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プラサ/PLAZA

フラメンコ音楽とは?

 フラメンコ音楽は,スペインの一地方であるアンダルシーアに発生した民族音楽です。
アンダルシーアはローマ時代から歌と踊りで名高い地方であり,また人種的にも多数の民族が交錯した地でした(イベリア半島の先住民であるイベロ族,フェニキア人,ギリシャ人,カルタゴ人,ローマ人,5世紀にはゲルマン人,8世紀〜15世紀にかけてはモーロ人が侵入し支配していました)。
当然,多種多様の民族が持ち込んだ文化・音楽がアンダルシーアには存在していました。しかしこれらの音楽をフラメンコ音楽に結びつける決定的な要因を与えたのはジプシーでした。彼らジプシー達は,15世紀頃このアンダルシーアにたどり着き,以後迫害されながらもこの地に定着し,この地の音楽を彼らなりに(もちろん彼らのオリジナルな音楽も含めて)発展・昇華させました。
こうして18世紀の後半頃か,おそらくそれ以前から,現代のフラメンコ音楽に通ずる無伴奏のジプシー歌謡が歌われはじめました。
しかしそれらはまだ彼らだけの楽しみや祭りのために“ジプシー居住地”の中だけで歌われ,また踊られていました。
 後に彼らの歌や踊りが,アンダルシーアー般の人々の心をとらえ,また愛好者が増えるに従って,1842年にはセビーリャに初めての“カフェ・カンタンテ”(フラメンコの歌や踊りを見せる酒場)が誕生しました。
そしてこれと前後する頃に,ギ夕一がフラメンコの歌や踊りの伴奏をするために用いられるようになりました。
それ以前のフラメンコは無伴奏か,または手拍子だけの伴奏で歌われ,かつ踊られていたのです。
それ以後,各地にたくさんのカフェ・カンタンテができ,さかんにフラメンコが演奏されるようになり,またアーティト同士も互いに影響し合い,今世紀の初め頃までにフラメンコの主要なレパートリーが確立されました。
そして今日では,フラメンコ音楽はスペインを代表する民族音楽となり,世界中に多くのファンを獲得しています。フラメンコ・ギターにおいても初期の頃は,ごく単純にリズムや和音を弾くだけであったと思われますが,エル・ムルシアーノ,パティーニョ,パコ・エル・バルベーロ,パコ・ルセーナらの名手達が現われ,クラシック・ギターの奏法を巧みに取り入れて,またたくまに発展していきました。
今世紀に入って,ラモン・モントージャをはじめサビーカス,二一ニョ・リカルドらがソロ・ギターのコンサート・スタイルを確立し,現代においてもパコ・デ・ルシアをはじめ,セラニート,マノーロ・サンルーカル等が時代を呼吸し,生きているフラメンコ音楽を発展させ続けています。


 ジプシー(ヒターノ)…年代は定かではないが,おそらく中世初期に北インドの一部の民がその地を捨て,放浪の旅につき,中近東・東欧を経て,ヨーロッパの各地に出現した放浪民族。


                   フラメンコ・ギター教本 /瀬田彰 編著




       フラメンコの伴奏楽器=ギター/Guitarra
 フラメンコ・ギターという言葉の響きから,皆さんはどんな場面や音を想像されるでしょうか? パコ・デ・ルシアの超絶技巧のギターの響きでしょうか? それともタバコの煙モウモウのスペインの酒場(タブラオ)で踊る女性達の背後から聴こえてくるラスゲアードの響きでしょうか? または嗄声の歌い手のそばで,たえず歌い手に気を配りながら,ぴったりと伴奏を付けている職人芸のようなギターの響きでしょうか? 
         そのどれもがフラメンコであり正解です。
 もともとギターは,フランシスコ・タレガ以前からスペイン人達の大衆音楽(現在のポピュラー音楽?)の伴奏楽器として大いに用いられてきました。彼らは非常に古い時代から,ラスゲアード(弦のかき鳴らし)やプンテアード(単音弾き)などの技巧を用いて,歌や踊りの伴奏をしていたようです。しかし近・現代に移ってからは,ギターはピアノや他楽器に,それらの伴奏の役目を譲りましたが,フラメンコの世界だけは,未だにその古い流れを受け継いで現在に至っています。
 つまりフラメンコの世界では伴奏楽器はギターをおいて他にありません。         

                 フラメンコ伴奏教本 Vol.1/ 瀬田彰・編                                                          
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