補講108教室

特別授業:発音変遷の諸相と転呼の扱ひ


例:「けはひをうかがふ」

 発音変遷の諸相

0.ケパピウォウカガプ

 ↓ は行音の破裂音から摩擦音への変化(奈良以前):この文では「は(パ→ファ)」、「ひ(ピ→フィ)」、「ふ(プ→フ)」

------------------------------------------仮名出現-----------------------------------------

1.ケファフィウォウカガフ

 ↓ ハ行転呼(平安後期):この文では「は(ファ→ワ)」、「ひ(フィ→ウィ)」、「ふ(フ→ウ)」

2.ケワウィウォウカガウ

 ↓ わ行音とあ行音が同化(平安末期〜鎌倉初期):この文では「ひ(ゐと同じく)(ウィ→イ)」

3.ケワイウォウカガウ

 ↓ 長音化転呼(鎌倉〜室町期):この文では「がふ(ガウ→ガォー)」

4.ケワイウォウカガォー

 ↓ 開合の区別消失※1(室町〜江戸初期):この文では「がふ(ガォー→ゴー)」

5.ケワイウォウカゴー

 ↓ 江戸期の発音変化※2(江戸期):この文では「を(ウォ→オ)」

6.ケワイオウカゴー

 ↓ 動詞の長音の非転呼への回帰(江戸語の標準語昇格):この文では「がふ(ゴー→ガウ)」  「ケワイ」から「ケハイ」への回帰(個別事情※3

7.ケハイオウカガウ

--------------------------------------------現在-------------------------------------------

 ↓ 将来の変化

8.?

 

※1 「あう(アォー)」などが「おう(オー)」などと同じ発音に、「きやう(キャォー)」などが「きよう(キョー)」「けう(キョー)」などと同じ発音になつた。
※2 これにより個々の仮名の音価がすべて現代と同じになつた。
※3 「けはひ」は語源が「気這ひ」と考へられる。「は」は古くから転呼して発音されてきたが「気配」の字を当てたことで非転呼に回帰した。(元同語の「化粧(けはひ)」は現代でも転呼して「ケワイ」である。) 似たものに「母(は)」「やり」などがある。現在は転呼しないが古くは「ワ」であつたことがある。「頬(ほ)」は現在転呼、非転呼両方の語形がある。


 現代における読み方

古文・文語文である場合
 古文ではふつう長音化転呼、開合の区別消失、江戸期の発音変化までが終了した相(上記の6.)を再現します。すなはち「ケワイオウカゴー」。現在百人一首の読み上げなどは6.で行はれるのがふつうです。
 専門的にはさらに実際に書かれた時代を考慮してより古い相、厳密な音価で読むこともあります。
 現代の文語文では伝統的に6.の読み方を踏襲します。ただし聞き手、場合などを勘案して現代語のやうに7.の通り読むこともあります。

現代文である場合
 現代文は7.の通りに読みます。


 戻る 特別授業目録へ