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細かい設定等はまた後日相談しましょう。
あと、要望あれば言ってください、できる限り(可狽ネ範囲で)やりますので・・・


  時空戦記アルテリオン・オリジナルストーリー 第3章「戦場の出会い」
Date: 2003-09-20 (Sat)

 #3 戦場の出会い

 少女が、泣いている。
崩壊した建物の中で。
たった一人、灰色の空に座り込む少女。
(・・・!)
彼女は立ち上がった。誰かが呼んでいる。私の名を・・・

(近い・・・近くなっていく・・・?)
興奮する感情を抑えながら敵の奇襲に神経を尖らせるシェイド。
そんな中―――
「・・・声・・・か?」
「シェイド!?何をしている!」
レジスタンスの仲間は声を荒げる。だが、シェイドの耳には届くことは無かった。

「見えた!」
アネットが声をあげた。
「アーネス、私が食い止めるからそのうちに!」
「了解!」
アーネスは十分にスラスターを噴かせた後、空に跳ね上がった。
スコープで捕捉した空に浮かぶ飛行機。味方の識別信号。間違いない。
連邦用の周波数にあわせ、輸送機と回線をつなぐ。
「そこの輸送機!応答しろ!」
「は、はいっ!」
「敵はオレが食い止める!その間に逃げ切れっ!」
それだけ言って輸送機の進路の先に待ち構えるMWに突っ込んだ。
ビームブレードを引き抜きふくらはぎのあたりを一閃。
両足を切断された上半身は地に落ちていく。
「1つ!」
敵の銃弾を紙一重でかわし、ミサイルランチャーを引き抜き―――
(コクピットは・・・いや!駄目だ!)
ずどんっ!
敵機の左肩で爆発した直後、敵の視界からアーネス機の姿は無かった。
「な・・・何だと!?」
「あれがHMWの力なのか・・・」
「だがやるしかない・・・俺たちにはサフィーアさんがいるからな!」
ゲリラ達は目の前でHMWの力を見ながらも果敢に戦いを挑んできた。
目標は、新型とパイロットを積んだ輸送機―――

(っ・・・サフィーアですって!?)
6機目を無力化したところで敵の会話を傍受したアネットが一瞬硬直した。
「・・・まさか。そんなはず・・・ない・・・わよね!」
何かを振り払うようにビームブレードを真後の敵機に食らわせる。
「その『まさか』が本当だったらどうする?アネット・プリミアス。」
低い女の声。
「何ですって!?」
声の方向に反射的に向く。そこにあったのは先鋭的な青い機体。
「貴様を倒すためにならどんな手段であろうと使うさ」
高速で青い残像を残し接近する。
機体の色に酷似した色のビームブレードを取り出し、切りつけた。
「こうなったら仕方ないわね・・・まぁ、もう腐れ縁としか言いようが無いけどね・・・!」
「何とでも言え・・・だが、このミストテイザーはあの機体とは違うっ!覚悟してもらおうか!」
赤い光と青い光がぶつかり合った。
交じり合うことの無い光が火花を散らし、互いに押し合う。
「・・・っ!」
アネットがビームブレードを引き、紙一重で直撃を逃れるも、右足が失われてしまった。
「ふっ・・・その手負いの状態で私に勝てるか?」
「勝つですって・・・?そんなことは考えていない!」
「何だと・・・?」
体性をくずしながらも、アネットはもう1本のビームブレードを取り出し、サフィーアに投げつけた。
「その程度しか抵抗はできまい・・・大人しく負けを認めろ!」
高く飛び上がり、ビームブレードをコクピットに突き刺そうとした。
(私も・・・これまでね・・・)
―――ところが。
空中でサフィーアのミストテイザーが弾けとんだ。
正しく言えば、爆発により吹き飛ばされた。
(・・・誰が・・・?)
射線上に立っていたのはアネットやアーネス機より古いタイプのFBX−099だった。
まだミサイルの射出口からはうっすらと煙があがっている。
「あれは・・・FBX−099!誰が乗っているの!?」
「あ、あたしです!エルフィアです!」
「え・・・?どうしてそれに乗っているの?」
「何か・・・嫌な予感がしたんです、だから博士に頼んで・・・」
「そう・・・」
助けられたのは良かったが、どうしてここに・・・?
(でも、あれにはIFBSがあるはず・・・エルフィアならきっと大丈夫ね・・・)
「わかったわ、私の援護に回って!」
「りょ、了解!」
「2対1か・・・手負いの状況では無理か・・・?」
「サフィーア・・・」
「今は引いてやる!だが、今度会ったときは手加減はしない!」
ミストテイザーは飛び去った。

