三嶺

〜平家落人の里 美しい自然林と大展望を楽しむ〜

 三嶺(標高1,893m)は、剣山系の山である。写真で何度か目にしたことがある、山頂付近に広がるなだらかなササ原と池と避難小屋の風景が印象に残っていた。次に四国を訪ねた時は、絶対登りたいと以前から思っていた山だ。

登山日:2011年9月23日(金) 晴れ

コース:名頃 駐車場 6:45 〜 7:40 平尾谷登山口 7:50 〜 9:10 ダケモミの丘 9:20 〜 10:40 山上池畔 10:45 〜 10:55 三嶺頂上 11:40 〜 11:50 三嶺小屋 12:05 〜 12:50 ダケモミの丘 12:50 〜 14:00 平尾谷登山口 14:10 〜 14:45 駐車場


駐車場
 名頃の駐車場で車中泊となった。車は他に3台ぐらい停まっていたが、いずれも登山者のものとは無縁のようだった。側を流れる祖谷川の音はそれ程気にならず、また寒さも思った程ではなく、よく眠れた方だった。

 朝6時頃、車のエンジン音で目覚めた。タクシーが停まって、1人の登山者が降り立ち、サッサと出発して行った。私もコンビニの握り飯等でササッと朝食を済ませ、出発した。駐車場のトイレは水洗できれいだった。
 天気は良い。空気は冷たいが、凍える程ではなかった。山の朝の空気は新鮮でとても美味い。胸一杯に吸い込むと、肺の中の汚れた埃等が浄化されるようだ。

 駐車場側の三嶺林道を歩いて登る。すぐに車止めのバリケードが置かれていて、一般車は通行止である。バリケードを越えて緩やかな上り坂をズンズン歩いて行く。

 側を流れる平尾谷川は少し前の台風の影響か、大岩に流木が引っ掛かったり、林道を大きな水筋が横断していた。川から水を引いているらしい太いポリエチレンパイプは<字型に折れていた。


三嶺林道


平尾谷川


登山近道分岐(右へ)


近道
 林道をしばらく行くと、ヘアピンカーブになり、右へ細い道が分岐していた。ここがどうやら登山者用の近道らしい。先で再び林道に合流するが、林道歩きは遠回りになる。

 近道は川に沿っている。歩きやすかったのは最初だけで、台風の影響か崩壊した箇所や、大水によって道が消滅してしまった箇所があり、ルートを見つけるのが難しかった。後で何人かの登山者からも、この近道を行くのに難儀したとの声を聞いた。
 これなら林道を歩いて行った方が、安全で早かったかもしれない。
 再び林道へ合流し、すぐに平尾谷登山口だった。ここからもまだ林道は上へ延びている。林道終点からだと歩行時間が短縮できるようだが、一般車が入れないので意味がない。

登山道


平尾谷登山口


ブナ
 登山口からは美しい自然林の中を登って行く。ブナやミズナラの原生林。平尾谷に陽が射して、緑色の木の葉が輝いている。
 傍らを流れている平尾谷川は段々遠くなり、いつしか支流に寄り添っていた。

 このルートも大きく崩壊したり、大水で道が消滅していたりしてわかりにくかったが、上りはまだマシだった。下りならルートを外れて、迷ってしまうかもしれない。


支流を渡る
 谷側に大きくえぐれた崩壊箇所は山側を迂回する。大きな石が谷底へドンッと大きな音を立てて落ちたので、びっくりした。

 急斜面を登って行くにつれて、支流の音も小さくなり、やがて水が滲み出るぐらいになった。後ろを振り返っても誰もいない。そろそろ後続の登山者に追いつかれても良い頃なのだが、今日はいないのだろうか。こんな良い天気なのに。


崩壊箇所


ネットを張る作業員達
 急斜面を登りつめて支尾根に出る頃、人影を見つけて驚いた。よく見ると3人の作業員がネットを張っていた。そういえば、昨夜名頃へ来る途中、見ノ越辺りで何頭もの鹿を目撃した。若い作業員に尋ねたら、やはり木を鹿の食害から守るためのネットだと言う。

