※この話は下記のGDジャン捏造設定が入ってます
・ジャンはイーサンと義理親子的関係
・助けてくれたイーサン父ちゃんの為にCR:5をスパイするよ!(ジャンさん談)
・あれ思ったよりCR:5って居心地いいよ!
おじさん√に入ったのに酒の力を借りてもダメガネは街角レイプできなかったよ!
このへたれ! バカァッ!
・もういい、実家に帰らしてもらいます! デイヴィット殺しちゃうけど、別に
ダーリンのためなんかじゃないんだからね! アレッサンドロ返すけど別に(以下略
以上が許容できる方のみスクロールGO
Jeux Interdits〜禁じられた遊び〜
――嘘だ。信じたくない。こんなのは全部まやかしだ。目の前に突きつけられた
現実に、軋む心が悲鳴をあげる。けれどベルナルドがどれほど否定しようとも、
それは消えてはくれない。彼が予想したよりも最悪な事実を静かに、そして情け
容赦なく見せつける。
「どうして……」
苦渋に満ちた顔でベルナルドは呻く。絶望に打ちひしがれる彼を静かに見つめた
まま、闇の中から現れた金髪の青年は薄く微笑んだ。
「どうしてお前が、そこにいる――ジャン」
掴みかかって詰問したいのを堪えて、再びベルナルドが問う。なぜ彼が、ジャンが
此処にいる。デイヴィットが指定したGDのアジトに、二週間前に忽然と姿を消した
彼が。どうして。
行方知れずだった彼が生きていた安堵や喜びは、はだけた黒いシャツからのぞく
刺青によって無惨に引き裂かれ、ベルナルドを混乱に陥れる。
細い腰に浮かぶ漆黒の二文字。まるでいま刻まれたように鮮やかなそれから、
視線がはずせない。呼吸することすら忘れたように、茫然と立ち尽くすベルナルドへ
青年はくすりと笑って答えた。
「そりゃ俺がGDの幹部だからだよ、ダーリン」
「お前がGDの……?」
ジャンが、敵の幹部。その証を目にしても信じることができず、ベルナルドは
何度も瞼を瞬かせて食い入るように青年を見つめる。なにか、少しでも差異が
ないか確かめるように。できれば別人であってほしいと切に願いながら。
しかし彼の祈るような思いとは裏腹に、目の前に立つ青年はジャン以外に
ありえなくて。この二週間焦がれ続けた太陽のごとき金の髪、滴る蜜色の瞳、
どこか幼さを残す整った顔――なにもかも、あのときのままだ。ベルナルドを
見上げるやわらかなまなざしも、仕草もなにひとつ脳裏に刻みつけた姿と
変わらない。残酷なほどに。
間違いない。これはジャンだ。
「……いつからGDに」
「最初から」
ようやく絞り出したベルナルドの疑問にジャンは躊躇いもせず即答する。
「幹部っていっても、俺はずっと隠されてた。イーサンの親父がタトゥー入れる
のを渋ってたし、俺はバクシーみたいに武闘派でも、アンタみたいに頭脳労働
タイプでもねーから……だから俺がGDだと知っていたのは、親父と兄弟同然に
育ったバクシーだけだった」
どこか遠くを見るような表情でジャンは淡々と語る。
CR:5に入ったのも、少しでもイーサンの役に立ちたかったからだ。けれど
意外に心地の良い環境に、当初の意気込みは段々と薄れていった。揺れる
ジャンの気持ちを見抜いていたのだろう、イーサンも「お前の好きに生きろ」と
言ってくれた。元からあの人はジャンが自分と同じ場所で生きるのを嫌って
いる節があったから、親代わりであるイーサンが許してくれるのなら、このまま
残ってもいいとさえ思えた。CR:5、いやベルナルドの側に。
でも、あの日。ベルナルドに連れられて行った『キィサイド』でナスターシャと
彼の姿を見て決意した。イーサンのもとに戻ろう、と。だって、気づいてしまった
のだ。ここに自分の居場所はないと。
仲睦まじい二人の様子を見た瞬間ジャンの胸に生まれたのは、灼けるような
どす黒い嫉妬だった。
もうずっと昔からベルナルドには彼女がいた。彼には支えてくれる女がいて、
アレッサンドロの指名でカポ候補になったジャンなどよりもよほど人望も実力も
あって、ボスを受け継ぐに相応しい品格を備えていて。刑務所からの脱獄が
適ったいま、自分は何の為にここにいるのだろう。
漠然とした不安に苛まれるジャンにとどめを刺したのは、他ならぬベルナルドの
言葉だった。
