拍手ありがとうございました!
連続拍手は 10回まで可能です。




みらいをきみに(ライコノ)




 くせのある亜麻色の髪が、さらさらと指の間をすり抜ける。頭を撫でる手が

心地よいのか、くる……と微かに喉を鳴らして仔猫はライの胸に頬をすり寄せた。

まるで母親に甘えるように。

 そんな無防備な仕草さえ好ましくて、ライは抱きしめる腕に力を込める。自分

以外のぬくもりが、こんなにも快い。触れあう肌から伝わる熱に安らぎすら感じる。

心が求める相手と体を重ね、ともに眠りにつくことがこれほど幸せなのだとは

知らなかった。そんなこと、いままで誰もライに教えてはくれなかったから。

 少し前まで己の目的以外に興味が持てず、過度に接触してくる輩には嫌悪しか

感じなかったのが嘘のようだ。もはや一匹で生きることなど考えられない。自身の

変わりようにライは戸惑い、ゆるく首を振る。いや、違う。そうじゃない。

 他の誰でもない、コノエだから。

 どんな時もけして逃げ出さずライに真向かい、すべてを受け止めてくれた唯一の猫。

彼が与えるぬくもりだから、心地よいのだ。叶うのならいつまででもこうしていたい、と

思うほどに。

 尽きることなく胸を満たすこの想いを、なんと呼べばいいのか。まだライには

わからない。コノエと共にいることで生まれる感情はそのどれもが未知のもの

ばかりで、自分でもどうしていいのか解らず混乱することもままある。

 けれど、ただひとつ。次々に溢れては消える迷いや葛藤の中にあっても、けして

見失うことのない思い。どれほど激しい感情に浚われても色褪せぬ誓いをライは

心に刻む。

 たとえ、この先どんな運命が待っていようとも。我が身に宿る狂気を消すことが

できなくても、もう二度と自ら死地を求めようとは思わない。最後の一息まで

足掻いて、抗ってみせる。いま腕に抱く仔猫が命を懸けてライに教えてくれたように。

 いつか訪れる死が、二匹を別つその日まで。コノエを側に留め置く為なら、自分は

どんなことでもするだろう。それこそ、何を引き換えにしてでも。





 世界も未来も、コノエがいなければ意味を成さないのだから。

 





もしよろしければ下のアンケートにご協力ください(拍手のみでも泣いて喜びます)



お名前:

Q:更新して欲しいジャンルは?:


- PatiPati (Ver 4.3) -