 彼らは林道終点から登って来たそうだ。

 その林道終点からの道の合流点がダケモミの丘であった。丘らしくない林の中の支尾根である。
 ザックからアンパンを取り出し、エネルギー補給する。

 周囲を見回すと何気ない針葉樹林だが、普段見慣れた杉やヒノキではなく、モミやツガがほどんどだった。これだけ多いと、かえって植林の里山の雰囲気になってしまう。
 ダケモミの丘からは針葉樹林の中を行く。大きく九十九折りの斜面で上から単独の男性が下って来た。どうやら今朝6時にタクシーでやって来た男性だった。何と、まだ9時半である。通常のコースタイムでも頂上まで3時間半程掛かるのに。。。男性は、下の崩壊した近道がわかりにくかったと嘆いて、サッサと下って行った。あの速足なら私が登頂すると同時に駐車場へゴールしていることだろう。





針葉樹林の中を


ヌタ場


低い灌木の斜面をトラバース
 支尾根から尾根へ登って行くとやがて、背の低い灌木の急斜面をトラバースする。視界が開け、白髪山や剣山へと続く長い稜線が見えた。


水場への分岐
 道は水場への分岐に差し掛かる。左側を行けば水場らしいが、確認はしなかった。
 分岐を過ぎると、ガレ場のトラバースになり、転倒や落石が起きやすくなる。

 視界が広がると、登山気分が一気に高揚する。
 立ち止まって向かいの稜線を負う。右側の白髪山(標高1,769m)から左奥の剣山までずっと尾根が連なっている。途中に避難小屋が2カ所程あるので縦走者もいるのだろう。


剣山へと続く稜線


笹原の急斜面をトラバース
 ガレ場を過ぎると笹原の急斜面に差し掛かった。上部には大きな岩壁があり、最初はあんなところをどうやって登るのかと圧倒される気分で見上げていたが、道はトラバース気味に登って行った。

 この辺りでやっと後続に追いつかれた。50代ぐらいの夫婦だった。下の崩壊したルートがわかりにくかったと旦那の方は嘆いていた。
 沿道に咲く花々。笹原に目立たぬようにして咲いていた。

ツリガネニンジン


シコクフウロ


オトギリソウ
 シコクフウロは昨日の瓶ヶ森でも見た。
 まるで水滴が花弁に付いているかのように瑞々しく見えるオトギリソウ。


ヤマラッキョウ
 ショウジョウバカマにしては咲く時期が違うなと思って眺めていた花。帰って調べてみたら、ヤマラッキョウだった。

 ヤマラッキョウはネギ科。福島県以南の山地や湿原等、比較的湿潤な場所に生息するらしい。鱗茎を天ぷら等にして食べられる山菜だそうだ。


リンドウ


山上池畔


池と頂上方面
 道標が現れて、池の畔に着いた。山頂へなだらかなササ原が続いている。

 池は雪解け水や雨が溜まったもので、池の水が溢れる時のオーバーフローのような流れ道が池の縁に付いていた。


池と避難小屋 (後方は剣山)
 頂上へ向かった。

 麓からは想像できないような風景が展開する。
 今まで写真では何度か見たことがある風景の中に立ち、感動を抑えることができなかった。

 池と避難小屋をバックに、お互いに記念撮影を撮り合っている夫婦より先に頂上へ向かった。


頂上へ


頂上


三角点にタッチ


三嶺頂上にて
 誰もいない頂上で三角点にタッチし、三嶺に挨拶。
 麓から登り応えのある山だ。


 頂上は360°の大展望だった。


西熊山や天狗塚へと続く稜線
 西の方向、西熊山や天狗塚へと続くなだらかな稜線が目に入った。

 とても眺めが良さそうで、あのササ原を歩いたら、空中を散歩しているような気分になれるのだろうか。


祖谷川の谷の向こうに矢筈山
 北へ目を転じれば、祖谷川の谷の向こうに矢筈山をピークとした稜線が続いている。あちらも剣山から尾根続きである。

 祖谷川沿いに点在する集落はここからは見えない。


剣山方面
 登って来た道を振り返れば、避難小屋の向こうに剣山や次郎笈が見える。

 ここから縦走ルートが続いているが、あちらまで随分遠いように思える。


 こんな大展望を楽しんでいると、大らかな気分になってしまう。先週登った乗鞍岳のような雲上ではないけれど、大自然の中では人の存在はほんのちっぽけなもので、そんな小さな存在が毎日目まぐるしく変化する暮らしの中で生きている。それが人間なのだが、滑稽に思えて仕方がない。
 


