動植物たち

 登場した動植物名のうち種名まで明らかなもののリストです。名前だけで実物の登場しないもの、原義から離れた名詞などは括弧に入れました。
 太字のものには説明を付けました。


1日

 (くるみ)  (かりん)  栗  (烏)  (鼠いろ)  (苹果リンゴ    (子うま)  (山雀ヤマガラ)  (鷹)  (麻服)  (馬) 

2日

 萱  (蟹)

4日

 楊ヤナギ  栗  馬  (熊)    (茶いろ)  萱  おとこえし  アザミ  すすき  (鼠いろ)  (笹長根)  (虎こ山) 

6日

 萱  栗  葡萄蔓葡萄  たばこ  (鼠いろ)

7日

 さいかち  ねむの木  (あざらし)  (らっこ)  せきれい  (たばこ入れ)  (茶いろ)  かじか  (瓜)    馬  (煙草の葉)  煙草  たばこ畠

8日

 山椒の粉  萱  ねむ  さいかち  楊ヤナギの木 

12日

 (くるみ)  (かりん)  馬  栗の木  栗のいが  たばこ    (しゅろ箒


 くるみ=胡桃。クルミの実は硬い殻の外側に果肉がある。未熟のものは緑色。
 かりん=花梨、果梨。バラ科の木の黄色い果実。硬いので生食には向かない。砂糖漬けなどにする。
※1
 萱=ススキなどの背の高い穂のある草。
 山雀=スズメぐらいの大きさの野鳥。捕まえて教えると芸をよく覚える。
 麻服=麻の繊維でできた粗い手触りの夏向きの洋服。
 楢=どんぐりのなる木の一種。
 おとこえし=男郎花。丈1mぐらいのオミナエシ科の多年草。小さな白い花をたくさんつける。
※2
 薊=キク科の草。赤や紫の花をつける。
※3
 葡萄蔓葡萄=ヤマブドウ。
 さいかち=皀莢。マメ科の木。枝や幹にトゲがある。大きな豆のさやが生る。
 ねむの木=合歓木。マメ科。夜、細かい葉を閉じる。六・七月、紅色の花が美しい。
 せきれい=鶺鴒。ツバメぐらいの大きさの鳥。川原の石にとまって長い尾を上下に動かす習性がある。
 かじか=鰍。清流に棲む、ハゼに似た魚。食用になる。
 鮒=鯉を小さくしたような魚。食用にもなる。
 山椒=ミカン科の低木。葉と実は食用、香辛料となる。
 粟=イネ科の作物。今はもっぱら粟おこし、小鳥の餌として見る。
 しゅろ箒=棕櫚箒。シュロの木の幹を覆う糸状の皮を揃えて掃く部分の材料にした箒。



