| 北アルプスの焼岳(北峰 標高2,393m、南峰 2,455m)は、上高地へ向うバスの車内や、河童橋の上で眺めていた山だ。穂高連峰の奥穂から南西へ派生する尾根にある山だ。荒々しい山容で、今も火山活動が地下で活発に動いている。ずっと以前から登ってみたい山のひとつだった。 | ![]() 焼岳 上高地 梓川に架かる河童橋の上から (2005年7月撮影) |
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登山日:2006年7月22日(土) 晴れ コース:市営あかんだな駐車場 6:20 =(バス)= 6:40 中の湯バス停 7:00 〜 8:25 第1ベンチ 8:25 〜 10:16 第2ベンチ(りんどう平) 10:25 〜 11:00 下堀沢出合 11:00 〜 12:45 火山湖畔 12:50 〜 13:10 焼岳北峰頂上(昼食) 13:45 〜 14:00 火山湖畔 14:00 〜 14:50 下堀沢出合 14:50 〜 16:22 登山口 16:26 〜 16:48 中の湯前 16:48 〜 17:25 中の湯バス停 17:40 =(バス)= 17:55 市営あかんだな駐車場 |
| 仕事を終えて一旦帰宅し、用事を済ませてから出発した。午後7時を回っていた。 |
| 自宅から北アルプスへは、国道24号線、同307号線で宇治田原町を通り抜け、宇治川沿いに走り、南郷ICから京滋バイパス〜名神〜東海北陸自動車道で高山市へ向うルートが早いようだ。 途中、名神の多賀SAで夕食を取り、明日の食料を買い込む。東海北陸自動車道へ入ると交通量がグッと減る。 午前1時過ぎに高山市営あかんだな駐車場前へ到着した。やはり安房峠へ通じる旧道のゲートは閉ざされたままだ。これでは新中の湯ルートの登山口へは車で行けない。岐阜県側の中尾温泉から焼岳へ登るルートもある。いろいろ思案した結果、市営あかんだな駐車場へ駐車し、翌朝はバスで移動し、中の湯ルートで登って、中尾温泉へ下り、時間があれば温泉に浸かってバスで駐車場へ戻って来ることに決めた。 夜空に星は出ていないが、天気予報のとおり雨は降りそうにない。気温20℃。ゲートは午前3時まで閉じたままだ。シートを倒して、仮眠する。 |
| 翌朝、車が通る音で目覚めた。5時45分頃だった。整理券を取って、駐車場へ進入した。意外と車の数が極端に少ない。もう夏山シーズンへ突入しているはずなのに。 荷物を整えている間に、5時50分発の上高地行きのバスが出発して行った(^^;。 次は6時20分発だ。自動販売機で切符を買って、到着したバスへ乗り込む。パンを齧り、ジュースを飲む。 結局、乗客は私一人だけだった。次の平湯温泉バスターミナルで登山客が一人乗り込んできた。運転手は、係員と首を傾げ合っている。「客が少ない。」 |
![]() 市営あかんだな駐車場バス乗り場 上高地行きバス |
![]() 中の湯バス停付近 左:上高地へ、右:松本市内へ |
![]() 中の湯ルート登山口へ |
![]() 自然林の急登 |
バスは安房トンネルを抜けて、中の湯バス停に停まった。下車したのは私だけだった。少し坂を登って、登山口を見つけた。小さな沢の左側に踏み跡が上に続いていた。その左は。。。まるで滝のように水が流れ落ちている。登山口のプレートは滝に埋もれてしまっていた。。。先日の大雨の影響だろうか。 梓川も濁流と化していた。 登山口から少し登って、右の沢を横断すると。自然林の中をジグザグに登って行く。結構急な斜面だ。 朝のヒンヤリした冷気に包まれるが、無風なので体を動かしていると汗をかく。やっぱり寝不足は体にこたえる。急登に喘ぎ、何度も立ち止まる。 |
![]() ブナ林と落石雪崩止め |
![]() 朝日が射し込む支尾根 |
| 足取りが重い。。。周囲は目が覚めるような爽やかなブナ林なのに。体調が悪いと感動が湧き起こらないようだ。 何とか踏ん張りながら、支尾根へ取り付いた。朝日が射し込む。天気は良くなっていくのだろうか。 ほとんど花が見られない自然林の中で、オトギリソウとハナチダケサシに出会う。綿菓子のようにふんわりしているハナチダケサシ(花乳茸刺)は、ユキノシタ科の花。トリアシショウマに似ている。 |
