Leanhaun Shee 
 

『────ぐう』

 正確無比な自前の腹時計の音で、にゃんこ悟空は目覚めました。

 

 ここは天界某所。観世音菩薩という偉い神様の、甥だという人のお屋敷です。

 悟空はこの館の飼い猫なのです。

 「にゃ〜…」

 大好きなご主人様の腕の中からモゾモゾと抜け出し、明るくなった外を見上げ

ます。

窓から見える空には上がったばかりの朝日が燦々と輝いていて、悟空はあまりの

まぶしさに大きな瞳を何度も瞬きしました。

 ようやく頭がはっきりすると、途端に

 『ぐうっ』

 と、ぺたんこのおなかが鳴ります。

 「こんぜーん、起きてぇ〜」

 固く目を閉じたまま眠るご主人様のほほを、紅葉のように愛らしい悟空の手が

ぺちぺちと叩きます。

 しかし、しょせん子猫の手です。

その程度の刺激で、天界一寝汚いと評判のご主人様が起きてくれる筈など

ありません。(年寄りは早起きのはずなんですけどねぇ…?)

 「こーんーぜーん〜っっごはん──っ!はらへったよぉ〜っ」

 半べそをかきながら、悟空は両手で一生懸命ご主人様の肩を揺さぶります。

 ですが、ご主人様の閉じた瞼はピクリとも動きません。

かなり手強いです。

 「う゛う゛う゛うぅ〜〜〜〜〜っっ」

 いつまで経っても朝食にありつけないことに焦れたのか、悟空の腹の虫が

引っ切りなしに抗議の声を上げます。

 寝室中の窓ガラスを震わすほど鳴っているのに、どうしてご主人様は起きて

くれないのでしょうか。

 この煩さの中でも眠れるとは、かなりの鈍感…イエ、大物です。

 とはいえ、このままでは悟空のおなかと背中がくっついてしまいます。

 しかしご主人様がいないと、子猫の悟空だけでは朝ごはんにありつけません。

 この館の召し使いはご主人様のいいつけがないと食事の用意も満足して

くれないのです。

 「はううぅ〜…」

 朝から満漢全席とは云いませんけど、せめてミルクの一杯くらいは…。

 そんなことを考えていた悟空の視線が、ある一点で止まりました。

 「………にゃっ!」

 そうです。ミルクならここにもあります。しかも、搾りたて100%天然果汁(?)

