瓶ヶ森

広大なササのスロープに魅せられて

 9月に入って夏季休暇を取った。1日だけ、乗鞍岳へ登った。後は台風15号の影響で天気が崩れ、家の片づけ等をしていた。

 台風が去り、秋らしい穏やかな天気になった。ずっと家の中で片づけしているのはもったいないと思い、急遽山へ行くことにした。

 台風の進路方向とは反対方向に位置する山、以前から一度登ってみたかった四国・石鎚山系の瓶ヶ森(標高1,896m)が頭に浮かんだ。
登山日:2011年9月22日(木) 曇り時々晴れ


コース:瓶ヶ森登山口駐車場 12:52 〜 13:32 男山 13:33 〜 13:52 女山 14:08 〜 14:30 瓶ヶ森ヒュッテ 14:30 〜 15:05 駐車場
 前夜のうちに出発。
 名神、山陽と渋滞に遭うことなしに順調に走り、神戸淡路鳴門自動車道へ入り、明石海峡大橋に差し掛かった途端、強い横風にハンドルを取られた。台風の影響なのか、海上は強い風が吹いている。電光案内板には『強風のため、淡路島南IC〜鳴門北IC間、二輪車禁止』の表示が出ていた。速度も40km/hに制限されていた。

 何とか鳴門海峡を渡り切り、四国へ入ると、今度は高松道鳴門IC〜板野IC間、災害のため通行止の表示が出ていた。鳴門ICで下り、徳島道へ向かった。全線ほとんどが対面通行なので、きらいな自動車道であるが、愛媛県へ早く向かうためには仕方がない。

 ところが、眠気を催したので、阿波PAで少しだけの仮眠を取るつもりが、気がつくと朝8時半を過ぎていた。


徳島自動車道
 洗面し、9時過ぎにPAを出発。持参した握り飯を頬張りながら、徳島道を西へ向かった。

 両側には黄色く色づいた田が過ぎて行き、もうすっかり秋。
 天気は日が射しているものの、山の上には雲が掛かっている。
 快調に走り、川之江JCTから松山道へ。しばらく走ると、右側に青々とした瀬戸内海が広がった。

 このまま行けば、昼頃には瓶ヶ森登山口へ到着出来ると思っていたが、災害のためいよ西条IC〜いよ小松IC間が通行止。いよ西条で高速を下りるので問題はなかったのだが、いよ西条IC出口が大渋滞であるとの案内があったので、一つ手前の新居浜ICで下りた。

 そこからの国道11号は混んでいて、なかなか前へ進まなかった。時間だけが過ぎて行き、焦った。


松山自動車道


国道194号
 やっとのことで国道194号へ。最初は加茂川に沿い、山が迫って来ると支流の谷川に沿う。石鎚山系の山々が源の川だ。


 この道を通るのは今回が初めて…ではない。2003年11月に土小屋から石鎚山へ登った時に、ここを通った。あの時は前日の剣山はガスの中で、石鎚山も期待してなかった。ところが、晴れどころか、霧氷まで見ることができて感激したものだった。…あれから8年になろうとしている。
 急いでいるあまり、瓶ヶ森林道への分岐を見落としてしまったが、高知県側からも上がれるので、そのまま新寒風山トンネルを抜け、一ノ谷渓谷から上がった。

 クネクネと狭い道を上がり、寒風山トンネル南口から左折して瓶ヶ森林道へ入った。

 トンネルを幾つか抜ける。ところどころ落石があるので、要注意。


寒風山トンネル南口へ


寒風山トンネル南口
 しばらく走ると、視界が開けた。
 右側には伊予富士や黒森山等、笹原に覆われたいくつかピークが連なり、左側には高知県の奥深い谷と幾重にも重なった山並み。
 
 沿道の石碑に記されてあったが、ここが吉野川源流になるそうだ。


瓶ヶ森林道より  ジネンゴノ頭と鎌藪谷を望む


瓶ヶ森登山口
 何とか頑張って走り、12時45分頃に瓶ヶ森登山口駐車場へ到着。今回はここから頂上へのお手軽周回とする。

 足立ナンバーの車が1台だけ停まっていた。

 外へ出ると、寒かった。西条市内は気温24℃だったのに、ここは気温8℃。冷たい風が吹く。

 支度後すぐに出発した。


瓶ヶ森林道 奥にトイレ


登山道
 冷たい強風が吹くし、展望は良くないし、誰にも出会わないしで、気分は沈みがち。ただ、せっかくここまで来たのだからという理由のみで、足が動いているだけ。晴れていれば、気分は断然違っただろう。

 まずは、男山を目指した。


男山


駐車場と林道を見下ろす
 振り返ると、下の方に駐車場と林道が見下ろせた。私の車と足立ナンバーの2台だけ。今日は平日だし、しかもシーズンオフだから、少なくて当たり前か。

 左側に草原が広がる。氷見二千石原と呼ばれるシコクザサの大草原で、シラベやモミの針葉樹が点在している。


氷見二千石原
 わずかだが、花も咲いていた。リンドウ、アキノキリンソウ、そしてシコクフウロ。同じ仲間のハクサンフウロやヒメフウロ等は今までに何度か見たことがあるが、シコクフウロは初めてだった。ハクサンフウロに比べると小さい。

