出す事が彼らの望む事かどうかわかるだろうに。

 国の為に闘って亡くなった人々に国の指導者が御礼をする事が間違っている事なのだろうか。

 

 代わって、北方領土海域での韓国サンマ漁問題について。

 韓国側は北方領土問題とサンマ漁問題は関係ないという姿勢を見せているが、日本が北方四島を日本領土と主張している事を知らない訳ではないだろう。これまでも韓国漁船は日本の漁業組合などが推進している海洋牧場の海域で密猟を繰り返しており、その半面日本の漁業は海洋資源を枯渇させると吹聴している。

 

 これらの問題についてあまりにも先導的な報道が目につくが、芸能人のスキャンダルと国際問題をごったにして扱っているのはいかがなものか。事は国家間の関係がどうなるかという分岐点なのだ。戦争までとはいかないだろうが最悪の場合、国交断絶という事態にまで発展する危険をはらんでいる問題なのだ。国交断絶ともなれば今までの交流は無駄に終わり、日中韓共に経済的にも打撃を受ける。当然ワールドカップは中止となる。その様な危険を孕む事柄を売り上げ向上目当てに軽々しく取り扱う物ではない。

 そんなマスコミの反応が中国・韓国側の感情を逆撫ですることだってありえるのだから。

 そもそも当初の小泉総理、田中外相の人気が正常なものだったか冷静に考えればわかるだろう。演説に行くごとに黄色い声援が飛び交ったりポスターが馬鹿売れしたり、本当に国民が政治に興味を持つようになったと喜んでいいのか。単なる流行であったなら国内から崩壊する事にだってなりかねない。

 よく言われる「アジア諸国の意見」というのも考え物だ。是非中国と韓国以外の国の意見も聞いてみたいものだ。

 マスコミは今回の問題を慎重に扱う必要があるはず。いや必要ではなく義務だろう。

 

 お互いの国には引く事のできない主張があるだろう。幸い、日本は歴史問題はヨーロッパで同じように教科書問題を抱え、克服したドイツの学者から教科書問題を解決する為の機構設立の提案を受けている。靖国問題も半年もすれば話題にもならなくなっているだろう。日本はいままで中国や韓国の言いなりになってきた。もちろん相手国の感情は留意しなければならない。しかしそれにも限度がある。何十年も前に解決している事柄に後ろめたさを感じる必要はない。

 弱腰だから付け上がられるのだ。先進国として堂々とした態度でいる事も時には必要だと確信している。

 

2001.8.15