側音化構音の矯正

側音化構音とは、機能性構音障害のうち異常構音に分類されるメカニズムの一つで、主にイ段(キ、シ、チ、ニ、リ等)やサ行が正しく発音できないものです。


 「機能性構音障害」とは、医学的な原因がなく一部の発音が不正となることです。病気や麻痺、口の中の異状・けがなどと関係なく幼少の頃より発現する発音異常(方言音を除く)、発音障害です。真の原因ははっきりしません。発話全般が異常となるわけではないので幼児語の一種と思われたり見過ごされたりすることが多く、短期間のうちに自然に治ってしまうこともありますが、小学校に入る頃になっても治らないものが問題視されることになります。その後小学校高学年頃までに治らなかったものは放置すればそのまま成人に達するのが普通です。不正音は個人によって特定の音に限られ、他の音は正常です。ふつう不正音は丁寧に発音しても正しい発音になりません。
 最近著しい増加傾向にあり、今や小学校高学年でも一クラスに3〜4人見られることがあります。急増の原因には近年の食生活の変化も関係しているようです。
 従来、矯正を要すると見られる我が国の人口はごく少なく見て4万、多く見れば80万とされてきましたが、現在では若年層を中心に優にその数倍の人口を想定できます。


●機能性構音障害のうち、側音化構音で現れる不正発音

○イ段の音(イ、キ、ギ、シ、ジ、チ、ニ、ヒ、リ、など)が正しく言えない。(サンプル音声) (相談例)
○キが正しく言えない。(サンプル音声1) (サンプル音声2)
○ギが正しく言えない。
○ケ、キ、ゲ、ギが正しく言えない。
○サ行がシャ行やヒャ行のようになる。
○シが正しく言えない。
(サンプル音声)
○ジ、ヂが正しく言えない。(サンプル音声)
○チが正しく言えない。
(サンプル音声)
○ツがチュ、キュのようになる。
○ニが変だ。ギのようになる。
○ヒが正しく言えない。
○ヤ行が正しく言えない。
○リが正しく言えない。
(サンプル音声1) ギのようになる。(サンプル音声2)
○拗音(キャ、シャ、チャ、・・・ など)が正しく言えない。(サンプル音声)
○ある発音の時だけ唇や下アゴが横にずれる。
○ある発音の時だけ息が横に漏れる気がする。

                           サンプル音声は何れも完治例の指導前の時点ものです。
                           一部MPEG Layer-3に圧縮してあるために実際よりも正しいように聴こえるものがあります。

 程度の甚だしいものから軽いものまでいろいろあります。
 基本的に舌の形と位置が間違っているために正しい呼気の流れが阻害されたり間違った位置で音が発生して起こるもので、発音が不正であると同時に、唇やアゴ、舌の動きが不自然に見えます。また、口の中の息の流れ方がおかしいと自覚することもあります。
 多くのものは十分な自然治癒は期待できず、また家庭でも学校でも見過ごされたり諦められたりして正しい矯正の機会が得られずにそのまま成人まで持ち越されるケースが大部分です。コミュニケーションに重大な(全般的な)齟齬をきたすことは少ないのですが、よく聞き返されたり聞き間違えられたりし、丁寧に言い直しても改善されません。
 また本人に自覚があり自分で治そうと工夫しても、自己
聴覚モニターの歪みのために正しい目標音の設定と評価ができず、自身だけでの改善は困難を伴います。
 この障害には医学的原因はありませんから医療や歯科医療で治すことができません。またコ・メディカルの言語訓練を行っても他の種類の障害向けに一般的な基礎機能訓練や聴き取り訓練、繰り返し発音訓練などでは改善しません。小学校の「ことばの教室」でもこの種類のものは指導が難しいとされ、指導期間も長期に亘りながら殆んど実効が上がっていないのが実情です。
 これらのことから一般にまた関係者の間にさえ、この障害は大人になってしまうと一生治らないという誤解が根強く存在します。刊行本やウェブサイトの中にも、早いうちに治すべきで大人になると治しにくいという記述が多く見られます。

 しかし近年、成人に対する正しい構音指導の効果が認識されるようになってきました。適切な音声学的構音指導によって音節はほぼ例外なくごく短期のうちにひずみ度#0(まれに#1)、構音評価レベル[70〜100](正常)に達し、会話も多くは比較的短期のうちに実用レベルに達することが分かってきたのです。経験ある指導専門家は最近では成人に達してからの矯正は容易で非常に効果的であると言っています。(逆に低年齢の場合は成果が上がりにくいことがあり、指導は高学年になるまで待った方が効率が良いと言われます。)
 結局これらの不正音は正しく治してしまえることが明らかとなったため、最近ではこの種の機能性構音障害を「障害」という名で呼ぶのはふさわしくなく、単なる「発音の習慣的誤り」・「発音の学習の失敗」ととらえる方がより実態を表していると言われるようになりました。つまり誤った習慣の取り除きと正しい方法の学習こそがこの場合の発音矯正の要であり、また習熟期間についても、外国語の発音習得とは異なって乳児期からの正しい音聴取の積み重ねがあるために、極めて短期間で済むことも分かってきたのです。
 「成人の機能性構音障害」は一生治らないという誤解は早急に解かれる必要があります。

(参考:構音評価レベル・ひずみ度表

   機能性構音障害矯正指導に関する元ページ (音調研東京発音教室)