仙丈ケ岳登山

  出発前まで選択に悩んだ。出発の2時間前に立山でのんびり過ごしている単独行さんに電話をして、あちらの様子を伺った。目的は剱岳。「天気は崩れることはないと聞いたけど。wolfさん、ええでぇ、こっちは。」と単独行さんは幸せそうな様子(^^;。
  でも、その誘惑を振り切って、南アルプスを選んでしまった。。。行き先は仙丈ケ岳(標高3,032m)。昨年登った北岳(3,192m)の北側に位置する日本百名山である。
  。。。単独行さん、すみません。また今度ご一緒させて下さい(^^;。
  登山日:2005年8月19日(金) 曇り一時雨後晴れ


  コース:仙流荘バス停 6:30 =長谷村営バス= 7:15 北沢峠 7:28 〜 7:47 一合目 7:47 〜 8:04 二合目 8:04 〜 8:30 三合目 8:35 〜 8:53 四合目 8:53 〜 9:22 大滝頭(五合目) 9:35 〜 10:00 森林限界 10:00 〜 11:25 小仙丈ケ岳 11:25 〜 12:57 仙丈ケ岳頂上(昼食) 13:16 〜 14:30 小仙丈ケ岳 14:30 〜 15:18 大滝頭(五合目) 15:29 〜 15:43 四合目 15:43 〜 15:53 三合目 15:53 〜 16:11 二合目 16:11 〜 16:40 北沢峠(長衛荘泊)

  前夜7時頃自宅を出発した。今回も出遅れたので、国道24号線〜京滋バイパス〜名神〜中央と走って、長野県の伊那ICで下り、長谷村へ向かった。途中コンビニで買出しをし、早朝始発のバスに乗る仙流荘の駐車場へ着いたのは午前1時頃だった。無料駐車場には沢山の車が泊まっていた。車の持ち主達は今頃は北沢峠付近の山小屋やテントの中で眠っている頃だろう。南アルプス仙丈ケ岳や甲斐駒ケ岳の登山口となる北沢峠へは一般車は乗り入れられないので、登山者はこの仙流荘前から村営バスに乗り換えることになる。
  月光で辺りがぼんやりと照らされている。明日は晴れだろうか。シートを倒して眠りについた。


仙流荘前 無料駐車場
  5時にセットしておいた目覚ましが鳴り、スッと目が覚めた。あれから数台車が到着したようで、出発の準備をしたり、トイレへ向かう人達がチラホラ見られた。私も車中でパンとアイスココアの簡単な朝食を済ませた。
  ザックを持って、バス乗り場へ歩いた。6時30分の始発バスで北沢峠へ向かう。この時期峠までは1日4往復運行されている。建物の中の切符売り場で北沢峠への往復乗車券を買った。往復運賃2,200円と、ザック18kg以上は荷物代として片道200円掛かるので、併せて2,600円だった。


仙流荘 バス乗り場


長谷村村営バス
  先頭から6番目に並ぶ。ザックを置いてしばらく周辺を散策していると、あっという間に人数が増えた。村営バスは小型マイクロバスで、30人も乗れなかった。溢れた人達はもう2台目の車両に乗る。

  運転手のガイド付きは有難い。峠までの道中の見所を紹介してくれる。その都度、乗客は右に左に、または後ろにと車窓からの風景に顔を向けた。人の熱気で窓ガラスが曇り始めた。


始発バスの車内


鋸岳  バスの車窓から
  朝日が眩しい。今日は天気が良さそうだ。だが、甲斐駒や仙丈ケ岳頂上付近は雲に覆われていた。

  林道はグングン高度を上げて行く。谷を挟んで向かい側に鋸岳の荒々しい尾根が見えた。とても険しいルートで、確か昨年単独男性が転落して死亡している。
  45分ほどで北沢峠へ到着した。清潔な公衆トイレがあり、また山小屋「長衛荘」には水場があった。
  ここから向こう側は山梨県南アルプス市である。南アルプス市の広河原からもここへバスが往復している。広河原は北岳や鳳凰三山の登山口である。広河原からもバスが到着し、峠は登山者で賑わいを見せた。

  だが、バスが折り返し、客を乗せて下って行き、また次々と登山者達が甲斐駒や仙丈ケ岳へ出発して行くと、峠はたちまち静寂を取り戻した。

  私も仙丈ケ岳へ出発した。


北沢峠


北沢峠で 背後は長衛荘


仙丈ケ岳登山口


コメツガ、トウヒ等の自然林
          

              ジグザグの登り


  峠からはいきなりジグザグの登りが始まった。トウヒやコメツガ等の鬱蒼とした針葉樹林の中を黙々と登る。来る途中は青かった空が曇り出した。
  1合目を過ぎると道はやや平坦になった。2合目で左から北沢長衛小屋からの登山道が合流する。
  3合目のスペースで休憩する。親子3人連れが休んでいた。奥さんは手ぶらである。ご主人と息子が荷役だった。

  単独男性が下りて来たので、上の様子を聞く。昨日北沢峠から登って仙丈小屋へ泊まり、今朝仙丈ケ岳頂上でご来光を見たという。これから峠へ下りて帰路につくそうだ。仙丈小屋の宿泊客は20人ほどで、寂しかったとのこと。



