本白根山登山
| よく眠れたほうだ。夜中に2、3度目覚めたが、すぐに眠りに陥ってしまった。日暮れ前の気温は14℃だったが、車の中でシュラーフザックに包まっていたので、寒さはほとんど感じなかった。 恐らく初めてであろう、群馬県で迎える朝。空が白み始め、少し車の往来が出て来たので起床した。駐車場で4時53分頃、ご来光を拝んだ。車内で缶コーヒーとパンの朝食を済ませて、出発の準備をする。公衆トイレの手洗い水は出しっぱなしだ。洗顔すると飛び上がるほど冷たかった。 駐車場係はまだ来ない。停め放題である。朝早く湯釜を見学してさっさと次の目的地へ向かう観光客も多かった。 |
![]() ご来光 |
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登山日:2005年7月17日(日) コース:白根火山有料駐車場 6:15 〜 6:35 逢ノ峰 6:45 〜 7:00 ロープウェイ山頂駅側 7:10 〜 8:05 鏡池 8:05 〜 8:35 展望台 8:40 〜 9:00 本白根山頂上 9:20 〜 10:05 ロープウェイ山頂駅側 10:05 〜 10:28 有料駐車場 10:35 〜 10:40 湯釜 10:45 〜 10:50 有料駐車場 |
![]() 有料駐車場と逢ノ峰(左) |
![]() 逢ノ峰へ |
駐車料金は帰りに支払うことにして、先に出発する。今日の予定は駐車場から逢ノ峰(標高2,109m)を越えて、本白根山(2,164m)まで往復し、ついでに湯釜を見学する。湯釜とは火口湖である。 ボチボチ観光客も到着する。駐車場を後にし、逢ノ峰へ向かう。沿道にはオトギリソウ、ハクサンシャクナゲ、ゴゼンタチバナ等の高山植物が咲いていた。 |
![]() ハクサンシャクナゲ |
![]() ゴゼンタチバナ |
| 僅かな登りで、逢ノ峰頂上へ到達した。頂上には展望台と、無線中継施設があった。 まだ誰もいない。 |
![]() 逢ノ峰展望台 |
![]() 展望台から |
| 北側に展望が開けている。左下に有料駐車場やレストハウス、また弓池が見下ろせた。前方に湯釜が大きな口を開けているが、この高さでは湖水は見えない。湯釜への遊歩道が斜めに付いている。湯釜の背後にどっしりと構えているのが、横手山(標高2,304m)だ。志賀高原はあの山の向こう側にある。 |
![]() 草津町方面 蛇行するのは国道292号線 |
| 下から熊鈴の音がカラコロ聞えてくる。登山者が登って来るのだろう。展望もそこそこに逢ノ峰を後にした。今度は東側に展望が開けて、草津町方面が眺められた。シラビソが林立する高原の中を国道292号線が蛇行している。あの向こう側に有名な草津温泉があるのだが、霞んでいてよく見えなかった。 |
![]() 逢ノ峰を下る |
反対側からリフトが通じていた。今の時間はまだ停止している。 柔らかい草地を下る。冬はスキーゲレンデと化すようだ。 |
![]() 本白根ゲレンデ(巻き道は左から) |
| 下りきったところが、ロープウェイ山頂駅だった。草津温泉から殺生河原を経てここまでリフトやロープウェイを乗り継いで楽に上がって来られるのだ。ただ、まだロープウェイは動いておらず、山頂駅もシャッターが下りた状態だった。案内板には、この先トイレがないので山頂駅のトイレで済ませておくように書いてあったが、シャッターが下りていてはどうしようもない。 さらに「コマクサ」の文字を案内板に見つけて驚く。実はこの山にコマクサが咲くなんて、この時まで知らなかったのだ(恥)。ちょうど今頃の時期に咲く花だ。咲いているだろうか。偶然の出会いに期待する。 |
| 後から数人の登山者が逢ノ峰から降りてくる。皆、再びゲレンデからピークを登り返して行くが、私はピークへ登らず、左からの巻き道を行くことにした。 静かな道だった。誰にも出会わないし、誰にも追いつかれない。沿道にはゴゼンタチバナやツマトリソウ、マイズルソウの白い小さな花が咲いている。ほとんど平坦な道をゆっくりと歩きながら、新鮮な早朝の森林浴を楽しむ。 途中、崩壊した沢に差し掛かる。対岸へはハシゴを使って渡たる。 |
![]() トラバース道 |
![]() 沢の崩壊箇所 |
![]() 殺生河原への分岐 |