(近い・・・ここか?)
ブースター全開で飛び回っていたレッドエールが始めて停止した。
(・・・?)
シェイドは一人の少女を見つけた。
怪我などはしていないようだが、保護者や親類はまったくいないようである。
真っ直ぐな、淡い茶色の小さな瞳がコクピットに向けられている。
シェイドはレッドエールを降り、少女の下に歩み寄る。
―――が、それは出来なかった。
ハッチを空けたとほぼ同時にマシンガンの嵐。
「ちっ・・・ひとまずおあずけかっ!」
すぐにハッチに飛び移り、同時にエンジン始動。
パスコード出力・・・承認、ハッチ閉鎖。
(さて・・・蹴散らすか・・・!)
即、ビームガンを足の間接部に当てた。
「ここで・・・爆発させるわけには行かないか!」
ひるんでいる隙にとび蹴りを当てた。敵は吹き飛び空を舞う。
その間に再びハッチ開放。しゃがみこんだ少女を抱え再び飛び乗る。
「・・・大丈夫か?」
「ひっく・・・ひっく・・・」
少女は話すこと無くただ泣くのを必死にこらえている。
(仕方ないか・・・これがこの世代の現状だからな・・・)
彼女を抱きながら、操縦桿を握る。
彼女を守るために―――

「ちっ・・・まだいるのか・・・」
アーネスは小さくつぶやくと敵機の足を切ると、他の敵機に向かって飛ぶ。
「輸送機より今はここの方がよっぽど安全かもな・・・」
一人で苦笑しながらも敵の足元にミサイルランチャーを打ち込む。
敵は爆発で吹き飛ぶ。これで10機目。
(よくこれだけの機体をそろえたな・・・背後に何かあるのか?)
周りは動けなくなった機体がごろごろしている。
「・・・輸送機、戦闘エリアは通過したか?」
「は、はい!」
これで最低限の任務はクリアした。今引いてもいいだろう・・・
心中そう思いながらアネットに通信を繋ぐ。
「少佐、輸送機は戦闘エリアを通過しました、自分は引きます。」
『了解、念のため基地まではついていって。』
「了解です」
通信を切ると、輸送機が向かった方向に走り出す。
(これでいいんだ・・・な)
アーネス、戦線より離脱。


  時空戦記アルテリオン・オリジナルストーリー 第2章「少女の決意」
Date: 2003-02-16 (Sun)

#2 少女の決意

アーネスの朝は意外にも遅かった。
窓から入る日の光に目が反応するのは8時を過ぎようとする頃であった。
「アーネス・・・?起きてる?」
アネットがドアをノックしながら声をかける。
「少佐ですか。おはようございます」
軍服に着替えたアーネスが出てきた。
「・・・その様子だとまたあの書類見てないようね」
「書類・・・ああ、あのパイロットの・・・」
昨日貰ったが、そのままにしていた書類。新規パイロットの追加だっただろうか・・・?
「見てないなら、今見ておくといいわ。あ…時間が無いわ、出撃準備をして」
アーネスはポケットに押し込んでいた書類を広げた。