剣山(左)と次郎笈(右)


薄らと太平洋
 さっきの夫婦の後から、ポツポツと登山者が続くように登って来る。

 誰かが、南の方に海が見えていると言う。目を凝らすと山並みの向こうに薄らと水平線が見えている。この山頂より南側は高知県になり、見えているのは太平洋だ。

 早いが山頂で大展望を楽しみながら、昼食を取った。


ササ原、池、避難小屋、剣山
 1時間程頂上にいた。本当に去りがたい風景なのだが、帰りの時間を考慮して、名残り惜しく頂上を後にする。

避難小屋内部


避難小屋
 多くの登山者達にすれ違いながら下り、避難小屋に立ち寄った。
 小屋の内部はきれいで、床板や柱はまだ張り替えて間もないように新しく、芳しい木の香が漂っている。中2階と併せると60人ぐらいは泊まれるだろうか。


去りがたき風景
 小屋を見学して、今一度ササ原と頂上の素晴らしい風景を目に焼き付けた。

 ここへはまた登ることがあるだろうか。


トラバース
 最初に出会った夫婦はすれ違う度に、登山者達からルートに関する情報を聞き出していた。どうやら下の崩壊道を避けたいようだ。
 だが、別ルートとなると元の駐車場へ戻るには時間が掛かるし、ピストンするには避けられない条件だと思う。

 池下のトラバース道はササ原の中を通り、寝転がると気持ちよさそうだが、かなりの角度の傾斜で踏み外すとかなり下まで滑落しそうな様子だ。
 尾根でもたくさんの人にすれ違い、ダケモミの丘へ戻って来た。ネットを張っていた作業員達の姿はなく、下山したか、別の場所で作業しているのか。

 この辺りで重装備の登山者3名にすれ違った。今夜は避難小屋泊まりなのだろう。この天気からして、明日の朝は素晴らしい御来光が拝めそうだ。

 ダケモミの丘から下って行き、ルートを踏み外した。気が付くと大水の痕を辿ってしまっていた。すぐに気付いて良かった。元のルートまで登り返し、地図や方向、またテープやら踏み跡等もしっかり確認して軌道修正。
 道が消失し、崩壊したりしてわかりにくい区間だった。また上りよりも下りが間違いやすい。


ダケモミの丘


平尾谷登山口へ


川と化した林道


駐車場へ
 平尾谷登山口まで戻って来てやれやれだった。後は崩壊した近道を避け、ちょっと遠回りになったが、林道をそのまま下った。

 まだ大雨の影響が残っているのか、沢の道が道を横断せず、林道上を流れ落ちて行く川のような箇所があった。沢の数や水の多さからして、数十年前に水不足で苦しんだ四国が想像できないぐらい水量が豊かだ。

 駐車場へ帰って来た。車の数が出発時よりもかなり増えていた。
 駐車場内には地元の人達が作ったのか、人形が飾られていた。どれもユーモラスだが、1体1体表情が違っていて、モデルとなった人が想像できる。

 服を着替えて、駐車場を後にした。
 再び見ノ越まで戻り、剣山ドライブウェイを下って徳島道へ戻る。


駐車場で


見ノ越から 三嶺
 見ノ越から遠くに三嶺が望めた。
 山のピークが3つあることから三嶺と呼ばれたらしい。高知県側ではミウネ、徳島県側ではサンレイと呼ぶとか。


 さらば三嶺。


美馬市 貞光川沿い


国道438号
 見ノ越から峠を越え、クネクネと国道438号を下る。途中いくつも集落を通り抜けたが、狭い箇所では両側の民家の軒がくっつきそうなぐらい迫っていて、よくこのような区間を大型バスが通れるものだと思ってしまった。

 徳島道の上板SAで夕食を取った。うどんと五目飯とごぼうのきんぴらがセットになった定食。五目飯ときんぴらは美味かったが、うどんはブヨブヨした食感でイマイチ。。。


 日付が変わるまでに帰京。ドッと付かれた。


上板SAで
 2日間、まるで駆け足のような四国遠征山行だったが、先週の乗鞍岳にも負けない感動を得た。
 四国の山は他にも石鎚山、剣山、次郎笈等たくさん良い山があり、今回のような素晴らしい風景に出会いたく、またいつか訪ねたいと思う。

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