登場場面

 1日.教室の後ろで三郎の父が白いだぶだぶの服を着て立っている。

 4日.上の野原で嘉助がすてきに背の高いの中で道を見失う。嘉助は戻ろうとするがあんまりがたくさんあるところへ出てしまう。

あざらし 7日.一郎があざらしのような髪で震えながら三郎に問う。

 12日.一郎のおじいさんがああひどい風だ、今日はたばこももすっかりやられると言う。

 1日.みんながまるでせっかく友達になった子うまが遠くへやられたように思う。先生がモリブデンを掘るのはいつもみんながをつれて行くみちから少し川下へ寄った方らしいと言う。4日.一郎がもう少し行くとのいるところもあると言う。三郎がここには熊がいないからを放してもいいと言う。二匹のが一郎を見て鼻をぷるぷる鳴らす。一郎の兄さんが帰りにを連れてってくれと言う。まだ牧場のが二十頭ばかりいると言う。向うに光る茶色のが七頭ばかり居る。一郎がこのはみんな千円以上する、来年から競にも出ると言う。はみんな寂しかったというように寄ってくる。みんなは手を出してになめさせる。三郎はに慣れていないらしく手をポケットに入れる。悦治は三郎がを恐がると言う。三郎は手を出すがが舌を出すとまたポケットへ入れる。悦治がまた三郎がを恐がると言う。三郎がみんなで競をやろうと言う。みんなは競ってどうするのかと思う。三郎が競は何回も見た、このは鞍がないから乗れない、みんなで一頭づつをあの大きな木まで追って行こうと言う。三郎が競に出る馬は練習をしていないといけないと言う。みんなも三郎もそれぞれ好みのを決める。みんなが楊の枝や萱の穂でを軽く打つが、は少しも動かない。が走り出すが、どうも競にはならない。はどこまでも顔を並べて走る。は少し行くと止まりそうになる。みんなはまたを追う。はぐるっと回って土手の切れたところへ来る。一郎はが出ると叫ぶ。は土手の外へ出たらしい。二頭のは土手の外で草を口で引っぱっている。一頭のは嘉助と三郎が寄ると驚いたように南へ走る。一郎がが逃げると兄さんを呼んで叫ぶ。三郎と嘉助は懸命にを追う。は今度こそ本当に逃げるつもりらしい。嘉助は倒れて、の赤いたてがみと、あとを追って行く三郎の白い帽子を見る。嘉助は立っての行った方に歩き出す。草の中にと三郎の通ったらしい跡がある。嘉助はは恐くなってどこかに立っているだろうと思う。かすかな道は切れたり、の歩かないような急なところを過ぎたりする。急にの通った跡は草の中でなくなる。たくさんのの蹄の跡でできた小さな黒い道が草の中に出てくる。野の集まり場所らしい円い広場が霧の中に見える。嘉助が目を開くとがすぐ目の前に立っている。嘉助は跳ね起きての名札を押さえる。一郎の兄さんがなれた手付きでの首を抱いて、くつわをのくちにはめる。一郎の兄さんはを楢の木につなぐ。はひひんと鳴いている。おじいさんが向うへ降りたらも人もそれ切りだったと言う。兄さんがおじいさんにを置いて来ようかと言う。7日.網シャツを着た人がはだかに乗ってやって来る。網シャツの人がに乗って、またかけて行く。12日.一郎が下駄をはいて土間を下り、屋の前を通って潜りを開ける。屋のうしろの方で何か戸が倒れ、はぶるるっと鼻を鳴らす。お母さんはにやる餌を煮るかまどに木を入れながら一郎に問う。一郎はしばらくうまやの前で嘉助を待つ。

 7日.嘉助が鮒を取って、まるでをすするときのような声を出す。

おとこえし 4日.上の野原で嘉助がおとこえしの中で道を見失う。

かじか 7日.耕助が川で茶色なかじかが流れて来たのをつかむ。

 2日.妹の鉛筆を取った佐太郎が机にくっついた大きなの化石のようになる。

 1日.風が吹いてきて学校のうしろの山のや栗の木がみんな変に青じろくなってゆれる。風がまた吹いて来てうしろの山のをだんだん上流の方へ青じろく波だてて行く。2日.谷川の下の山の上の方でときどきが白く波立っている。4日.みんなは楊の枝やの穂で、しゅうと云いながら馬を軽く打つ。6日.三時間目が終ると山のからも栗の木からも残りの雲が湯気のように立つ。みんなはの間の小さな道を山の方へ少し登る。8日.佐太郎がザルを岩穴の横のの中へ隠す。

 1日.嘉助が大きなのように笑って運動場へかけて来る。

かりん 1日.青いくるみも吹きとばせ、すっぱいかりんもふきとばせ(歌)12日.青いくるみも吹きとばせ、すっぱいかりんもふきとばせ(歌)

 4日.三郎がここにはがいないから馬を放してもいいと言う。

 1日.学校のすぐ後ろはの木のある草山。風が吹いてきて学校のうしろの山の萱やの木がみんな変に青じろくなってゆれる。先生が拾いや魚取りのときも三郎を誘わなければならないと言う。4日.上の野原の入口に根元が焦げた大きなの木が立っている。嘉助がてっぺんの焼けた大きなの木の前まで来ると道が分れてしまう。足を投げ出している又三郎の肩にの木の影が青く落ちている。半分に焼けた大きなの木の根もとに小さな囲いがあっておじいさんが待っている。上の野原から帰るとき、向うのの木は青い後光を放つ。6日.三時間目が終ると山の萱からもの木からも残りの雲が湯気のように立つ。山の中の南側に向いた窪みにの木があちこち立って、下には葡萄が大きな藪になっている。三郎はを取ると言う。棒で剥いて白いを二つ取る。耕助が一本のの木の下を通ると、いきなり上から雫が落ちてくる。三郎はみんなに白いを二つづつ分ける。12日.一郎の家の前のの木の列が風に激しくもまれている。ちぎれた青いのいがが地面にたくさん落ちている。

くるみ 1日.青いくるみも吹きとばせ、すっぱいかりんもふきとばせ(歌)12日.青いくるみも吹きとばせ、すっぱいかりんもふきとばせ(歌)