「あれ?もう着いてるの?」
アネットの意外な表情に兵はうろたえずに答える。
「周辺で戦闘が起こりそうな状況だったので、先に飛んできました」
あくまでこの少女も上官なのだ、と強く念じながら兵は答えた。
「そう・・・だから3人で合流前に来たわけだ・・・2人で」
「ええ。そういうことになりますね」
大規模な戦争こそないが、ゲリラがMWに乗って戦闘が起こる場合がある。そのときは、常に軍が鎮圧を図る。
そして、今度の鎮圧はHMWの出番のようだ。
「・・・先にその二人を確認するわ」
「わかりました」
案内された部屋には二人の少女が待っていた。
ひとりは茶色の若干長い髪をした少女。年は17、8といったところだろうか。
もうひとりは紫のロングヘアー。こちらも年はそう変わらないだろう。
そして、部屋にはいったアネットが口を開いた。
「えっと・・・エルフィア・トリーディアさん、それとリーナ・アルタールさんね」
「はい」
異口同音にエルフィアとリーナが返事を返した。
「いきなり軍行きだなんてごめんなさいね・・・私はアネット・プリミアス、一応ここの指令・・・でもあるわね」
「あ、あの…」
遠慮しがちにエルフィアが口を挟んだ。
「どうしたの?」
「私…戦わなきゃならないんですか?」
「それは…」
口ごもるアネット。それは無理も無い、いきなり軍に連れて行かれ、戦えと…自分もその立場になれば同じ行動をするかもしれない。
「軍の…意思だから。私はあなたたちに戦いを強いるつもりは無いわ…戦いがいやなら私が責任を持ってあなた達を元いた場所に送り返してあげる…」
「でも…私たちがここにいるということは戦う力があるということですよね?」
リーナが口を挟んだ。
「そうね…あなたたちには特別な力がある…だからここにいるのは確かなんだけどね…」
そのとき、隣にいた兵士が小声でアネットに告げた。
「少佐…そろそろ出撃です、中尉がお待ちですよ」
「え、ええ…」
「戦闘…ですか?」
エルフィアが突然切り出した。
「そうだけど、あなたたちは今回出番は無しになると思うわ」
アネットは格納庫へ向かった。
「…ねえ、ルフィちゃん」
リーナがエルフィア―――ルフィと呼ばれている―――に呼びかけた。
「どうしてあんな事を訊いたの?」
「…私の力が必要だったみたいだから」
「だからって、わざわざ戦おうとしなくてもいいじゃない」
「でも…」
ルフィは一旦口ごもり、続けた。
「でもそれは、『戦えるのに戦わない』のでしょ?それはただ戦いを避けているだけ…そう思ったから。」
「戦えるのに戦わない…そうかも知れないわね」
「…戦闘は、新たな戦闘をとめる力を持ってると思う…それに、民間人を放っていることにもなると思うの。」
「そっか…うん、そうだね。私も戦う。いままで軍にそうやって守られてきたからね」

「少佐、詳しい作戦はどうするのです?」
「新規パイロットの護衛が第一。ゲリラの鎮圧を行いながら、安全確実な航路の確保。これが任務よ」
簡単なアネットの説明。しかし、この中には新しいパイロットが誰かは触れていなかった。
「わかりました」
「さっそく出るわよ…あ、そうそう、今回の任務には民間レジスタンスの協力もあるの。だから、レジスタンスの機体への損傷は抑えて。」
「民間と共同…ですか」
珍しい話だ。軍の最新鋭機と民間レジスタンス…どう考えてもありえない話である
「いいのですか?HMWは軍でも機密扱いでしょう?」
「大丈夫…そこのレジスタンスわね、軍の潜入捜査官(アンダーカバー)が混ざってるの」
「なるほど…しかし思想等は平気なのですか?」
「そこも問題ないわ、前にも協力作戦があったから」
「ふむ…なら問題ないですね」
「そういうこと。アネット・プリミアス、出るわ!」
「…アーネス・ルディアール、続く!」

それからしばらくして。
「…軍のHMWを確認、こっちもそろそろ出たほうがいいぜ」
男がひとり、崖の上から望遠鏡を覗きながら通信をしている。
『了解した、一号ハッチから順に出ろ!』
通信機のスピーカーから低い男の声が聞き取れる。
崖にカモフラージュされた三つのハッチから1機づつ、青い旧軍用機のHW−100、通称『ボレアス』が飛び出した。
いまや武装を取り外し、民間用のMWともなっている。
ところが、このレジスタンスの使っている機体はどれも武装がそのままになっている機体ばかりである。
リーダー機と思われる赤いボレアス―――レッドエールと呼ばれている―――を先頭に空を舞った。
「大丈夫だな?」
通常と青い機体からの通信。レッドエールに向けて通信を放っている。
「ああ、いい機体だ」
レッドエールのパイロット―――シェイド・フレイマン―――は答える。
「あんたで大丈夫なんだな?雇兵さんよぉ?」
「……」
無言で押し黙るシェイド。一人で飛んでいってもおかしくない様子である。
だが、その理由は『雇兵』と呼ばれたからではない。
(何かが…俺を呼んでいる…のか?)

