異聞・灰かぶり姫 裏


 

 お城の舞踏会は、それはそれは盛大なものでした。

沢山のテーブルの上には、古今東西のあらゆる料理が並び招かれた人々の舌を楽しませ

ました。

 また国中の美姫を集めただけあって、城の大広間はさながら春の花園のように華やかな

雰囲気に包まれています。

 しかしそんな所にも目をくれず、ひたすら御馳走を口にかき込んでいる人物がいました。

 

 

 「んぐんぐっ…うっまいなぁっコレ……」

 ダチョウのソテーをほお張りながら、悟空は至福の時を噛み締めていました。

 こんな沢山の料理を無料で食い放題だなんて、お城というところはなんで気前がいいので

しょう。

 パーティなら毎日開いてくれたって全然OKです。

自分がいま女装──しかも可愛いらしいお姫様ルックなのも忘れて、悟空はひたすら御馳走を

食べ漁りました。

 「んぐっ……あれ……?」

 次の標的である羊の丸焼きを狙っていた悟空の瞳が、別の物を捉えます。

 それは色とりどりの輝きを放つ、奇麗な液体の入ったグラスでした。

 「なんだろ、これ?」

 一つを手に取り、匂いを嗅いでみます。

つんとする匂いに、悟空はすぐピンときました。

 「……お酒だ」

 紅孩児や八百鼡が時々呑んでいるのと色は違いますが、中身はどうやらお酒のようです。

 それを知った悟空の心に、むくむくと好奇心が湧いてきました。

 いつも子供扱いされ(実際未成年ですが)一滴も飲ましてもらえない『お酒』が、こんなに

いっぱいあるのです。

 しかも紅孩児はいません。

あ、いることはいますが、悟空が来ている事は知りませんし姿の変わっている今の義弟を

そうそう見つけられるとは思いません。

 たとえ脅威の的中率を誇る人体内蔵型『保護者アンテナ』を持ってしてもです。(さいわい、

迷子ロープも付けられてませんしね。)

 「一杯だけなら、良いよね……」

 そう自分に言い聞かせ、悟空はグラスに口をつけました。

 良く冷えた翠色の液体が、するすると喉を通っていきます。

想像に反してお酒は甘く、まるでジュースの様な爽やかな喉ごしでした。

 「っぷは〜っ、うまいっ!!」

 一気に飲み干すと、今度は桃色のグラスに手を伸ばします。どうやらさっきの『一杯だけ』は、

既に頭にないようです。さすが子猿です。

 そうして十五杯ほど空けた頃でしょうか…。

 「…ふぃ〜……ありぇ……………?」

悟空の視界が、いい感じにくるくると回り始めます。

 体の方もふらふらと揺れ始めました。

 「……うにゃっ…まぁわぁるぅ…………」

 と、かくんと膝が笑ったかと思うと、ぐらりと大きく弧を描いて小さな体が崩れました。

 「────っ!」

 咄嗟に悟空は瞼を閉じます。

しかし当然次にくるはずの衝撃がありません。

 恐る恐る目を開けると、すぐ間近に人の顔が見えました。

 金色の髪の、とても奇麗な男の人です。

その形のいい唇が、かすかに動きました。

 「………っ、この馬鹿猿……」

 なにか──とても失礼なことを云われた気がします。

しかし目の前の人物にしっかり見惚れていた悟空には幸い…かどうかは知りませんが、全然

聞こえてません。

 「…たいよぉ…みたい…」

 ぼーっと惚けたように、悟空はその人を見上げます。それがこの国の王子『玄奘三蔵』である

ことも知らずに。

 頬を染めて自分を見つめる悟空に、三蔵はぶっきらぼうに尋ねました。

 「お前、名前は?」

 「ふぇ…ごくう……」

 名を問われ、舌たらずな口調で悟空は懸命に応えます。

腕の中の少女(?)の酔いが相当回っていることを知ると、三蔵王子はちっと舌打ちし悟空を

抱きあげました。

 そして行く手に立っている人々を無言で威圧して道を空けさせ、大広間の外の庭園へと

向かいました。

 

 

 

 