                 4合目


石が転がった急登り
          

                道中にて


  3合目の単独男性を皮切りに、登る人よりも下ってくる登山者とよくすれ違う。皆、昨夜は頂上直下の仙丈小屋や馬ノ背ヒュッテに泊まって、今朝頂上を踏んできたのだろう。
  3合目を過ぎると、石が転がる歩きにくい道となった。傾斜も増す。喘ぎ喘ぎゆっくり登って行った。 
          

            大滝ノ頭  5合目


  大滝ノ頭に差し掛かった。ここが5合目である。右に道が分岐していて、馬ノ背ヒュッテを経て頂上へ向かうコースだ。ちょうど単独の男性が下りて来た。男性は、北沢峠から登るよりも、峠から少し下った大平山荘横から薮沢沿いのコースを登った方が楽だという。道理で登る登山者の数が少ないわけだ。それに北沢峠でバスを下車した数人が大平山荘へ下って行くのを見かけた。

  私には峠から尾根伝いに登るのが楽だという先入観があった。次回からは地図を睨むだけでなく、経験者の意見も重視しよう。


森林限界へ


ハイマツ帯へ
  5合目から急坂を登ると、針葉樹が後退しはじめ、空が現われ、周囲はダケカンバやナナカマド等背丈の低い樹木に囲まれるようになる。森林限界が近づいた。

  晴天であれば、仙丈ケ岳への尾根筋がはっきり見えるハイマツ帯もご覧のとおりガスに覆われていた。冷たい風が吹いて、Tシャツ姿でジッとしていると寒い。

  後ろからご夫婦が登って来た。沿道にトウヤクリンドウが咲いているのを見つけてカメラに収められている。ご主人はGPSを持っておられるのか、小仙丈ケ岳が近いからそこまで行って休もうと言って、先へ進んで行った。。。。このご夫婦が、まさかあの「岐阜県の山歩き」の管理人RAKUさんご夫妻だったなんて、この時は知る由もなかったのだ。


トウヤクリンドウ


小仙丈ケ岳からの尾根道
  とうとう雨が降り出した。小雨だったが、標高の高いところで濡れるわけにはいかない。レインウェアを来た。。。。情けない気持でいっぱいだった。

  展望がない、寒い尾根を重い足取りでひたすら登る。すれ違う人達が羨ましく思えた。これから下山して温泉にでもつかって帰るのだろうか。。。


ミヤマアキノキリンソウ


シラネヒゴタイ
  急な斜面を喘ぎながら登りつめると、岩だらけの小仙丈ケ岳(標高2,855m)だった。もちろん展望はないので、素通りである。ここから比較的緩やかなアップダウンの尾根道となる。

  夏の最盛期はきっと素晴らしい花畑だろう。沿道にちょこちょこ咲いているウサギギク、シラネヒゴタイ、そしてミヤマアキノキリンソウを眺めていると、やはり秋の訪れを実感せざるをえない。雨でしっとり濡れたこれらの花々は瑞々しいというよりも、どこか寂しさを漂わせていた。


ウサギギク


岩場の下り


赤いペンキが目印


得体の知れないピーク
  緩やかなアップダウンとはいえ、途中2箇所ほど、岩場を下る箇所があった。雨で滑りやすい。鎖やロープがないので、赤いペンキを辿って、岩を掴み足場を確保しながら慎重に下りた。

  前方に大きなピークが立ちはだかっている。上部がガスに覆われているので、何となく不気味だ。黄色いレインウェアの単独登山者が下って来たので尋ねると、頂上はまだまだだという(- -;。よく見ると、今朝始発のバスで一緒だった登山者だ。この人だけ、大平山荘前で下りた。藪沢経由で登ってきたのだろう。
  得体の知れないピークを喘ぎながら登っていくと、さっきの家族連れに出会った。夫婦が地面を指差して、私に何か叫んでいる。「雷鳥よ、雷鳥!」目を凝らすと、1羽の雷鳥が私の方へ向かって、ヒョコヒョコ走って来た。
  雷鳥には今日ここで初めて出会った。一見鳩のよう(^^;。だが、首周りの模様は雷鳥そのものだ。こんな天気にがっかりしていたところへ、思いがけないこの雷鳥の出現に喜んだ。


雷鳥


仙丈小屋への分岐


砂礫の稜線


やっと頂上らしきピークが。。。
  得体の知れないピークを登りつめると傾斜が緩やかになり、仙丈小屋への分岐に差し掛かった。右は仙丈小屋を経て藪沢へ下る道だ。
  緩やかに砂礫の道を登って行った。

  尾根を右にトラバース気味に進み、2つほど頂上と間違えたピークを巻いて、ようやく頂上らしきピークを目前にする。よく目を凝らすと道標や小さな祠のようなものが見えた。


頂上へ


仙丈ケ岳頂上
  さっきの夫婦連れを最後に、もう誰にも出会わなかった。最後の上りを経て、仙塩尾根との分岐にたどり着くと、頂上が右手に現われた。

  ここまで遠かった。途中から雨で最悪のコンディションだ。展望も全くない。それでも頂上は踏んだ。「せっかく登って来たのに、何にも見えへんっ!」と叫びながら、頂上の極みである、三角点をしばいた。