さいかち 7日.広い河原のすぐ下流は大きなさいかちの木の生えた崖になっている。一郎が崖の中ごろから出ているさいかちの木へ昇って行く。庄助が川に入って持ったものをさいかちの木の下へ投げこむ。みんなは生洲をこしらえてまた上流のさいかちの木へのぼりはじめる。みんなは又三郎をさいかちのいちばん中の枝に置いてまわりの枝に腰かける。8日.みんなはまたいつものさいかち淵に着く。さいかちの木は青く光って見える。ぺ吉など三四人は泳いでさいかちの木の下で待っている。みんなはさいかちの木の下にいて三郎が吉郎をつかまえるのを見ている。三郎がひとりさいかちの木の下に立つ。三郎は恐くなったらしく、さいかちの木の下から水へ入って泳ぎだす。

 4日.一郎の兄さんがおじいさんの問いに長根の下り口だと答える。

山椒 8日.佐太郎が持ってきたザルを一郎が覗くと、毒もみに使う山椒の粉が入っている。

しゅろ 12日.一郎と嘉助がしゅろ箒で水を窓の下の穴へ掃き寄せる。

すすき 4日.大きな谷が嘉助の目の前に現われ、すすきがざわざわざわっと鳴る。風が来るとの穂は細い沢山の手を一ぱい伸ばしてせわしく振る。

せきれい 7日.みんなは砥石をひろったりせきれいを追ったりして、発破に気付かない振りをする。

 1日.先生が、みなさんは朝から水泳ぎもできたし林の中でにも負けないくらい高く叫んだりしたでしょうと話す。

たばこ 6日.みんなが少し行くと藁屋根の家があってその前に小さなたばこ畑がある。たばこの木はもう下の方の葉をつんである。一郎はびっくりして三郎に、たばごの葉とるづど専売局にうんと叱られるぞ、又三郎何してとったと言う。たばこ畑からあがる湯気の向うでその家はしいんとしている。7日.庄助が砂利の上へ坐ってゆっくり腰からたばこ入れを取り出す。嘉助が三郎にあの人はお前の取った煙草の葉を見つけて捕まえに来たんだと言う。鼻の尖った人が煙草を吸うときのような口つきで言う。その人が崖の上のたばこ畑へ入ってしまう。12日.一郎のおじいさんがああひどい風だ、今日はたばこも粟もすっかりやられると言う。

 4日.向うの少し小高い所にてかてか光るいろの馬が七頭ばかり集まっている。7日.耕助が川でいろなかじかが流れて来たのをつかむ。

 4日.おじいさんが自分もこ山の下まで行って見て来たと言う。

 4日.みんながしばらく行くとみちばたの大きなの木の下に繩で編んだ袋が投げ出してある。一郎の兄さんが馬をの木につなぐ。

 1日.教室の中の少年が変てこな色のだぶだぶの上着を着ている。4日.空がまっ白に光って、そのこちらを薄い色の雲が走っている。又三郎が足を投げ出して、いつもの色の上着の上にガラスのマントを着ている。6日.木の向う側に三郎の色のひじが見えている。

ねむ 7日.みんなは川原のねむの木の間をまるで徒競争のように走って川に飛び込む。向うの川原のねむの木のところを大人が四人やって来る。ほんとうに暑くなって、ねむの木もまるで夏のようにぐったり見える。8日.みんなはねむの河原を急いで抜けて、いつものさいかち淵に着く。雨が降って、みんなは川原から着物をかかえてねむの木の下へ逃げ込む。

葡萄 6日.耕助が嘉助に葡萄蔓とりに行がないかと言う。二年生の承吉が自分も葡萄とりに連れてってくれと言う。耕助は自分の見つけた葡萄藪へみんな来て面白くない。窪みに栗の木があちこち立って、下には葡萄がもくもくした大きな藪になっている。みんなは葡萄を取るのに一生懸命。耕助は木の下を離れて別の藪で葡萄を取り始める。一郎は三郎にぶどうを五ふさばかりくれる。

 7日.嘉助が六寸ぐらいあるをとって顔をまっ赤にして喜ぶ。三郎が返すよと言って中位のを二匹川原へ投げるように置く。

 4日.みんながの枝を一本づつ折って青い皮を剥いで鞭を拵える。みんながの枝や萱の穂で馬を軽く打つ。8日.一郎がの木に登る。が変に白っぽくなり、山の草はしんしんと暗くなる。

山雀 1日.みんながせっかく捕った山雀に逃げられたように思う。

らっこ 7日.みんなはわれ勝にとび込んで青白いらっこのような形をして底へ潜る。

苹果 1日.教室の中の少年の顔がまるで熟した苹果のよう。


自然全般の描写については美しい自然をごらん下さい。


※1 風野又三郎から風の又三郎へ風の歌
※2 美しい自然九月四日二枚目挿絵
※3 美しい自然九月四日二枚目挿絵


 

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