 満月に照らされた庭園は、水をうったように静まり返っていました。

見張りの兵士たちも城の警備に当たっている為、今は誰もいません。

 人気のない四阿まで来ると、三蔵は拉致してきた子猿をベンチに降ろしました。

 「……にゃ〜……」

 すっかり酔っ払っている為か、悟空は何一つ抵抗せず三蔵の広い胸に寄りかかっています。

 うっすらと上気したバラ色の頬。酒気を帯びた吐息は甘く、浅い呼吸を繰り返しています。

 その桜色の唇に誘われるように、三蔵はそっと口づけました。

 「……んっ………」

 甘い桃酒の味が、触れた口唇から広がります。

あまりの心地よさに、三蔵は更に深く悟空の唇を貪りました。

 歯列を割り、小さな口内で震える舌を搦め捕ります。

息苦しさに悟空の腕が不埒な王子の体を押し返そうとしましたが、酔いの為かまったく力は

入らず、逆に縋るように服を握り締めてしまいました。

 流石に腐っても御伽噺の王子なだけあって、三蔵の手の早さは半端ではありません。

間違いなく、かつて『ロリコン』と云われた金蝉国王の血をしっかり引いている模様です。

 「……っはぁ………」

 濃厚な口づけに、悟空の意識は更に朦朧となります。

 すっかりマグロ状態になった悟空を美味しくいただくため、三蔵の手がドレスの胸元へと伸び

ました。

 しかし──────────

目的を果たす前に、その身体がかくんと崩れました。

 「…ふぅ、危ねぇ──」

 意識を失った三蔵の背後に、黒い影が現れます。

その右手には、鈍く光を放つ注射器が輝いていました。

 「やっぱさぁ…いくら嫁選びパーティだからっていきなり合意無しにヤんのはマズいっしょ、

三蔵サマ?…って、聞こえてねぇか」

 紅い髪をさらりと掻き上げ、魔法使いのお──

 「お・兄・さ・んだっ」

 …お兄さん・悟浄が不敵に微笑みます。

眠った三蔵の身体を蹴倒して、悟浄は危うくいただかれそうになった子猿へと駆け寄りました。

 「おいっ、サルっ!大丈夫か?」

 ぺちぺちと色づいた頬を平手で叩きます。

暫く繰り返していると、芒洋としていた悟空の目の焦点が戻ってきました。

 「…………はっかぃ?」

 「ちっげーよ。可愛い子猿ちゃんを助けにきた、悟浄お兄さんだぜ。」

 「はっかいぃ───っ!」

 いきなりがぱりと跳び起きると、悟空は悟浄に抱き着きました。

 「……うわっ!」

 突然のことにバランスが保てず、悟浄は勢いよく石床に倒れてしまいます。

 「こらっ…それが恩人にする────っ…」

 子猿の暴挙を怒鳴りつけようとして──

悟浄の口はごく柔らかいモノに塞がれてしまいました。

 甘い味のする物体…それが悟空の唇だと認識した頃には、今度は悟浄の方が深く口づけて

しまいました。

 「………っ……」

 ようやく離れた二つの口唇の間を、透明な糸が伝います。

 それに目を細めながら、悟浄は口の端を吊り上げました。

 「…えらく積極的だな、子猿ちゃん」

 その言葉も聞こえていないのか、悟空は上機嫌ですりすりと頬を擦り寄せて小さく呟きました。

 「…ん……っかぃ……」

 「………八戒ぃ?」

 悟浄の眉が思いっきり吊り上がります。

どうやら、悟空は八戒と勘違いしているようです。

 「…………ォィ……」

 それはちょっと癪にさわりましたが、悟浄は折角のお誘い(?)を断らないことに決めました。

 勘違いする子猿が悪いのですから。

それに、『据え膳食わぬは男の恥』とも云いますし。

 「…保父さんじゃないけど、俺が天国にいかせてやるよ」

 そっと悟空の顔を引き寄せ、悟浄は再び口づけます。

小さな身体を抱き締めていた手は、いつの間にかドレスをたくしあげ、きめ細かな肌を楽しむ

