飛行機の原理

 理科の教科書に飛行機の原理(揚力)と称して翼の断面を示した図を見ることがある。上の面がふくらんでいてそれに沿って空気の流れを示す線が描かれている。そして気圧がうんぬんとベルヌーイの定理の簡単な説明が書いてある。

 これについておかしいと思ったことはないだろうか。昔竹ヒゴと紙で模型飛行機を作って飛ばしたが、翼にふくらみなんて全然なかった。ただの一枚の紙の凧だって揚がるではないか。

 平らな板を持って風の中に立つと猛烈に板が煽られる。そうだ、板は下の面に風を受けると上に向かって押される。つまり翼はただの平面であっても少し前方を上げておけば強い上向きの力が得られる。この翼の傾きを迎え角という。つまり飛行機の翼は迎え角があることによって強く上に押されているのだ。このことが本に書かれていることはまずない。まあ当たり前すぎて言うまでもないのだろうけれど。

 テレビで理科の実験を見せてくれることがある。上下にスライドするように設置した翼の模型に前方から風を当てて翼が上昇するのを観察するのだ。もちろんベルヌーイの定理について諄々と説明がある。ところが画面を見るとなんと翼に迎え角がついているではないか。

これでは実験になっていない。画面の中の子供たちは先生の難しい説明を聞いて感心している振りをしているが、内心はどうしてこんな当たり前のことを訳のわからない言い方で説明しなければいけないのだろうと思っているに違いない。下に風を当てれば上に動くに決まっているのだから。

 先日、テレビで、ある意味で誠実な実験を見た。例の形の翼に風を当てて少し上に動き出してから、先生は迎え角があってはいけないと思ったのだろう、手で翼を水平になるよう調節した。ところがそのとたんに翼は急にぶるぶる震えだしてなんと下向きに動き出したではないか。風を受けて揺さぶられた翼が重力で落ち始めたのだろう。先生は調節し直してまた少し迎え角がつくようにして言ったものだ。「ごらんのように翼はこの上が膨らんだ特異な形状のためにベルヌーイの定理により揚力を得ているのです。」
 残念ながら最後の部分は大いに不誠実であった。

 良い実験とは、翼の形状を変え、迎え角を変え、どんなときにどれだけの揚力が得られるのかを比較する実験である。その上で何の力がどれぐらい、別の何の力がどれぐらい寄与しているのだと述べてはじめてそれが飛行機の(翼の)原理と言えるのだ。


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