わくわくしたお正月

 

もういくつねるとお正月。子供のころはお正月が待ち遠しかった。

とし夜は茶の間で家長が上座で家族全員そろい、銘々膳で祝った。末っ子の僕は最下位だ。お膳の品も決まっている。大きな椀の中に八つ頭イモがどっぷり入り、刻み昆布に結びこんにゃく、その上に焼き寒ブナが載っている「おひら」。数日丸ごと塩出しした鮭の切り身。一の鰭は神様へお供えする。その他数の子、のっぺい、打ち豆入り大根おろしの煮なます、納豆など豪華版だ。掃除も済んだ神棚にあかあかと蝋燭が灯され、お参りする。この日は子供も酒を一杯だけ許され大人になった気分だ。興味津々、燗のにおいが鼻をつき、飲むと胸が熱くなった。もう一杯と所望するが許可が出ずやむなく隣の姉から分けてもらう。冬休みで久しぶりに帰ってきた兄を交え家族がそろった楽しい宴となり、やがて百人一首と続く。夜も更け遊び疲れたころ、祖母が「冷えてきた。妙に静かだが雪でも降ってきたかなぁ」という。「なに?雪!」僕は急いで廊下へ。冷え切った幕の間からガラス越しに外を見る。外は一面の銀世界。木の枝にも石の上にも雪が積もり、まだまだ勢いよく降っている。遠くの外灯も降りしきる雪の中にぼんやりと見える。「雪やこんこ、あられやこんこ・・・」もっと降れ降れいっぱい積もれと願った。「大雪にならねばいいがのう」と祖母はつぶやく。

こたつに暖めてある寝間着に着替えて床につくがうれしくて眠れない。明日はまず雪だるまを作ろう。大きな滑り台も、かまくらも、どふら(落とし穴)を作って仲間にたまげさせよう、玉こね、そして雪合戦もして・・・・。スヤスヤ。

翌朝、雪も上がり、すがすがしいい元旦である。各家々の玄関先はきれいに雪かきも済み、門松に日の丸の旗が美しい。

寒い五泉小学校の第一運動場で元旦の式典が厳粛に行われる。教育勅語、校長先生のお話のあと一月一日の式歌「年の始めのためしとて、終わりなき世のめでたさを・・・」正月の喜びを体いっぱいに感じ大きな声を張り上げて歌った。下校時には一月一日の替え歌「年の始めの・・・尾張名古屋の大地震、松竹ひっくり返って大騒ぎ、飛んで来る巡査はハゲ頭」と歌い、悪ガキと雪遊びをしながら帰る。つま皮付きの高足駄をはいた年始回りの客が足駄にたまった雪を電信柱にトントンたたいて落としている。「初雪や二の字二の字の下駄のあと」「初雪や犬のあしあと梅の花」。私が生まれて初めて出合った俳句である。子供ながらにうまい!と思った。小学校何年生ごろだったか。(新潟日報掲載)