2003/07/27(Sun)
『銀の龍の背に乗って』『式日』
中島みゆきの新作シングル『銀の龍の背に乗って』。
TVドラマの主題歌という縛りのせいか、非常に聴きやすい歌であった。すごく好きだな。
♪綿埃みたいな翼でも ♪明日ぼくは龍の足下へ 崖をのぼり 呼ぶよ『さあいこうぜ』
いや〜、すごいよ。こんな詞がどうして紡げるんだろう。
よく分らんが声の出し方も独特だな、高い少女のような声から呻くようなドスの利いた声まで出せるんだもんな。聴きごたえあるよな。
ますます好きになったよ(笑)

庵野の実写映画『式日』をDVDで買った。
庵野の故郷の山口県宇部というところをロケーションに選んで撮影しているのだが、そこが私が最近本腰を入れて撮ろうと思ってる京浜工業地帯みたいなところがあって、すごくツボにハマった。
煙突から流れる煙り、大小さまざまなパイプにダクト、現代美術の醜さを体現したかのような工場郡、日本最古の電車。それらを無機的ではあるが非常に魅力的に見せていた。その必要に追い掛ける眼はどう考えても『オタク』の眼線である。身の回りにあるものをフェティッシュなものとして捉えていると言うか、つくづくガキの感性だなと思ったが、その徹底したフェティッシュなこだわりに関心したし、それが見ごたえになっていた。

前半までは。

後半は前半のドライな部分がまったくなくなり、非常にウェットな情念の世界が展開する。その能書きが非常に貧相な動機と状況と台詞回しに終始していて閉口した。ハッキリ言ってこのような映画をひっぱるには庵野には教養がなさ過ぎる。台詞は押井守の表層をまさにうわっつらだけなぞった感じでまったく話にならなかった。大竹しのぶをキャスティングして芝居の厚みをだそうという試みも、肝心のセリフが粗末なのでまるで伝わらない。うっとうしいだけだ。
考えてみれば庵野の最初の実写映画『ラブ&ポップ』もラスト近くで非常にウェットなシーンがあった。が、役を演じた浅野忠信が非常にドライな演技をしていたのでうっとうしさがなかったんだと思う。浅野以外の役者が演じてたらやはりウェットすぎたのだろうな。
そう考えると浅野忠信はスゴイ役者だ。
『式日』も役者達は好演していた。カントク役に岩井俊二が配されていて、これも好演していたと思うが、このカントク役まさに庵野そのまんまのようなもので、オタク話しが台詞としてでてくるんだけど(TVのヒーローもので" ファイヤーマン"の話しをしていた)、それがまったく映画の筋から浮いてしまってて見苦しいばかりであった。

敗因は脚本の粗末さだと思う。

とまあ、前半のトーンで押してたらよかったんだけど、と思う。
庵野は大人になりたいんだろな。
というか宮崎や押井のような深い教養に裏打ちされた作品をつくりたんだろうと思うけど、無理なんだから諦めた方がいいやね。
良く言えば、庵野は『神は細部に宿る』という部分を表現できるんだから、大人になろうとせずに、エラぶらず、バカなオタクとして映画を潔く作った方がいいと思う。
2003/07/20(Sun)
『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』
 『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』を劇場で観てきた。

