補講305教室

特別授業:「用ひ」「報ひ」「栄へ」について

 「用ふ」といふ動詞は「用ゐる」から類推によつて生まれたものです。
まづ「ゐ」が「イ」と発音されて「モチイ・・」と言はれるやうになると、「もちひ・・」といふ表記が現はれては行動詞と紛れ、さらに類推によつてよりありふれた上二段活用の「用ふ」といふ形が使はれるやうになりました。(「用ゆ」とされることもありました。)
 その後「もちひる」は「もちゐる」の間違ひだとして退けられることになりましたが、新しくできた動詞「もちふ」の方はそのまま生き残りました。
 結局二つの系統が存在するやうになつたわけです。

 用ゐず 用ゐて 用ゐる 用ゐる時 用ゐれば 用ゐよ (わ行上一段活用)
 用ひず 用ひて 用ふ  用ふる時 用ふれば 用ひよ (は行上二段活用)

 ただし、「用ゐる」の系統は文語、口語共通ですが「用ふ」の系統は文語でしか使はれません。口語の文章で「用ひ・・」とするのは間違ひになりますので注意が必要です。

 同様に「報ふ」は「報ゆ」から生まれた動詞です。「酬ふ」も同じです。

 報いず 報いて 報ゆ 報ゆる時 報ゆれば 報いよ (や行上二段活用)
 報はず 報ひて 報ふ 報ふ時  報へば  報へよ (は行四段活用)

 どちらも正しい仮名遣ひといふことになります。
 なほ、現代口語の「報いる」は

 報いず 報いて 報いる 報いる時 報いれば 報いよ (あ行上一段活用)

 です。

 同様に「栄(さか)ふ」は「栄ゆ」から生まれた動詞です。

 栄えず 栄えて 栄ゆ 栄ゆる時 栄ゆれば 栄えよ (や行下二段活用)
 栄へず 栄へて 栄ふ 栄ふる時 栄ふれば 栄へよ (は行下二段活用)

 現代口語としての「栄える」は

 栄えず 栄えて 栄える 栄える時 栄えれば 栄えよ (あ行下一段活用)

 です。


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