おそろい



 これは、呪われた証

 これは、不吉な印

 世に災いをもたらす、闇のしるし





 ああ、けれど。いま、俺はすごく幸せだ。それなのに。

「ごめん……俺のせいで」

 どうして、コノエが謝るんだ。

「アサトにまで、こんな――」

 必死に泣くのを堪えているような、そんな顔で。

「すまない……アサト」

 何故、そんな哀しげな目で俺を見る?

たまらなくなって、手を伸ばしコノエを抱き締める。俺よりも小さく華奢な体を力任せに

抱き潰してしまわないよう、気を遣いながら。

「アサ……ト」

「コノエは、なにも悪くない」

 掠れた声で、それでもはっきりと言い切る。

どう言えば、この気持ちが伝わるのか。コノエの哀しみを和らげることができるのか

俺にはわからない。だからかわりに、コノエを包みこむ腕に力を込めて、ほっそりとした

首筋に鼻先を擦りつける。

 どうか、そんなに苦しまないでくれ。

 俺は、この呪いの証を嫌だとは思ってない。むしろ嬉しいんだ。

あの白い奴でなく、俺に顕れたことが。禍々しい闇の印すら、コノエと俺を結ぶ絆だと

思えば目眩がするほど愛おしい。

 だから、そんなに嘆かないでくれ。

こうしてコノエに泣かれることのほうが、この喉の痛みよりもずっとずっと辛いから。



「俺は、うれしい。これでコノエとおそろいだ」



 





小さな恋情3題 /02 おそろい

モモジルシ様よりお題をお借りしました