別れの時はすぐやって来ました。実験の期限は厳しく決められていたのです。
 十一日の日曜日は実験の撤収の手伝いもあり、みんなとは会えませんでした。夜になると父達は宿直室で先生と別れの酒を酌み交わしました。実験の余熱を放射しているので宿直室の辺りはうだるような暑さでした。全員とねんごろな挨拶を交わした後、先生はくだけた格好のまま寝入ってしまいました。
 翌朝、私は暗いうちに出発の用意を済ませました。外では実験の余波を交えた台風が吹き荒れています。このあと残っているスタッフと私が順にマシンで帰り、一番最後には父が一人で、まだ先生が起きる前に密かに実験室の入り口を厳重に閉じて帰還することになっています。
 外が薄明るくなったころ時間になり、私はまだ余熱でうだる実験室のタイムマシンに乗りました。みんなに会って挨拶をすることが出来なかったのが心残りでしたが、私はもう二度と会えない一人一人に心の中でさよならを言いながら飛び立ちました。

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