![]() 木道 |
殺生河原への分岐に差し掛かった。直進すれば殺生河原へ下りて草津温泉へ行ける。右の登山道を登れば、鏡池を経由して本白根山だ。 道を登り始めてすぐに、初老の夫婦に出合った。もう本白根山から下りて来たようだ。コマクサについて尋ねると、群落をなして咲いていたとのこと。期待に胸が膨らんだ。 ジグザグに折り返す登山道を登りつめると、木道が現われた。老朽化し始めているので、慎重に歩くようにと看板が立ててあった。それにしても素晴らしい緑だ。毎日こんな環境の元で暮らすことができれば、心身にとってどんなにいいだろうかと悲しい想像をしてしまう。 |
| 緩やかに登りつめると視界が開けた。池が目の前にある。鏡池だ。説明板によれば、昔の噴火口に水が溜まってできたものらしい。池の底に見られる亀甲状の模様は構造土と呼ばれ、地下水等の働きにより、大きな石と細かい砂が分離されて出来た貴重なものだそうだ。 池へは下りずに、右回りで迂回する。シラビソと笹の登山道を歩いて池を半周すると、また展望のよいところへ出た。 |
![]() 鏡池 |
![]() 展望台(中央やや左側)、本白根山頂上(展望台のすぐ右隣) |
| 展望が一気に開けて、ここで本白根山の全貌が始めてわかった。ハイマツの中の道が展望台へと続いている。そのすぐ右奥が本白根山頂上だ。ただし、毒ガスが噴出して危険なため、三角点のある頂上(標高2,164m)は立ち入り禁止で、手前の登山道最高点(2,150m)が頂上とされているようだ。 草津白根山とは、さっきの逢ノ峰や湯釜の側の白根山(標高2,160m)、そしてこの本白根山を含めての総称だ。 |
![]() 展望台へ(コマクサの群落) |
展望台へと向かう。道の両側にロープが張られていた。よく見ると何やらピンク色の花が無数に咲いている。 。。。コマクサだった。草が途切れた砂礫の斜面に群落をなして咲いていた。予期せぬ出会いに感激する。一昨年、八ヶ岳の硫黄岳付近でチラッと見掛けて以来だった。 ここのコマクサはピンク色というよりも、紅に近いような濃い色をしている。 |
![]() コマクサ |
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| コマクサはケシ科の植物だ。他の植物が生息できないような砂礫地、しかも絶えず強風が吹いたり、土壌が崩れ易かったりするような厳しい環境の下で沢山群れを作っている。そんな環境で生息できるのは、地中深くに細いしなやかな根を張るからだそうだ。ただ人が歩くことにより、その細い根を寸断させ、コマクサを枯死させてしまうので、このような保護区域が必要なのだ。 コマクサに混じってヒメジャシンの花も咲いていた。夏から秋にかけて亜高山帯以上の岩礫地に咲くキキョウ科の花である。 麓を見下ろすように、花を開いていた。 |
![]() ヒメジャシン |
![]() 展望台にて 左側後方は四阿山 |
| 360°の大展望だった。雄大な風景が広がる。 私の後方には本白根山のピーク(地肌がむき出しになった箇所)と、本来三角点のあるピーク(そのすぐ左側後方)が間近に見える。それらの左側遠方に薄っすらと見えるのは昨日登った四阿山(標高2,354m)だ。裏側から眺めた山容だ。 |
![]() 草津温泉 榛名山方面 |
| 4、5人の登山者が登ってきて、同じように展望を楽しんでいる。地元の人達らしく、周辺の山には詳しい。あれが浅間山、あれが榛名山とか確信に満ちた山岳同定に私は聞き耳を立てた。 天気がイマイチなのが残念だった。 |
![]() 本白根山頂上へ |
| 展望台から階段を下って、本白根山頂上へ向かった。下りきったところで、先ほどロープウェイ山頂駅からピークを越してくる道と合流する。どうやらあちらの方が近いらしい。私が登って来たルートは下山に使われるようだ。 |
![]() 頂上へ |
![]() |
![]() 本白根山現時点の最高点 標高2,150m地点で |
コマクサ保護区域の中の遊歩道を歩いて、尾根を緩やかに登りつめれば頂上だった。頂上というよりも万座温泉へ下る歩道の途中にあるピークだった。三角点はこの奥にあるらしいが、現在は立ち入り禁止である。 |