ように這い出しました。

 「…ぁん……」

 胸の蕾を軽く弄られ、可愛らしい悲鳴が悟空の唇から漏れます。

初々しい反応に気を良くした悟浄は、悪戯な手を更に下へと降ろしました。

 軽い愛撫しか施していないというのに、幼いそこはもう熱を持って目覚めはじめています。

 「…ゲンキだね、子猿ちゃん」

 悟浄は意地の悪い笑みを浮かべ、掌の中のそれを親指でさわさわと撫でさすりました。

 「…やぁ…ん…っ」

 初めて受ける刺激に、悟空の腰がびくんと震えます。

けれど悟浄の愛撫は止まりません。

 もう片方の手はまろやかな尻を伝い、誰も触れたことのない秘所へと巡らせます。

 しかし案の定、そこは固く口を閉ざしたままで悟浄をつれなく拒みました。

 「ん〜、やっぱ未開発なだけに固ぇな…」

 ───仕方ないか。

そう呟くと、悟浄は魔法で小さな小瓶を呼び出しました。

 片手で蓋を器用に外し、中の液体を手のひらに垂らします。

 ガラスの小口から、黄金色の蜜がとろりと顔を出し悟浄の指をしどしどに濡らしました。

 「こんなもんか」

 しっかりと湿った指を、子猿の秘密の蕾に這わせます。かるく円を描いて差し込むと、

つぷりと音を立てて内部へ吸い込まれていきました。

 「やぁっ…!」

 あらぬ場所に沸き上がった圧迫感に、悟空は悲鳴を上げます。ですが前を悟浄に握られて

いる為、逃げることもできません。

 蕾をこじ開けた指は無遠慮に中をかき回し、思いのままに子猿を嬲ります。

 昂ぶりを弄る指は更に執拗に絡み付き、白い蜜を絞り出そうとしています。

 前と後ろを同時に責められ、悟空はわけも判らぬままに急激に追い詰められました。

 もう少しで目の前が真っ白になる……其の寸前。

 「そこまでです」

 凍えるような硬い声が、悟浄の手を止めます。

いえ、実際に止めたのは首筋に当てられた気孔の球でした。

 「……………………」

 ぎくしゃくとぎこちない動作で、悟浄は後ろを振り返ります。

予想するまでもなく、そこには子猿専属保父さんが静かな怒りをたたえて仁王立ちしていました。

 「…お、お早いことで」

 わざとおどけてみせますが、八戒の表情は一ミリも変わりません。

 「まったく…三蔵といい、貴方といい、油断も隙もありませんね」

 冷たい微笑を浮かべた八戒に睥睨されて、悟浄の全身が総気立ちます。

問答無用で瞬殺されなかったのは、奇跡かもしれません。

 『神様っているんだなぁ…』と実感する悟浄の前に、すっと二本の腕が差し出されました。

 「…………あ?」

 「それは返してもらいますよ。」

 「──あ、はい…」

 きっと睨まれ、悟浄は慌てて腕の中の悟空を渡します。

 あられもない姿の子猿を愛おしそうに抱き締めて、八戒はすくっと立ち上がりました。

 「八戒さん、どこいくわけ?」

 「決まっているでしょう。帰るんです。」

 冷ややかな視線で悟浄を見下ろし、八戒はぴしゃりと告げます。

 これ以上余計な事を云おうものなら殺されかねない雰囲気に、悟浄は顔を引きつらせながら

黙って二人を見送りました。

 

 

 

 

 

 帰宅して風呂から上がる頃には、悟空の酒気もだいぶん抜けて意識も戻っていました。

しかし寝間着を着せベットに運ぶ時分になっても、身体の奥に燻る熱は消えません。

 誰よりも大好きな八戒がいてくれるのです。

安心して落ち着いてもいいはずなのに、悟空の胸の動悸は収まりません。

 逆に八戒の匂いを──体温を感じる度に、ぎゅっと胸が締め付けられて痛みを訴えます。

 (どうしよう…俺、病気になっちゃったのかな。死んじゃうのかな…)