##########################
あとがき

どうも、コレを読んでくださる方、誠にありがとうございます。
とあるところでSSをやり取りしているのですが、自分の無力さを思い知りましたw
それでも「これイイじゃん!」とか言ってくれる人には感謝御礼です。
では、そんな方がいると信じて出させていただきます

  時空戦記アルテリオン・オリジナルストーリー 第1章「アネット・プリミアス」
Date: 2003-01-01 (Wed)

「…これは?」
一枚の紙をみて、男が尋ねた。
顔は日焼けか黒色をしている。紫のざんばら頭にむっつり顔。
「見て分からんかね?君の異動だよ」
「しかし・・・MWはここに駐在のことというのは・・・!」
男は上官に怒鳴りつける。気おされずに上官は冷淡に答えた。
「我々にも経済的な問題はある。それに向こうで新しい機体を用意してあるらしいぞ」
男はしばし黙考した。そして、数秒の間が空き―――
「その…新しい基地は?」
「・・・南アメリカ、第14独立実験部隊だ」
「第14・・・?ではHMWの?」
「そうだ」
机においてある紙を手に取りつぶやく。
「・・・人との付き合いの悪い君には酷かもしれんが・・・な」
鼻で笑いながら男の新しい基地の地図と資料を渡した。
「では・・・アーネス・ルディアール少尉、本日付けで移動、君を中尉に昇格する」
アーネスは踵を返した。

―――格納庫。
「よう、アーネス」
壁に寄りかかっていた男がアーネスに呼びかけた。
「・・・レミオスか」
その「呼びかけた」男―――レミオス・ハイヴァー―――は、アーネスに歩み寄った。
「こいつとお別れだってな」
「まあな・・・」
人付き合いの嫌いなアーネスはいつもこんな感じだ。
「向こうでもがんばれよ」
「・・・ああ」
そっけない、とも取れる反応。だが、コレでもレミオスは満足なのかもしれない。
(今はあっちに気を取られているんだろうな・・・)

レミオスのいうあっち―――それは格納庫の奥にずらりと並ぶ人型ロボットの一体だ。
マニューバ・ウェア(通称MW)と呼ばれる、今の連邦の主力機動兵器。
アーネスは自分の何倍もある機体に真正面に向いた。
人間にはめ込むと見事に均整な体になるだろう。
(そんなことはどうでもいいか・・・)
首を振り、考えを振り払う。
(新しいMWか・・・)
人一倍機体のスペックには気をつかう。そんなアーネスは常に自分の機体を自分で世話をしてきた。
・・・相当な腕を持つ整備士がいるのなら話は別だが。
(とにかく新しい機体が何か・・・気になるのはそれだな)
その日は足早に軍用トレーラーに乗り込んだ。