  ふと側で昼食をとっておられる1組のご夫婦がいた。あとで知ったのだが、下の森林限界で会ったRAKUさんご夫妻だった(^^;。


三角点と


鰻寿司
  雨風を避けるため、一段低い岩陰に体を沈めて、昼食をとった。昨夜、名神高速の多賀SAで買った鰻寿司を食する。だが、あまり食欲はなく半分残した。後はバナナや食べる酸素を水で流し込んだ。

  RAKUさんご夫妻は、仙丈小屋方面へ下って行かれた。標高3,032mの頂上に一人残された私。。。晴れ間も期待できそうにないので、しばらくして頂上を後にした。


チシマギキョウ


タカネツメクサ
  頂上直下で3人の大学生風の男子にすれ違った。一人はポンチョで、いずれも軽装備なので、日帰り登山なのだろうか。


馬ノ背  小さく見えるのは馬ノ背ヒュッテ
  仙丈小屋との分岐に差し掛かる頃には雨は止み、段々視界がよくなって来た。何だ、今頃(- -;。

  まず馬ノ背が姿を現した。険しい荒々しい岩の稜線を想像していたが、名前のとおり、なだらかな馬の背中のような尾根だ。その尖端が馬ノ背のピーク(標高2,736m)だ。斜面に馬ノ背
ヒュッテが見える。

  南から北へと風が吹く。尾根を越えて、周辺を漂うガスを次々に吹き飛ばしていく。ヒューッとハイマツを撫でるような摩擦音が聞えた。とても神秘的な光景である。


ガスが退いて行く
  さっきの3人連れが追い越して行った。頂上にはほんの僅かな間しかいなかったようだ。北沢峠から最終のバスに乗って帰るのだろうか。

  稜線付近のガスはきれいになくなったが、仙丈ケ岳頂上付近はなかなかすっきりしなかった。晴れていれば尾根道から一望できるであろう北岳や鳳凰三山、中央アルプスや八ヶ岳は相変わらずガスの中だった。


小仙丈ケ岳


仙丈ケ岳


登って来る単独登山者


馬ノ背越しに伊那市方面
  荒々しい小仙丈ケ岳を越えて、急なハイマツ帯の斜面を下っていると、下から単独登山者が登って来る。今から頂上を往復するには遅い時間である。
  すれ違い様に話をすると、男性は今日は仙丈小屋に泊まって、明日は仙塩尾根を南へ向かうという。この天候なら、もしかすると夕方展望が楽しめるのではないか。
  仙丈ケ岳だけが目的なら、今夜仙丈小屋へ泊まって、明日頂上から展望を楽しめるかもしれない。けれども明日は向かいに聳える甲斐駒ヶ岳(標高2,967m)へ登るつもりでいた。仕方がなかった。


甲斐駒ケ岳


鳳凰三山
  樹林帯の中へ入ると、甲斐駒ケ岳や鳳凰三山が眺められた。甲斐駒は、頂上付近の白くむき出しになった岩稜が、まるで冠雪のように見える。迫力ある立派な山容だ。
  鳳凰三山も鉄壁のように聳えている。いつかあちらへも登ってみた。

  濡れて滑りやすい道を慎重に下りながら、何とか北沢峠に下り立った。すぐに側の長衛荘へ向かった。


無事北沢峠へ


長衛荘
  木造2階建ての小屋。玄関を入ると、右側に寝床が続いている。左が食堂だった。まだ5時前だが、既に20人ぐらいの客が夕食を取っていた。

  予め電話予約をしておいたが、空いている時は飛び込みでも泊めてくれるようだ。だが、休日は予約しないと宿泊を断られるようだ。

  明日は甲斐駒へ登る予定で、昼の弁当を頼んでいたが、とても疲れてしまったのと、明日もおそらく展望は望めないだろうと判断して、甲斐駒登山を中止、弁当を断った。


2階の寝室


夕食
  小屋のスタッフに2階の寝室へ案内された。1階の寝室はほとんど埋まっていたが、2階は半分ほど空きがあった。ラッキーだった。

  食堂は狭いので、先の20人が終わってから、私も含めた残りの7名が呼ばれた。フライものが中心の献立である。だが、食料は車で運ばれてくるので、野菜も果物もたっぷりある。味噌汁と白飯はお代わり自由だった。残さずきれいに平らげた。

  食事中に弁当が配られた。この山小屋は朝食は弁当制だった。狭い食堂での混雑を避けるためか、それとも朝各自自由に出発できるようにするためか。

  夕食後、外へ出て涼んだ。標高2,030mの北沢峠ではクーラーは必要がない。冷たい湧き水もふんだんに流れている。
  既に終バスが出てしまった峠はひっそり静まり返っていた。明日早朝出発するグループは、まだ明るいうちから床に就いていた。

  私も消灯時間が来る前に眠りに陥ってしまった。

翌日へ

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