 そう考えると、悟空の頬を大粒の涙が幾つも流れ落ちました。

 「悟空、どうしたのですか?」

 傍らの八戒が、心配そうに覗き込みます。

 「八戒ぃ〜……おれ…おれ………」

 えぐえぐと嗚咽を漏らして、悟空は八戒の広い胸元に顔を埋めます。震える肩を優しく包んで、

八戒は静かに囁きました。

 「泣かないで、悟空。僕に出来ることなら、何でもしますから…」

 「俺…びょうきみたいなんだ………」

 「……病気?」

 「うん。おなかの…下のほうが、熱くて痛いの…」

 恥ずかしそうに真っ赤に頬を染め、悟空はたどたどしく喋ります。

 その言葉に、八戒は首を傾げました。

悟浄に悪戯されて無理に高められたそこは、悟空が前後不覚の内に先程風呂場で八戒が

処理した筈です。

 それでも熱が引かない、ということは……

 「悟空、悟浄に何か飲まされませんでしたか?」

 真剣な問いに、悟空はびくりと肩を竦めます。

しばしの逡巡の後、ぽつりと呟きました。

 「あの…なんか…ぬるぬるするの…お…お尻に………」

 その先は恥ずかしくて、とても言葉に出来ません。

けれど八戒にはそれで十分伝わりました。

 「…あの十八禁有害生物は……」

 八戒の米神に、滅多に浮かぶことのない十字血管がぼこりと盛大に浮き上がります。

不埒な行為におよんだあげく、何もしらない悟空に媚薬を盛るとは…。

 こんなことなら、あの場で二度ど悪戯出来ない身体にしてやるべきでした。

難しい顔をして黙った八戒に、悟空はますます不安になります。

 「俺…死んじゃうの………?」

 「……悟空………」

 「だって、八戒の顔を見ると胸がじくじく痛むんだ…」

 「────えっ?」

 「八戒の声を聞くと、どきどきする。苦しくて、痛いの……」

 「………………」

 「でも…八戒が側にいてくれないの…ヤなんだ…」

 ぽろぽろと。

沢山の涙の粒が、シーツを濡らします。

 泣いてしゃっくりをあげる悟空の頭を、大きな手が優しく撫でました。

 見上げれば、八戒の奇麗な顔が間近にあります。

その瞳にはいつも以上に暖かな光を宿して、じっと悟空を見つめていました。

 「大丈夫。悟空は死んだりしませんよ。」

 「…ホント………?」

 「それはね、誰もがいつか体験するんです。好きな人の側にいるとね…ホラ────」

 そう云うと、八戒は自分の服の胸元をはだけました。

蝋燭の頼りない明かりの中、逞しい胸板があらわになります。

 悟空の手を取り己の左胸に当てると、八戒はその上に自分の手を重ねました。

 温かな体温の下で、八戒の心臓が早鐘の様に鼓動を刻んでいるのが直に悟空の手に

伝わります。

 「僕の心臓もどきどきいってるでしょう。…悟空の側にいるから…貴方が『好き』だから、

どきどきしているんですよ」

 にっこりと──魂まで魅了するかの如き微笑みを浮かべ、八戒は悟空を抱き締めました。

 悟空も八戒の背に腕を廻し、ぎゅっとしがみつきます。

 ようやく泣き止んだ悟空の耳に、八戒はそっと囁きました。

 「今から僕が悟空の『痛いの』を直してあげますよ」

 その言葉に、ぱちくりと悟空の瞳が大きく見開きます。

 「…八戒、直せるの?」

 「ええ、多分……」

 「じゃあ………………………………直して」

 「はい──」

可愛いおねだりを受け、八戒はもう一度微笑んでから悟空に口づけました。

 二人にとって、初めてのキスを。

 

 

