ミタサレル

「………」

「n、なに見てるんだ」

「アキラ……これはなんだ」

「ん?ああ、絵本だ。なつかしいな……これ、俺も施設で読んだことがある」

「この主人公の、顔は……」

「うん、パンでできてるんだ。お腹をすかせた人に分け与えられるように」

「だが、それでは主人公の頭がなくなってしまうのではないのか?」

「大丈夫。なくなっても、ちゃんと新しいものを用意してくれる人が側にいるんだ」

「……」

「n?」

「……アキラは」

「うん?」

「アキラは、なくなってしまわないのか」

「俺が?」

「そうだ。いつもいつも貰ってばかりで、俺はアキラになにひとつ返せない」

「……」

「俺は奪うことしかできない。だからいつか、アキラも――、アキラ?」

「……ああ、もう!」

「アキラ、苦しい」

「莫迦だな、そんなこと気にしてたのか?」

「――だが、」

「俺がなにかするのもアンタと一緒にいるのも、俺自身がそうしたいと思うから、やってるんだ。

アンタが気に病むことじゃない」

「……」

「それに――俺も、この手に抱えきれないくらいアンタからたくさんもらってる。

……アンタがこうして側にいてくれるから、生きていたいと思う」

「アキラ」

「俺はアンタに生かされてるんだ……“   ”」



nの本名が知りたいけど、それを知ってよいのはアキラァだけ。このもどかしさがnアキの醍醐味なんです