小学生の皆さんへ 入学案内

 次の文章を声に出して読んでみてください。

 「私は学校へ行きます。」

 

 どうですか。

 「私 学校 行きます。」と読みましたね。

 どうして「は」という文字を「わ」と読んだり「へ」という文字を「え」と読んだりするのでしょうか。

 このことについて不思議だと思ったことはありませんか。もしこのことに興味があったら次の説明を読んでください。

 

 今から千年以上前の平安時代には人々はちゃんと「は」をその通りに「は」と読み、「へ」をその通りに「へ」と読んでいました。わざわざ文字と違う発音はしていなかったのです。
 ところが、ちょっと考えてみてください。たとえば、「へ」と言うときと「え」と言うときでは何が違うでしょう。「へ、え、へ、え、・・・」と言ってみると、「へ」のときは息を吐きながら言うので「え」よりも少しめんどうな感じがしますね。そのために人々はだんだんめんどうくさくなって、「へそ」などのように言葉の最初にあるときはちゃんと「へそ」と言いましたが、そうでない「かへる」などの言葉は「かえる」と言うようになっていったのです。
 それからしばらくはこのような「え」は元々「へ」だったということが分かっていましたから、文字に書くときにはちゃんと「へ」と書きました。しかし時代がたつと人々はそのことを忘れ始め、「へ」と書くのか「え」と書くのか分からなくなりました。そうして長い月日がたって明治時代になったときに、「え」と発音していても元々「へ」だったものはちゃんと「へ」と書きましょうという決まりが学校で教えられるようになりました。もう少し詳しくいうと、「わ、い、う、え、お」と発音していても元々「は、ひ、ふ、へ、ほ」であったものはちゃんと「は、ひ、ふ、へ、ほ」と書く決まりです。

 たとえば

 「会わない」という言葉は「会ない」と書く。
 「買います」は「買ます」と書く。
 「言う」は「言」と書く。
 「なまえ」は「なまと書く」。
 「おおかみ」は「おかみ」と書く。

 ということです。
 この他にももう少し決まりがありますが、これらの決まりを「歴史的かなづかい」といいます。明治、大正、昭和の初めまでは人々はこの決まりで文章を書いていました。

 その後、これらの決まりはややこしいのでもっと簡単に書こうという新しい決まりができました。「わ、い、う、え、お」と発音するところは全部「わ、い、う、え、お」とに書くことにしようとしたのです。
 ところが全部「わ、い、う、え、お」にしてしまうとかえって分かりにくい変な文章になってしまいます。そこで「私は」とか「あなたは」というようなときの「は」はそのままにし、また「学校へ」とか「家へ」というようなときの「へ」もそのままにすることにしたのです。他にも少し歴史的かなづかいに似た書き方を残しました。この新しい簡単な決まりを「現代かなづかい」といいます。私たちが今学校で習っている日本語はこの現代かなづかいで書かれているのです。

 さあ、これで「私わ 学校え 行きます。」という発音を「私学校行きます。」と書く理由が分かりましたね。これらの文字は今発音する通りに書かれているのではなく、大昔に発音通りに書いていたその通りに書くことを今でもしているのです。

 

 ところで、皆さんはやがて学校で古典文学を学んだり、明治から昭和時代の文書を読んだり、また俳句や短歌を鑑賞したり作ったりするようになると思いますが、そのときに役に立つのが上に書いた「歴史的かなづかい」に関する知識なのです。

 

 ここまでの説明を読んで、かなづかいって面白そうだなあと思った方がありましたら、ぜひこの先を勉強してみてください。

 「仮名遣い」って何?

 


平安時代の「は行」の発音の説明は簡単に書いてあります。正確なことは「完全版」を見てください。

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