補講306教室

特別授業:「直衣」について

 固有名詞の「あかほ(赤穂)」「あをみ(青海)」「あをめ(青梅)」「なほがた(直方)」「まをか(真岡)」などは特殊な転呼をし、それぞれ「アコー」「オーミ」「オーメ」「ノーガタ」「モーカ」と発音されます。
 それではこれらを現代仮名遣ひではどう書けばよいでせう。

 「アコー」と読める現代仮名遣ひは「あこう」か「あこお」です。由来が「ほ」なのですから「あこお」が良ささうです。
 「オーミ」と読める現代仮名ひは「おうみ」か「おおみ」です。由来が「あを・うみ」なのですからふつうは前の「を」を生かして「おおみ」となるでせう参考
 「オーメ」も同じく「おおめ」でせう。
 「ノーガタ」と読める現代仮名遣ひ「のうがた」か「のおがた」です。由来が「ほ」なのですから「のおがた」でせう。 
 「モーカ」と読める現代仮名遣ひは「もうか」か「もおか」です。由来が「を」なのですから「もおか」でせう。

 ふつうはかう考へられるはずです。しかしながら現在実際に行なはれてゐる現代仮名遣ひ表記は必ずしも上の通りとはなつてゐません。中にはどちらとも定まつてゐないやうなものもあります。
 「現代仮名遣ひ」の規定では「オー、コー、・・・」などの長音を原則「おう、こう、・・・」と書き、一部の例外を「おお、こお、・・・」と書くと定めてゐます。しかしその例外とは歴史的仮名遣ひで「ほ、を、ほ、を、・・・」などと書く語のことであつて、今問題にしてゐる「ほ、を、ほ、を、・・・」などはそれに当てはまりません。
 したがつてこれらの語は原則通り「おう、こう、・・・」と書くことになりますが、しかしそれでは最初に述べたやうな理屈に合はない感じがして、その結果、一定に定まらない表記が行なはれることになつたものと思はれます。

 普通名詞の「なほし(直衣)」は「ノーシ」と発音されます。そして現代仮名遣ひでは今説明した原則により「のうし」と書かれます。これもやはり「のおし」と書かれるべきだつたのではないかといふ気がしてくる語です。

 現代仮名遣ひの告示では「直衣」のやうな一般的でない語や上記の少数の固有名詞のためにわざわざ細やかな例外規定を設けることはせず、前書きの中で「固有名詞などでこれによりがたいものは除く」と大雑把に述べるにとどまつてゐます。これらの語は現代仮名遣ひにおいては継子のやうな状態に置かれてゐるのです。


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