の新鮮なものが。

 いつも飲まされるのは夜ですが、べつに朝飲んだってかまわないでしょう。

なにせご主人様は、悟空がおなかいっぱいで嫌がっても無理に飲ませようとする

のですから。

 「にゃにゃ〜っ♪」

 上機嫌でペロリと勢いよく掛け布団をめくり、悟空はご主人様の下半身のほうに

向かってもぞもぞ潜っていきました。
 


 ムズムズとした、奇妙な感覚。

いいえ──馴染み深い柔らかな感触に、流石に寝汚い金蝉も目を覚ましました。

 「……?……」

 なにやら、胸…というか下腹のあたりが、妙にずしりと重く感じます。

 そしてぴちゃ、ぴちゃと猫がミルクを舐めるような湿った音と、生暖かい小さな

生き物が轟く感触が金蝉の下半身からじんわりと伝わってきます。

 起きたばかりの頭でも、これだけ手掛かりがあって分からないほど間抜けでは

ありません。

 かなり寝乱れた布団をむんずと掴み、金蝉は思いきり剥がしました。

 「…………なにしてる」

 「あっこんふぇん!おひゃほほ〜」

 朝日に照らされたそこには、やはり予想通り飼い猫の悟空がいました。

 ちょこんと金蝉の腹へ馬乗りになり、持ち主よりも先に目覚めていたペニスを

小さな口いっぱいに頬ばってチュウチュウと吸いたてています。

 朝っぱらから理性が溶けだしそうな光景に、自分が手ずから仕込んだことも棚に

上げ、金蝉はぺしりと悟空の頭を叩きました。

 「きゃんっ!」

 「朝からサカんなっ馬鹿猿」

 このまま押し倒して泣かせるたい衝動をなんとか理性でつなぎ止め、悟空の

首根っこを掴みます。

この屋敷に居るのは金蝉と悟空だけではありません。住み込みの使用人が大勢

働いています。

 ただでさえ連夜の嬌声で侍女たちの安眠を妨害しているのに、このうえ朝の

支度を整えた使用人がコトの最中に現れたら──どんな噂を立てられるやら。

 いくら他人に無関心な金蝉でも、流石に日常生活に支障をきたすほど人間関

係を破綻させるわけにはいかないのです。独り身の時ならともかく、今は扶養

家族を抱えているのですから。

 …が、子猫の悟空がそんな飼い主の事情を理解できる筈がありません。

 首輪をつまみ上げる金蝉の手をふかふかのしっぽではたき落とし、隆々と

そそり立つペニスを再び口に含みました。

 「悟空っ…!」

 「ヤッ!金蝉のミルクのむのっっ」

 金蝉の制止すら邪険に払い、悟空は頑なに奉仕を続けます。

 金蝉が起きたのですからもう朝ごはんの心配はいりません。お世辞にも美味しい

とは言えないソレを無理に飲む必要はないのです。

 しかしまだ子猫で容量の少ない悟空のおつむでは、『おなかがすいたから

(金蝉の)ミルクを飲む』という理由がいつの間にか『朝ごはんよりもミルク』に

書き換えられてしまっています。

 こうなると、もう金蝉の声はまったく聞こえていないでしょう。

 現に悟空は喜々として金蝉の男根に頬ずりをして、小さな舌を幹に沿って懸命に

動かしています。

 悟空の口では金蝉の肉棒は大き過ぎて、どうやっても雁首の半分ほどまでしか

咥えることができません。そのかわり、桜色の可愛らしい手が血管の浮き出た幹や、

その下の双珠を優しく愛撫します。

 熱い舌先と子供特有の柔らかな指にしごかれ、一回り以上膨れ上がった亀頭の

先から先走りのミルクが溢れはじめると、悟空はますます楽しげに尖らした舌を

切れ込みに沿って往復させます。

 あどけない顔でグロテスクに張り詰めた肉棒を無邪気にしゃぶる様は恐ろしく

妖艶で、下肢から立ちのぼる快楽と相俟って金蝉を一気に限界まで追い詰め

ました。

 「クッ…」

 悟空のふっくらとした唇が鈴口を食むようにすすりあげた途端、金蝉の喉から

低い呻き声が迸ります。

 その後を追いかけるように、白濁の濃厚なミルクが悟空の咥内に勢いよく吹き

出しました。

 「ふぁっ…ウゥッンッ!」

 喉にたたきつけられた粘液を、悟空は顔を真っ赤にしながら懸命に飲み下そう

とします。

 しかし夥しい量に食道を塞がれて、たまらずペニスから口を離しました。

 蕩けるような責め苦から解放されても、金蝉の肉棒の勢いは止みません。

ビクンビクンと小刻みに撥ねながら、真っ白な飛沫をとめどなく降らして悟空の顔を

穢していきます。

 ようやく金蝉のミルクシャワーが止まった時には、悟空の顔や髪や猫耳は体液

まみれになっていました。

 「っぁ……はふ……」

 飛び散ったミルクを名残惜しそうに目で追いつつ、悟空は残滓を滴らせる亀頭を

舌で清めます。

 最後の一滴を舐め終わると、悟空は振り返って金蝉におはようのキスをねだり

ました。

 「…満足したか」

 自分の味のする唇に少しばかり閉口しながら、囁くように金蝉は尋ねます。

 頬を桜色に染め、陶然とした表情で悟空はプルプルと首を振りました。

 「ううん。あのね、今度はココに欲しいの…」

 悟空は緩慢な動作で寝間着がわりのシャツをたくしあげ、ぷりぷりとした小尻を

いまだに勢いを失わない金蝉の肉棒に擦りつけます。

 すっかり下半身が全開モードになった金蝉は意地の悪い微笑を浮かべ、これまた

意地悪く呟きました。

 「だったら…どうするんだった、悟空?」

 含みのある飼い主の囁きに悟空は跨がっていた金蝉から降ります。

 ふらふらと操られるようにして枕に背を埋め、金蝉によく見えるように大きく股を

開きました。

 小さな両手で双丘を掴んで広げると、紅く染まった秘蕾や触ってもいないのに

張り詰めた愛らしいペニスが金蝉の目の前に晒されます。ヒクヒクと震える様は、

まるでソコが意志を持ち誘っているようです。

 「ココに、いっぱいちょうだい…金蝉ので、いっぱいにして」

 ややたどたどしい口調になりつつも、教えられたとおりつぶやきます。

 「上出来だ、悟空」


 愛猫の舌ったらずな哀願に気をよくした金蝉は──彼にしては珍しく焦らすこと

なく──もの欲しいげに轟く秘孔を、一気に貫きました。