 おいらは警察の最期の敵は警察の官僚機構だと思ってた。それを越えた所の最終的な敵が自衛隊だろうと。
 当面の敵であろう警察の官僚機構の横暴。それに対する現場の警察官のモチベーションの低下、或はモチベーションの拠り所。オイラはそれについての映画だと思ってる。
 「事件は会議室でおこってるんじゃない、現場で起きてるんだ」「事件は会議室でおこってるのよ」
 戦争と同じだ。どこで事件が起ころうとも、有能な指揮官が後方で緻密で冷静な判断をしていても、前線の兵士は死ぬ、或は危険にさらされる。
 では兵士として、警察官として有能な指揮官のためなら死ねるのか?末端の人間に指揮官が有能かどうかの判断ができるほどの理解ができるのか?その指揮官と個人的に親しくならない限りそんな判断はできまい。
 警察官の献身性というのは指揮官の有能無能から出るものではなく、おそらくその指揮官よりももっと見え難い周りにいる大衆に向けられているのではないだろうか?実際の所指揮官の有能無能はそれほどの問題ではないのではないか?
 大衆が守るに値するかどうか。警察の腐敗というのが警察内部の問題だけではなく、自分を含めた大衆が守るに値しないと思われているのではないだろうか?下らない大衆を守る為に命を張るなど愚の骨頂である。
 その辺はオイラも謙虚にならなければならない部分ではないだろうか。
 それにしても劇中のあの女本部長は無能すぎだろう。おそらく官僚機構との対立構造を明確にする為の演出だろうけど、あんなのは男でも女でも、いない、よな?現場を統括するぐらいの人間は男でも女でも本音は絶対に公にしないだろう。有能であればあるほど、本音の部分での現場警察官への駒扱いは表面上はするまい。

 とにかく面白かったといえる映画であった。
 オープニングのヘリが飛ぶシーン。ヘリをあれだけカッコ良く飛ばせるとは。あれは果たして実写であろうか?ヘリの飛ばし方で良かったのは『パトレイバー2』ぐらいであろう。
 それに続くオープニングタイトルでの主要キャストの顔を映さずに紹介していく部分もイイ。
 キャストの見せ場のバランスをとりつつ、話をダレさせずに観せていく腕力。
 模擬戦といってもSATに勝てるとは思えないが、その辺の嘘のリアリティーを信じ込ませ方が上手い。
 久方ぶりにDVDが出たら真っ先に買おうと思う映画を観れた。
2003/07/05(Sat)
『T3』
 ちょっと前なら買わなかったろう漫画を買うようになった。『ダーリンは外国人』/小栗左多里著。絵がどことなく桜沢エリカ風ではあるけど、まあ桜沢エリカ自体当方あまり読んでないので気にならない。配偶者を理解するのが難しいのは相手が日本人であれ外国人であれついて回る苦労であろう。外国人の旦那をもった(あるいは単純に旦那をもった)エピソードを肯定的にユーモアを交えて描いてあるところが好感がもてた。面白かった。

 『ターミネーター3』先行ロードショーで観にいった。
 この日記、割と読んでくださってる人がいるようで、なおかつ映画好きで観にいってる人もいるので、あまりネタバレすることは差控えようと思う。どんなにつまんなくても、まだ観てない人に無用の先入観を与えるのも大きなお世話なわけだから。先にネタを知りたくない方は、この先読まない方がいいっす。

 さて『ターミネーター3』であるが、オモシロかった。全編アクションではあるが要所要所にダルくなら無い程度に情報を盛り込んでいた。なので置かれている状況が分からなくなり取り残されてしまうということはなかった。そういう意味では非常にバランスの良い映画であった。続編の強みでセルフパロディーとも言えるギャグがあったりと、観ていてニヤニヤしてしまうような映画である。
 ジム・キャメロンなら絶対やらないような、ターミネーターが銃の残弾を把握してないシーンがあったりで、ストーリー的には分断されてないものの、設定は継続しての踏襲はしていないようだ。
 音楽も、例の♪ダダンダンダダンはエンドロールに申し訳程度に入ってるのみであった。
 ただ、映画自体はオモシロいという事を前提にしてでの話だが、世界で唯一の被爆国である日本人の私かるすると、ラストが素直に頷けなかったりするのも事実だ。アメリカ人からすれば核ですらロマンチックな道具にしてしまうのであろうか。冷戦が終わり核を映画の楽観的な道具にしてしまうことに、どうしても抵抗感があるのだ。こういうのは頭がカタイというのであろうか?
 そうは言いつつもオモシロかった事にはかわりない。