 長く優美な指が、悟空の胸をかろやかに滑ります。

悟浄の時とは違う、繊細で優しい愛撫。

そのくすぐったいような…でも心地よい感覚に、悟空は夢中で溺れました。

 「……はっ…ん………」

 薄い胸に寄せられた八戒の唇が、ぷくんと膨らんだ突起を含みます。

吸い上げられるような感覚と濡れた舌の感触が、悟空の中に痺れるような快感を流しました。

 「…あっ…ぁぁ………」

 未知の感覚に、悟空は荒い息を漏らします。

蕩けるような喘ぎ声を聞きたくて、八戒は腹部を伝いゆらゆらと小刻みに揺れる悟空の膝を

手に掛けました。

 「あっ………」

 大きく両の膝が割られて、未開のそこがあらわになります。

 腿の付け根に蹲る小さな昂ぶりは、幼いながらも既に固く張り詰めて淫らに震えていました。

 十指全てを使って、怯えさせないようゆっくりとそれを包みます。

 「ああっ!」

 そのとたん、悟空の腰がびくんと跳ね上がりました。

 八戒の指が先端の亀裂をなぞるように何度も往復すると、悟空は短い悲鳴をあげ、裂け目

から温かな潤いがじんわりと染み出してきます。

 「ぁっああっ………」

 指を動かすたびに、悟空は過敏な反応を示します。

自分の愛撫で悟空が喜んでいる。それが嬉しくて、八戒はさらに奔放に悟空の雄を嬲りました。

 痛いほど激しい快感に、悟空はたちまち昇りつめます。

 けれどもう少しで達する寸前、八戒の指がそれを阻みました。

 「やぁぁぁぁっ───っ!」

 いくことの出来ない苦しみで、悟空は狂った様に身を捩りました。

 「やぁっ……はっか…いじわるしないでっ……」

 ふるふると頭を振って、悟空は泣きながら哀願します。

 その可愛らしくも淫靡な姿に、うっとりと見惚れながら八戒は囁きました。

 「駄目ですよ、こぼしちゃ…。ぜんぶ、僕に下さい」

 「…………?」

 首を傾げる悟空の目の前で、自身の昂ぶりが八戒の口へと吸い込まれていきます。

 ねっとりとした咥内の熱さに、悟空は再び大きく悶えました。

 「…あっ…ああぁっ…………!」

 生温かな舌が、震える悟空の幹にきつく絡み付きます。

ぎゅうっと絞るように全体を吸われ、悟空はとうとう達しました。

 「ひぁっ──っ」

 八戒の喉に苦みを含んだ白い蜜が大量に溢れ出します。

 しかし噎せる気配すら見せずに、八戒は一滴残らず飲み干しました。

 ごくり、という生々しい音が悟空の耳に届きます。

ですが初めて感じた解放感の為、それが何の音かすらまともに認識できません。

 腰を浮かされ、八戒の目の前に更に奥に息づく蕾を晒しても悟空はぼんやりとしたままその

体勢をとり続けました。

 あらわれた蕾は、悟浄の媚薬の影響で既に熟れきっていました。

 試しに指を一本差し入れてみましたが、挿入の時微かな抵抗をしただけで、後は難無く奥へと

呑み込んでしまいます。

 一本、二本…と指を増やすごとに悟空の蕾はとろりと蕩け、八戒の指にいやらしく纏わりつき

ました。

 「あっあ…はっか…ぃ……っ」

 切なげな喘ぎが悟空の口をつきます。

八戒も繰り広げられた痴態に刺激され、自身はきつく張り詰め天を突かんばかりに猛り狂って

います。

 ずるりと音を残して悟空の内部から指を引き抜くと、八戒はひくつく蕾に自身を押し当て一気に

刺し貫きました。

 「っ!あああぁぁ───っ」

 あられもない場所から、信じられないほど質量のある何かが悟空の中に入ってきます。

 痛みはありませんが、強い圧迫感が腹から胸へと迫り上がります。

 あまりの息苦しさに上手く呼吸が出来ず、悟空は幾度も荒い息を吐きました。

 その頬を、八戒の手が優しく包みます。

まだ子供特有の丸みを残す顎を持ち上げ、啄むように唇を重ねました。

 「…悟空、わかりますか…」

 「…………っ………?」

 「貴方の中に僕がいる。いま、僕たちは一つになっているんです…」

 キスよりも甘い囁きが、悟空の耳を擽ります。

大好きな八戒と繋がっている。

 侵入してきた質量がその証だと知り、悟空は八戒の首に腕を回してしがみつきました。

 ゆっくりと──慣らすように八戒の腰が動き始めます。

絡み付いてくる内壁を擦り、固い怒張は奥を目指して突き進みました。

 「はっ…あぁっ……」

 グチュグチュと二人が溶け合った箇所から濡れた水音が響きます。

 それに合せるように、シーツの上で彷徨っていた細い脚が八戒の腰に回され同じように揺れ

動きました。

 「んっ……ぃ……」

 まったく痛みを感じないかわりに、快楽だけは何倍にもなって悟空を苛みます。

 八戒の熱い楔が壁を突き上げる毎に、痺れるような快感が波となって悟空の内内に広がり

ました。

 解放され力を失ったはずの昂ぶりも再び頭を擡げ、先端から幾筋も蜜を垂らしてシーツに染みを

作りました。

 「………ょ…っかい…」

 「…悟空………」

 「あっ……なんか…くるっ………」

 切羽詰まった声に、八戒は更に動きを加速させました。

 そんな八戒を追い詰めるように、悟空もまた自分を苛む楔をきつく食い締めます。

 「はっかいっ………!」

 悲鳴に誘われ、蕾の入り口まで引き抜いた楔を最奥まで突き立てます。

 「あああっ………」

 「くっ………!」

 八戒の肩がぶるりと震え──熱い塊が、悟空の内部で大きく弾けました。

 悟空の昂ぶりも絶頂を迎え、二人の腹を白く汚します。

 全身で八戒の思いを受け止め、その暖かさに酔いしれたまま悟空は意識を失いました。

 

 

 朝を告げる鶏の声が、薄暗い寝室に響きます。

初めて交わった疲れからか…まだ眠り続ける悟空の傍らで。

 元のネズミの姿に戻った八戒は寂しげに──それでも晴れやかな表情で、静かに呟きました。

 「大好きですよ、貴方が……」