リンドウ


アキノキリンソウ


シコクフウロ


幻想
 秋の花々の色とは対照的に、ガス掛かった周囲はモノトーンに近い。ボンヤリ浮かぶ枯れ木が一瞬人のように見え、ドキッとする。

 エッチラオッチラ、ササの斜面を登って行くと、小屋が現れ、男山頂上だった。小屋は避難小屋ではなさそうだった。

 頂上には権現を祀る小さな祠があった。切り立った岩の上にあり、下の方に林道が走っている様子だった。


男山頂上の小屋


男山頂上
 瓶ヶ森の最高峰は隣の女山らしい。休まずに、女山へと向かった。ほぼ平坦な縦走だが、ところどころササに隠れて足元が見えない。石に躓いて一度転倒する。ドスンという響きが我ながら情けない。

女山へ


女山
 樹林が途切れて、なだらかな草原が広がる。前方にぼんやりと道標が現れた。どうやら丘のような場所が女山頂上らしい。ガイドブックには男性的な石鎚山に対し、瓶ヶ森は女性的だと記されているが、全くそのとおりである。


女山頂上


頂上で
 標高1,896m。
 頂上にも誰もいなかった。
 権現を祀る小さな祠がポツンとあるだけだった。

 祠の側に腰を下ろして、遅い昼食を取った。

 ガスがなければ、とても見晴らしが良い所なのだが。


氷見二千石原
 食事を終えたら、サッサと下山した。ただ、同じルートはつまらないので、広大な氷見二千石原の中を散策して戻ることにする。

 氷見二千石原(ひみにせんせきばら)とは、ちょっと古風な響きだ。調べてみたら、昔、この広大な草原が、麓の西条氷見に似ていて、そこが二千石の石高を課せられていたことからそう呼ばれるようになったとか。

 頂上に権現を祀られていることから、古くからここも信仰の山だったのだろう。


氷見二千石原
 風に乗って、下からガスが上がって来る。

 木の枝が揺れ、ササが靡く。

 それ以外には何もない。

 だが、それが素晴らしい。


 大台ヶ原を連想させる風景。


女山方面を見上げる
 大台ヶ原と同じく、ここも人が歩くことによって笹原が削られ、雨によって土砂が流出されている。木道を設置する等、保護が必要だと感じる。

 最も良いのは人が立ち入らないことだろうが。


ガスが途切れる
 草原を下って行くと、ガスが途切れて、西条市内や瀬戸内海が僅かに見えた。右側へ移動すれば、もっとはっきりと見えるのだが、自然保護のため定められたコース以外は立ち入り禁止である。

 瓶ヶ森ヒュッテの側を通る。営業していると思っていたのだが、随分前から休業中だそうだ。小屋が朽ち果てていて、ちょっと不気味な気配だった。
 営業再開にはかなりの修復が必要だろう。


遠くに石鎚山
 ヒュッテから方向転換し、草原の中を緩やかに登って行く。

 再び視界が広がり、笹原と樹林の向こうに一際立派な山が聳えている。石鎚山(標高1,982m)だった。西日本一高い山に8年振りの再会である。

 この瓶ヶ森から稜線続きの山であるが、あそこまでかなり遠い。


石鎚山


石鎚山から眺めた雲上の瓶ヶ森(下は大森山)  2003年11月撮影


駐車場へ戻る
 駐車場へ戻る前に、瓶壺への道標があった。美味い湧水があるらしい。この山名の元となったと云われている(または山容が瓶に似ているからとも)し、行けば良かったと少し後悔。


 戻ると、足立ナンバーの車の持ち主がいた。私より前に、瓶ヶ森を周回していたのだろうか。
 服を着替えて、車中でこれからどうするか思案。
 このまま帰るなんてもったいない。
 せっかくなので、明日も違う山へ登ろう。
 この瓶ヶ森林道沿いにいくつか良い山があるが、十分な食料を持っていないので、一旦麓に下りなければならない。
 それなら違う山域をということで、同じく以前か ら登りたかった三嶺(みうね 又はさんれい 標高1,893m)が思い浮かんだ。剣山系の山である。

 エンジンを掛け、駐車場を後にした


瓶ヶ森(男山)


東黒森(標高1,735m)


遠くに薄らと太平洋
 帰りも林道から素晴らしい風景を楽しんだ。
 来る途中、各山の登山口付近にあった車ももうなかった。

 いつか機会があれば縦走してみたい。
 そんな風に思った。

 谷側へ目をやると、遠くに薄らと水平線が見えた。太平洋だった。吉野川源流、太平洋、幾重にも重なる山並み。…本当に遠くへ来たものだ。


鶏の唐揚げ定食
 西条市内まで下り、再び松山自動車道へ乗り、東を目指す。入野PAの食堂で夕食を取った。熱々の鶏の唐揚げが美味かった。

 大歩危から国道438号を通るつもりが、災害による通行止。この時は迂回路があることなど全く知らずに、つるぎ町へ遠回りし、剣山スカイラインを走って、三嶺登山口の名頃へ向かった。登山口駐車場に着いたのは午後11時頃だった。

 駐車場で車中泊となった。

三嶺へ

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