「捨て身」について説明せよ。
  「山川の瀬々に流れる栃殻も身をすててこそ浮かぶ瀬もあれ」という歌がありますが、これは、山間を流れる川の瀬々に沈んでは流されていく栃殻も、中の実を捨てたときはじめて浮かび上がることができるという意味で、ここに「捨て身」の教訓があります。
 危険に直面したとき、身を捨てる覚悟で、全力を尽くして事に当たれば、思わず力が生まれて、活路を見いだせるものです。断固として行えば、鬼神もこれを避けるといわれているように、身を捨てて大胆に踏み込み、打突してこそ、はじめてりっぱに勝ちを得ることができるのです。
 しかし、相手の隙もないのに、ただ身を捨てて打ち込んでいくのは、無暴であって真の捨て身とはいえません。隙をみて、ただちに敢然として打突していくことが大切です。これを真の捨て身というのです。