―――翌日。
アーネスは基地の入り口で佇んでいた。
「ここが俺の・・・」
『そう、ここがあなたの戦場よ』
女性、それも自分より年下の。
「あなたは・・・?」
「私はアネット・プリミアス、階級は少佐よ。
 ここ、連邦軍第14独立実験部隊・・・通称『FB隊』の指揮官でもあるわ」
「アーネス・ルディアール中尉です。本日付でここに転属になりました。」
「聞いているわ、ようこそFB隊へ」
口述での歓迎。だが、パイロット全員の歓迎である。何しろここのパイロットは彼女一人だからだ。
「それよりも・・・驚かないわね」
「少佐の外見ですか?」
「ええ」
当たり前、といえば当たり前である。
アーネスもそこそこ戦果を前の戦場で挙げている。そのアーネスよりも階級が上の年下の女性。
疑うと想定していたアネットにとっては拍子抜けしたに違いない。
「気迫・・・いや、雰囲気でわかりました」
「?」
疑わしげにアーネスを見る。だが、嘘には見えないし、聞こえない。
「歴戦の猛者・・・といえるオーラのようなものを感じました。外見はともかく、雰囲気で判断しました」
「そう・・・珍しいわね、そういう人」
「そうでしょうか?」
「まあ、とにかくついてきて」
とことこと先に行くアネット。
「HMWの知識はあるのよね?」
「予備知識程度…は」
ハイ・マニューバ・ウェア。通称「HMW」。
連邦の主力のマニューバ・ウェアを超える兵器。
すなわち、次世代MWといってもいいだろう。その開発所といったところである。ここは。
「OK。なら、いっかい腕試ししてみよっか」
「わかりました」
コクピット同様のシートに座る。
「基本的な操作はMWと同じ。…大丈夫ね?」
「はい」
コクピットの天井が降りてくる。ハッチと想定するアーネス。
スクリーンが見えてきた。
「…ここは!?」
「あくまで実戦を想定しての事よ」
現れたのは格納庫の内部。発進準備状態だ。
「ここからスタートよ。発進の状況から知ってもらわないと」
「…はあ」
アネット機発進。つづいてアーネス機が―――
「うっ!?」
加速時の重圧が実感できる。ここまで良くできたシュミレーターは初めてだ。
「さて、と」
敵が来る。自分とおなじFBX−100。…6機だ。
「本当に腕の勝負…というわけですね」
「それもある。けど実際にこいつが敵に回ったらどうなるか、よく覚えておきなさい」
ブースター全開。突っ込むアネット。その場で援護射撃をするアーネス。
なぜかその息はぴったりと合っている。
数分後―――あっけなく撃墜された敵。基地は守られた。シュミレーター内では。
「そろそろ本番、いってみよっか」
「・・・本番?」
アネット機のビームブレードの赤い刃がアーネスに牙を向く。間一髪、持ち前の反射神経でかわす。
「少佐!?」
「いったでしょ?"本番"だって。それに、これはあなたに対するテストでもあるの」
テスト。これが。自分と同じHMWに乗った上官とタイマン。
アーネスの感じた雰囲気が敵に回る。
「…なるほど」
「いくわよ」
前々から感じていたアネットのオーラが増幅する感覚が出てきた。
「少佐の実力…見せてもらいます」
言い残したかのように言い放つと距離を広げる。
ライフルのけん制。互いに一歩も譲らず、といったところか。
「…そろそろ…」
「打って出てみる…?」
同時に3DHMW2機が棒から赤い光を放つ。
「やあああっ」
「うおおおっ」
激しいつばぜり合い、互いの動作がほぼ一致する。

アーネスが引いた。ブースターをフルに使い、逃げる。アネットは唖然としている。
(何を…?)
周辺を見回しても既にアーネスは肉眼範囲外。いくら視力が抜群にいいアネットでも見えない。
(甘いわね、アーネス)
熱源センサーをつけた。ところがそれにも映らない。
(本来ならまだ熱を持っているはずなのに…)
音源センサー、展開。これも意味なし。どうやら一旦出力をきっているらしい。
「どういうこと・・・?」
慎重にアーネス機が飛んで行った方向へ向かう。
奇襲には適した地形だ。左手は山岳地帯、右手には湖が広がっている。
このあたりはシュミレーター内では端に近いことから、どちらかということは分かるのだが。
(・・・やるわね)
とりあえずバーニア全開。背をとられては不利で仕方がない。
シュミレーターの行動範囲ぎりぎりいっぱい。行動不能な暗黒の崖を背にし立つ。
(一歩でも下がったらThe Endか・・・)
冷静なアネットだが、反面あせっていた。
ここまで出来るのか、と。
(あなたなら・・・任せられるかもしれない・・・)

少佐も動き出した。どうやら気づいていないようだ。
アーネスのFBX−100は水中に潜んでいた。
薄い水色の機体は湖によく溶け込んでいた。
(スコープが使えないのは痛いが・・・やるしかないな)
うっすらと見えるアネット機の姿。まだ気づかれていないだろう。
しかし、ここでエンジンを起動すれば・・・
(熱源、あるいは動力センサーで見つけられるな・・・)
しかしこのままにしてもどうしようもない。
・・・ところが。一瞬水の揺らめきが止まり、完全に狙いが定まった。
(なぜ・・・?いや、後だ!)
エンジン再始動、ビームライフル発射。
(あたってくれるか!?)
赤い閃光は装甲を貫いた。