| 記念写真を撮ると、隅に腰を下ろして展望を楽しみながら握飯を頬張った。 ここからの眺めで、かつてここが火山だったことがよくわかる。いや、現在も至るところに噴気孔があるから、内部では活発な火山活動が続いているのだ。 すぐ左手に本白根山の最高峰2,171m峰が続いている。中央やや右寄りの小さな丘は先ほどの展望台だ。下の遊歩道を蟻のように小さい登山者が往来している。 |

最高点からの眺め
| 握飯を食べ終えて、頂上を後にした。途中、コマクサを何度も楽しんだ。帰りは展望台を通らずに、ゲレンデへのピークを越える。 単独登山者もいれば、グループも、家族連れも、団体ツアーもまだ次々と登って来る。途中何度も道を譲った。中にはサンダル履きのカップルや、ちょっと余所行きっぽいカジュアルウェアの夫婦もいた。。。。後で知ったが、山頂駅までシャトルバスが走っているようだ。リフトを乗り継いだりすれば、1時間ほどでこの頂上まで来られる。道も登山道というよりは遊歩道に近く、意外と手軽に登山。。。いや、散策が楽しめるのには拍子抜けした。 こんな手軽さ、どこかの山に似ているぞと思ったら、乗鞍岳のそれだった。 |
![]() 木道 |
![]() ツマトリソウ |
シラビソや笹が生い茂るピークには木道が敷かれていて、沿道にはギンリョウソウやツマトリソウの白色系統の花が咲いていた。 |
![]() 逢ノ峰 右側にロープウェイ山頂駅舎 |
| 人の往来が途絶えることのない登山道を下って、逢ノ峰の麓へ戻って来た。リフトが動いていて、楽をしたい人達がこれから本白根山へコマクサを楽しみに行くようだ。 晴れ間も段々広がってきて、日差しが強くなってきた。帰りは逢ノ峰へ登り返さずに、左へトラバースする舗装道路を歩いた。 |
![]() 弓池 |
| たくさんの人や、どこかの大学の陸上部員にすれ違い、弓池の畔へ差し掛かった。寒々とした水面を眺めながら、池を半周して駐車場へ戻った。 駐車場は満車状態だった。草津方面から万座方面からの車や観光バスが渋滞気味に進んでいるのが見える。 |
| 早朝とは一変して、人で混雑する駐車場へ戻って来た。案の定、車のワイパーには駐車料金を払う催促めいた紙が挟んであった、丁寧な文言で、しかも慣例となっているようなので、気にはならなかった。紙を持って料金所へ行き、駐車代を支払った。普通車1日400円。 まだ昼食には早かったので、湯釜を見に行くことにした。こちらの方は蟻の行列だった。 沢山の観光客に混じって、コンクリ舗装の遊歩道を緩やかに登って行くと、火口湖の淵に立った。 |
![]() 湯釜へ |
![]() 湯釜 |
| 湖の色がどんな色か想像もしていなかったのだが、たぶん青い色をしているのだろうと思っていた私には衝撃過ぎる色だった。エメラルドグリーンにクリームを混ぜたような色。。。見ただけで、およそ生物など生息しているはずもなさそうな様子。周囲を覆う地肌も荒々しい。まるで地獄の淵に立っているような気分だった。 この湯釜は、直径300m、深さ25m。世界でもっとも強い酸性湖で、ph0.86、硫黄2000t、塩酸2500tを含んでいるそうだ。 |
![]() 湯釜より 逢ノ峰(中央)、本白根山(その右隣) |
| 振り返れば、駐車場までの相変わらず長蛇の蟻の行列。見ているだけでうんざりしてきたので、引き返すことにした。これから今日中に自宅まで運転して帰らなければならない。 |
![]() 冷やし山菜とろろそばと握飯 |
レストハウスで冷やし山菜とろろそばと握飯を食べる。冷たいそばの喉越しが良い。やっぱり関東はそばに限ると思い込んでいるのは私だけだろうか。 飲み水は、ここの湧き水を引いているのか、冷たくて美味かった。 本白根山はいくつかの登山コースがあるようだが、草津温泉より登れば登り応えがあったかもしれない。白根火山駐車場からは散策のようなルートで少々拍子抜けした。けれども、コマクサをはじめとするいろんな高山植物や、シラビソや笹に囲まれた爽やかな登山道、雄大な展望、そして今でも地中で確実に営まれている火山活動とその膨大なエネルギーと気の遠くなるような歳月によって形成された地形。。。結構圧倒された。 訪ねてみて良かったと思うのが当たり前である。 2日間、無事に登山を楽しむことができた。 |