小学一年生の授業だったと思う。
「そういうわけでかわいそうな織姫と彦星は一年に一回、七夕の日だけ天の川を渡って会うことができるようになったのです。それでは皆さんも七夕の夜には空を見上げてこの二つの星を確かめてみてください。」
このように習った憶えが確かにある。
さて、先生のこのような言い回しの説明から当然期待されるのは次のうちのどれだろう。
1.普段は天の川の両側にある牽牛星と織女星がその夜だけ片側に一緒に見える。
2.それほどでもないが、その夜だけ両者の見かけの間隔が小さくなる。
3.一年を通じて変化する両者の見かけの間隔がこの日に最小となる。
私は当然1.と受け取った。当たり前に考えて先生の説明はそう言っているものとしか思えないし、その後七夕について読んだどんな本もそれ以上のことは教えてくれなかったのである。
しばらくして少しは星のことを知るようになった私はそれでも2.か3.かもしれないという思いを捨てきれず、葛藤を感じ続けた。
どうだろう、私と同じように思っていた人は、いや、今でも思っている人はいないだろうか。あの説明を聞いてそう思わないという人が存在するとは私には思えないのだ。
夜空の牽牛と織女は、金輪際、びくとも動かないのである。
それにもかかわらず七夕伝説について書いている本はどれも「実際の星が動くわけではありません」という説明を欠いている。どの著者もそのことを知らずに書いているのではないかと疑われる。
伝説と科学教育を混ぜてしまった冒頭のような授業も今なお行われているのであろう。
これまでの集計
19 |
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そう思っていたことがある |
12 |
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今までそう思っていた |
0 |
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今でもまだそう思っている |
20 |
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伝説を知ったのは実際の星が動かないことを正しく知ったあとだった |
35 |
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伝説は知っているが、実際の星のことについては考えたことがない |
4 |
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伝説を知らなかった |
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