『ジャン、おまえが女だったらなぁ』
『おまえにバンバン生ませたかった』
酒に酔って弛んだ心から洩れた、たあいない戯れ言。でもそれは研ぎ澄ました
刃のようにジャンの胸を深々と抉り、這い上がることのできない絶望の淵に突き
落とす。
やはり自分ではダメなのだ。ベルナルドの一番には、けしてなれない。それは
隣に寄り添う彼女のものだ。そんな当たり前のことが、どうしてこんなにも
身を切られるように感じるのか。理由はもうわかっている。好きなのだ、
ベルナルドが。他の誰よりも。
自覚してしまった現実に打ちのめされたジャンを正気づけたのは、先ほど
紹介された男の顔だった。
デイヴィット・オーウェン。直接会ったことはないが同じGDの幹部で、主に
外渉を担当する男。整った容姿とギャングには不相応な学歴で組織内では
異色の存在だけれど、その人当たりのよい物腰から荒くれ者ばかりのGDでは
他の組織との交渉事で重宝されているという。
でも黒い噂が絶えない男であることはジャンも耳にしている。バクシーも
「あいつは信用ならねぇ」と顰め面でくさしていたではないか。女好きのする
容姿を裏切るような狡猾さの滲み出たあの目つきと、彼に対するベルナルドの
強張った態度を見れば、デイヴィットがまともな人間でないことは容易に
想像できる。彼が何かよからぬことをベルナルドに仕掛けていることも。
だから二週間前に姿を消し、密かにバクシーと連絡を取って徹底的に調べた
のだ。無理矢理手伝わせた彼には「なに敵を助けるようなことしてんだぁ?」と
怒られたが、調査していく上でデイヴィットをはじめ複数の幹部たちのGD、
ひいてはイーサンへの裏切りが明らかになってくると、バクシーも目を
輝かせて協力してくれた。彼はいまごろ造反した幹部達を楽しく処刑している
だろう。もちろん表向きはCR:5との抗争で『名誉の戦死』したことにして。
はじめて聞かされる衝撃の事実を受け入れることができず、木偶のように
立ちつくす男を悲しげに見上げてジャンはそっと胸内で囁く。
――なぁ、ベルナルド。見えない壁を作って俺を遠ざけていたあんたは
全然気づいてなかっただろう。俺が、あんたに惚れてたことを。もっとも
自覚した瞬間に失恋しちまったけど。
伝えられなかった想いを振り切るように口元に浮かべた笑みを消し去り、
ジャンは冷ややかにベルナルドを睥睨した。
「デイヴィットはこない。アイツはシカゴと通じて親父を裏切っていたのが
バレて、今朝粛正された」
「……なんだって」
さらりと告げられた言葉に眼鏡の奥の瞳が大きく瞠り、動揺の色を滲ませ
激しく揺れ動く。それも仕方ない。彼はデイヴィットの造反の証拠を手土産に
GDと休戦交渉しようとしていたのだ。出鼻を挫かれた恰好だし、なにより
疲弊したCR:5を救う手立てが消えたことになる。幹部筆頭であるベルナルド
からすれば八方塞がりで万事休すの状態だ。
本当は朗報もあるのだけれど、それは敢えて教えないでおこう。ベルナルドに
たいする少しばかりの意趣返しと、そして――ジャン自身の決心を鈍らせない
ため。伝えて真意を見透かされてしまったら、きっと挫けてしまうから。
「あのクソ野郎は始末した。だから今度は俺と遊んでくれよ、ダーリン」
からかうように甘く囁いて、ジャンは艶やかに微笑む。
ちゃんとふてぶてしく笑えているだろうか。眦が無様に震えていないか。
内心みっともないほど怯えながら、それでも虚勢を張り続ける。最後に残った
自分の願いの為に。
いちばんになれないのなら、せめて誰よりも激しい感情を掻き立てる存在
になりたい。名を聞いただけで平静でいられなくなるほど強烈で、忘れられない
相手に。
もう手に入らないものに縋ろうとは思わない。けれど彼の愛を受けるのが
あの女ならば、自分は生涯憎み合う敵対者に。他の誰にも、その位置は
渡さない。絶対に。
「ゲームを始めようぜ。次のGDのボスである俺とあんたの一生を掛けた、
長い長いゲームを――期限はそうだな、どちらかが死ぬまで」
もちろん、あんたは乗るだろ?
そう言って笑みを深める青年の顔は、ベルナルドがいままで見た中でどんな
ものよりも美しく、大輪の花のように誇り高く輝いていた。
(11/02/27)