![]() 左:オトギリソウ、右:ハナチダケサシ |
![]() 傾斜が緩やかになる |
支尾根を少し登ると、だんだん傾斜が緩やかになり、山腹をトラバースするようになる。楽になった。 ササ床とブナの林が美しい。 大木の側を通り過ぎる時、根元に道標を見つけた。「第一ベンチ 中の湯へ30分 焼岳へ3時間」と書かれていた。辺りにベンチはないが、ここが地図に記されている第一ベンチなのだろう。 。。。うっへー、まだ頂上まで3時間もかかるのか(- -;。体調がすぐれないし、リタイヤして温泉にでも浸かろうか。でも、せっかくここまでやって来たのだから、もう少し頑張ろう。 飴を口の中へ放り込んで、第一ベンチを後にした。 |
![]() 第一ベンチ |
![]() 第一ベンチの道標 |
| 第一ベンチから再び高度を上げて行く。後ろを振り返ると、木々の間から霞沢岳(標高2,645m)が見えた。頭は雲に覆われている。焼岳も今日はこんな感じなのだろうか。 いつの間にか、ブナが後退し、代わりにシラビソ等の針葉樹が辺りを支配し始めていた。足元にはツクバネソウやゴゼンタチバナなど比較的地味な色の花が咲いている。ツクバネソウ(衝羽根草)は、輪生葉が羽根つきの羽根に見えることからそう呼ばれるようになったそうだが。。。それにしてもこれが羽根に見えるだろうか(- -;。 |
![]() 雲に覆われた霞沢岳 |
![]() ツクバネソウ |
![]() ゴゼンタチバナ |
![]() ツマトリソウ |
途中で一人の男性登山者とすれ違った。随分と早い下山だ。この時間帯なら、もしかして昨日は上の焼岳小屋に泊まったのだろうか。 挨拶を交わした。 この頃いろんな山で見かけるツマトリソウ。端正な顔立ちで可憐に咲いていた。 |
![]() 暑い、歩きにくい |
![]() 視界がよくなる |
| 針葉樹林も後退し、ササとダケカンバの開けた風景へと変わる。変化に富んだコースだとつくづく思う。 周囲の視界が良くなった代わりに、陽射しが照りつける。おまけに大きな石がゴロゴロ転がっている道で歩きにくい。 ここは試練だった。暑さと体調の悪さでもう焼岳のことは忘れかけていた(^^;。 でももうすぐ素晴らしい風景が待っているはずだ。ここは踏ん張りどころだった。 傾斜が緩んで平らな湿地のような場所へ出た。。。。目の前に特徴あるピークが目に飛び込んできた。焼岳だ! |
![]() りんどう平にて 後は焼岳 |
![]() 再び暑い、歩きにくい |
湿地があるこの場所は、りんどう平と呼ばれるところだった。秋には本当にリンドウが咲くらしい。地図には第二ベンチとも書かれてあるが、ここにもベンチらしきものはない。 前方に見える2つのピークのうち、左側が南峰(標高2,455m)みたいだ。目指す北峰(2,393m)は右のピークの後に隠れているようだ。 。。。しかし、目指すピークはまだあんな遠いところに(^^;。 水分を補給し、先へ進む。体調の悪さとピークへの遠い道のりにヘラヘラ笑いしながら。。。。 再びダケカンバやナナカマドの林の中へ入り、また歩きにくい石だらけの道に苦しめられる。風は吹かないし、陽射しに照り付けられるし、おまけに倒木に行く手を阻まれる。 |
![]() 下堀沢出合にて |
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| ヒイヒイ言いながら、ようやく歩きにくい石ころ道とおさらばして、笹に囲まれた緩やかな傾斜を登って行くと、左の方向から人の話し声が聞えてきた。それも数人の声だ。 人の姿が見えて、下堀沢出合だった。ここで左から新中の湯ルートの道が合流する。私と同時に10人ぐらいのパーティが登って来て、ここで休憩する。尋ねたら、彼らは中の湯旅館まで車で上がり、そこから舗装道路を歩いて新中の湯ルートを登って来たと言う。 彼らより先へ進む。 |
![]() 下堀沢と南峰(中央) |
![]() 左:前穂高岳、右:霞沢岳 |
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下堀沢の縁に立つと、前穂高岳(標高3,090m)とそれに連なる明神岳(2,931m)、右に霞沢岳が見えた。奥穂高岳(3,190m)へは登ったが、前穂はまだだ。いつか登る時が来るだろうか。。。。 正面には残雪が残る下堀沢と荒々しい岩の南峰がこちらを見下ろしている。うわぁ、きつそうだ(>_<)。道は雪渓の左を撒いている。 木のハシゴがいくつか連続した。 |
