補講104教室

特別授業:動詞の古形と現代語について

 ●「まを(申)す」と「まうす」
 「まをす」は古形です。「マウォス」と発音されてゐました。
 その後「を」が音便で「う」となつて「まうす」ができました。初めは「マウス」と発音されましたが、その後転呼で「モース」になりました。
 いま古形の「まをす」を発音するときは「マオス」です。

 現代仮名遣ひに変へる問題であれば
 「まをす」は「まおす」
 「まうす」は「もうす」
 となります。

 ●「ゑ(酔)ふ」と「よふ」
 「ゑふ」は古形です。「ウェフ」と発音されてゐました。その後転呼して「ヨー」と発音されました。
 そして「ヨー」と発音されるやうになつたために「よふ」といふ表記の新語が生まれ、それを今も「ヨー」と読んでゐます。
 いま古形の「ゑふ」を発音するときはふつうは転呼して「ヨー」ですが、長音化転呼をせずに「エウ」と読むこともあります。「ゑひ」は「エイ」と読みます。「ヨイ」とは読めません。

 現代仮名遣ひに変へる問題であれば
 「ゑふ」は「えう」、「ゑひ」は「えい」、
 「よふ」は「よう」
 となります。

 「ゑふ」を「ヨー」と読むのになぜ現代仮名遣ひで「よう」としてはいけないのでせうか。
 「ねがふ」を「ネゴー」と読んでも現代仮名遣ひでは「ねごう」としないで「ねがう」とします。それは「ねがわず、ねがい、ねう、ねがえば」のやうに語幹の形が変つてしまふことを避けるためです。
 同様に、「えわず、えい、う、ええば」となることを避けて「えう」とするのです。

 

  問題:江戸時代の人が酒を飲んで「サケニヨーテシモタ。」と言つてゐます。「 」の部分を歴史的仮名遣ひですべて平仮名で書きなさい。
  答:「さけにようてしもた。」
  解説:江戸時代には既に古形は廃れてゐます。「よひて」の音便形「ようて」が正解。なほ、「シモータ」ならば「しまうた」。

 近代以降の刊行物に「ゑふ」などの表記が非常に多く見られますが、古語の引用である場合を除いては錯誤によるものです。当時「エワナイ、エイマス、エウ、エエバ、エオー」などと発音してゐたわけではなく、当然「ヨワナイ、ヨイマス、ヨー、ヨエバ、ヨオー」と発音してゐました。正しくは「よ・・」と書くべきものをいろは歌などの古語の印象に引かれて「ゑ・・」と誤記したものです。
 「ゑふ」と「よふ」の関係については 
転呼に伴ふ動詞語幹の問題について 古文の動詞を現代仮名遣ひに変へるときの問題について も参照。


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