「被弾!?どこから!?」
アネットはビームの入射角から位置を即座に割り出す。
(ふふ・・・なるほど・・・そういうことね)
水中からのビームライフルの狙撃。並みの技ではないだろう。
「だけど・・・まだ!」
上半身は生きている。腰のあたりからミサイルランチャーを引き抜くと―――
ずどんっ!
重厚な音をたてて小型のミサイルを発射した。
「・・・やらせるかっ!」
アーネスはバーニアを全開し飛び上がり、水中から飛び出し―――直後に構えていたミサイルを発射した。
「ちっ!」
舌打ちしたのはアネット。右足を撃たれている状態では避けにくい。
上半身をひねってギリギリの位置で回避。・・・だが、もう遅かった。
「もらったっ!」
アーネス機から赤い閃光―――つまりビームライフルの銃弾―――が飛ぶ。
それはアネット機の胸、コクピット部分を確実に打ち抜いていた。

「・・・私の負け、素直に認めるわ」
アネットは擬似コクピットから降りてきたアーネスに告げた。
「やるじゃないの、あなたならいざというとき任せられるわ」
アーネスはその意味を完全に理解するのに数秒の時間を要した。
「いざというとき・・・?少佐、それはどういう・・・?」
「・・・私がいなくなるとき、あなたがここを仕切ることになるわ」
仕切る・・・といってもアネットがいなくなればパイロットは自分だけなのに。
「言ってなかったわね・・・今度、新しくパイロットが三人増えるの。はいこれ、その書類」
そういって一枚の紙をわたした。
「ところで、こんどから俺が乗る機体はどこに・・・?」
「どうしたの?」
「いえ、どんなものか確かめておきたくて・・・」
「なるほどね、分かったわ・・・こっちよ」
アーネスはアネットの進む道を確実に記憶した。

着いた先は格納庫。
前の場所より非常に大規模な設備の整った環境である。
「あなたのは・・・っと、博士が整備してるわね・・・」
「博士?」
「一光寺晴興(いっこうじ はるおき)博士。ここのメカニックよ」
大きな金属音がこだまする中では聞き取ることが若干難しい大きさの声で話した。
そしてその金属音の中に人の声が聞き取れる。
「おいそこ!もっと丁寧に扱え!こいつは繊細なんだからな!」
「はは・・・やってる」
「おう!タイショーじゃねえか!・・・隣はどうした?」
「前に言ってたでしょ・・・その機体のパイロット、アーネス・ルディアールよ」
機体に上っていた博士は下に降りてきた。アーネスは小さく頭を下げた。
「そうだったな・・・なんだ、若造じゃねえか、こいつでいけるのかい?」
アーネスに対する「若造」は認めざるを得なかったが、それでも・・・
「・・・っ!」
「待って!アーネス!」
アネットが制止に入った。
「・・・博士も博士よ。いきなり喧嘩腰?」
「そうじゃないけどよ・・・」
「・・・ハルオキ博士、とおっしゃいましたね?」
アーネスが口を開いた。
「あ、ああ・・・」
「シュミレーターをしましたが・・・アレは博士が?」
若干黙考し、
「それを作ったのは俺だが・・・どうした?」
「・・・反応速度が鈍かった。もう少し反応速度を上げられませんか?」
「お、お前さん・・・あれでも遅いって言うのか・・・?」
博士は驚いた顔でアーネスを見返した。
アーネスはゆっくりとうなずく。
それを聞いているのかどうかは分からないが、博士はいきなり大笑いをしだした。
「くっくっく・・・気に入ったぜアーネスとやら、あれはな、実際より反応速度を上げているんだよ!それでも・・・それでも遅いとはなぁ!」
「ふふ・・・じゃあとりあえず、自室に案内するわ」
その後、アーネスはゆっくりと眠りに着いた・・・アネットに渡された新規パイロットの事を忘れ・・・

                           第1章終了

  試し書き
Date: 2002-12-31 (Tue)
どうなるかわからないので実験します。
この記事は気にしないで下さい。

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