| 雪渓をよく見ると、表面に無数に凹凸が出来ている。スプーン・カットというらしい。後から続くパーティーのリーダーが仲間に説明していた。まるでスプーンで削ったような形だからだそうだ。 体調の悪さはピークに達していた。空が晴れ渡ったのはありがたいが、暑い。直射日光を遮ってくれるのは、時折上空を流れて行くちぎれ雲ぐらいだった。 そんな状態で後を追われるのはいやだったので、パーティに先へ行ってもらう。 |
![]() 北峰 |
![]() ツガザクラ |
![]() 直射日光で熱せられて暖かい石 |
![]() 少しずつ近づく北峰 |
パーティーから1人の女性が脱落して、道端に座り込んでいる。体調が悪いのだろうか。ここで待っているか、先に下山するとリーダーに申し出たようだ。他のメンバーは先へ進む。 だが、次にまた女性が1人立ち止まっている。膝を傷めたらしい。女性の夫らしい男性が付き添っている。 気になりながらも私はマイペースで進んだ。下堀沢源頭の、岩がゴロゴロ転がる急斜面を登って行く。何気なしにペンキで○印が描かれた岩に触れてみると、とても暖かい。直射日光に照らされているからだ。まるで石自体がじんわりと熱を発散させているようだ。 ツガザクラやコイワカガミが咲いているが、ゆっくり観賞しようという気にはならない。何度も立ち止まっては、遠い北峰を見上げる。 。。。かつてこれと同じシーンがあったのを思い出す。槍ヶ岳だった。あの時は槍の穂先が前方に見えているにもかかわらず、その麓までたどり着くのに恐ろしいぐらい時間が掛かった。 |
![]() ガスを噴き出す北峰 |
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| それでも一歩一歩確実に稜線へ歩んだ。稜線に近づくに連れて、北峰の荒々しく、恐ろしいような風景に目を見張る。一箇所ガスが濛々と噴き出ていて、登山者達はその側を歩いている。下山者に尋ねると、あのガスの後が北峰のピークらしい。 だんだん吹き付ける風が冷たくなり、たまらず長袖シャツを着た。 やっとのことで稜線に立った。北峰は噴き出るガスの向こうにぼんやり浮かんでいる。まるで悪魔が棲んでいそうな古城のようだ。 |
![]() 稜線に立つ 前方は北峰 |
![]() 火山湖 |
稜線の向こう側を眺めた。湖がある。火山湖だった。かつて火口だったところだ。 湖の色は青いが、およそ生物なんか棲めそうにない様子だ。荒々しい岩に囲まれていて、時折ガスが湖面の上を走り抜ける。不気味だけれど、神秘的な風景だ。 行ったことはないが、青森県下北半島にある恐山を思わせる。霊場みたいだ。 |
![]() 南峰 |
![]() 下堀沢源頭 |
| 北峰頂上へ向う。振り返ると、南峰がこちらを見ている(^^;。あの上に三角点があるそうだが、とても登ろうという気になれない。 シューッと不気味な音を立てて噴き出るガスを避けるように、北峰を回り込む。下堀沢源頭を見下ろすが、随分下から登ってきたものだ。パーティーと出会った下堀沢出合はここからでは見えない。私が登り始めた中の湯の登山口はどこだろう。気の遠くなるほど遥か下。。。。 岐阜県中尾温泉側からのルートと合流する。ちょうど登って来た登山者に尋ねると4時間でここまで来たと言う。 転落しないように、慎重に岩場をよじ登る。もう一箇所ガスが噴き出ている。硫黄のような物質が岩にベットリ付いている。 岩をよじ登りながら、目に飛び込んできた眼下の上高地に、思わず歓声を上げてしまった。蛇行する梓川は土色だ。どことなくアマゾンの奥地を連想させる(^^;。 |
![]() 北峰頂上へ |
![]() 上高地 蛇行する梓川 |
![]() 噴気孔 |
![]() 北峰頂上 |
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![]() 頂上にて |
。。。そして頂上へ。麓の登山口からここまで随分と時間が掛かった。もう昼過ぎだ。地図では4時間弱のコースタイムだと書いてあったが、遥かにそれをオーバーしてしまった。もっとも体調が悪かったせいもあるし、それに私は元々亀足だし。 でもいずれにせよ、この山の頂上へ立てたことは何よりも嬉しかった。途中でリタイヤしようとも考えた。 頂上には先ほどのパーティーと、他に5人ぐらいの登山者が昼食を取っていた。私も石の上に腰を下ろして昼食にした。 |
| 多賀SAで買った鯛寿司は敦賀産だった。寿司飯と酢で〆た鯛が美味い。 。。。「山は人を寛容な気分にさせる。」とはネットの山仲間のルネさんが仰られた言葉だった。今、まさにその気分に浸っている。 絶景かな、絶景かな。。。石川五右衛門も生きてここに立っていたら、多分そう洩らしていただろうな。 こんな展望でも十分ではないか。私を十分過ぎるほど感動させてくれた。 青空だったのが、いつの間にか雲が出始めていた。奥穂方面は雲の中だ。辛うじて上高地と霞沢岳、そして中尾温泉と笠ヶ岳(標高2,897m)が望めた。いつかあの笠ヶ岳へも登りたい。 |
![]() 鯛寿司 |
![]() 頂上から 上高地と霞沢岳 |
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![]() 中尾温泉(麓)と笠ヶ岳 |
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![]() 南峰(左)と火山湖 |
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![]() 上高地を見下ろす |
食後もしばらく展望を楽しんだ。 上高地を見下ろすのは、本当に爽快だ。今日帝国ホテルにお泊りになられる方々は残念ながら土色に汚れた大正池を観賞されていることだろう。。。。 パーティーが頂上を後にし、入れ違いに別のパーティーが登って来たのを機に、私も頂上を後にした。 |
| 岐阜県側の中尾温泉へ下りるつもりだったが、中の湯側へ下るほうが早いようなので、登って来た道を下ることにした。 午後になって空が曇り始めた。下堀沢源頭から振り返ると、北峰はガスの中へ隠れていた。 |
![]() 所々ガスが噴き出ている |
![]() ガスに覆われ始める焼岳 |
倒木と石だらけの道がいやだったので、新中の湯ルートを下ることにした。最初は緩やかな下りのササ道も、針葉樹林、ブナ林と風景が変わる。小さなコブを2つ越え、ササの中のジグザグ道を下ってしばらく行くと、下に舗装道路が見えた。 車が1台停まっている登山口へ下りた。。。。確かここは通行止のはずだったが??? |
![]() 舗装道路が現れる |
![]() 登山口へ |
| 登山口で水分を補給し、アンパンを齧る。甘いものが美味い。 これから中の湯バス停まで、ジグザグの舗装道路歩きが始まる(^^;。途中の中の湯で一風呂浴びようと思ったが、確か市営あかんだな駐車場へ帰るバスの最終が5時か6時だったのを思い出し、温泉はパスし、ひたすら歩くことにする(- -;。 あーあ、これなら岐阜県側へ下りても、そう変わらなかったかもしれない(^^;。 |
![]() アンパンと |
![]() 中の湯 |
![]() 中の湯バス停で |
![]() 市営あかんだな駐車場 |
舗装道路歩きは長かった。。。途中中の湯前を通りかかったら、風呂上りの人達が出てきた。とてもさっぱりした様子だった。羨ましい。。。 登山口から1時間掛かって中の湯バス停へ戻って来た。やれやれ。足が棒のようになっていた(^^;。 15分ほど待って、17時40分発の市営あかんだな駐車場行きのバスが到着した。 車内は上高地帰りのカップルが2組だけ。やはり大雨の影響で今日は観光客が少ないのだろうか。 駐車場へ戻っても、朝の時と車の数はほとんど変わらなかった。 |
| 最初は体調不良でリタイヤも考えたが、何とか焼岳へ登頂できた。麓の緑一色の自然林からは想像できないぐらい、頂上付近の荒々しい風景が印象的だった。今でもこの山の地下では活発な火山活動が起きている。頂上付近で噴き出すガスがその証。 頂上からの展望も素晴らしかった。 だが、中の湯からのコースはきつかった。いつかまたこの山へ登る時は、岐阜県側から登ってみたい。 |
帰りに。。。

平湯温泉民俗資料館の露天風呂で一風呂浴びた。
入浴料300円。誰もいない風呂を独占した。